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Rambusが次世代RDRAM技術「Yellowstone」の概要を発表


●Rambusが開発者向けフォーラムで発表

初めて公開されたYellowstoneのデモ
 Rambusは、7月2日~3日に東京で開催された「Rambus Developer Forum」で、次世代RDRAM技術である「Yellowstone(イエローストーン)」の概要を発表、またインターフェイスチップによるデモを行なった。

 Yellowstoneは、ピン当たり3.2~6.4GHzのデータ転送レートをターゲットとするDRAMインターフェイス技術。つまり、パラレル伝送では無理だと言われている数GHzクラスのデータ転送を実現する。この転送レートは、メモリインターフェイスとしては圧倒的だ。

 例えば、次世代のメインストリームDRAMと目される「DDR II」でも、メインメモリ用はピン当たり400~667MHz、組み込み向けスペックで800MHz以上のレンジ。Yellowstoneは約4倍程度も高速だ。つまり、Yellowstoneなら1/4のインターフェイス幅でDDR IIと同じメモリ帯域を実現できるし、同じインターフェイス幅なら4倍の帯域にできる。これは、ちょうど今のRDRAM(1066MHz)とDDR(266MHz)の関係と似ている。メモリ帯域は以下の通りになる。

Yellowstone
バス幅 3.2GHz時 6.4GHz時
16bit 6.4GB/sec 12.8GB/sec
32bit 12.8GB/sec 25.6GB/sec
64bit 25.6GB/sec 51.2GB/sec
128bit 51.2GB/sec 102.4GB/sec
DDR系メモリ
名称 64bit時 128bit時
DDR II 400 3.2GB/sec 6.4GB/sec
DDR II 533 4.3GB/sec 8.5GB/sec
DDR II 667 5.3GB/sec 10.7GB/sec
DDR III 800 6.4GB/sec 12.8GB/sec
DDR III 1066 8.5GB/sec 17.1GB/sec
DDR III 1200 9.6GB/sec 19.2GB/sec


●RDRAMとは大きく異なるテクノロジ

 見ての通り、バス幅当たりで比較すると、Yellowstoneのメモリ帯域はケタ外れだ。どうやってこんな広帯域を実現するのだろう。その秘密は5つある。

(1)小さな電圧振幅
(2)ポイントツーポイント
(3)クロック当たり8bitのデータ転送
(4)オンチップアクティブターミネーション
(5)スキューを事実上なくす技術「FlexPhase」

 まず、Yellowstoneではシグナリング技術が新方式「Differentila Rambus Signaling Level(DRSL)」に変わる。電圧は1.0Vから1.2Vで、振幅を200mVと小さくする(RDRAMは800mV)ことで高速化を容易にする。また、Yellowstoneでは、RDRAMのような1対多の接続ではなく、1対1のポイントツーポイント接続に限定する。

 データ転送は「Octal Data Rate(ODR)」と呼ぶ技術で、外部クロック(400~800MHz)の4倍のクロックを生成、その内部クロックの両エッジに同期するデータレートで転送する。その結果、外部クロックの8倍の転送レート、つまり外部400MHzなら3.2GHzの転送になるわけだ。また、Yellowstoneでは終端抵抗(ターミネーション)もオンチップに内蔵し、抵抗値をアクティブに変更できるようにする。

 ここまでのテクノロジもかなりアグレッシブだが、Yellowstoneがユニークなのは実はこの先だ。

 これまでは、パラレルアーキテクチャで高速伝送をしようとすると必ずピン間のスキューが問題になった。つまり、各信号ピンの間で、コントローラとDRAMチップの間の伝送でタイミングの差が生じてしまうため、数GHz以上のデータ転送は不可能だと見られていた。

 実際、このスキュー問題のために、現在のDDRメモリでも、すでにメモリバスは等長配線に気を配らなくてはならず、苦労している。また、問題は、バス幅が広くなればなるほど大きくなる。そのために、この先の数GHz/ピンの世界では、シリアルアーキテクチャで、エンベデッドクロック方式で伝送(3GIOなどがそう)するのが最適というのが、最近のトレンドになっていた。

インターフェイス技術の位置づけ 64bitのYellowstoneシステムの例 Yellowstoneのデモシステムの説明


●意表を突いたスキュー対策アーキテクチャ

 しかし、Rambusはこのスキュー問題を解決するために、コロンブスのタマゴ的なアイデアを持ち込んだ。どうするかというと、コントローラ側のインターフェイスが伝搬遅延を最初から計算して、各ピン毎に異なるタイミングでデータの伝送を行なってしまうのだ。つまり、どのピンの信号も同時にDRAMチップに届くように、最初からタイミングをずらしてしまう。

 Rambusはこの技術を「FlexPhase」と呼ぶ。Yellowstoneでは、コントローラが起動時に各ピンとDRAMデバイスの間の伝搬遅延をスキャン。その後は、その遅延時間を織り込んだタイミングで、データの送受信を行なう。スキャンと調整にかかるのは10msで、しかもいったん起動したあとはもう調整の必要はないという。

 このアーキテクチャの利点は明確で、タイミングバジェットが増える分高クロック化が容易になり、エンベデッドクロックのようにクロックでデータが食われることもない。これまでのような等長配線が必要ないためメモリの配置も楽になる。各ピン毎のタイミングのズレはコントローラ側のインターフェイスで吸収しなければならないため、レイテンシは少し伸びる可能性があるが、得られるアドバンテージは大きい。

 Yellowstoneは、狭いインターフェイス幅で広いメモリ帯域を確保できるというRambusの哲学をさらに押し進めるテクノロジだ。そのため、メモリ帯域は必要だがDRAMのチップ数自体は抑えたい、あるいは、多チャネル化して膨大なメモリ帯域が欲しいといった用途には最適だ。前者の好例はゲーム機で、後者はネットワーク機器となる。ゲーム機なら、Yellowstoneを使えば2チップ(32bit幅)で12.8GB/secを達成できる。実際、RambusもYellowstoneのターゲットを、PCグラフィックス、コンシューマグラフィックス、ネットワークだと説明する。


●YellowstoneのカギはPlayStation

RDRAMのロードマップ
 技術的には先進的で素晴らしいYellowstoneだが、根本的なハードルもある。それは、まだ誰も明確にYellowstoneをやる(製造する)と言っていない点だ。RDRAMを製造するSamsung Electronicsとエルピーダメモリのどちらのロードマップにも、まだYellowstoneは入っていない。YellowstoneなどRDRAMの次世代テクノロジに一番乗り気だったように見えた東芝は、汎用(commodity)DRAMから撤退してしまっている。最悪の場合、Yellowstoneは技術はあっても、誰も作らないメモリに終わってしまう可能性もある。

 DRAMベンダーがYellowstoneで様子見をしているのは、アプリケーションが見えないからだ。RDRAMの時は、Intelが次期メインメモリに、ソニー・コンピューターエンタテインメント(SCEI)がPlayStation 2に採用しようとしていた。しかし、Yellowstoneでは、まだそうした話が聞こえてこない。そして、現行のRDRAMは、PC&ワークステーション市場からはずるずると滑り落ちつつあり、コンシューマ市場もPlayStation 2以外は今ひとつ振るわない。

 もちろん、コミュニケーション機器市場では根を張っている。ところがDRAM全体に占めるコミュニケーション機器の割合はあまりに小さいため、それだけでひとつのメモリアーキテクチャを開発してもなかなかペイしない。アプリケーション数は多いものの、必要とされるメモリの総量が少ない。

 では、どうなればDRAMベンダーがYellowstoneに向かうようになるのか。答えは簡単だ。YellowstoneがRDRAM同様に次世代PlayStationのような大型アプリケーションや、次世代PCに採用されれば、状況が変わる。

 現状ではPCは難しいかもしれないが、メジャーなゲーム機に採用されるだけでも突破口になる。ゲーム機に載るなら、年間数千万個のYellowstoneチップが、向こう5年はコンスタントに出ることになるからだ。ウェハ換算で数万~数十万ウェハが毎年必要となるため、ラインを割り当てて十分ペイするわけだ。顧客側は2供給源以上を欲しがるため、少なくとも2社は参入できる。どうなるのか、要チェックだ。

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【7月1日】【海外】Rambusアーキテクチャと次世代ゲーム機の可能性
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0701/kaigai01.htm


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(2002年7月4日)

[Reported by 後藤 弘茂]

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