品名 | NW-MS9 |
購入価格 | 38,800円(税別) |
購入日 | 2001年1月4日 |
試用期間 | 約1年7カ月 |
「買い物山脈」は、編集部員やライター氏などが実際に購入したもの、使ってみたものについて、語るコーナーです。 |
実は本製品はすでに販売終了。だが、実質同製品のMS-10(写真)が後継モデルとして販売されている |
筆者がこのネットワークウォークマン「NW-MS9(以下MS9)」を購入したのは今をさかのぼること1年と7カ月。3カ月で新機種が旧機種に成り下がり、半年で新たな規格が導入されるほど遷り変わりの早いPCとは違い、シリコンオーディオプレイヤーの世界では新しいフォーマットやメディアへの対応が進みこそすれども、この19カ月で完全なる世代交代というのは起きていない。
実際、このMS9というモデル自体はすでに販売が終了してしまっているが、メモリースティックが付属せず、イヤフォンがネックフォンに変更されただけ、つまり本体側はなんら変更されていない後継モデル「MS10」は現行機種として発売されている。
■結構こだわったりもしたポイント
筆者はオーディオマニアでもなければ、音響や音質についてもさほどこだわりを持っておらず、カジュアルに音楽を楽しむ程度。しかし、筆者にとって初めてとなる携帯型のシリコンオーディオプレイヤーの購入の際にはそれなりの熟慮を重ねた。当時市場で入手可能だった携帯型シリコンオーディプレイヤーの選択肢は以下のような感じだったと記憶している。
記録メディア | 本体内蔵 or 取り外し可能なフラッシュメディア |
---|---|
電源 | 乾電池 or 充電池 |
インターフェイス | パラレル or USB 1.1 |
液晶モニタ | 有り or 無し |
リモコン | 有り or 無し |
記録形式 | MP3 or ATRAC3など著作権保護対応形式 |
上記の項目のうち、筆者がもっとも重要視したのは記録メディアが取り外し可能な点だった。当時の製品では標準の記録メディアの容量は多くて64MB。32MBやそれ以下の製品もあった。
いずれのシリコンオーディオプレイヤーも何らかの圧縮オーディオを採用しているが、形式を問わず平均的には1分間で1MB程度の容量を必要とする。つまりアルバム1枚を入れるにはどうしても64MBは必要となる。
そうすると、通勤片道は大丈夫でも、ちょっとした長旅をすると何度も同じ曲を繰り返し聴く羽目になってしまう。そういうわけで、現状は妥協するにしても、将来的には容量の拡張できるというのはどうしても外せないポイントだったのだ(といいながらも、現在も64MBメディアを利用していたりするのだが……)。
続いて気にしたのは、充電に対応しているかどうか。ときに、筆者は至極ものぐさな男だ。予備が切れる前に新たな電池を買い揃えておくということはまずありえない。そのため充電対応というのも重要視した。
インターフェイスについては、今でこそIEEE 1394に対応した高速転送可能な製品もあるが、当時はパラレル接続の製品も少なくなかった。しかし、筆者にとってパラレル転送というのはこれまたありえない選択肢だったのだが、幸いにも筆者が欲しいと思った製品はいずれもUSB 1.1対応だったため、これは悩む必要がなかった。
液晶モニタやリモコンといったヒューマンインターフェイスの部分については、あればなお可といった程度で、そこまでは気にしていなかった。
主なパッケージ内容。MS-9本体、USBケーブル、充電器、充電池、マジックゲートメモリースティック、イヤフォン、ポーチ |
最後に記録形式だが、これはなるべくMP3に対応したものを希望していた。筆者が所有する楽曲はさほど数は多くないが、その記録形式はほぼすべてがMP3となっていた。MP3に対応しない製品にすると、必然的にコンバートしなければならないため、これはできることなら避けたいと思っていた。
そして筆者が最終的に選んだのが、このMS9だった。MS9は標準で64MBのメモリースティックが付属。電源はガム型充電池で、インターフェイスはUSB 1.1。日本語タグ表示可能なバックライトつき液晶モニタを搭載。
リモコンは装備しないが、ワンボタンで頭出し/再生/停止に対応するシーソーボタンを装備する。USBケーブル、ポーチ、イヤフォンなどが付属する。本体サイズは36×15.7×81.4mm(幅×奥行き×高さ)、重量は電池を含めて約65gと携帯性にも優れる。
筆者の希望にはほぼ添う形だが、MP3再生には対応していない。この点はかなり悩んだのだが、最終的にはその洗練されたスタイルに誘惑されて、購入とあいなった。
本体正面には、設定や表示切替用のボタン3つと誤動作防止用のホールドスイッチを装備 | 本体裏面。SONYロゴの左下にはLEDがあり、PCからのデータ転送時にオレンジ色に点滅する | 本体上面には、ヘッドフォンジャックと音量ボタンを装備 |
本体右側面には、液晶モニタとシーソーボタンを装備。 | 本体左側面。上部にカバーがあり、開けるとUSB端子が現れる |
本体底面には、2つカバーがありメモリースティックスロットと充電池が入るようになっている |
■OpenMG JukeBox
OpenMG JukeBox |
シリコンオーディプレイヤーは楽曲の転送にPCが必要となるが、MS9では付属の「OpenMG Jukebox(以下OMJ)」を利用する。OMJの主な機能は、(1)音楽CDのリッピングを含んだWAVやMP3のATRAC3への変換、(2)プレイヤー、(3)MS9への転送の3つ。
ATRAC3への変換に際しては、個々の曲を個別に変換する以外にも、楽曲ファイルを検索して一括変換してしまうこともできる。この機能を使うと、楽曲ファイルをアーティスト名のフォルダに分けて管理している場合に、そのアーティストごとのプレイリストを自動的に作成してくれるので便利なのだが、多少の注意が必要。
というのは、意図しないファイルまで変換されるからだ。実際、筆者も初めてOMJを使ったときにこの一括変換機能を利用したところ、ゲームなどのBGMや効果音までもが変換されており、おびただしい数のファイルが作成されてしまった。
一括変換の際は、ファイルごとに変換する/しないを選択できるので、このような理由から、場合によっては変換したい楽曲だけを手動で変換した方が早く済むことがある。
ATRAC3のビットレートは66/105/132kbpsの3通りを選択できる。変換できる形式はMP3/WAV/WMAの3種類。
筆者はあまり音質にはこだわらないと先に書いたが、それでも不必要に音質を下げてまで容量/再生時間を稼ぎたいとは思わないので、常に132kbpsで利用している。132kbpsでのファイルサイズは1分あたり1MB程度で128kbps MP3のそれとほぼ同等だ。
シンプルモード時のスクリーンショット。デフォルトでいくつかのスキンが用意されている。色だけでなく形も様々 |
OMJのプレイヤーとしての機能は、プレイリストの作成、スキン対応、イコライザー機能、タグ情報の更新など必要とされる機能はほぼ網羅している。ただし、ファイル管理については独特のものとなっているので、その理解には最初は多少戸惑うところがある。
ちなみに、筆者が購入したMS9に付属していたOMJはバージョン2.0であったが、現在OpenMGのホームページからバージョン2.2を無償でダウンロードできるようになっている。バージョン2.2はWindows XPへの対応や、カラオケ機能(ボーカルキャンセル)の追加などのほかに、バグフィックスも含まれているので、古いバージョンのユーザーはアップデートすることをお勧めする。
■シーソーボタンが超便利
MS9の操作系におけるキモのシーソーボタン |
MS9本体のモバイルオーディオプレイヤーとしての使い勝手はどうだろうか。
本体正面には3つのボタンがあるがこれらは、本体の設定や液晶モニタの表示などを変更するためのもので、普段音楽を聴いているときには使うことはなく、再生などの操作は全て左側面のシーソーボタンで行なう。
このシーソーボタンは、再生/停止/頭出し(前/次)/早送り/巻き戻しの1台6役をこなせる万能ボタンで、MS9の操作系の最大の特徴かつアピールポイントとなっている。
ボタン全体を真下に押すと曲を再生/停止し、ボタンの左右それぞれの端を押すと曲の頭出しを行ない、押し続けると早送り/巻き戻しを行なう。ちなみに、ボタン左端は一度押すと曲の先頭に頭出しし、続けて素早く二度押すと前の曲への頭出しを行なう。
このシーソーボタン、一見するとただのちょっと変わったボタンなのだが、実際に使ってみるとソニーの開発者の意図が非常によく伝わってくる。
シーソーボタンはポーチの上からでも操作可能。ズボンのポケットに突っ込んだままでも操作可能 |
前述の通り、製品にはポーチが付属する。MS9はジーンズのポケットに十分入るほど小さいのだが、ポケットに直接入れると傷がつくのが怖い。そこで、このポーチを利用することになるのだが、ポーチは薄い布製の素材でできているので、ポーチの上からでも十分にシーソーボタンを操作できる。
そして、シーソーボタンは本体上部に位置しているので、ポーチに入れたままポケットに入れてしまっても、人差し指でちょいちょいと押すだけで再生や頭出しをコントロールできるのだ。
どうやら、MS9の開発者はそういった利用形態をもともと想定していたものと思われる。筆者がそう推測する理由の1つは、本製品にはストラップ用のリングがあるにも関わらず、ストラップが付属しない。
この手のソニー製品の場合、経験上、首かけを推奨するのであれば、標準でネックストラップが付属するが、本製品にはそれがない。つまり推奨していないということだ。
早送り/巻き戻し時に、曲の部分部分を再生する擬似高速再生/逆再生(?)モードになるのもさらなる理由。この機能のおかげで、本体を取り出して、液晶モニタで曲の経過時間を目で確認することなく、早送り/巻き戻しができるようになっている。
こうしてみると、MS9はリモコンが付属しないが、ある意味本体自身がリモコンを兼ねているわけだ。
もちろん、首からぶら下げて使っても構わない。見栄えのするアイテムなので、目立ち度もそれなりにアップするし、筆者も実際ネックストラップを使っている。だが、ネックストラップでぶら下げると、結構本体が揺れる。使うストラップにもよるだろうが、ただ歩いているだけでも、1歩ごとに大きく揺れては肋骨にぶつかってくれる。
その弾みでバッテリーのカバーが開いてしまい、危うくバッテリーをすっ飛ばしかけたことも2~3度あった。とりあえず、これを首にぶら下げて音楽を聴きながらランニングしたりというのは不可能なのは言うまでもないが、首から提げるときはある程度注意が必要だ。
シーソーボタンが十分便利なため筆者はほとんど利用しないのだが、タグ情報の日本語表示に対応し、バックライトも装備するなどMS9の液晶モニタは結構良くできている。カレンダー/時計機能もあるので、腕時計をしない筆者にとっては時計代わりに使っているケータイを忘れたときに重宝する。ただ、時間を確認するにはボタンを7~8秒くらい押しっぱなしにしなければならないのが不便に思うところではある。
バッテリーについては、公称持続時間10時間となっているが、筆者が平均1日2時間利用して3日間再充電しなくてもいいことから判断して、この数字は信頼できるだろう。購入して以来、仕事のある日はほとんど毎日利用していたが、バッテリーはまだ1度しか買い換えていないので、総寿命も問題ない。
液晶モニタ。写真ではカメラの影が入ってしまって映りが悪いのだが、実際の視認性は非常に良好 | バックライトも装備し、夜間でも問題ない |
タグ情報は日本語も表示可能 | 曲再生時は曲名のほかに、曲番号やスペクトルなども表示可能。132というのはビットレート |
■総評
さて、総評だが、1年7カ月という長きに渡り使ってきた率直な感想として、非常に満足している。携帯モバイルプレイヤーとしての機能も必要十分なものを備えているし、低音ブースト機能を使うことで付属のイヤフォンでも(少なくとも筆者にとっては)十分な音質を提供している。万人とは言わないまでも、広くお勧めできる製品だ。
□製品情報(NW-MS10)
http://www.ecat.sony.co.jp/audio/walkman/products/index.cfm?PD=8341
□OpenMGのホームページ
http://www.openmg.com/
□関連記事
【2000年10月13日】ソニー、10時間再生可能なメモリースティックウォークマン(ケータイ)
http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/news_toppage/0,,1520,00.html
(2002年8月12日)
[Reported by wakasugi@impress.co.jp]