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会期:1月23日~24日(現地時間)
会場:Silicon Valley Conference Center
PCの各種プラットフォームに関する未来に関しての議論が行なわれるイベントとして、米San Joseで開催されているPlatform Conferenceも今回で6回目となる。
前回に比べて展示内容、発表数ともに若干の減少は見られるものの、今回もAMD、VIA Technologies、ALi、NVIDIAといったPC業界のおなじみの面々が参加して開催されている。本レポートではそうしたセッションのなかから、VIA TechnologiesのP4X333、KT333といった最新チップセットに関するレポートをお伝えする。
●今年中の普及はないと皆が口をそろえるDDR333だが……
多くの業界関係者はこれまでVIA TechnologiesがDDR333と呼ばれる333MHzのDDR SDRAMに真剣には取り組んでいなかったと指摘する。確かに、VIA Technologiesのロードマップには古くからDDR333に対応したチップセットは存在していたが、VIAはさほど“DDR333”というのに真剣に取り組んでいたわけではなかった。
その理由は、DDR333の実際の製品の普及が2002年終わり頃、ないしは2003年ではないかと考えられているからだ。現在メモリデバイスメーカーは0.15μmないしは0.18μmの製造プロセスルールでDRAMを生産している。
Platform Conferenceに参加していたメモリメーカーのエンジニアによれば「0.18μmにおけるDDR333の歩留まりは0に近い。0.15μmでも10%がやっとというのが実情だ」とのことで、DDR333に対応したDRAMを大量生産するのは難しく、かつ価格にはプレミアムを載せざるを得ない状況であるという。実際に、DDR333が安定してとれるようになるのは、製造プロセスルールが0.13μmに移行したあとだろうとするのがおおかたの見解であるようで、それは2002年の終わりから2003年にかけてという話であるのが実情であるようだ。
VIAのアラン・チャン氏のスライド。結局のところ、DDR333を安定して動作させるには、基板デザインも専用のものでなければ難しいようだ。基板デザインのリファレンスと言えるJEDECによるガーバーの仕様は5月に策定される |
さらに言うなら、現在リリースされているDDR333のモジュールは、JEDECで決められたガーバー(基板のデザイン)に基づいたものではない。
VIA Technologiesのテクニカルマーケティングエンジニアのアラン・チャン氏は「現在リリースされているDDR333は、DDR266のガーバーに333MHzで動作可能のDDR SDRAMを載せただけのもので、安定動作には不安が残る。5月にJEDECが策定する、DDR333用ガーバーを利用した方がよい」と発言しており、メモリモジュール側も安定しているという状況にはほど遠いのが現状であるようだ。
また、もう1つの理由として、Intelが2002年はDDR333をサポートしないと説明しているのも大きな理由であるようだ。実際、VIA、SiS、ALiのサードパーティ3社は、DDR SDRAMを普及すべくプロモーションを行なってきた。しかし、いち早くDDR SDRAMを採用したAMDのプラットフォームでも、DDR SDRAMが採用されだしたのはごく最近で、それまではほとんどがSDRAMベースのシステムだった。
しかし、今年の初めに、IntelがDDR SDRAMをサポートするIntel 845チップセットのBステップをリリースしたことで、各OEMメーカーとも真剣にDDR SDRAMという可能性を検討しだした。つまり、DDR SDRAM普及への最大のプロモーションとなったのが、“Intelのチップセットによるサポート”だったことを業界関係者はみな認めているわけだ(実際にあるチップセットベンダ自身もこのことは認めている)。
●DDR333への舵を切“らざるを得なかった”VIA Technologies
こうしたことから考えると、DDR333は時期尚早であり、実際に普及が進むのは2003年だろうというのが業界関係者の一致した見方のようだ。
ところが、VIA Technologiesは後述するようなDDR333をサポートするチップセットを2月に一挙に投入する。2月に投入するとなると、5月に決定されるDDR333のガーバーを利用したメモリモジュールはまだ出そろっていないわけで、一見すると矛盾した動きに見える。だが、VIAにとっては他に選択肢がなく、いまDDR333をやらなければいけない事情があるのだ。
その裏には、思ってもいなかったSiSの躍進という現実がある。以前は、VIAは単体チップセット、SiSは統合型チップセットと明確な棲み分けがはかられていたのだが、一昨年にSiSがSiS735で単体型チップセットに参入すると、VIAとSiSの競争は激化の一方をたどっていた。そうした中、昨年の8月にSiSが投入したのがSiS645(P4用)、そして遅れて発表されたSiS745(Athlon用)という2つのチップセットだ。いずれも、DDR333をサポートしており、VIAのP4X266/A(P4用)、KT266/A(Athlon用)の強力なライバルとなりつつある。
マザーボードメーカーにとって、ライバルメーカーとの差別化は非常に難しくなっている。そうした中で、スペック的に見劣りがするチップを採用するということは、下手をするとライバルメーカーに遅れをとる可能性があることを意味している。
実際にはDDR333がほとんど意味をなさないとしても、マザーボードのカタログにDDR333対応となっていれば、DDR266だけに対応したマザーボードよりも優れているという印象を与えてしまう可能性がある。マザーボードメーカーとしてはこうした事実をさけるために、実際に意味があるかどうかは別として、マーケティングタームとしてDDR333への対応を望んでいる。VIAとしてはマザーボードメーカーにこう言われれば、何らかの対抗手段をとらなくてはいけないわけで、それがVIAによるDDR333対応という形になって現れたわけだ。
●P4X333とKT333、さらにはKT333Aをリリース
さて、VIA TechnologiesはいくつかのDDR333チップセットを計画している。実際には以下の
◎Pentium 4用
・P4X333
・P4M333
◎Athlon XP/Duron用
・KT333
・KT333A
・KM333
という5製品を計画している。今回のPlatform Conferenceで公開されたのが、KT333だ。KT333は、現在のKT266Aの上位バージョンで、KT266AのメモリバスにDDR333対応を追加したバージョンだ。従って、これ以外の点は従来のKT266Aとほぼ同じであると考えてよい(ただしサウスはVT8233の新バージョンであるVT8233Aに変更され、Ultra ATA/133に対応する)。
このKT333は、前述のようにSiSがDDR333をすでに開始していることへの対応だ。例えば、GIGA-BYTE TechnologyやMSIなどはKT266Aベースのボードをリリースしている。これらのOEMベンダに対して、SiSはSiS745を猛烈に売り込んでいるという。
これまでVIAはSiSよりも有利な条件を提示するなどしてこれを防いできたわけだが、今後もVIAがDDR333をサポートせず、DDR266だけをサポートするというのであれば、これらのOEMベンダーがSiSになびかないという保証はない。そこで、現状のKT266Aのメモリバスの仕様を変更することで、KT333を急遽仕立てたのだ。
このKT333が“一時しのぎ”のチップセットである理由は、間をおかずKT333Aという新製品が登場することだ。KT333Aは、KT333とは全く世代が異なるチップセットになる。KT333は、AGP 4X対応、さらにノース、サウス間がVIAがV-LINK 4xと呼ぶ266MB/secのV-LINKであるのに対して、KT333AはAGP 8Xに対応しており、V-LINK 8Xで知られる533MB/secのV-LINKになっている。
これに併せてサウスもVT8233AからVT8235へ変更される。VT8235では6ポートのUSB 2.0や6チャネル出力に対応したAC'97オーディオなどの対応がはかられており、まさに次世代のソリューションと言える。実際、VIAはKT333をまもなく発表すると見られているが、KT333Aに関しても2月の末頃には発表するものと見られている。そうした点から考えても、明らかにKT333は「出さざるを得なかったチップセット」と考えるのが妥当だろう。
これに対して、P4X266/AではOEMメーカーはECSなど一部のメーカーだけで、チャネル向けにはVPSDと呼ばれるVIA自身によるマザーボード事業によりまかなわれている。このため、KT333のような必然性はないため、P4X266AのDDR333バージョンというのは存在しない。P4X333ははじめから、AGP 8X、V-LINK 8Xをサポートした仕様となっている。つまりKT333AのP4バージョンがP4X333なのだ。
なお、P4M333、KM333は、それぞれP4X333、KT333AにS3 GraphicsのZoetrope(ゾートロープ)コアを採用したバージョンとなる。Zoetropeはレンダリングエンジンのパイプラインとテクスチャユニットが2P/2Tとなり、前世代のSavage8コア(先日発表されたKM266、PN266などに採用されているグラフィックスコア、1P/1T)に比べれて、3D描画能力が大幅に強化されるグラフィックスコアになる。
先日発表されたProSavage KM266を利用したデモ。Savage8コア(Savage4の3DとSavage2000の2Dコアを採用)を内蔵し、KT266A、KT333とピン互換 | ノートPC用のP4N266。Savage8コア(Savage4の3DとSavage2000の2Dコアを採用)を内蔵している、P4M266のノートPC版 |
●2月には新製品の大攻勢で反撃をかけるVIA
VIAのマーケティングディレクター、リチャード・ブラウン氏は「2月には一挙に大量の製品を投入する」と説明しており、2月がVIAにとって大攻勢をかける時期となるのは間違いないようだ。
すでに、KT333のリリースは非常に間近とされており、月内にはアナウンスされる可能性が高い。さらに、VIAは2月20日にDDR333に関するイベントを台北で開催する。おそらくここでP4X333、KT333Aなどをリリースする可能性が高い(なお、P4M333、KM333はそれよりは若干遅れる可能性が高そうだ)。
なお、気になるP4Xシリーズが抱えるP4システムバスのライセンス問題だが、ブラウン氏によれば「なんのアップデートもない」とのことで、今でもまだ問題は解決していないとのことだ。相変わらず、この点ではVIA Technologiesが抱える課題として残されており、これこそがSiSやALiがVIAの市場を食っている大きな要因となっているだけに、早期の解決がSiSとの競争を有利に進めるための必要条件といえるだろう。
□Platform Conferenceのホームページ(英文)
http://www.platformconference.com/
(2002年1月25日)
[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]