DirectX 8.1対応低価格ビデオカード対決!
RADEON 9000 PRO vs Xabre400



 先週、ATI TechnologiesはRADEON 8500の後継でコードネーム“R300”ことRADEON 9700と、RADEON 7500の後継でコードネーム“RV250”ことRADEON 9000/9000 PROを発表した。

 上位版のRADEON 9700は発売が1カ月以内とされているのに対して、メインストリーム/バリュー向けRADEON 9000/9000 PROは即日出荷開始とされており、まもなくショップ店頭に並ぶものと見られている。今回はRADEON 9000 PROのサンプルを入手したので、そのパフォーマンスに迫っていきたい。

 RADEON 9000ファミリーは、バーテックスシェーダ1.1、ピクセルシェーダ1.4をサポートしているため、DirectX 8.1にフル対応となっている。今回は、同じようにDirectX 8.1にフル対応となるSiSのXabre 400もあわせて紹介していきたい。



●RADEON 8500のテクノロジーを廉価版向けにしたRADEON 9000ファミリー

ATI純正のRADEON 9000 PRO搭載ビデオカード。予想小売価格は129ドル(日本円で約1万5千円)

 RADEON 9000ファミリーは、RV250のコードネームで呼ばれるGPUを搭載したメインストリーム/バリュー向け製品だ。RADEON 9000とRADEON 9000 PROがラインナップされており、前者がコア250MHz/メモリ400MHz(200MHzのDDR)であるのに対して、後者はコア275MHz/メモリ550MHz(275MHzのDDR)という構成となっていて、それ以外の点は同等となる。

 RADEON 9000(RV250コア)の特徴は、RADEON 8500(R200コア)の技術を受け継ぎ、廉価版向けに少々シェイプアップしていることだ。例えば、RADEON 9000は、ATIがSmartShaderと呼んでいるプログラム可能なバーテックスシェーダ(バージョン1.1)、ピクセルシェーダ(バージョン1.4)が搭載されている。しかし、バーテックスシェーダはRADEON 8500が2エンジン搭載しているのに対して、RADEON 9000ファミリーは半分の1つだけ搭載している。同じように、レンダリングエンジンの構成は、RADEON 8500が4レンダリングパイプラインで、パイプライアンあたりのテクスチャユニットが2ユニットとなっており、いわゆる4P2Tという構成になっているのに対して、RADEON 9000ファミリーでは4レンダリングパイプラインは同等だが、パイプライアンあたりのテクスチャユニットは1ユニットとなっており、いわゆる4P1Tという構成になっている。

 バーテックスシェーダやレンダリングエンジンが簡素化されている理由は、RADEON 9000ファミリーが、絶対的なパフォーマンスではなく、コストパフォーマンスが重要視されるメインストリーム/バリュー向け市場に投入されるからだ。バーテックスシェーダのエンジンやテクスチャユニット数を減らすことは、ダイサイズの減少につながる。同じプロセスルールで製造する場合、ダイサイズを小さくすることはコスト削減につながるため、半導体メーカーは価格を下げることが可能になる。RADEON 9000ファミリーでは、こうした効果を狙ってこういう仕様にしているのだ。

【RADEON 9000 PRO、GeForce4 MX 460、Xabre400のスペック】
  RADEON 9000 PROXabre400GeForce4 MX 460
コアコアクロック275MHz250MHz300MHz
ピクセルフィルレート1,100Mピクセル/sec1,000Mピクセル/sec600Mピクセル/sec
レンダリングパイプライン442
パイプラインあたりのテクスチャユニット122
シングルパスで描画可能なテクスチャ数644
ハードウェアT&L
バーテックスシェーダバージョン1.1バージョン1.1バージョン1.1
ハードウェアバーテックスシェーダ
ピクセルシェーダバージョン1.4バージョン1.3
メモリメモリクロック550MHz500MHz550MHz
バス幅128bit128bit128bit
帯域幅8.8GB/sec8GB/sec8.8GB/sec
最大メモリ容量128MB128MB128MB


●ピクセルシェーダの表現力でライバル製品に差をつける

 しかし、ライバルとなるNVIDIAのGeForce4 MXファミリー(NV17コア)は、プログラム可能なピクセルシェーダが搭載されておらず、この点がRADEON 9000ファミリーのアドバンテージとなっている。ゲーム開発者はプログラム可能なピクセルシェーダを利用することで、3Dゲームの表示品質、つまり表現力を上げることができる。RADEON 9000ファミリーのバーテックスシェーダ1.1、ピクセルシェーダ1.4はDirectX 8.1の仕様を満たしており、ピクセルシェーダ対応のDirectX 8対応ゲームなどでは高い表現力でゲームをプレイできる。

 下記のスクリーンショットはATIが公開しているものだが、1つはピクセルシェーダを有効にしたもの、もう1つはピクセルシェーダを無効にしたものだ。見てわかるように、ピクセルシェーダを無効にした場合には海岸線が直線でしか表現されていないが、ピクセルシェーダを有効にした場合には、海岸線が複雑に表現されている。これが、ピクセルシェーダを利用するメリットであり、ピクセルシェーダに対応したゲームではRADEON 9000ファミリーがアドバンテージを持っていると言ってよい。現在のところ、ピクセルシェーダに対応したゲームはあまり多くないが、今後年末に向けて続々とタイトルが追加される予定であり、そうしたゲームを見据える場合、RADEON 9000ファミリーは魅力的な存在となる。

ピクセルシェーダを無効にした場合 ピクセルシェーダを有効にした場合

●ピクセルシェーダのみを搭載したSiSのXabreファミリー

 SiS(Silicon Integrated Systems)のXabreファミリーは、CeBITでSiS330として公開されたDirectX 8.1対応のGPUだ。

Xabreを搭載したビデオカード

 Xabreには3つの製品がラインナップされており、それぞれXabre 400、Xabre 200、Xabre 80となっている。Xabre 400がコア250MHz/メモリ500MHzでAGP 8X対応、Xabre 200がコア200MHz/メモリ400MHzでAGP 8X対応、Xabre 80がコア200MHz/メモリ166MHzでAGP 4X対応となっている。

 SiSが公表しているロードマップによれば、第3四半期にコア300MHz/メモリ600MHzにクロックを向上させたXabre 600が、さらに2003年の3月頃までにDirectX 9に対応させた次世代のXabre IIがリリースされる予定になっている。

 Xabreの特徴は、初めてAGP 8X対応カードとしてリリースされたことと、ピクセルシェーダ(バージョン1.3)に対応していることだ。AGP 8Xは現在策定が進んでいるAGP Specification 3.0でサポートされるデータレート533MHzの新しいモードで、帯域幅は現行AGP 4X(1.06GB/sec)の倍となる2.1GB/secとなる。現時点では、AGPバスはあまり飽和していないため、すぐに効果がでるわけではないが、今後、より膨大なデータを転送するようなタイプの3Dゲーム(例えば現在id Softwareが開発中のDOOM IIIなど)では、メリットがでてくると考えられている。

 また、Xabreでは、バーテックスシェーダ(バージョン1.1)に関してはソフトウェアにより実現されているが、ピクセルシェーダについてはハードウェアのエンジンが搭載されている。この点について、SiSは「バーテックスシェーダはCPUにより実現することができるが、ピクセルシェーダはCPUによるエミュレーションは不可能で、また性能や表示品質に与える影響が大きい。メインストリーム向けでは両方を搭載するのはコスト的な観点から難しいので、性能に大きな影響を与えるピクセルシェーダを優先した」(SiS マルチメディアプロダクトディビジョンマネージャ トーマス・ツイ氏)と説明している。つまり、DirectX 9のゲームや(そしてベンチマーク)がそろわない現状では、ハードウェアのバーテックスシェーダエンジンを搭載するメリットは大きくないと考えているということだ。


●アプリケーションの互換性がXabreの課題

 だが、このことはSiSに別の問題をもたらしている。既存のバーテックス、ピクセルシェーダ対応プログラムとの互換性だ。現在、多くのシェーダプログラムは、ピクセルシェーダの存在をバーテックスシェーダがあることを前提として設計されている。このため、DirectX 8.1対応でバーテックス/ピクセルシェーダをサポートするアプリケーションでも、Xabreがピクセルシェーダエンジンを搭載していることを認識できない場合がある。

 実際、3DMark2001 Second Editionでは、Xabreのバーテックスシェーダはないと表示される。このため、オリジナルバージョンの3DMark2001 Second Editionでは、Xabreではピクセルシェーダのテストでエラーを起こして止まってしまう。実際には公開されているパッチ(Build330)を当てることで、ピクセルシェーダのテストを実行できるようになるのだが、他のアプリケーションに関しても同様のパッチが必要となる可能性が高い。

 筆者の手元にあった、DirectX 8.1ベースのピクセルシェーダをテストするアプリケーションでも、Xabreのピクセルシェーダがないと表示される場合があった。例えば、ピクセルシェーダに対応した3DゲームであるNOVALOGICのCOMANCHE 4(日本ではマイクロマウスが販売)では、Xabreのピクセルシェーダエンジンを認識してくれず、ピクセルシェーダはないことになっていた。このほか、ピクセルシェーダのデモプログラムであるMeshuggah Demoに関しても、ピクセルシェーダが認識されず、やはり実行できなかった。このように、Xabreのピクセルシェーダを利用するには、アプリケーション側の対応が必要になる可能性が高いと言えるだろう。

COMANCHE 4ではピクセルシェーダエンジンは認識されない Meshuggah Demoでもピクセルシェーダエンジンが認識されない

●ベンチマークによってはメインストリーム向け最高のパフォーマンス

 それでは、いくつかのベンチマークを利用してRADEON 9000 PROとXabreのパフォーマンスをチェックしていこう。環境は表の通りで、ビデオカード以外は基本的に同じ環境を利用している。比較として用意したのはNVIDIAのGeForce4 MX 460、ATIのRADEON 7500。前回掲載したMatroxのParheliaも同様の環境でテストしたので、テスト項目が同じ場合にはParhelia、RADEON 8500、GeForce4 Ti 4600というハイエンド環境のビデオカードの結果も参考までに掲載しておいた。

【テスト環境】
 Xabre400GeForce4 MX460RADEON 9000 PRORADEON 7500
CPUPentium 4 2.53GHz
チップセットIntel 845G
マザーボードIntel D845GV
チップセットドライバ4.00.1013
メモリDDR SDRAM
メモリモジュールPC2100(2-2-2)
容量256MB
ビデオチップXabre400GeForce4 MX460RADEON 9000 PRORADEON 7500
ビデオコアクロック250MHz300MHz275MHz250MHz
ビデオメモリ128MB DDR64MB DDR64MB DDR64MB DDR
メモリクロック500MHz550MHz550MHz330MHz
ビデオドライバSiS 6.13.10.3030NVIDIA Detonator XP V29.42ATI 6.13.10.6102ATI 6.13.10.6094
サウンドチップYAMAHA YMF754-R
EthernetIntel PRO/100+ マネージメントアダプタ
ハードディスクIBM DTLA-307030
フォーマットNTFS
OSWindows XP Professional

■ベンチマークテスト結果

グラフ1 グラフ2 グラフ3
グラフ4 グラフ5 グラフ6

 グラフ1のMadOnion.comの3DMark2001 Second Edition(Build330パッチ適用済み)では、RADEON 9000 PROがXabre400、GeForce4 MX 460を上回った。RADEON 7500との比較でも60~90%近い性能向上を見せている。この1つの要因は3DMark2001でピクセルシェーダがサポートされていなければ実行されないGame4-Natureが実行されることがあげられる。

 3DMark2001 SEはGame1~Game4までの4つのテストを実行し、そのスコアを元に総合スコアを出すタイプのベンチマークだが、ピクセルシェーダエンジンを持っていないGeForce4 MX 460、RADEON 7500ではこのテストがスキップされるため、トータルの性能でやや不利になってしまうのだ。

 グラフ2は1,024×768ドットの詳細データだが、見てわかるようにRADEON 9000 PRO、Xabre400、GeForce4 MX 460はそれぞれGame1~Game3までは勝ったり負けたりだが、最後のGame4ではGeForce4 MXはピクセルシェーダがサポートされないため実行されていない。Xabre400とRADEON 9000 PROでは実行されているが、RADEON 9000 PROの方がピクセルシェーダ自体の性能が高いことがわかる。

 さらに、DirectX 7世代のベンチマークである3DMark2000 Version 1.1(グラフ4)でも、3つのGPU(RADEON 9000 PRO、Xabre400、GeForce4 MX 460)はさほど変わらないというのが見て取れる。こうしたことから、ピクセルシェーダに対応している3Dアプリケーションを使わない限り、3つのGPUの差はそんなに大きくないということがわかる。そして、Xabre400とRADEON 9000 PROのアドバンテージはピクセルシェーダをサポートしている3Dアプリケーションが実行できることと言えるだろう。

 グラフ5はQuake III Arenaの結果だが、ここでは、Xabre400とGeForce4 MX 460に一日の長があるようだ。RADEON 9000 PROはこれら2製品に若干劣っている。

 グラフ6はNOVALOGICのCOMANCHE 4 Demo Benchの結果で、ピクセルシェーダをサポートするGeForce4 Ti、RADEON 8500、RADEON 9000 PROの3製品で実行した結果だ。結論から言えば、RADEON 9000 PROは、RADEON 8500と大きな差は無かった。ピクセルシェーダを利用している時には、RADEON 9000 PROはRADEON 8500に近い性能を発揮しそうだ。


●ピクセルシェーダのインプリメントでリードするRADEON 9000 PRO、コストパフォーマンスに優れるXabre

 以上のような結果から見えてくるのは、RADEON 9000 PROの特徴は、なんといってもピクセルシェーダエンジンを搭載していることだ。これにより、GeForce4 MXでは対応できないピクセルシェーダに対応した3Dゲームを実行できるのは何よりのアドバンテージと言える。

 これまでピクセルシェーダはRADEON 8500やGeForce3/4 Tiなどハイエンド向けのGPUのみに対応しており、ビデオカード自体の価格が安価でも3万円程度はしていたので、それがわずか129ドル(日本円で約1万5千円)で入手できるようになったのはコストパフォーマンスが高いと言える。仮に今後ピクセルシェーダに対応した3Dゲームタイトルを購入する予定があるユーザーで、メインストリーム向けビデオカードから選ぶことになるのであれば、RADEON 9000 PROは最もお奨めの選択となるだろう。

 Xabreは、ピクセルシェーダ対応アプリケーションでピクセルシェーダを有効にできないという問題を抱えており、今後ソフトウェア側の対応が必要となる。この点は課題といえるが、ピクセルシェーダ以外の性能でも、GeForce4 MX 460に匹敵する性能を発揮しており、ピクセルシェーダ以外の部分でも見るべきところは多い。しかも、64MB搭載版に至っては1万円を切る価格で入手することができ、コストパフォーマンスは非常に高いと言っていいだろう。コストパフォーマンスを重視するのであれば、Xabreはよい選択肢だ。

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(2002年7月24日)

[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]


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