SIGGRAPH2002現地レポート

ハイエンドビデオカード/3Dグラフィックスソフトが続々登場

会期(現地時間):7月21日~26日(展示会:23日~25日)
会場:Henry B. Gonzalez Convention Center



 19日に開幕したSIGGRAPH 2002だが、展示会は22日が初日。展示会スペースとして利用されているHENRY B. GONZALEZ CONVENTION CENTERのホールは、昨年Los Angeles Convention centerで開催されたときに利用されていたホールと比較しておよそ半分以下の面積しかなく、出展各社のブースもかなり小さくなっている。数年来の不況を反映しての措置なのかどうかは不明だが、やや残念な印象を受けた。しかし、会場には多数の来場者が詰めかけ、非常に熱気溢れる展示会であった。

 展示会の出展メーカーは、当然グラフィックス関連企業がほとんどとなっている。ハードウェアメーカーとしては、sgiやSun Microsystems、HPなどの、グラフィックスワークステーションに強いメーカーがほとんどで、展示している機材も、グラフィックスワークステーションやハイエンドサーバーが中心。IntelやAMDもブースを構えていたが、こちらもCPUなどを単体で展示するのではなく、基本的に自社のCPUを搭載するワークステーションやサーバーを置き、その上でグラフィックスアプリケーションを動作させながらパフォーマンスをアピールするというものだった。

sgi、Sun Microsystems、HPなど、主要グラフィックスワークステーションメーカーのブースでは、各社主力のワークステーションやサーバーを用意し、主要グラフィックスアプリケーションを利用したデモンストレーションが実施されていた
Intelブースでは、Itanium 2やXeonなどのハイエンドCPUを搭載するワークステーションやサーバーを擁し、グラフィックスアプリケーション利用時のパフォーマンスの優位性をアピールしていた AMDもIntel同様に、Athlon XP搭載マシンを用意し、グラフィックス用途に利用した場合の優位性をアピールするという展示内容だった

 グラフィックスチップメーカーも、基本的にはコンシューマ向けの製品ではなく、グラフィックスワークステーション向けの製品を中心とした展示内容となっている。SIGGRAPH 2002開幕直前に最新グラフィックスチップ「RADEON 9700」を発表したATI Technologiesは、RADEON 9700ベースのハイエンド向けチップ「FGL 9700」を搭載する「FireGL X1」をメインに展示を行なっていた。RADEON 9700とFGL 9700の違いは、OpenGLベースのアプリケーションオプティマイズドライバが提供されるかどうか、という点に集約されるそうで、チップ自体の構造は同じだ。ただし、搭載カードのインターフェイスはFireGL X1ではAGP Proとなっており、RADEON 9700のような外部電源コネクタは用意されていないそうだ。

 3Dlabsも、久々にコンシューマ向けの製品となる「Wildcat VP」を用意し、広くアピールしていた。Wildcat VPは、DirectX 8.1ベースのグラフィックスチップで、基本的にはミドルクラスのグラフィックスマシンをターゲットとしている。販売価格もハイエンド製品となる「Wildcat VP 970」では10数万円であり、我々一般ユーザーのマシンにはなかなか搭載しづらい。しかし、3Dlabsの製品は、3Dグラフィックソフトとの相性が良く、その点を優位性としてNVIDIAやATI Technologiesの間に割って入りたいそうだ。
 これ以外にも、モーションキャプチャシステムや3Dデジタイザ、3D描画装置などを扱うハードウェアメーカーなどが多数ブースを構えていた。こういった製品は、一般のPC関連の展示会では見る機会が少ないため、それら展示物を見るだけでも純粋に楽しいと感じる。

ATI Technologiesブースでは、RADEON 9700ベースのハイエンドチップFGL 9700搭載の「FireGL X1」を展示し、その圧倒的な描画能力を披露していた RADEON 9700発表時に利用されたデモが、SIGGRAPHのブースでも流されていた ここしばらくコンシューマ向けの製品を出荷していなかった3Dlabsだったが、「Wildcat VP」を擁して久しぶりにコンシューマ市場に復活
Wildcat VP。DirectX 8.1ベースの描画機能をサポート。出力端子にはDVI端子が2系統用意されている NVIDIAは、SIGGRAPHに合わせた最新グラフィックチップの発表がなかったこともあり、比較的地味な内容の展示だった NVIDIAブース内にはXboxの試遊機が置かれていた。ただ、あまりプレイする人はいないようだった

 ソフトウェアメーカーは、SOFTIMAGEやAlias|Wavefront、NewTek、Adobe Systems Incorporatedなどの有名メーカーが中心。SOFTIMAGEはSOFTIMAGE|3D V.4.0、Alias|WavefrontはMaya Unlimited 4.5およびMaya Complete 4.5、AdobeはPremiere 6.5など、各社主力となるグラフィックスソフトの最新版をSIGGRAPHに合わせて発表し、会場のブースで展示していた。もちろん、どのブースにも多数の来場者が詰めかけ、新機能についての説明を熱心に聞き入っていた。

Alias|Wavefrontブースでは、SIGGRAPHに合わせて発表されたMayaシリーズの最新版「Maya Unlimited 4.5」および「Maya Complete 4.5」が展示され、数多くの来場者が熱心にそれらの新機能をチェックしていた SOFTIMAGEブースも、SOFTIMAGE|3D V.4.0を展示し、新機能の紹介を詳しく解説していた。ところで、ブース内にはどこかで見たことのある画像が描き込まれてたのぼりが並べれられており、これを見るだけでもSOFTIMAGEの製品が広く利用されていることがよくわかる
機械式のモーションキャプチャシステムのデモの様子。機械式とはいえ、ユニットは非常に小さくなっており、光学式同様の軽快さでモーションキャプチャが可能のようだ CADでデザインしたソリッドモデルから物理的な模型を生成する機械。シリコンなどを利用した特殊な素材を利用し、非常に精密な模型を高速に作り出せる。小型の工業製品のデザインなどに主に利用されるそうだ こちらは、ヘッドマウントディスプレイとフォースフィードバックグローブを利用したバーチャルリアリティシステム。SIGGRAPHではインタラクティブ技術も重要な題材のひとつであり、このような製品の展示もいくつか見られる

 ところで、例年通りDreamWorks SKG、INDUSTRIAL LIGHT&MAGIC、Pixar、Rhythm & Huesなどの映画制作スタジオ(CG制作会社)もブースを構えていた。一般の展示会であれば、来場者に自社が手がけた作品を披露し技術力をアピールするところだが、SIGGRAPHではそういった趣旨の展示はほとんどと言っていいほど見られない。これらメーカーがブースを構える主目的は、人材の発掘だ。SIGGRAPHには、世界中からCG制作に携わる人が集まってくるため、格好の人材発掘の場となる。当然来場者側も自らを売り込むため、それらのブースに足を運びリクルート活動を行なっていた。読者の中で、これらスタジオで働きたいという夢を持っている人がいるならば、来年のSIGGRAPHに参加し、自らの能力を実際にアピールしてみてはいかがだろうか。

NVIDIAが行なっていたデッサン大会の様子。10数人の来場者に、制限時間20分で自由な題材でデッサンを描かせ、優秀者にQuadro 4搭載カードや3Dグラフィックソフトをプレゼントしていた。右の写真は入賞者が描いたデッサンだが、20分程度でこのクオリティのデッサンを描ける来場者が多数いるのも、SIGGRAPHならでは こちらは、Sony Pictures Imageworksが行なっていた、デッサンの講習会。こちらは毎年開かれており、内容も昨年とほとんど同じ
会場内でリクルート用のブースを用意していた有名CG制作会社やゲームメーカー。「Shrek」のDreamWorks SKG、「Star Wars」のINDUSTRIAL LIGHT&MAGIC、「Monsters Inc.」のPixar、「ハリーポッターと賢者の石」のRhythm & HuesなどがCG制作会社の主な面々。ゲームメーカーは、昨年同様Electronic ArtsとBlizzardがブースを用意していた。来場者の多くがグラフィックスに携わっていることもあり、こういったメーカーに対するあこがれは強いようで、かなりの来場者が各メーカーのブースに立ち寄り、熱心に話を聞いている姿が数多く見られた

□SIGGRAPH2002のホームページ(英文)
http://www.siggraph.org/s2002/flashhome.html
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http://www.watch.impress.co.jp/game/docs/20020724/sigg.htm
【7月18日】ATIがDirectX 9に対応したVPU「RADEON 9700」をリリース
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0718/ati.htm

(2002年7月26日)

[Reported by 平澤寿康]


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