A3ビジネスインクジェットプリンター・複合機「MFC-J6973CDW」をオフィスに導入!

 ライターとして文章を書くことを仕事にしている筆者の小さなオフィスでは、原稿をデジタルでやりとりしているとはいえ、やはり紙に印刷したりスキャンしたりできるプリンターや複合機というのは必須なのである。前回は、ビジネスプリンター・複合機について、インクジェットとモノクロレーザー各方式の特徴や、用途・業種ごとの最適モデルを解説したわけだけれど、どれが筆者のオフィスに向いているかと問われれば、迷わずA3対応のビジネスインクジェット「MFC-J6973CDW」と答えるだろう。

 ということで、筆者のオフィスで実際に導入してみた「MFC-J6973CDW」の使い勝手はどんなものなのか、紹介していきたいと思う。

A3フル対応、高いコストパフォーマンスを実現するMFC-J6973CDW

 まずは、「MFC-J6973CDW」という機種について改めて紹介しておきたい。

 MFC-J6973CDWは、A3サイズにも対応するコンパクトなインクジェット方式のカラー複合機だ。コピー、プリント、スキャン、ファクス機能の全てをA3サイズで利用することができる。プリント機能とスキャン機能を組み合わせたカラーコピーや、有線LAN・無線LAN接続によるネットワーク上の複数端末での使用、それに加えて後述するクラウドサービスとの連携なども可能となっている。タッチ対応のカラーディスプレイでほぼ全ての操作を手早く行えるのもうれしいポイントだ。

 用紙トレイは2段で、1段当たり250枚まで収納しておける。1枚だけセット可能な、封筒や厚紙にも対応する手差しトレイもあり、合計すると最大給紙枚数は501枚。業務上は一度に大量印刷するような場面もあるかもしれないが、そういった時でも用紙補充の手間が最小限で済む。

 4色のインクカートリッジについても、標準に比べてカラーは2倍、ブラックは4倍の大容量版が用意されており、大量印刷への対応はぬかりない。

インクカートリッジは標準容量のもの以外に、2倍・4倍のものがオプションで用意されている

 また、ブラザーのプリンター・複合機において忘れてはならない、メンテナンスの容易さ。MFC-J6973CDWはインクジェットということで、主なメンテナンス作業は消耗品であるインクカートリッジの交換になる。正面向かって右側のカバーを手前に倒すと、インクカートリッジの収納部があり、カートリッジの挿入・取り出しがそれぞれワンタッチで簡単に行える。

 気になる印刷速度は、A4カラーが約20ipm、A4モノクロが約22ipm。最初の1ページ目の印刷にかかるファーストプリントアウトタイムはA4カラーが約9.5秒、A4モノクロが約9秒で、自動両面プリント機能も利用できるため、速度面でも手間の面でも不満に感じるところはないだろう。スキャン機能はA4カラーが最速3.5秒、A4モノクロが最速3.4秒とこれもやはり高速。両面同時スキャン機能を備え、A4の表裏をスキャンする場合は最速4.3秒だ。大量のスキャンが必要な業務でも、効率良くこなせることは間違いない。

ファーストプリントアウトタイムはA4カラー、モノクロともに9秒ほどと高速

 本体の実勢価格は4万円台前半(編集部調べ)で、インクのランニングコストはカラーで約6.1円/枚、モノクロで約1.4円/枚。プリント耐久性能は10万枚(片面印刷時)となっている。これは、毎日欠かさず(休日返上で)100枚プリントしたとしても、3年近く稼働する計算だ。中小企業にとって導入も、維持もしやすいリーズナブルなコストを実現しているのではないだろうか。

 ちなみに、旧モデルであるMFC-J6970CDWとは型番の数字下1桁だけが変わっただけではあるものの、今回のMFC-J6973CDWではそこから細かい点でいくつか改善している。ファーストプリントアウトタイムが高速化したのに加え、カラープリントのコストを約0.2円抑えている。

 また、フロントパネル部をマットな表面処理にすることで指紋を目立たなくし、ハードウェアキーは印字も加えてバックライト非点灯時にも見えるようにしたことで、キーをしっかり認識して操作しやすくなった。小さな変更点ではあるが、ユーザーニーズに応える進化と言えるだろう。

小さい事務所でも、大きなA3サイズフル対応が必須となる筆者の業務

 さて、話を戻して導入先となる筆者のオフィスについて。弊社では主に平日(まれに土日・祝日も)、スタッフ数名が黙々と原稿書きに勤しんでいる。その多くはWeb媒体への寄稿だが、書籍だったり、ほかの紙媒体だったり、動画ナレーションだったり、執筆以外の仕事もあったりする。基本的にPCのキーボードをひたすら叩いて原稿を書き、デジタルデータのまま納品する、という仕事だ。だから、普段から頻繁にプリントすることはない、と思いきや、実は全然そうではなかったりする。

黙々と仕事する弊社スタッフ

 なぜなら、PCで書いた原稿(モノクロ)のチェックや、書籍のDTPデータ(カラー)の試し刷りなどでプリンターを使う必要がどうしても出てくるからだ。ディスプレイ上だけで原稿をチェックしていると、どうしても落ち着いて見ることができず、細かいところのミスを見落としてしまうことがよくある。これは出版社の編集業務でも同じだと思う。

 例えば、書籍や雑誌などのDTPデータは見開きの状態で印刷して確認したい。であれば、A4サイズまでしか対応していないプリンターでは能力不足。A3対応で見開きページを原寸か、それに近いサイズで印刷でき、当然ながらカラーにも対応している必要がある。

書籍のDTPデータを印刷。見開きを原寸で出力するには最低でもA3に対応している必要がある

 といいつつも、できる限り小さな機材であることも必須だ。わずか10畳程度のワンルームである弊社オフィスは、スタッフの机5つと打ち合わせ用テーブルだけでもう一杯一杯。A3対応であってもできるだけ置き場所に困らないコンパクトなものでなければ導入は現実的に不可能なのだ。リースで導入するような大型の業務用レーザーカラー複合機は当然ながら不可。スペースだけでなく、コスト面でも見合わない。

 そして、会社として運営していくには、決算書類やその他さまざまな資料を取り扱う必要もある。A4サイズに収まるものが多いとはいえ、それより大きいものも存在するし、それらをプリントしたり、小さいものを大きくコピーして閲覧するのもよくあることだ。税理士とやりとりする資料についても、細かいデータはA3サイズにしたい時もある。

 用途がプリントだけであれば、複合機ではなくカラープリンターでも十分かもしれない。ところが、小さな会社というのは経理部門とか人事部門とかも一緒くたである。というか、それぞれに専属スタッフなど雇える余裕はないので、主に弊社社長が1人でそれらの仕事も兼務している。したがって、先述したような原稿のプリントだけでなく、見積書、請求書、その他伝票のプリントやコピー、スキャンという仕事が発生することも考えておかなければならない。

 また、筆者も含めスタッフ全員が毎月交通費などの経費精算手続きを行う際に、領収証をスキャンするという用途もある。具体的に言うと、原稿執筆の際にかかった必要経費を納品先となる相手方への請求時の金額に含めるような場合は、その時の領収証の原本も相手方に渡してしまうことになるから、社内精算用の書類として手元には別途スキャンデータで残しておくのである。

領収証をスキャンしてデータで保存しておくのは毎月のルーチン

 最近ではモバイルスキャナーや、スマートフォンのスキャナーアプリを使って撮影しデータとして残す、という方法もアリかもしれないが、1枚1枚をスキャン、撮影するのはかなり手間である。その点、複合機のフラットベッドを使えば、複数枚の領収書なども並べて一度にスキャンできるし、なにより簡単だ。

 一方、複合機のもう1つのメイン機能であるファクスについては、プリントとスキャンよりも使用頻度はやや少なく、筆者のオフィスではそれほど重視していない点かもしれない。とはいっても、時には他の企業からリリースやイベント等の案内がファクスで届いたりすることはあるし、イベントや発表会の取材はファクスからの申し込みが必要だったりするケースもあるから、絶対に必要だ。

ファクスは頻繁には使わないが、取材の申し込みなどで必要だ

スピーディすぎて、仕事中に一息つけない!?

 そういった筆者のオフィスや業務の実情を踏まえたうえで、MFC-J6973CDWがどんな風に活躍してくれているかをご紹介したい。

 プリントについては、高速な印刷速度の恩恵をバッチリ享受している。A4サイズにびっしり書き込まれたモノクロのテキスト原稿は、最初の1枚が実質20秒程度で出力され、2ページ目はそのわずか数秒後に出てくる。とりあえず初稿を書き終えた実感に浸っているヒマもないほどだ。本当はもう少し休ませてほしいのだが……。

 書籍など紙媒体のDTPデータを見開きで印刷する際はA3カラー出力を活用しており、最初の1ページ目がだいたい40秒、2ページ目は30秒程度で完了する。A4モノクロに比べて倍の面積で、しかもカラーであることを考えれば、このスピードは優秀すぎる。

 200ページ弱(見開きで約100ページ)ほどの書籍1冊分を丸ごとプリントするとさすがに時間はかかるけれど、プリントできたものから順次文字校正していく流れになるので、印刷ペースの方が明らかに速く、筆者の実作業が待たされることはない。本当は一息つきたいのに……。

 スキャンも驚くほど高速で、A4サイズのスキャン処理(300dpi、カラー)は15秒程度で完了してしまう。スキャンデータの保存先は、本体に挿入したUSBメモリやSDカード、もしくはあらかじめ設定したネットワーク上の共有フォルダなどに設定できる。

本体正面向かって左側に設けられたメディアポート類。ここにUSBストレージやSDカードなどを接続できる

仕事のボトルネックが見事に解消する、クラウドサービスとの連携機能

 筆者オフィスでは、オンラインストレージをはじめとするクラウドサービスとの連携機能を利用して、業務でよく使っているDropboxに保管している。

 ほかにはGoogle ドライブ、OneDrive、EvernoteやBoxといったサービスとも連携が可能だ。使い方としては、いったんブラザーの専用サイトにアクセスして指定したオンラインサービスのアカウントと連携するためのIDを発行し、それを複合機本体に登録するという手順。つまり、複合機本体が直接オンラインサービスと連携するのではなく、ブラザーのシステムを経由して連携するような形をとっている。

 ちょっと回りくどい仕組みに思われてしまうかもしれないが、このような連携方法をとることで、新しいオンラインストレージサービスが登場した時、あるいは既存のオンラインサービスの仕様が変更された場合でも、ブラザーのシステム側だけで対処できるという利点がある。世の中のオンラインサービスは機能が追加されたり、仕様が変わったりすることが珍しくないので、現実的かつ合理的な仕組みと言える。

ディスプレイ上でのサービスの表示順をカスタマイズできるのが、なにげに便利

 ところでこのスキャン時のオンラインストレージとの連携機能には限らないのだが、コピーやスキャンなど個別の設定を“お気に入り”として登録し、液晶ディスプレイからほとんどワンタッチで実行できる機能が筆者のオフィスではかなり役立っている。

 例えば1つ1つのお気に入りから社内のスタッフそれぞれがもつDropboxアカウントにアクセスするようにもできるし、さらにカラー原稿のコピーや領収証のスキャンなど、用途に応じたお気に入りに細分化して登録しておくこともできる。

 スキャン機能とオンラインストレージとの連携については、実はファクス機能でも利用できるようになっている。「FAXクラウド転送機能」と呼ばれるもので、あらかじめ指定したDropboxやGoogle ドライブ、Evernoteなどに受信したファクスを転送し、データとして保存できる。データとして残しつつ、プリントも同時にできるので、万が一受信したファクスの紙書類を手違いで捨ててしまうようなことがあっても、同期されているオンラインストレージには残るから最悪の事態は避けられる。

FAXクラウド転送機能の設定は、ホーム画面を左フリックすると表示される「クラウド」から行う

 これもスキャンと同様にブラザーのシステムを経由する仕組みなので、将来的に新しいオンラインサービスが登場した際に機能が増える可能性があるし、既存のオンラインサービスの仕様変更で使えなくなるようなトラブルも迅速に解決されるに違いない。長く使うことになるビジネスプリンター・複合機だからこそ、こうしたシステム上の工夫や拡張性が考慮されているのは、結構重要ではないだろうか。

 筆者オフィスでは“(スタッフ名)Dropbox”という名前を付けたお気に入りを液晶ディスプレイ上でタップするだけで、セットした書類をスキャンした後、そのデータがスタッフ個人のDropboxアカウントの所定のフォルダにアップロードされるようにしている。

 モノクロA4サイズで1枚(片面)のスキャンであれば、読み取り開始からアップロード完了まで20秒ほど、処理が始まったのを確認して席に戻ると、もうPC上に同期されている、というくらいのスピード感だ。本当に休ませてくれない。A3サイズだとアップロードに少し時間がかかるが、スキャンにかかる時間はA4サイズの時と同程度だ。

スタッフごとのお気に入りを用意して、それぞれのアカウントでスキャンしたデータをアップロード可能にした
クラウドサービスとの連携はPINコードで保護できる

 MFC-J6973CDWの目玉の1つでもあるA3対応の両面同時スキャンが、このオンラインストレージとの連携機能やお気に入りの機能をさらに強化する。仕事柄、多数の製品資料などを受け取ることが多い。

 例えばイベント取材に行ったりすると、ペラ1枚のパンフレットから厚みのあるカタログまで、多彩な資料が各ブースに置いてあったり配布されていたりするので、全てまんべんなく持ち帰ることになるし、製品・サービスの発表会を取材するような時も、同じように説明資料をもらうことがほとんどだ。

 これらの資料は取材内容を記事にする際に参照するくらいで、その後はほとんどの場合不要になってしまう。ただし、一部の製品・サービスについては、別の仕事で再度取り上げたり、実際に利用することもあるため、情報源の1つとして所有しておきたい。なので、二度と使われることがない資料と分かっていても、そうでない場合のことも考えて残さざるをえないのだ。

 そんなわけで、MFC-J6973CDWの両面同時スキャンによって、この増え続ける資料のうち使い終わったものを効率的にスキャンしてデータ化し、紙書類の処分を進めることができている。A3両面の資料がADFに吸い込まれ、一発で両面をきれいにスキャンする様のなんと気持ちのいいことか!

資料アーカイブ用として、片面スキャン用と両面スキャン用の2つのお気に入りを作成し、活用している

 A3(A4サイズ見開き)の資料を両面同時スキャンする時間は、片面の時と変わらないたった20秒ほどで、まさにスピーディ。筆者のオフィスでは“資料アーカイブ用”のスキャン設定についても、片面と両面の2パターンをお気に入りに追加して、いつでもワンタッチでDropboxに保管できるようにしている。データ化した資料は、必要になった時にPC上ですぐに参照でき、スタッフ間での共有もしやすくなった。

 オンラインストレージと連携する機能については、むやみに実行されないようPINコードでアクセス制限できるようにもなっている。筆者のオフィスはスタッフも少ないので、いたずらに他人のオンラインストレージにアクセスするようなことはないだろうが、大切な個人のアカウントをしっかり守れるのはありがたいし、安心感もある。

 その一方で、画面上で資料を見るのではなく、紙で持ち歩きたいような場面もある。例えば発表時に1度取材した製品・サービスについて別件で追加取材が必要になる時は、プリントしたものをいつでも参照できるよう、すぐに取り出せるようにしておきたい。PCやスマートフォンで見ようとすると資料を開くまでの手間がかかりすぎてしまうからだ。

 そこで役に立つのが、自動両面プリントによる高速な印刷。1度データ化してしまった資料でも、紙にしたくなったらサクッとプリントできるうえ、A4サイズ4ページの資料(見開きでA3サイズ)なんかは、一発でスキャン前と同じ体裁で出力できるのがありがたい。

 これはつまり、日常業務においてボトルネックになりがちなデジタルからアナログ(プリント)、アナログからデジタル(スキャン)への変換にかかっていたタイムラグが最小限で済むようになるという意味でもある。皆さんの仕事の効率アップに、少なからず貢献してくれる製品であることは間違いないはずだ。

 そんなわけでブラザーのビジネスインクジェット複合機「MFC-J6973CDW」は、プリントもスキャンもスピーディなうえに、クラウドサービスとの連携という今どきの活用方法も用意された、大変使い勝手に優れた製品だ。どんな処理も操作もスムーズすぎて、ライターという仕事においては一服もさせてくれない、ある意味“優しくない”1台に感じる。

(日沼諭史)

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