システムアーキテクチャと内部構造を一新したPowerMac G4
~パッケージ販売に先立ちMac OS X 10.2を搭載

8月17日出荷開始


サイドドアがフルオープンするお馴染みの形状。この基本デザインと機能性の高さはかなり完成度の高いものと認識しているらしく、すでに3年半余りも使われ続けている。今回、サイド部分の重量が増したということでラッチ部分が金属に変更された
 アップルコンピュータ株式会社は16日、発売開始を翌17日に控えた「PowerMac G4」と「eMac」に関する報道関係者向け説明会を開催した。これらの製品は、米国13日(現地時間)の発表にあわせて、国内でも13日深夜にリリース。発売開始まで4日という慌ただしいスケジュールをぬった説明会となった。

 PowerMac G4はフロントパネルの表情こそ一新されたが、筐体の外側形状は'99年にリリースされたPowerMac G3(B&W)で初めて採用されたサイドドアが大きく開くデザインから数度のモデルチェンジを経た今も大きな変更は施されていない。本体カラーも、昨年7月に登場したPowerMac G4(QuickSilver)とほぼ同じメタリックなグレイが基調とあって、見ようによってはマイナーチェンジともとらえられかねない。

 この点については、日本における製品担当者である鯉田潮氏によって、本体内部のアーキテクチャが大きく変更されたメジャーなモデルチェンジであることが改めて強調された。もっともポイントになるのは、6月に出荷が始まった同社初の1Uサーバー「Xserve」とほぼ同じアーキテクチャを採用したデスクトップモデルということになる。

 既報のとおり新PowerMac G4は、167MHzのシステムバスを採用(ただし最下位モデルのみ133MHz)。同社のデスクトップ製品としては初めてPC2700(最下位モデルはPC2100)のDDRメモリを搭載する。こららをサポートする新しいシステムコントローラや、2基のATAコントローラを搭載したことなどを総称してXserveアーキテクチャと呼んでいる。

 もうひとつキーワードとされているのが「Dual」という点だ。ラインナップのすべてがPowerPC G4をDual搭載していることをはじめ、前述のとおりATAコントローラーを2基、さらに光学式ドライブ用の5インチベイが2スロット用意されている。加えて搭載されているビデオカードにはADCとDVIのコネクタが用意されているので、標準仕様で2台のモニタを接続することが可能になっている。これらすべてがDualに関連するというわけだ。

同社がXserveアーキテクチャと呼ぶ、新しいシステムコントローラとDDRメモリを使ったアーキテクチャをデスクトップモデルに採用 PowerPC G4をDualで搭載し、3次キャッシュをそれぞれに持つ。DDRメモリやI/O周りを新しいシステムコントローラに統合。外部ATAコントローラはATA/66に対応する 最下位モデルを除いて、167MHzのシステムバスを搭載。最上位モデルはさすがにパワフルだが、コストパフォーマンスという点ではミッドレンジがお買い得か

グラフィックパフォーマンスの比較グラフだが、比較対照が従来モデルのラインナップとの対比になっている点に注意。例を挙げると新PowerMac G4のミッドレンジにあたる1GHz Dualは128fpsになっているが、従来モデルでハイエンドだった1GHz DualはGeForce4 MXの搭載で115fps。このグラフだと、上から二つめの濃いグレーの部分にあたる。あくまで、特上、上、中、下と並んだラインナップ間での新旧比較で、重なっているグラフ部分が同一のCPUやGPUを使って比較されているわけではない。下位二つの比較も従来モデルはシングルプロセッサにあたる。メーカー提供のベンチマーク結果とはいえ、もう少しハッキリしたものの方が望ましいのだが…… 上位2モデルには、新たにATI RADEON 9000 Proを採用。GeForce4 Tiは従来どおりBTOによる最上位オプションとして提供される。従来モデルに用意されていた64MBメモリ搭載のGeForce4 MXは、ラインナップから姿を消した 本体のAGP4×スロットに挿入されているATI RADEON 9000Pro。インターフェイスはADCとDVIをひとつずつ装備。標準でデュアルディスプレイに対応している

●大幅に変更が加えられた内部構造。内部の密集度のわりに増設作業は容易

 この日、国内初公開となった実機を目の当たりにすると、報道用の画像やホームページに掲載されている写真では気が付かない特徴がフロントパネルに存在した。画像ではつや消しのように見えるメディアドライブ周辺のメタリックパネルが鏡のように写る。鯉田氏によれば、この部分はiPod背面の素材と同じものを利用しているという。今回掲載した写真のいずれも、背後のものが写りこんでいることから、その反射具合がよくわかるだろう。この外観から、社内やサポートなどの現場においては、PowerMac G4(Mirrored Drive Doors)と呼び、従来モデルと区別されることになっている。

 外観はともかく内部構造は従来モデルから大きな変更が加えられている。前述のとおり二つになった光学式の5インチベイは、本体正面のほぼ中央に位置。上段が第一ドライブにあたり、出荷時点でSuperDriveやComboDriveが搭載されている。PowerMac G4(QuickSilver)以来、本体側にメディアイジェクトボタンがなくなり、キーボードからの操作が標準になった。今回のモデルで光学式ドライブを2台に増設した場合、上段のドライブの開閉は従来どおりキーボードのメディアイジェクトボタンを押下するが、下段はOptionキーを押しながらメディアイジェクトボタンを押下するというキーコンビネーションを使って開閉することになる。

 5インチベイの下には、3.5インチのハードディスクを2基取り付けるスペースが用意されている。こちらは二つ用意されているATAコントローラの外部コントローラにあたりATA/66の仕様。標準仕様では空いているが、増設時に必要なケーブルは本体内にあらかじめ敷設されている。システムコントローラ内部のATAコントローラはATA/100で、こちらは本体背面側に取り付ける3.5インチドライブを2基管理することになる。いずれも増設時は、ガイドとなるマウンターがレバー操作で簡単に着脱できるので、奥まった位置に配置されてる割に作業が容易になっている。

 本体内にはあわせて四つの冷却用ファンが内蔵されている。電源部分に二つ、そして5インチベイ横にひとつ。もっとも大きなものがCPU冷却用のファンだ。Dual CPUには巨大なヒートシンクが付いているが、直接ファンが付いているわけではない。CPUの冷却は、主に前面から吸気して背面へ排気する空気の流れがこのヒートシンクにあたることで行なわれている。フロントパネルには四つの吸気用の孔が目立っているが、これはどちらかと言えばデザイン的な要素のほうが強く、実際は本体底面からの吸気がメインとなっているようだ。ファンの回転速度はCPUの温度によって三段階に変わる。ドアをオープンした状態では、ファンから送られる空気がヒートシンクにはあたらないため、CPUの温度が上がりファンの回転音もかなり大きくなった。通常ドアを閉じた状態で運用していればファンの回転速度があがることは少ないという。

 インターフェイス部分はほぼ従来通りの構成だが、久しぶりにオーディオ入力端子が復活した。これはユーザーから寄せられた要望に応えた結果という。細かい点では、Mac OS X 10.2使用時は内蔵モデムがV.92モデムとして機能する(Mac OS 9では、V.90モードのみ)。ただし、接続先が対応していない場合は従来通りV.90での接続になる。現時点でV.92をサポートしているプロバイダはほとんどなく、今後プロバイダ側でアナログ接続にどれだけの設備投資が行なわれるかは不透明なので、すぐにメリットがあるというわけではないが、新しい標準をいち早く取り入れた点は評価すべきだろう。

iPodの背面と同じ素材を使っているというメディアドライブ周辺のパネル。このように、正面に位置する物がハッキリと写りこんでいる 新システムコントローラに統合されたATA/100で接続されるハードディスクユニット。ドライブマウンタの部分は、レバー操作で簡単に着脱できる こちらはATA/66に対応する外部コントローラで接続できるハードディスクユニットの設置位置。こちらもレバー操作で着脱は簡単。接続に使うケーブルもあらかじめ用意してある

背面に位置する各種インターフェイス。ほとんど従来どおりだが、ユーザーの要望に応えたということでオーディオ入力端子が久しぶりに復活した 写真右に見えるのが、ヒートシンクに空気を送る冷却ファン。CPU温度によって回転速度は三段階に変化するという。左に見える小さなファンは5インチベイの冷却用 上段の光学式スロットはキーボード上のメディアイジェクトキーで開閉。下段に増設したときはoptionキーとメディアイジェクトキーのコンビネーションで対応。右上にヘッドホン端子も見える

本体正面。下に見える吸気用の四つの孔はどちらかと言えばデザイン的な要素が強い。実際は底面のスリットから吸気するのが中心。梱包用の箱のデザインにもこの四つの孔が印象的に使われている 本体背面。前面から吸気した空気を放出するため、ほぼ全面に孔が開けられたパネルとなっている。従来モデルでは下側にあったPCIバスのスロットが上部に移動したことからも、マザーボードや内部のレイアウトが大幅に変わったことが分かる 本体のスピーカーも従来モデルの前面下部から、前面上部へと移動した。このスピーカーのコーン紙を保護するためのグリルが付属する

●一足早くMac OS X 10.2をプリインストールして出荷

更新されたコンシューマ向けデスクトップのラインナップ。eMacのラインナップ強化に加え、液晶iMacの価格改定が行なわれた。最廉価のCRT搭載iMacは、米国ではスノーのみの販売となったが、日本ではスノーとグラファイトのカラーが継続販売される
 PowerMac G4には、Mac OS X 10.2がプリインストールされて8月17日から出荷されている。8月24日とされているMac OS X 10.2のパッケージ版出荷より一週間先行した格好だ。同社としても、OSに関してこうした出荷順となったのはきわめて例外的なことだという。ちなみに、プリインストールされる10.2とパッケージ販売される10.2は同一のビルドだ。

 PowerMac G4は、これまでどおりMac OS X(10.2)とMac OS 9(9.2.2)のデュアルブートで出荷され、初期起動OSはMac OS Xに設定されている。これまでと違うのは、設定の変更で起動OSをMac OS 9にすることこそ可能だが、ハードディスクを初期化して、Mac OS 9を単独でインストールする手段がなくなったことだ。本体に付属するのは、初期出荷状態に戻すリストアディスク(4枚)と、Mac OS X 10.2の単独インストールディスク(2枚:PowerMac G4専用品)だけとなる。もしMac OS 9だけで利用するなら、リストアディスクを使ってMac OS X/Mac OS 9の両方がインストールされている初期状態にし、Mac OS Xを起動後に、システム環境設定を使ってMac OS 9に起動システムを変更。Mac OS 9が起動したら、Mac OS Xに関連するファイルを手動にて削除するという手順が必要になる。Mac OS 9からMac OS Xへの移行はいよいよ最終段階に入ったと考えるべきだろう。

 ラインナップが強化されたeMacのComboDriveモデルと、17インチ液晶を搭載するiMacもやはり17日から出荷が始まった。こちらは、Mac OS X 10.2はプリインストールではなくアップグレード専用のCDが同梱される形で出荷されている。プリンストールはMac OS X(10.1.5)/Mac OS 9(9.2.2)で、購入者はアップグレードCDを使って10.2を導入することができる。形こそ異なるが、こちらも24日に先立っていちはやくMac OS X 10.2を利用できることには変わりはない。

 同日の出荷でありながら、対応がこのように分かれたことについて、同社では生産工程の都合をあげている。つまりeMacやiMacのほうが生産時期がやや先行したため、10.2のプリインストールまでには至らなかったということだ。実際、9月上旬の出荷と発表されているeMacのSuperDriveモデルでは、前述のPowerMac G4と同様にMac OS X 10.2のプリインストールで出荷が始まる予定だという。ほかの製品も、以降のロットから順次移行が行なわれるものと思われる。

□アップルコンピュータのホームページ
http://www.apple.co.jp/
□製品情報
http://www.apple.co.jp/powermac/(Power Mac)
http://www.apple.co.jp/imac/(iMac)
http://www.apple.co.jp/emac/(eMac)
□関連記事
【8月13日】Apple、Dual PowerPC G4 1.25GHz採用のPower Mac G4
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0813/apple1.htm
【8月13日】アップル、eMacにSuperDriveモデルやコンボドライブモデルを追加
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0813/apple2.htm

(2002年8月19日)

[Reported by 矢作 晃]


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