PCで4K&HDRなUltra HD Blu-rayを観てみよう

シン・ゴジも出たことだしパイオニア「BDR-S11J」シリーズでUltra HD Blu-rayが観られるPCを作ってみる

4K対応テレビやディスプレイが登場してから数年が経ち、お手頃価格の製品が増えてきた。PCにしても、最新のGPUは4K出力は当たり前。ただ、PCでの4Kのメリットとなると、超高解像度ならではの作業空間の広さや、写真やテキストの美しさなどにとどまっていたのが実情だ。

そこにきて登場したのがパイオニアの最新BDドライブ、「BDR-S11J」シリーズだ。ただのBlu-ray Discドライブではない。Ultra HD Blu-rayと呼ばれる新規格に対応したドライブなのである。そう、ついに4K/HDRの超美麗な最新映像ソフトをPCで楽しめる時がやってきたのた。

今回は「BDR-S11J」シリーズを使って、Ultra HD Blu-rayを再生できる自作PCを組んでみた

Ultra HD Blu-rayに対応したPC向けドライブがついに登場

前編記事はこちら

身近になった4K環境でUltra HD Blu-rayを楽しもう

最近は4Kディスプレイも低価格化が進んだ。特に安いものでは、50インチの4Kディスプレイがなんと5万円台で購入できる。価格的にグッと身近になった4KのPC環境を検討中の方も多いだろう。

「PCで4K」の利点は、なんといっても表示できる情報量が多いこと。Webブラウザーと写真を同時に開いて参照しつつ、さらに横にワープロを開いて資料を作成し、ついでに空きスペースでネット動画をながら観…………なんてことがひとつの画面で、いちいち最前面のウィンドウを切り換えずにできるのだ。

また、マルチメディア環境においても4K環境向けのコンテンツが揃ってきている。最新スマートフォンでは4K映像の撮影が可能なこともあり、YouTubeなどでも4K対応コンテンツが充実してきている。

しかし、「4Kのキラーコンテンツ」といえるのは、間違いなくUltra HD Blu-rayソフトだ。そもそもUltra HD Blu-rayとは何かといえば、これまでのBlu-ray Discをしのぐ画質を誇る次世代映像ディスク。通常のBlu-rayソフトの最大解像度はフルHD(2K:1,920×1,080ドット)だが、Ultra HD Blu-rayはその4倍の解像度となる4K(3,840×2,160ドット)に対応している。さらに、HDRによるダイナミックな明度表現やBT.2020の広色域再現もウリと言える。この記事が掲載される頃にはリリースされているはずの「シン・ゴジラ」など、注目タイトルもどんどん登場している。

そんなさなか発売されたのが、パイオニアのUltra HD Blu-ray対応光学ディスクドライブ、「BDR-S11J」シリーズだ。

「BDR-S11J-X」(左)と「BDR-S11J-BK」

この登場タイミングは、IntelのPC向けプラットフォーム刷新に合わせたもの。最新のCPUリリースと、最先端の4Kコンテンツ対応が重なり、まさに今、PCの自作しどきとも言えるだろう。これからPCを自作するなら、是が非でもBDR-S11Jを使ってUltra HD Blu-ray対応のPCを自作してみたいではないか。いや、するのだ! ……ということで、4KでUltta HD Blu-ray対応のPCを1台組んでみた。

ただ、Ultra HD Blu-rayをPCで視聴するには、現状ではPCスペック上のハードルが高くなっている。そのあたりにも注意を払いつつ、パーツごとに解説していこう。

世界初のUltra HD Blu-ray対応ドライブは相も変わらずパイオニア印の高品質

PCを組む前に、まず「BDR-S11J」シリーズについて紹介していこう。「BDR-S11J」シリーズは、Ultra HD Blu-ray再生に対応した世界初のPC向け内蔵光学ドライブだ。Ultra HD Blu-rayの再生専用機はすでにいくつか市場に出ているが、PC向けのドライブが製品化したのは世界最速。光学ドライブの分野で常に先をいくパイオニアならではのスピード感だ。

シリーズラインナップとしては、スタンダードモデルの「BDR-S11J-BK」と、上位モデルの「BDR-S11J-X」が存在する。対応メディアや記録速度など基本的なスペックは同一だが、BDR-S11J-Xはボディ各所が制振・静音・記録の安定化などのために徹底的にチューニングされており、全身ブラックのボディもあわせて非常にプレミアムなモデルとなっている。

ドライブ自体の品質は、定評のあるパイオニアのハイエンドドライブの特長を余すところなく継承。

ハードウェア面では、ディスクの回転を安定化し記録精度や静音性をアップさせる「高速回転対応クランバー」や「ディスク共振スタビライザー」、静音性と防塵性を両立する各所の防塵・防音パッド、内部のエアフロー最適化など、長年のノウハウが結集。

内部のエアフローを調整し冷却性と静音性をアップさせるつくり。6角形のハニカム部分もノイズ低減に貢献

ディスクトレイの形状もディスク回転の安定化や静音性アップのため

各部はシーリングされ、ゴミの侵入を防ぎつつ、やはり静音性も担保

BDR-S11J-X(左)はディスクトレイも含めボディ全体が黒色で塗装されている

ソフトウェア面でも、挿入された記録ディスクに最適な書き込み速度を判断する「BD-R最適倍速記録機能」や、サポート外の低品質なディスクでも安定記録する「最適記録ストラテジー予測アルゴリズム」、省電力モードや静音機能など様々なパラメータを設定しドライブに保存できる「Pioneer BD Drive Utility」などを完備。

パイオニアのドライブに付属するPioneer BD Drive Utility。光学ドライブとしてはめずらしく、こまやかな設定を行なうことができる。ちなみに、後述の「PureRead 4+」も含め、設定項目はドライブ内のメモリに保存されるので、PCを入れ替えてもお気に入りの設定をそのまま利用できる

BDR-S11J-X専用機能となるのが、オーディオCDチェック機能。自動的にオーディオCDの読み出し品質をチェックしてくれる

また、ファンのあいだで定番の機能と言えば、キズや汚れがついたり歪んだりした音楽CDを、データ訂正などで音質を劣化させることなく「原音」で再生やリッピングができる「PureRead」機能。「BDR-S11Jシリーズ」では、このPureReadが「PureRead 4+」にアップデートされ、ディスクを読み込む際のアルゴリズムが根本的に進化した。詳細は不明ながら、パイオニアの担当者がPureRead4の大まかな仕組みを答えてくれた。

「オーディオCD読み込み中に起きるエラー原因は様々なので、読み込みのための設定は複数用意してあります。これまでは、エラーが起きる場所に適した設定を一つ選びだしてエラー訂正していましたが、1つの設定ではエラー訂正しきれずに数か所エラーが残ってしまうことがありました。そこで、PureRead4は複数の設定を同時に使用してエラー訂正するようにしました。「三人寄れば文殊の知恵」ということわざの通り、1つの設定では訂正しきれなくても複数の設定を同時に使用することで、従来訂正できなかったエラーも訂正出来るようにしました」とのことだ。

ちなみにこのPureRead、誤解されがちなのだが、「限られたOSやアプリケーションでしか使えない」ということはまったくなく、「PureRead対応ドライブで音楽CDを読む」場合なら必ず利用できる。これは、PC側での処理が一切介在せず、すべての読み込み&エラー訂正処理をドライブ本体のプロセッサーとメモリ内で行っているためだ。

オーディオCDの読み出し時にPureRead4+の効き具合(データのエラーの発生頻度)をリアルタイムにチェックできる。読み出しエラーが発生するとError Indicatorのメーターが上がり、PureRead4+が動作していることが分かる

4K Ultra HD Blu-ray 対応自作PCを検討!

では早速、「BDR-S11J-BK」を使った4K Ultra HD Blu-ray対応PCの自作プランを検討してみよう。

CPUは第7世代のCore i7かi5をチョイス

まずCPUだが、デスクトップ向けに販売されているIntelの第7世代Core i7/i5プロセッサが必要だ。Ultra HD Blu-rayの再生環境には、これらCPUに搭載される「Intel SGX」という機能が必要になるのに加え、CPUの内蔵GPUがHDCP2.2での出力に対応する必要があるからだ。

Ultra HD Blu-rayを再生するだけなら、実売価格は2万円台前半と最安の「インテル Core i5-7400 プロセッサー」でも性能的にはまったく問題がない。ヘビーなPCゲームをプレイするなど、よりCPUパワーが必要な場合はより上位のCPUを検討してもよいだろう。

今回編集部でチョイスしたのはCore i5-7500

マザーボードはIntel200チップセット。SGX対応は要確認

次にマザーボードだが、Kaby LakeプラットフォームことIntel200シリーズチップセットのものが必須だ。コンシューマー向けとしては、Z270とH270が候補となるだろう。また、外部GPU出力としてHDCP2.2/HDMI2.0に対応するHDMIポートが必要となる。

注意すべきは、Intel SGX機能を利用できるかどうか。現在のところUEFI(BIOS)でこの機能を有効にできない、もしくは項目自体がないものや、ドライバやファームウェアが未対応のものもある。この点については、メーカーのWebサイトを見てもはっきりと明示してあるメーカーも少ないため、今後の改善に期待したいところだ。Ultra HD Blu-rayを使いたいのなら、購入する前に、メーカーのWebサイトでほしいマザーボードの仕様を見て、Intel SGXの機能を有効にできるか確認しておく必要がある。もしWebサイトを見ても分からないのであればメーカーに問い合わせたほうがよいだろう。

ちなみにメモリー(RAM)は、6GB以上が必要となるが、昨今の自作PCではそれほど要求の高いスペックではないだろう。

内蔵GPUでHDCP2.2/HDMI 2.0のHDMI出力に対応する必要がある

今回検証に利用したのは、ギガバイトの「GA-Z270X Gaming 9」。BDR-S11Jの開発時の検証にも利用された、いわばリファレンス的ボードとなっている

ディスプレイはHDCP2.2/HDMI2.0対応ならOK

ディスプレイは(当然だが)4K対応ディスプレイを用意しよう。PC用であれリビングに置くような大型テレビであれ、HDMI入力がHDCP2.2/HDMI2.0に対応していれば問題はない。

また、Ultra HD Blu-rayは広色域のBT.2020規格やHDRに対応しているため、ディスプレイ側がHDRに対応してれば通常のディスプレイよりも鮮やかな映像が楽しめるのだが、これらに対応するディスプレイはPC用としては現状ほぼないと言ってよい。

ただ、BT.2020やHDR非対応のディスプレイでもUltra HD Blu-rayは問題なく再生はできる。今後の製品に期待したいところだ。また、PC用のディスプレイではなく、最新の液晶テレビではこれらの機能に対応している製品は多い。そのようなテレビをディスプレイとして利用する場合には鮮やかな映像を堪能することもできるだろう。

4Kテレビ製品はHDRに対応するものが多い。PC向けディスプレイのHDR対応に期待したい

OSはWindows 10のみ。外部GPU経由の再生は現状では不可

Ultra HD Blu-rayの再生は、Windows 10のみ対応。さすがに今からこれ以外のOSを購入する人もいないだろうが、一応留意しておこう。

注意が必要なのがビデオカードの利用だ。現在のところ、Ultra HD Blu-rayの再生をビデオカード経由で行なうことはできない。これは、CPUとグラフィックス機能に密接にかかわるIntel SGX機能の問題だ。今後、再生ソフトを開発するCyberLInkとGPUベンダーのあいだで改善が模索されるとのことなので、早期の対応を期待したい。

総じて言えば、Ultra HD Blu-rayの再生環境をPC上で実現するためのハードルは、けして低いものではない。それでも、正しい知識を事前に仕入れておけば、その環境を揃えることは難しくはない。上記のポイントを押さえてパーツを選んでみてほしい。

Ultra HD Blu-rayを再生できる自作PCを作ってみる

というわけで、上記のパーツを利用して実際に自作PCを1台組んでみた。ちなみに、ケースと電源は使いまわしである。

BDR-S11J-BKを組み込んだ自作PC

フロントドア付きのケースなので再生時の静音性もアップするだろう

ディスプレイとの接続はHDMIで行う。DisplayPortからの出力は対応が謳われておらず、実際、今回の環境でもUltra HD Blu-rayを再生することはできなかった。

OSとしてWindows 10のインストールが終わったら、とりあえずUEFI(BIOS)設定画面を立ち上げ、SGXの項目を確認しておこう。対応するマザーボードなら、どこかにSGXの項目があるはずだ(格納場所はまちまちなので探してみよう)。設定項目としては「Software Controlled」「Enabled」「Disabled」の3つの選択肢がある。本来は「Software Controlled」で問題ないはずだが、「Enabled」にしないと再生ソフトがうまく動かない場合があるようだ。

また、マザーボードによってはBIOSを最新版にアップデートしないとSGXの項目が出てこない場合がある。スペック上は対応しているはずなのに項目がない……という場合は、マザーボードーメーカーのWebサイトで最新BIOSがリリースされていないか確認してみよう。

GA-Z270X Gaming 9の例

次にドライバをインストールしていく。マザーボードメーカーのWebサイトに接続し、最新のドライバをダウンロードしてインストールしよう。内蔵GPUのドライバは必須で、念のためチップセットやオーディオまわりのドライバも入れておく。今回使用した「GA-Z270X Gaming 9」の場合、必ずインストールしておきたいのが「HDMI 2.0 FW Update Tool」だ。このアプリケーションをインストールしければUltra HD Blu-rayを再生できないようなので、気を付けてほしい。

最後にUltra HD Blu-rayの再生ソフトをインストールする、今回は光学ドライブに付属しているメディアから、CyberLinkのPowerDVD 14をインストールした。これはパイオニアドライブに添付される特別版なので、CyberLinkのWebサイトなどから同じバージョンのPowerDVDを購入しても、Ultra HD Blu-rayは再生できないので注意しよう。

これで準備は完了……と言いたいが、本当にきちんと再生可能な環境が整っているのかを確認しておくことにする。パイオニアのBDR-S11Jの製品情報サイトには、UHDBDアドバイザーツールというアプリケーションが用意されており、実行するとUltra HD Blu-rayの再生環境が整っているのかどうかを確認することができる。

パイオニアが用意したUHDBDアドバイザーツールを使えば、Ultra HD Blu-rayの再生環境に問題がないか確認することができる

感動の高精細映像! やっぱり4KディスプレイならUltra HD Blu-rayで映像を楽しみたい

それでは実際にUltra HD Blu-rayを再生してみよう。初回再生時にはSGX関連のソフトウェアをインストールする必要があるかもしれないが、画面に表示されるダイアログに従えば問題なく進める。

再生ソフトとしては「宮古島 〜癒しのビーチ〜【Ultra HD Blu-ray(4K HDR) + Blu-ray Disc】」を用意した
©VICOM INC./Sony PCL Inc.

実際にPCで4K Ultra HD Blu-rayを再生すると、画質はもちろんすばらしく、情報量が多い画面でも、ディテール不足やエンコード処理の限界によるブロックノイズはほとんど見られない。27インチの4K ディスプレイで観ると、大画面のダイナミックさはないものの、ドットピッチが小さいおかげで非常に精細感が感じられる。50型パネルを搭載した東芝製液晶テレビに接続して再生を行なってみると、さすがに大画面の迫力は小型ディスプレイとは比較にならない。HDR対応ディスプレイなら、さらに色鮮やかな広色域を体験できる。

今回の自作PCはミドルタワー型ケースを用いており、ビデオカードもなくエアフローにも余裕があるため、ケースファンも最小限でかなり静音なPCとなった。これなら、PCの動作音に悩まされることなく映画などに没頭できるだろう。電源も使用状況によってはファンレス動作するので、さらにCPUファンなどを静音のものにすれば、もっと静かな環境を構築できるはずだ。

ノイズのない美麗な映像は大画面テレビだけでなくPCのディスプレイでも味わえる。テレビと違って近くで見るPC用ディスプレイでは、高精細な画面を近くで堪能できるだろう
©VICOM INC./Sony PCL Inc.

HDR非対応ディスプレイでも再生は可能

Ultra HD Blu-rayで提供される映画などのコンテンツも増えており、今後も人気作のUltra HD Blu-ray化が進んでいくだろう。個人的に楽しみなのはやはり「シン・ゴジラ」だ。超高画質でゴジラが暴れまわる様を見られると思うと、今からワクワクしてくる。

現在はKaby Lakeの登場によるプラットフォーム一新など、PC自作にはうってつけの時期だ。もし新プラットフォームで自作を検討しているならば、是非BDR-S11Jを用いてUltra HD Blu-ray対応環境を構築し、大画面で味わう高精細な映像を堪能してもらいたい。

また、外付けのUltra HD Blu-ray対応ドライブ「BDR-XD06J-UHD」も発売中だ。内蔵ドライブが利用できないノートPCでも利用できる外付けドライブとなっているが、1万5千円前後と非常に手頃な価格なのがうれしい。ノートPCももちろんKaby Lakeプラットフォーム対応の最新機種である必要があり、自作PC以上に動作環境のハードルが高いとは思うが、UHDBDアドバイザーツールを使って運良く動作対象ノートPCだったなら、このドライブを使ってUltra HD Blu-rayを観ないと損!である。

外付けコンパクトドライブの「BDR-XD06J-UHD」。値段が安く、対応PCがあるなら非常にお得

クラムシェル型のドライブとなっている。USBバスパワーでも動作可能