2002 International CESレポート

Samsungなどがホームメディアサーバーを出展
~ML-R/RWドライブやBluetooth機器も展示

会期:1月7日~11日(現地時間)
会場:Las Vegas Convention Center
   Las Vegas Hilton
   Riviera Hotel
   Alexis Park Hotel


 International CESは基本的には家電向けのイベントで、展示は家電やAV機器などが非常に多いのだが、PCに関係するような機器も少なからず展示されている。本レポートではそうしたPC関連や注目の機器についてのレポートをお届けする。


●Windows XPベースのHome Media Centerを展示したSamsung

韓国SamsungのWindows XPベースのHome Media Center。インターフェイスにMicrosoftのFreestyleを利用し、リビングでテレビに接続して利用する。そういう意味では“リビングPC”だとも言える。テレビチューナーが内蔵され、MPEG-2の動画にキャプチャして保存するなど、機能自体は日本であたりまえのものであり、これにFreestyleを足しただけと言えなくはない 

 韓国のSamsungはMicrosoftがビル・ゲイツ氏の基調講演で発表したFreestyle構想の開発パートナーになるなど、PCをより使いやすくする取り組みに積極的に取り掛かっているほか、International CESの会場において“Home Media Center”の展示を行なっていた。

 このHome Media CenterはWindows XPベースPCだが、インターフェイスがFreestyleになっているため、外部から見るとセットトップボックスのように見える。しかし、Freestyleのインターフェイスを終了させると見慣れたWindows XPのインターフェイスが表示され、これは間違いなくPCだ。写真は撮影できなかったが、背面を見ると通常のPCと同じようにキーボードやIEEE 1394、Ethernetポートなどが用意されており、背面を見ている限りはほとんどPCだと言ってよい。また、外部から見ただけではわからないが、IEEE 802.11(aかbかは未定)に準拠した無線LANの機能も持っているという。

 使い方としては、リビングにおいてテレビなどに接続して利用することになる。IEEE 1394やビデオケーブルなどを利用してAV機器を接続し、動画をハードディスクに保存したり、オーディオファイルなどを保存することになる。また、クライアントとなるMiraデバイスやPCなどはIEEE 802.11の無線LAN経由で接続することになる。ユーザーはFreestyleのインターフェイスを利用して、このメディアセンター自体で動画や音楽ファイルを再生したり、無線LANやEthernet経由で接続しているクライアントからメディアセンターのハードディスクにある動画や音楽ファイルを再生することになる。今回はあくまで参考展示であり、登場時期、価格などは一切未定であるという。

 これに対して、パイオニアが展示した“Digital Library”は、Samsungのものが、どちらかと言えばPCやMiraデバイスといったPCベースのものを接続するのを意識しているのに対して、クライアントにコンシューマ機器を利用することも意識したものだ。

 Digital Libraryはハードディスクを内蔵しており、音楽、ビデオ、写真ファイル、インターネット上のコンテンツの4種類をストアすることができる。サポートされる音楽やビデオのフォーマットはMPEG-1、MPEG-2、Windows Media Video、Windows Media Audio、MP3の各フォーマットで、このDigital Libraryに無線LANなどで接続されたクライアントはネットワーク経由でこうしたファイルを再生することができる。

 実際にクライアントとなるレシーバーも展示されており、家電を接続することを前提にしていることを伺わせる。内部のソフトウェアにはMediabolic ONE( http://www.mediabolic.com/ )のConvergence Platformを利用しているという。Mediabolic ONEのホームページによる説明によれば、Mediabolic ONE Convergence PlatformはPCからCDリストを編集できたり、Webブラウザによりリモートコントロールができたりと、PCとの親和性も考えられているという。

 PCやPCライクなデバイスの接続を前提とし、テレビチューナー内蔵PCにFreestyleを足したようなコンセプトであるSamsungのHome Media Center、家電を接続することを中心に考えられ、家電のネットワーク化の核となるパイオニアのDigital Libraryと、それぞれ特徴があっておもしろい。

 ポイントとなるのはやはり核としてPCがセンターにくるのか、それとも家電が中心にくるのかというところだろう。この考え方の違いによりそれぞれ毛色の違った製品になりそうだ。日本ではノートパソコンが増えつつあり、デスクトップPCのシェアは減る一方だというが、もしかすると数年後のデスクトップPCの姿はこうしたテレビにつなぐメディアセンターということになっているのかもしれない。

Home Media Centerの用途を説明する図。クライアントとしては、Windows CE .NETやPCなどをメインに考えているようだ パイオニアのDigital Libraryはクライアントとしてコンシューマ機器も意識した使い勝手を実現する。ソフトウェアとしてはMediabolic ONE Convergence Platformを利用する パイオニアのDigital Libraryの画面。Mediabolic ONE Convergence Platformは、MicrosoftのFreestyleと同じように、ユーザーフレンドリーなユーザーインターフェイスを提供する


●懐かしいmpmanも復活したDataPlay対応ポータブルオーディオプレイヤー

 昨年のInternational CESではDataPlayと呼ばれるCD-R/RWライクなデジタルメディアが発表され、それなりの話題を呼んでいたが、それから一年たち実際にDataPlayをサポートした実製品が展示されていた。それが、Evolution TechnologyとMTVによる“portable music player”で、500MBのDataPlayメディアにMP3、WMA、AAC、QDesign( http://www.qdesign.com/ )という会社が推進するQDXフォーマットの音楽ファイルをUSB 1.1ケーブル経由で転送して利用できる。

 また、シリコンオーディオプレイヤー創生期にポータブルMP3プレイヤーをいち早く出荷したことで一躍有名になったmpmanも、DataPlay対応プレイヤーであるMP-D200を展示していた。こちらも同じように、MP3、WMA、AAC、QDXをサポートしており500MBのDataPlayにUSBケーブル経由でデータを転送できる。単3電池2本で駆動され、5時間の駆動が可能であるという。

 なお、IMATIONのブースではDataPlayのメディアに関する展示が行なわれた。昨年に引き続きあらかじめデータが書き込まれたリードオンリーのDataPlayに関する展示も行なわれた。IMATIONの展示員によれば、あくまでこれはデモであり、実際にこうしたDataPlayが発売されるかどうかは、レーベル次第であるという。MDですら成功しなかったこうしたレーベルによるリードオンリーメディアの供給だが、果たしてDataPlayはうまくいくのだろうか?

Evolution TechnologyとMTVによる“portable music player”。価格、登場時期などは未定 なつかしのmpmanによるMP-D200

IMATIONブースに展示されていたDataPlayのメディア。市場価格などはまだ明らかにはなっていない リードオンリーメディアの例


●TIMEX、GPSにより速度や移動距離などを計測するスポーツ向け腕時計を展示

TIMEXのIRONMAN。200ドル以下と比較的安価なのが特徴。4月から販売が開始される

 時計メーカーのTIMEXは、無線で接続されたGPSユニットから位置情報を受信することで、速度や移動距離などを計測できる腕時計“IRONMAN”を展示している。IRONMANは、2つのユニットから構成されていて、1つはGPSレシーバー、もう1つが腕時計になっている。

 GPSユニットは衛星から現在の位置情報を受信し、デジタルFMを利用してその情報を腕時計に送信する。腕時計は受信した位置情報により、移動時間を計算して、移動速度を表示したり、移動した距離などを割り出してくれる。例えば、サイクリングしている時に、その速度を計測したり、あるいは移動距離を記録したりという用途に使えるわけだ。

 IRONMANは100ラップが計測できるバージョンが定価225ドル、50ラップ版が205ドルだが、市場価格では100ラップ版が180ドル程度になるそうで、それぞれ4月と5月に発売が開始される。PCに接続してデータを転送するなどの機能は用意されていないが、価格は意外と安いので、サイクリングのお供などにすると楽しいかもしれない。


●いくつかの製品が展示されていたBluetooth対応製品

 最近ではすっかりIEEE 802.11bに押され気味のBluetoothだが、もともとコンシューマ向けも意識して作られているだけあり、いくつかのコンシューマ向け機器がCESでも展示されていた。

 モトローラはBluetoothに対応したヘッドセットを展示していた。このヘッドセットはバッテリにBluetoothのモジュールを内蔵しているモトローラの携帯電話と組み合わせて利用することができ、ハンズフリーキットとして利用できるという。価格は199ドルで、米国では今月より出荷が開始されるという。

 3e Technologies InternationalはBluetoothに対応した家庭用の煙報知器などを展示していた。この煙報知器はBluetoothモジュールを内蔵しており、Bluetoothの機能を内蔵したホームゲートウェイを経由してPCにデータを送ることが可能となっている。会場では、PCを利用した火災監視システムがデモされており、煙報知器にスプレーをかけて報知器を作動させ、PCの監視ソフトウェアでアラートがでる様子がデモされた。

 余談になるが、BluetoothのブースではAddvalue Communicationsが、PlayStation 2用のワイヤレスコントローラを展示していた。これまでも、赤外線通信を利用したものはリリースされていたが、無線を利用したものは珍しい。無線の周波数は902~928MHzだが、現在2.4GHz帯のものが開発中であるという。ただ、別にBluetoothではないそうで、なぜBluetoothのブースに展示されていたのかは、謎だ。


3e Technologies Internationalが展示したBluetoothベースのワイヤレス煙探知機を利用したシステム。煙探知機に煙をかけると、PC上に警告が表示される。日本の集合住宅など、ケーブルをはわすことができないような家では便利なソリューションとなる

モトローラが展示したBluetooth対応ヘッドセット。ハンズフリーキットとしても利用できる Addvalue Communicationsが展示したPlayStation 2用無線コントローラ。赤外線用とは異なり、間にものがあっても通信可能で便利だ


●TDKは2GBの容量を持つMLドライブとメディアの製品版を発表

 TDKは、Calimetricsと共同で開発し、昨年のInternational CESで発表したCD-R/RWの記録密度を上げて容量を2GBとしたML(MultiLevel)に対応したML-R/RWドライブを発表。実際にブースで展示し、データを書き込むデモを行なった。MLはCD-R/RWの記録bitの情報量を3倍とすることによりデータ容量を3倍の2GBとしたもので、現在のCD-R/RWに近いコストで大容量が実現できる技術だ。

 TDKではこのMLを書き込み型DVDとCD-RWの間を埋めるものと位置づけており、MLに対応したメディアであるML-R、ML-RWも併せて投入している。メディアのストリートプライスはML-Rが1.99ドル(日本円で約260円)、ML-RWが2.99ドル(日本円で約390円)となり、CD-R/RWよりは高いが、DVD-R/RWよりは安価という価格設定になっている。ドライブの価格は、展示員によると200ドル前後(日本円で約26,000円前後)になるという。

 展示会場にはML-R/RWに対応した内蔵ドライブの他、IEEE 1394に対応した外付けドライブが展示されたほか、ML-R/RWの再生に対応したオーディオMLプレイヤーである“MOJO ML”のモックアップが展示された。MOJO MLは12cm、8cm、6cmというMLディスクに対応しており、それぞれMLに記憶したオーディオファイルを再生することができるようになるという。なお、登場時期、価格などについては未定であるということだ。

TDKのML-R/RWドライブ。書き込み36倍、書き換え24倍、読み出し40倍の速度となっている。内蔵、USB、IEEE 1394のものが展示されていた

TDKのML-R/RWディスクに対応したCDオーディオプレイヤーのモックアップ。12cm、8cm、6cm用の3製品が用意されており、6cm用のメディアも発売されることになるという


●COMDEXとは異なり大挙して押し寄せた日本からの来場者

 さて、今回のInternational CESでは、日本からの来場者の多さに驚かされた。というのも、COMDEX Fallでは一説によれば前年比95%減と大幅に減少した日本人来場者だが、今回のCESでは筆者の感想レベルで申し訳ないが、明らかに昨年より増加している。COMDEX/Fallでは、日本人に会うのも珍しく、日本の来場者はほとんどいない状態で、非常に少なかった日本人の説明員にも英語で話しかけられるような状況だったのだが、International CESでは日本人の来場者は非常に多く、そこら中で日本語が飛び交っていた。

 もともと家電の分野では日本企業が強い分野であるので、ある意味当然と言えば当然だが、これには受け入れる方のラスベガスの関係者も驚いているようで、タクシーの運転手に話を聞いてみると「COMDEXでは全然日本人を乗せなかったが、CESでは一杯のせてるよ。どうして日本人はCOMDEXにはぜんぜんこなかったのに、CESではこんなに増えたんだ?」と逆取材をうけるほどだった(ちなみに、COMDEX Fallでも韓国や中国からの来場者も減っていたが、日本からの来場者ほど極端には減っていなかった)。

 その理由については、「9月にニューヨークで発生した連続テロ事件以降凍結されていた日本企業の出張規制が解除されたからだ」とか、「COMDEXに行けなかった人が、こっちにきてるんだろう」とか、「日本メーカーはCOMDEXに興味が無くなったからだ」など、諸説入り乱れていたが、どちらにせよ、極端な傾向であることには間違いない。とにかく現地の人は首を傾げていたのが印象的だった。


□2002 International CESのホームページ(英文)
http://www.cesweb.org/

(2002年1月11日)

[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]


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