レビュー

Radeon RX 5700 XTのライバルとの差は? PCIe 4.0の効果も含めて検証

「Radeon RX 5700」シリーズ

 AMDは7月7日、設計を一新した7nmプロセス世代のGPU「Radeon RX 5700」シリーズを発売した。今回、発売に先立って同シリーズの「Radeon RX 5700 XT」および「Radeon RX 5700」をテストする機会が得られたので、ベンチマークテストでAMDの新世代GPUの性能をチェックしてみた。

GCNからRDNAへ内部設計を刷新したNaviアーキテクチャ採用GPU

 AMDのRadeon RX 5700シリーズは、新設計のNaviアーキテクチャに基づいて7nmプロセスで製造されたGPU。上位モデルで40基のコンピュートユニットを備えるRadeon RX 5700 XTと、36基のコンピュートユニットを備えるRadeon RX 5700の2モデルがラインナップされている。

 Naviでは、2011年末のRadeon HD 7970での採用以来改良を続けてきた「GCN(Graphics Core Next)」から「RDNA(Radeon DNA)」に内部設計を刷新。クロック当たりの性能を1.25倍、電力効率は1.5倍へと向上したほか、PCI Express 4.0にも対応した。

 Radeon RX 5700シリーズは、メモリにGDDR6を採用。2モデルとも14Gtpsで動作する8GBのGDDR6メモリと256bitのメモリインターフェイスで接続しており、448GB/sのメモリ帯域幅を実現している。

 Radeon RX 5700シリーズのおもな仕様は以下のとおり。なお、Radeon RX 5700シリーズのスペックには、標準的なゲーミングシーンでのGPU動作クロックの目安値となる「ゲームクロック」が追加されている。

【表1】Radeon RX 5700シリーズのおもな仕様
モデルナンバーRadeon RX 5700 XTRadeon RX 5700Radeon RX Vega 64Radeon RX 590
アーキテクチャNavi(RDNA)Navi(RDNA)VegaPolaris
製造プロセス7nm14nm12nm
コンピュートユニット40基36基64基36基
ストリーミングプロセッサー2,560基2,304基4,096基2,304基
テクスチャユニット160基144基256基144基
ROPユニット64基32基
ベースクロック1,605MHz1,465MHz1,247MHz1,257MHz
ブーストクロック1,905MHz1,725MHz1,546MHz1,340MHz
ゲームクロック1,755MHz1,625MHz-
ピーククロック-1,630MHz
メモリ容量8GB(GDDR6)8GB(HBM2)8GB GDDR5
メモリスピード14Gtps1.89Gtps8Gtps
メモリインターフェイス256bit2,048bit256bit
メモリ帯域448GB/s483.8GB/s256GB/sec
消費電力225W185W295W225W

Radeon RX 5700 XTとRadeon RX 5700のリファレンスモデル

 今回、AMDより借用したのは、Radeon RX 5700 XTとRadeon RX 5700のリファレンスモデル。

 どちらも2スロットを占有する外排気型GPUクーラーを搭載しているが外装デザインは異なっており、Radeon RX 5700 XTは外装の一部が衝撃でへこんだかのようなユニークな見た目をしている。

Radeon RX 5700 XT
Radeon RX 5700 XTのリファレンスボード。外装のへこみはダメージではなくデザインである
カード裏面。金属製バックプレートを装備
補助電源コネクタは8ピン+6ピンの2系統
画面出力端子。DisplayPort 1.4×3基、HDMI×1基
Radeon Settings上でのRadeon RX 5700 XTのハードウェア情報
Radeon RX 5700
Radeon RX 5700のリファレンスボード。占有スロット数は2
カード裏面にバックプレートは搭載していない
補助電源コネクタは8ピン+6ピンの2系統
画面出力端子。DisplayPort 1.4×3基、HDMI×1基
Radeon Settings上でのRadeon RX 5700のハードウェア情報

テスト機材

 Radeon RX 5700シリーズの比較対象として、7月9日発売のNVIDIA製GPUである「GeForce RTX 2060 SUPER」と「GeForce RTX 2070 SUPER」を用意。また、従来のRadeon製品からも「Radeon RX Vega 64」と「Radeon RX 590」を比較に加えた。

 各ビデオカードの検証を行なうベース機材には、Intelの8コア16スレッドCPUであるCore i9-9900Kを搭載したIntel Z390環境を利用する。Core i9-9900KはPCI Express 4.0非対応であるため、Radeon RX 5700シリーズもPCI Express 3.0接続でテストを行なうことになる。なお、PCI Express 4.0の効果については、比較テストとは別に後ほど紹介する。

 グラフィックスドライバに関しては、Radeon RX 5700シリーズとNVIDIAのRTX SUPERはレビュアー向けのベータ版を使用。Radeon RX Vega 64とRadeon RX 590にはテスト時点での最新Optional版「Radeon Software Adrenalin 2019 Edition 19.6.3 Optional」を使用した。

【表2】各ビデオカードのテスト時動作仕様
GPURadeon RX 5700 XTRadeon RX 5700Radeon RX Vega 64Radeon RX 590 OCGeForce RTX 2070 SUPERGeForce RTX 2060 SUPER
ビデオカードベンダーAMDPowerColorNVIDIA
製品名リファレンスAXRX 590 8GBD5-3DH/OCリファレンス
ベースクロック1,605MHz1,465MHz1,247MHz-1,605 MHz1,470 MHz
ブーストクロック1,755 MHz1,625MHz1,546MHz1,576MHz1,770 MHz1,650 MHz
メモリ容量8GB(GDDR6)8GB(HBM2)8GB(GDDR5)8GB(GDDR6)
メモリスピード14Gtps-1.89Gtps8Gtps14Gtps
メモリインターフェイス256bit2,048bit256bit
メモリ帯域448GB/s483.8GB/s256GB/s448GB/s
【表3】テスト機材一覧
GPURadeon RX 5700 XTRadeon RX 5700Radeon RX Vega 64Radeon RX 590 OCGeForce RTX 2070 SUPERGeForce RTX 2060 SUPER
CPUCore i9-9900K
CPUクーラーASUS ROG RYUJIN 240
マザーボードASUS TUF Z390-PLUS GAMING(UEFI: 2417)
メモリDDR4-2666 8GB×2(2ch、16-16-16-36、1.35V)
システム用ストレージIntel SSD 760p(256GB SSD/M.2-PCIe 3.0 x4)
アプリケーション用ストレージSanDisk Ultra 3D SSD(1TB SSD/6Gbps SATA)
電源玄人志向 KRPW-GK750W/90+(750W/80PLUS GOLD)
グラフィックスドライバAdrenalin 19.7.1 DCH(26.20.13001.6011)Radeon Software Adrenalin 2019 Edition 19.6.3 Optional DCH(26.20.12001.11014)GeForce Game Ready Driver 431.16 DCH(26.21.14.3116)
OSWindows 10 Pro 64bit(Ver 1903 / build 18362.207)
電源設定高パフォーマンス
室温約25℃
Radeon RX Vega 64のリファレンスボード
Radeon RX Vega 64のGPU-Z実行画面
Radeon RX 590搭載の「PowerColor AXRX 590 8GBD5-3DH/OC」
PowerColor AXRX 590 8GBD5-3DH/OCのGPU-Z実行画面
GeForce RTX 2060 SUPERのリファレンスボード
GeForce RTX 2060 SUPERのGPU-Z実行画面
GeForce RTX 2070 SUPERのリファレンスボード
GeForce RTX 2070 SUPERのGPU-Z実行画面

ベンチマーク結果

 今回実行したベンチマークテストは、「3DMark(グラフ1~8)」、「VRMark(グラフ9~10)」、「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク(グラフ11)」、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク(グラフ12)」、「Forza Horizon 4(グラフ13)」、「F1 2019(グラフ14)」、「バトルフィールド V(グラフ15~16)」、「シャドウ オブ ザ トゥームレイダー(グラフ17~18)」、「フォートナイト(グラフ19)」、「オーバーウォッチ(グラフ20)」、「アサシン クリード オデッセイ(グラフ21)」、「モンスターハンター : ワールド(グラフ22)」、「SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE(グラフ23)」、「ゴーストリコン ワイルドランズ(グラフ24)」。

 3DMarkの高負荷テストでは、高負荷テストの「Time Spy」、「FireStrike」と、中負荷テストの「Night Raid」、「Sky Diver」、DirectX Raytracing(DXR)を用いるリアルタイムレイトレーシングテスト「Port Royal」を実行した。

 DirectX 12テストのTime Spyでは、Radeon RX 5700 XTはGeForce RTX 2060 SUPERに次ぐ3番手、Radeon RX 5700はそこから1割ほど低いスコアで4番手のスコアを記録した。Radeon RX 5700 XTとGeForce RTX 2060 SUPERの差は約2~5%程度だが、GeForce RTX 2070 SUPERには約16~18%の差をつけられている。

 一方、DirectX 11テストのFire Strikeでは、Radeon RX 5700 XTがGeForce RTX 2060 SUPERを約9~12%上回り全体2番手のスコアを記録。Radeon RX 5700は4番手のスコアであるものの、GeForce RTX 2060 SUPERに1%未満に肉薄した。Radeon RX 5700 XTとGeForce RTX 2070 SUPERとの差も約1~4%に接近している。

【グラフ01】3DMark v2.9.6631「Time Spy」
【グラフ02】3DMark v2.9.6631「Time Spy Extreme」
【グラフ03】3DMark v2.9.6631「Fire Strike」
【グラフ04】3DMark v2.9.6631「Fire Strike Extreme」
【グラフ05】3DMark v2.9.6631「Fire Strike Ultra」

 中負荷テストにおいても、DirectX 12テストのNight RaidではRadeon RX 5700シリーズが3~4番手となった一方、DirectX 11テストのSky DiverではRadeon RX 5700 XTが2番手、Radeon RX 5700がGeForce RTX 2060 SUPERとほぼ同等のスコアでの4番手を記録した。

【グラフ06】3DMark v2.9.6631「Night Raid」
【グラフ07】3DMark v2.9.6631「Sky Diver」

 Port RoyalはDirectX Raytracing(DXR)を用いたリアルタイムレイトレーシングを行なうベンチマークテストだが、ここではDXR向けの専用コアを持たないRadeon勢はテストを実行できなかった。

 DXRを用いたリアルタイムレイトレーシングを実用可能にするGeForce RTX 20シリーズの性能は、Radeon RX 5700シリーズに対するアドバンテージであると言えるだろう。

【グラフ08】3DMark v2.9.6631「Port Royal」

 VR性能を確認するベンチマークテストであるVRMarkでは、「Orange Room」、「Cyan Room」、「Blue Room」を実行した。

 最軽量のテストである「Orange Room」では、Radeon RX 5700シリーズとRadeon RX Vega 64が横並びとなっている一方、NVIDIAのRTX SUPERはそこから約7%高いスコアとフレームレートで横並びとなっている。横並びの原因はCPUのボトルネックによるものだが、ドライバの違いからかCPUから引き出せる性能にやや差があるようだ。

 DirectX 12テストである「Cyan Room」では、Radeon RX 5700 XTがGeForce RTX 2060 SUPERをわずかに上回り2番手のスコアを記録。Radeon RX 5700はRadeon RX 5700 XTと約13%差の4番手につけている。

 5K解像度で実行される高負荷テスト「Blue Room」では、Radeon RX 5700シリーズは全体3~4番手の結果となっており、Radeon RX 5700 XTはGeForce RTX 2060 SUPERに約11%、GeForce RTX 2070 SUPERには約33%の差をつけられた。

【グラフ09】VRMark v1.3.2020「スコア」
【グラフ10】VRMark v1.3.2020「平均フレームレート」

 ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマークでは、描画設定「最高品質」に設定して、フルHDから4Kまでの画面解像度でテストを実行した。

 Radeon RX 5700シリーズの順位は3~4番手で、シリーズ内での上位と下位の差は約4~9%。2番手のGeForce RTX 2060 SUPERとRadeon RX 5700 XTの差は約2~4%で、GeForce RTX 2070 SUPERとの差は約8~20%。

【グラフ11】ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク

 FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク v1.2では、描画設定を「高品質」に設定して、フルHDから4Kまでの画面解像度でテストを実行した。

 ここでもRadeon RX 5700シリーズの順位は3~4番手で、シリーズ内での上位と下位の差は約10~16%。2番手のGeForce RTX 2060 SUPERとRadeon RX 5700 XTの差は約13~23%で、GeForce RTX 2070 SUPERとの差は約33~39%だった。

【グラフ12】FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク v1.2

 DirectX 12専用タイトルであるオープンワールドレースゲーム「Forza Horizon 4」では、描画設定を「ウルトラ」に設定して、フルHDから4Kまでの画面解像度でベンチマークモードを実行した。

 Forza Horizon 4はRadeon勢が非常に優位な結果を叩き出しており、Radeon RX 5700シリーズが全体1~2位のフレームレートを記録した。Radeon RX 5700 XTはGeForce RTX 2070 SUPERを約16~26%上回り、Radeon RX 5700も約1~12%の差をつけている。

【グラフ13】Forza Horizon 4(v1.317.19.2)

 F1公式ゲームの最新版「F1 2019」では、DirectX 12モードで描画設定を最高の「超高」に設定。フルHDから4Kまでの画面解像度でベンチマークモードを実行した。

 Radeon RX 5700 XTはフルHDと4KでGeForce RTX 2060 SUPERを上回り、WQHDでも1fps差という同等の結果を記録し、全体2番手の結果と言えるフレームレートを記録。Radeon RX 5700はGeForce RTX 2060 SUPERと約2~5%差の4番手だった。

【グラフ14】F1 2019(v1.03)

 バトルフィールド Vでは、DirectX 12で描画設定を「最高」に設定して、フルHDから4Kまでの画面解像度でのフレームレートを測定した。

 Radeon RX 5700 XTはGeForce RTX 2060 SUPERを約12%差で上回り、GeForce RTX 2070 SUPERに約1~5%差に迫る全体2番手のスコアを記録。Radeon RX 5700はフルHDでRadeon RX Vega 64を下回ったものの、WQHDではGeForce RTX 2060 SUPERと1%未満の差に迫り、4Kでは逆転して約6%の差をつけている。

 バトルフィールド Vでは、DXRを用いたリアルタイムレイトレーシングと、GeForce RTX 20シリーズのTensorコアをアンチエイリアシングに用いる「DLSS」が利用可能であり、今回用意したRTX SUPERシリーズはフルHDかつ最高画質設定で60fps以上が狙える性能を発揮している。Radeon系GPUではNVIDIA独自機能であるDLSSは当然として、DXRも利用できないためテストを実施できていない。

【グラフ15】バトルフィールド V(v1.0.74.11040)
【グラフ16】バトルフィールド V 「DXR + DLSS有効」(v1.0.74.11040)

 シャドウ オブ ザ トゥームレイダーでは、DirectX 12で描画設定を「最高」にして、フルHDから4Kまでの画面解像度でベンチマークを実行した。

 Radeon RX 5700 XTはGeForce RTX 2060 SUPERを約9~11%上回る2番手の結果を記録し、トップのGeForce RTX 2070 SUPERとの差は約9~13%だった。Radeon RX 5700はGeForce RTX 2060 SUPERとほぼ横並びの結果を残している。

 本タイトルもDXRとDLSSをサポートするタイトルであり、これらを用いたRTX SUPERシリーズはフルHDで60fps以上、30fpsならWQHD以上でもプレイできる性能を示している。DXRはドライバが対応すれば専用コアがなくとも実行可能とされているが、ここでもRadeon勢はDXRによるレイトレーシングは利用できなかった。

【グラフ17】シャドウ オブ ザ トゥームレイダー(v1.0/build 292.0_64)
【グラフ18】シャドウ オブ ザ トゥームレイダー 「DXR + DLSS有効」(v1.0/build 292.0_64)

 人気のバトルロイヤルTPS「フォートナイト」では、描画設定を最高の「エピック」に設定し、フルHDから4Kまでの画面解像度でフレームレートを測定した。

 Radeon RX 5700シリーズの順位は3~4番手で、シリーズ内での上位と下位の差は約6~8%。2番手のGeForce RTX 2060 SUPERとRadeon RX 5700 XTの差は約6~7%で、GeForce RTX 2070 SUPERとの差は約21~24%だった。

【グラフ19】フォートナイト(v9.30)

 オンラインFPSの「オーバーウォッチ」では、描画設定を最高の「エピック」に設定し、フルHDから4Kまでの画面解像度でフレームレートを測定した。

 Radeon RX 5700 XTはWQHDと4KでGeForce RTX 2060 SUPERを約3~10%上回っている。Radeon RX 5700はRadeon RX 5700 XTと約7~10%差の全体4番手。GeForce RTX 2060 SUPERとWQHD以下では約9~20%の差がついているが、4Kでは横並びとなっている

【グラフ20】オーバーウォッチ(v1.37.0.1.59008)

 アサシン クリード オデッセイでは、描画設定を「最高」に設定し、フルHDから4Kまでの画面解像度でベンチマークを実行した。

 Radeon RX 5700 XTはフルHDとWQHDではGeForce RTX 2060 SUPERを上回っているものの、4Kで大きくフレームレートを落としてGeForce RTX 2060 SUPERの逆転を許している。Radeon RX 5700も4Kでの性能は振るわないが、WQHD以下ではGeForce RTX 2060 SUPERと約3~10%差で実用的なフレームレートを記録している。

【グラフ21】アサシン クリード オデッセイ(v1.3.0)

 モンスターハンター : ワールドでは、描画設定を「最高」に設定し、フルHDから4Kまでの画面解像度でフレームレートを測定した。

 Radeon RX 5700 XTはGeForce RTX 2060 SUPERを約5~12%上回る全体2番手のフレームレートを記録。Radeon RX 5700と上位モデルの差は約7~10%で、WQHD以上の画面解像度ではGeForce RTX 2060 SUPERを上回っている。

【グラフ22】モンスターハンター : ワールド(Revision 167589)

 フロムソフトウェアのアクションアドベンチャー「SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE」では、描画設定を「最高」に設定し、フルHDから4Kまでの画面解像度でフレームレートを測定した。

 Radeon RX 5700シリーズとRTX SUPERシリーズはWQHD以下の画面解像度では上限の60fpsに到達しており、4KではRadeon RX 5700XTがGeForce RTX 2070 SUPERに肉薄する全体2番手、Radeon RX 5700はGeForce RTX 2060 SUPERをわずかに上回り全体3番手の結果を記録した。

【グラフ23】SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE(v1.04)

 オープンワールドシューティングの「ゴーストリコン ワイルドランズ」では、描画設定を「ウルトラ」に設定し、フルHDから4Kまでの画面解像度でベンチマークを実行した。

 フルHDではRadeon RX 5700シリーズは3~4番手の結果となっているが、WQHDではRadeon RX 5700 XTがGeForce RTX 2060 SUPERを上回り、4KではRadeon RX 5700もGeForce RTX 2060 SUPERを上回っている。

【グラフ24】ゴーストリコン ワイルドランズ(v3747852)

消費電力とGPUモニタリングデータ

 コンセント側に設置した電力計を用いて、アイドル時の消費電力とベンチマーク実行中のピーク消費電力を測定した結果が以下のグラフだ。

 Radeon RX 5700シリーズのアイドル時消費電力は38Wで横並びで、33~34Wを記録したRTX SUPERシリーズより若干高い数値となっている。

 ベンチマーク中のピーク消費電力を見てみると、Radeon RX 5700は測定したテストのすべてで比較製品中もっとも低い消費電力を記録した。全テストでもっとも高い消費電力を記録したRadeon RX Vega 64と比較すると、Radeon RX 5700 XTは79~97W、Radeon RX 5700は126~152Wも低い消費電力を記録しており、測定したすべてのテストでRadeon RX 5700シリーズがRadeon RX Vega 64を上回る性能を発揮していることを考えれば、旧製品からの電力効率改善が非常に大きなものであると言える。

 ただし、競合となるRTX SUPERシリーズと比較すると、実消費電力では下回っているテストも見られるものの、ベンチマークテストでの性能を考慮すると、電力効率でGeForce RTX 20シリーズを上回るまでにはいたっていないようだ。

【グラフ25】システムの消費電力

 GPU-Zのモニタリング機能を利用し、FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク実行中のGPU温度などを取得してみた。ベンチマークは4K解像度かつ高品質設定で実行している。

 Radeon RX 5700 XTとRadeon RX 5700のピーク温度はどちらも72℃。最大ファンスピードも両モデルともに約2,100rpmだった。

 アイドル時はファンスピードは700rpm以下にまで低下するため静粛性の高い動作となる一方、GPU温度に連動してファンスピードが大きく変化するため、負荷時はファンの騒音が気になりやすい印象を受けた。

【グラフ26】Radeon RX 5700 XT のモニタリングデータ
【グラフ27】Radeon RX 5700 のモニタリングデータ

PCI Express 4.0接続とPCI Express 3.0接続での性能変化をチェック

 最後にRyzen 9 3900Xを搭載したAMD X570環境を用いて、Radeon RX 5700 XTの接続にPCI Express 4.0とPCI Express 3.0を用いた場合の性能差を確認してみよう。

【表4】テスト機材
GPURadeon RX 5700 XT
CPURyzen 9 3900X
CPUクーラーASUS ROG RYUJIN 240
マザーボードGIGABYTE X570 AORUS MASTER(UEFI: N11)
メモリDDR4-3200 8GB×2(2ch、16-16-16-36、1.35V)
システム用ストレージIntel SSD 760p(256GB SSD/M.2-PCIe 3.0 x4)
PCIe 4.0 SSDAORUS NVMe Gen4 SSD
アプリケーション用ストレージSanDisk Ultra 3D SSD(1TB SSD/6Gbps SATA)
電源玄人志向 KRPW-GK750W/90+(750W/80PLUS GOLD)
グラフィックスドライバAdrenalin 19.7.1 DCH(26.20.13001.6011)
OSWindows 10 Pro 64bit(Ver 1903 / build 18362.207)
電源設定AMD Ryzen Balanced
室温約25℃

 今回のテストに用いたAMD X570搭載マザーボード「GIGABYTE X570 AORUS MASTER」では、UEFI上でPCI Expressバスの世代を選択できるため、この機能を用いてRadeon RX 5700 XTの接続インターフェイスをPCI Express 4.0とPCI Express 3.0に切り替える。

PCI Express 4.0接続時。「現在のバス設定」がPCI Express 4.0 x16になっている。
PCI Express 3.0接続時。「現在のバス設定」がPCI Express 3.0 x16になっている。

 実際にインターフェイスが切り替わっていることの確認もかねて実行した3DMarkの「PCI Express feature test」では、PCI Express 3.0 x16接続での帯域幅が13.89GB/sであったのに対し、PCI Express 4.0接続では24.26GB/sに向上していることが確認できた。

【グラフ28】PCI Express feature test

 PCI Express 4.0とPCI Express 3.0で、それぞれ3DMarkとVRMarkの各テストを実行した結果を集計し、PCI Express 3.0の結果を100%とした場合のグラフとしてまとめてみた。

 PCI Express 4.0接続時にFireStrikeのスコアが約2.7%向上しているものの、ほとんどのテストでは誤差レベルの差しかついていないと言える結果だ。

 PCI Express feature testの結果からPCI Expressの帯域幅自体は大きく向上していることは確認できているため、接続できるならPCI Express 4.0を使わない理由はとくにないが、PCI Express 4.0で接続しなかったからと言ってゲームでの性能を大きく損なうという心配はなさそうだ。

【グラフ29】PCI Express 4.0接続とPCI Express 3.0接続の性能変化

GeForce RTX 2060シリーズと競える性能を備えたRadeon RX 5700シリーズ

 7nmプロセスとRDNAを採用したRadeon RX 5700シリーズは、従来のRadeonシリーズから大幅な電力効率の改善をはたしている。また、64基のコンピュートユニットを備えるRadeon RX Vega 64をより小規模なGPUコアであるRadeon RX 5700シリーズが発揮している点からも、RDNAの大きな進化を感じられる。

 発売直前の価格改定により、Radeon RX 5700 XTはGeForce RTX 2060 SUPERと同じ399ドル、Radeon RX 5700はGeForce RTX 2060と同じ349ドルに変更された。これにより、Radeon RX 5700シリーズの競合製品はGeForce RTX 2060ということになる。

 Radeon RX 5700 XTは複数のゲームでGeForce RTX 2060 SUPERに対抗できる性能を示している。DXRを用いるリアルタイムレイトレーシングが実用可能であるか否かの差は大きいが、いまだ普及の進まないDXR対応タイトルの数を考慮すれば、自分がプレイしたいゲームをどちらのGPUがより得意としているのかという点のほうが、より重要な要素であると言えるだろう。