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DDR IIはいよいよ拡張仕様(DDR IIa)の策定が最終ステージへ


●On-Die Terminationの仕様が確定

Advanced Memory International デジー・ローデン社長兼CEO

 次世代メモリ規格「DDR II」は、拡張仕様「DDR IIa(DDR II+)」の重要部分の仕様策定が終了した。これで、いよいよDRAMベンダーの、第2世代デバイス(DDR IIaに沿ったチップ)の開発が本格化する。現行のDDRメモリと異なり、DDR IIは初めからIntelもサポートする予定となっている。そのため、いったん立ち上がれば、PCのメインメモリへの浸透はスムーズに進む可能性が高い。

 サンノゼで先週開催されたPlatform Conferenceでは、いたるところでDDR IIの足音が聞こえた。セッションやパネルディスカッションでも各所で取り上げられ、DRAMベンダーもDDR IIの製品化の姿勢を明らかにした。

 DDR IIは、昨年6月に予備(Preliminary)仕様の策定が完了していた。しかし、昨年9月に仕様の拡張が、IntelとトップDRAMベンダーで結成するメモリ規格策定団体「ADT(Advanced DRAM Technology)」から提案され、現在は、その拡張仕様の協議が行なわれている。この拡張仕様は、以前「DDR II+」と伝えたが、通常はDDR IIaと呼ばれている。

 もっとも、このDDR IIやDDR IIaというのは、JEDEC(米国の電子工業会EIAの下部組織で、事実上半導体の標準化機構)による規格策定段階のニックネームに過ぎない。例えば、現行のDDRメモリも規格策定が始まった段階では「SDRAM II」と呼ばれていたが、JEDECが実際に規格を発表した時には「DDR200」「DDR266」「DDR333」になっていた。同様に、DDR II/DDR IIaも、メモリバスの転送レートに沿った規格名となる。具体的には「DDR400」「DDR533」「DDR667」の3つが、DDR II/DDR IIa世代では予定されているという。

 DDR IIa仕様の協議はまだ続いており、完全に終わるのは今年前半中の見込みだ。しかし、もっとも重要な部分、例えば、仕様拡張の目玉である「On-Die Termination」などは確定しつつある。次世代DRAMの開発促進を行なうAdvanced Memory Internationalのデジー・ローデン社長兼CEOによると、Platform Conferenceと同日に開かれていたJEDECミーティングで、On-Die Terminationの仕様策定を終了したという。

●DDR IIチップ→DDR IIaチップの順番で登場

 今後協議されるDDR IIaの仕様は、キャリブレーションを除けば、タイミングなど、どちらかというとマイナーな部分になるという。そのため、デバイス開発で大きな変更が必要となる可能性は低いようだ。つまり、現時点でDRAMベンダーは、On-Die Terminationを搭載したデバイスの開発をスタートしたり、すでにスタートしている開発を、確定仕様に合わせて修正することができる。言ってみれば、開発にGOサインが出たことになる。以前、On-Die Termination以上にクリティカルな仕様変更がADTから提案される可能性を伝えたが、結局、それはなかったようだ。

 また、DDR IIaのOn-Die Terminationもオプション仕様であり、DDR II世代のデバイスがこの機能を必ず搭載しなければならないわけではない。ユーザー側でその機能をオンにするかオフにするかを決めることができるという。つまり、互換性を保ちながら導入できるようにした。コントローラ(チップセット)側は、両対応に作ることができる。

 ただし、On-Die Terminationに合わせて、オンボードのターミネーションをなくしたボードでは、原理的にOn-Die Terminationを持たないデバイスはサポートできない。また、レジスタをDRAMチップに混載することは、技術的にハードルがある。そのため、DDR IIaデバイスの開発は、技術力の高いトップDRAMベンダーが有利となる。

 DDR IIaの仕様拡張が加わる前のオリジナル仕様でのDDR IIデバイスの開発は、すでに以前からDRAMベンダーがスタートしている。エルピーダメモリやSamsungなどは、今年中盤にデバイスができあがる見込みだという。このデバイスで量産に入るなら2003年前半にはDDR IIが導入可能になる。少なくとも、エルピーダメモリとSamsungの2社は、量産の計画があるようだ。

 一方、仕様の確定がずれ込んだDDR IIaに沿ったデバイスの方は、周回遅れとなる。DDR IIaデバイスの典型的なパターンでは、2003年前半にサンプル、量産開始は2003年末か2004年前半、本格的なボリュームは2005年という形になると思われる。もともとのDDR IIで立ち上げるか、DDR IIaで立ち上げるかはDRAMベンダーそれぞれの判断となる。例えば、Micronは、今年中盤に最初のデバイス(DDR II)が立ち上がるが、それは社内の開発・テスト目的だけだという。DDR IIaで本格的に立ち上げるつもりらしい。

●DDR II世代で667MHzまでをカバー

 On-Die Terminationは、現在マザーボード上にあるターミネーションを、DRAMチップ内に取り込んでしまう技術だ。これにより、現在のDDRのようにボード上にターミネーションを配置する必要がなくなり、低コストにインプリメントができるようになる。デバイスが高速になればよりOn-Die Terminationの利点が増すという。DDR667までを睨んだ仕様拡張らしい。

 DDR IIはもともとDDR400とDDR533が予定されており、DDR IIIがDDR667とDDR800になると言われていた。しかし、現在はDDR II世代にDDR667が加わっている。区分が少し変わり、DDR IIの帯域が上へ伸びたことになる。

 しかし、ローデン氏によると、DRAMアーキテクチャを考えた場合、これは当然の区分けだという。というのは、この区分の場合は、DRAMのメモリセルのスピードが同じになるからだ。

 現在のDRAMアーキテクチャは、メモリセルを高速化しないで、インターフェイスを高速化する方向へ向かっている。例えば、SDRAMではインターフェイスとメモリセルは基本的に同じ周波数で駆動されていた。これを、DDRメモリではプリフェッチ2でメモリセルへの読み書きを2つ並列に行なうことで、メモリセルの性能は変えずにインターフェイスを倍速化した。

 つまり、SDRAMでは100MHzのPC100と133MHzのPC133があり、実際には166MHzのデバイスも採ろうと思えば採ることができた。だから、プリフェッチ2のDDRでは、メモリセルが100MHzのDDR200と133MHzのDDR266、166MHzのDDR333が登場した。そして、DDR IIではプリフェッチ4で今度はメモリセルに対して4倍速化する。そのため、メモリセルが100MHzのDDR400と133MHzのDDR533、166MHzのDDR667が実現できるという理屈だ。もしDDR IIIがプリフェッチ8アーキテクチャを採るなら、DDR800、DDR1066、DDR1333になることになる。

コアSDRAMDDRDDR IIDDR III
166MHz166MHzDDR333DDR667DDR1333?
133MHzPC133DDR266DDR533DDR1066?
100MHzPC100DDR200DDR400DDR800?




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(2002年1月28日)

[Reported by 後藤 弘茂]


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