元麻布春男の週刊PCホットライン

TVチューナー付きMPEG-2キャプチャカード
「GV-MPG3TV/PCI」を試す


●PC VS 民生用レコーダー

 テレビ番組をデジタル記録するのにPCベースで行なうのと、民生用レコーダーを用いるのではどちらが良いのか。この問いに対する明確な答えはまだ存在しない。動作の安定性や確実性、操作のわかりやすさという点で、民生用のハードディスクレコーダーやDVDレコーダーに一日の長があるのは間違いないところだが、融通の利かない面も存在する。デジタル録画したものをメディアに書き出すデジタルインターフェイスがなかったり、メディアに録画したデータをデジタルコピーする方法が提供されていなかったり、といった具合だ。

 一方、PCベースのデジタル録画は、予約録画の確実性という点で民生機に及ばない部分がある(これはキャプチャカードの責任だけでなく、OS、マザーボードなどプラットフォーム全体の問題である)のは事実だが、現時点でメディア上のビデオデータを複製しようとすると、PCベースのソリューションが必要なこともまた事実である。

 もう1つ、PCベースのソリューションのメリットは、すでにPCを所有しているユーザーであれば、比較的小さな追加コストでデジタル録画をスタートできる、ということだ。必要とする画質と予算に応じて10,000~50,000円前後のTVチューナーつきキャプチャカードをシステムに追加すれば、とりあえずTV番組をデジタル録画する環境が整う。もちろん、得られる画質はキャプチャカードの予算に大きく依存するし、DVD-RやCD-Rといったメディアに書き出せるかどうかも予算次第だ。それでも、とりあえずソフトウェアエンコードの1万円のカードから始められる、ということはPCのメリットだといえよう。


●ハードウェアエンコーダタイプの「GV-MPG3TV/PCI」

写真1
アイ・オー・データ機器
「GV-MPG3TV/PCI」

 今回取り上げるアイ・オー・データ機器の「GV-MPG3TV/PCI」は、GlobeSpan製のハードウェアMPEG-2エンコーダチップを搭載したTVチューナーユニット付きのMPEG-2キャプチャカード。ハードウェアエンコーダを搭載しているため、メーカー希望小売価格が39,000円(実売30,000円台前半)と、ソフトウェアエンコーダタイプに比べれば高くなるが、現状では画質と安定動作の点で、ハードウェアエンコーダになお一日の長がある。

 写真1がそのGV-MPG3TV/PCIだが、TVチューナーが搭載されたからといって、カードサイズが特に大きくなったわけではない。ほぼ前作、「GV-MPEG-2/PCI」と同じ大きさのハーフサイズカードだ。ブラケットの付近に白い内部接続用のコネクタが並んでいる(計6個)のは、別売オプションの「GV-FRONT」用のもの。GV-FRONTはアイ・オー・データ機器製のキャプチャカード用のオプションとして、通常リアパネルに出ているビデオ入出力用のコネクタを前面のドライブベイに引っ張り出すものである。

 ブラケット部に用意されているコネクタは、TVアンテナに加え、ビデオ入力用とビデオ出力用のDINコネクタ(ここに付属のブレークアウトケーブルを接続することで、ステレオ音声、コンポジットビデオ、Sビデオ、それぞれの入出力が可能となる)、赤外線リモコンの受光部を取り付けるコネクタの計4つ。TV放送の音声(もちろん日本のステレオ/音声多重放送対応)はPCIバス経由で転送されるため、サウンドカードと本カードの間をケーブル接続する必要はない。


●分割して保存されるキャプチャーデータ

 このカードをサポートするソフトウェアは、テレビ表示およびキャプチャアプリケーションである「mAgicTV」、システムに常駐し予約録画等の管理を行なう「mAgicマネージャ」、2種類のテレビ番組表(Adapms EPG Plusを用いる「mAgicガイド」、および「iEPGOnTV Japan」のWebサイトへのショートカット)、キャプチャしたMPEG-2データをTV出力するアプリケーションである「mAgicPlayer」などだ。これらは、デスクトップ上のショートカットから起動できる(mAgicマネージャは除く)ほか、mAgicマネージャの中から呼び出すこともできる(画面1)。

 中でも中核となる機能を担うmAgicTVは、画面2のようなシンプルな外観を持つアプリケーション。常時タイムシフトするタイプではないものの、ライブモードでも定期的にHDDのアクセスランプが点灯することから考えて、HDDにバッファリング等を行なっているのだろう(以前取り上げたPixelaの「PIX-MPTV/P1W」は、同じGlobeSpan製のエンコーダチップで常時タイムシフトしていた)。そのせいか、mAgicTVの起動(デスクトップ上のショートカットをクリックしてから、映像と音声が出るまで)には10秒ほどの時間がかかる。

 また、mAgicTVは、前回起動時のウィンドウ位置とウィンドウサイズを覚えておいて、次回起動時も同じ設定で利用可能なのだが、ウィンドウサイズは任意の大きさで設定できるわけではない。選べるのは縮小サイズ(表示サイズ約360×264ドット)、標準サイズ(同約720×520ドット)、フルスクリーンの3種のみとなっている。

画面1
mAgicマネージャ
画面2
mAgicTV

 一方、キャプチャの際の画質は、高画質、標準画質、長時間の3種類のプリセットからの選択となる。ただし、このプリセット値は固定されたものではなく、画面3のような設定画面で、ユーザーが定義することが可能だ。設定可能なパラメータは、ビットレートを固定にする(CBR)か可変(VBR)にするか、映像サイズをFullD1(720×480ドット)とHalfD1(352×480ドット)のどちらにするか、ビットレートをどのくらいにするか(最大10Mbps)、音声のサンプリングレートをどちらにするか(48KHz、44.1KHz)といったところ。初期設定では、高画質で1分間の録画に約60MB、標準画質で同46MB、長時間で24MBという設定になっている。

 最初驚いたのは、キャプチャしたデータが標準的なMPEG-2ファイル(拡張子がMPG、M2P、MP2等)で出力されないことだ。本カードでキャプチャしたデータは、拡張子が「HNL」という名前で保存されていく。だが、どうやらこのHNLという拡張子のファイルはMPEG-2に準拠したもので、おそらくWindows 9xシリーズのファイルシステムによる制約(4GBを超えるファイルを作成できない、2GBを超えるファイルのコピーができないなど)を回避する目的で、データを1GB単位で出力するために、このような変則的な形をとっているようだ。この細切れになったHNLファイルは、mAgicTVを用いて1つのMPEG-2ファイルとして出力することができる(画面4。この場合ファイルシステムによる制約を受けるし、若干時間もかかる)。GV-MPG3TC/PCIで自己録再する分には、ファイルが分割されていようと、1つだろうとあまり関係ないが、DVD-Videoのオーサリングを行なったり、DVD-RAMにビデオレコーディング規格での書込みを行なう際には、余分な手間がかかることになる。

画面3
画質の設定画面
画面4
HNLファイルを1つのMPEG-2ファイルにまとめる


●DVD-RAMへのリアルタイム直接録画はお預けだが……

 さて、このGV-MPG3TV/PCIには、上述の標準アプリケーション以外に、いくつかのアプリケーションが付属する。iモードやJ-SKYからTV番組録画予約を行なうための「reserMail」(別途会員登録必要)、DVDライティング機能を備えたビデオ編集ソフトである「Ulead Media Studio Pro 6.0 Power up kit + Go!DVD」、2Dグラフィックスソフトの「Ulead PhotoImpact 6 SE」、3Dタイトル作成ソフトである「Ulead COOL 3D SE Ver3」、そしてビデオレコーディング規格に対応したDVD-RAMビデオ再生・編集ソフトである「Panasonic DVD-MovieAlbum SE for GV-MPG3TV/PCI」だ。

 アイ・オー・データ機器のハードウェアMPEG-2エンコーダカードというと、これまで売られてきたのはTVチューナーユニットを搭載しない「GV-MPEG2/PCI」だった。GV-MPEG2/PCIは、PanasonicブランドのDVD-RAMドライブにバンドルされている「DVD-MovieAlbum」と組み合わせることにより、リアルタイムでDVD-RAMメディアにビデオレコーディング規格準拠の書込みができる、という特徴があった。しかし、TVチューナーユニットを持たないGV-MPGE2/PCIでは、外部のビデオデッキ等を用意せねばならず、せっかくのリアルタイムライティング機能を十分活用できたとは言いがたかった。

 Panasonic DVD-MovieAlbum SE for GV-MPG3TV/PCIが最初から添付されているGV-MPG3TV/PCIなら、内蔵TVチューナーを利用して、TV番組をビデオレコーディング規格のDVD-RAMに直接録画できるのではないかと期待したのだが、残念ながらそれはできなかった。この組み合わせで可能なのは、いったんGV-MPG3TV/PCIで録画したデータを、ビデオレコーディング規格のメディアに書き込むということ。その流れは次のようになる。

 まずGV-MPG3TV/PCIでTV番組、あるいはビデオをキャプチャする。次に画面4で示したMPEGファイル出力機能を用いて、1つのMPEGファイルにまとめると同時に、VR認証ファイル(MTVファイル)の生成を行なう。このVR認証ファイルが無い単なるMPEG-2ファイルは、DVD-MovieAlbumを用いてもビデオレコーディング規格のメディアに書き込むことはできない。

 以上の準備ができたらDVD-MovieAlbum SE for GV-MPG3TV/PCIを起動し、補助機能のファイルからの画像取り込みの中に新設されたオプション、MPEGの取り込みを選択する(画面5)。このオプションは、DVD-RAM/Rドライブに添付されているDVD-MovieAlbumには存在せず、AVI(DVコーデック)の取り込みしかできなかった。MPEGの取り込みを選ぶと、画面6のようなダイアローグが表示され、MTVファイルを指定することでDVD-RAMメディアへの書込みが行なわれる。

画面5
画質の設定画面
画面6
MPEGの取り込み

 単にファイルとしてMPEG-2データをDVD-RAMメディアに書き込んだり、MPEG-2データをオーサリングしてDVD-Video互換の形でDVD-Rメディアに書き込むのではなく、DVD-RAMにビデオレコーディング規格準拠で書き込むことのメリットは、PCでキャプチャしたデータを、民生機でも活用することが可能になる(もちろん、それには民生用のDVD-RAMレコーダーや、DVD-RAMカムコーダーが必要になるが)、という点にある。また、DVD-Videoにオーサリングして出力する場合に比べ、PCで行なう作業が格段に短時間で済む(基本的にオーサリング作業が不要なことと、オーディオデータをMPEGオーディオから、DVD-Video規格が求めるリニアPCMフォーマットに変換する必要がない、など)こと、民生機側で再編集可能である、というメリットもある。

 以前取り上げたPixelaのPIX-MPTV/P1Wに続き、撮り溜めしたMPEG-2ファイルを、ビデオレコーディング規格準拠でDVD-RAMメディアに書き込める環境が登場したことはメリットだと考える。あとは、リアルタイムの直接レコーディングのサポート(予約ができればなおよい)が待たれるところだ。

□アイ・オー・データ機器のホームページ
http://www.iodata.co.jp/
□GV-MPG3TV/PCIの製品情報
http://www.iodata.co.jp/products/video/2001/gvmpg3tvpci/index.htm
□関連記事
【2001年12月10日】アイ・オー、MPEG-2エンコーダ/デコーダ搭載のTVキャプチャカード
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20011210/iodata1.htm

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(2002年2月1日)

[Text by 元麻布春男]


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