特集

頼れるパパのための「子供のPCデビュー」講座

~第1回:PCを使って子供の才能を開花させるために考えるべきこと

どうする? 子供のPCデビュー

 今回から3回に渡って、『頼れるパパのための「子供のPCデビュー」講座』をお届けする。講師を務める筆者は、ライター業の傍ら一般社団法人インターネットユーザー協会で代表理事を務めており、子供の健全なネット利用促進に向けて、2009年から継続的に調査・研究を行ない、研修や講演といった活動も行なっている。

 また個人的にはこの4月から中学生になる娘がおり、小学校低学年の頃からタブレットやPCなどを通じて、インターネットを使わせてきた。幸いにしてこれまで大きなトラブルはなかったが、それは何もやらせなかった結果ではない。散々やらせて失敗もさせながら、問題が大きくなりそうなら先回りして手を打ってきたからだ。

 今時は小学校の2~3年ぐらいになると、インターネットの情報に興味を持ち始める。クラスメイトからYouTubeの面白動画やゲーム攻略サイトの話を聞き込んできて、そういった情報に触れたがるものだ。我々の時代なら、面白いTV番組見つけた、ぐらいの感覚でインターネットと触れ合うことになる。

 加えてインターネットアクセスへの障壁は、年々低くなっている。現在のゲーム機でネットに繋がらないものはない。ただ、不自由なく全ての情報が表示できるできるわけではなく、ゲーム機特有の限界も当然ある。そもそもはゲームをするための機器なのだ。中学生になるとみんながスマートフォンを欲しがるのは、言うなれば「自由なインターネット」を持ちたがるということなのである。

 ただし子供の要求するままに、全てのものを与えていくわけにはいかない。保護者としては、少しずつIT機器の仕組みやネット特有のルール・マナーといったことを理解させ、段階的に成長させていきたいわけである。それにはまず小学生のうちに、どういった環境を作っておくかというのが重要になる。

 現在の社会の有り様を考えてみると、今後もPCやインターネットがなかった時代には戻らないことは明白だ。子供たちもやがて大学に進学すれば、その段階からPCとネットを使って研究したり課題を提出したりといったことが当たり前になる。1回生になって「PC使えません」では済まされないのに、小中高の学校教育だけでは不十分だという現実がある。日本のコンピュータ教育は、家庭での支援がなければ十分とは言えないのである。

 今回の講座を通して、小学生から高校卒業に至るまでの過程で、どうやって子供にPCやネットを使わせていくか、その道筋を整理できたらと思っている。

小学生からPCを使うメリットとリスク

 PCはスマートフォン、タブレット、ゲーム機と違い、自由度の高い情報機器だ。汎用性が高いという表現もされるが、基本的にやろうと思えばかなり自分の思い通りにできる。何かを作ったり、ハードウェア的に拡張することもできる。まずはこのような機器を小学生のうちから与えることのメリットと、そのリスクを整理してみよう。

メリット

1. モノを作る基礎を学ぶのに最適

 PCは元々、何かを作るためのツールとして発展してきた。印刷物を作ったり、データを集計して分析したり、絵を描いたりといったことだ。時には何かを実現するためのツールそのものを、プログラミングによって作ることもできる。こうした可能性に気付かせるためには、小さいうちからPCを怖がったりめんどくさがったりせずに使える、ITリテラシーを身につけることが重要だ。

2. 情報アクセスの基本を学んでおくと有利

 スマートフォンによる情報アクセスは、ある意味ハードウェアとソフトウェアがパッケージングされたものと考えることができる。簡単で便利ではあるが、「それ以上」を求めた時に行き詰まってしまう。情報アクセスの一番フラットな形を体験させることは、将来情報を発信する側に立った際に有利だ。

リスク

1. ネットのトラブルに巻き込まれる

 子供にPCでネットにアクセスさせるということは、ネットのトラブルに巻き込まれる可能性がある。アダルトサイトにアクセスして架空請求に引っかかったり、悪意のある書き込みで精神的なダメージを食らうことは、子供の健全育成にとってプラスとは言えない。

2. 最初に使わせるのはPCでいいのかという疑問

 スマートフォンやタブレットなどのモバイル機器が重宝がられている現在、子供に使わせる最初の情報機器としてPCで正しいのかという不安はあるだろう。果たしてPCというものが、今の子供が大きくなってもまだ存在するのかといった疑問もある。

 だが子供に何かをさせるということは、必ずある程度のリスクを伴う。そのリスクをうまくコントロールして、メリットをより多く残してやるのが、保護者のミッションだ。

 リスク1については、もちろんそのまま野放しで利用させるわけにもいかないので、フィルタリングを導入するというテクニカルな面と、保護者が子供のネット利用を見守っていくというマンパワーの面の両方での対策が必要になってくる。

 リスク2については、序文でも述べたように、既に子供たちはゲーム機を通してインターネットへはアクセスしているという現状がある。ただそれが、どこまでがゲーム機内部でどこからがインターネットの情報なのか、意識することは少ない。もちろん最初の情報機器としてキッズケータイやキッズスマートフォンを持たせるケースも考えられるだろう。子供の安全のためにそれらを利用することは全く否定しないが、子供の可能性を引き出すツールとして機能するわけではない。逆にPCはその点でメリットがあることは理解しておくべきだ。

 これらのリスクを回避する具体的な方法は、今後の連載の中で紐解いていこう。

学校では何を教えているか?

 今日本全国の公立小学校で、コンピュータが導入されていないところは存在しない。国の方針として教育振興基本計画(PDF)というのがあり、2017年までに3.6人に1台の割合でコンピュータを導入することとなっている。具体的な内訳は、各学校のコンピュータ教室に40台、各普通教室1台、特別教室6台、設置場所を限定しない可動式コンピュータ40台を整備することが目標だ。

 一方で具体的な学習内容の指針を示す学習指導要領では、「各教科等の指導に当たっては、 児童がコンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段に慣れ親しみ、コンピュータで文字を入力するなどの基本的な操作や情報モラルを身に付け、適切に活用できるようにするための学習活動を充実するとともに、これらの情報手段に加え視聴覚教材や教育機器などの教材・教具の適切な活用を図ること」と謳われている。

 具体的に「コンピュータで文字を入力する」という目標が掲げられていることから、以前は4年生で学習していたローマ字を、平成20年の改訂で3年生に下ろしている。これはなるべく早くローマ字入力の学習が行なえるようにという配慮からである。

 そうは言っても、「コンピュータの時間」といった授業があるわけではない。各教科の中でPCやネットを取り入れなさい、ということになっている。各教科ごとにどのように利用せよと記載されているかを下記の表にまとめてみた。

教科取り組み目標
国語情報収集や情報発信の手段としてコンピュータや情報通信ネットワークを活用する機会を設けること、インターネットや電子辞書等の活用、コンピュータによる発表資料の作成とプロジェクタによる提示等も考えられる
社会学校図書館や公共図書館、コンピュータなどを活用して、資料の収集・活用・整理などを行なうようにすること
算数数量や図形についての感覚を豊かにしたり、表やグラフを用いて表現する力を高めたりするなどのため、必要な場面においてコンピュータなどを適切に活用すること
理科観察、実験、栽培、飼育及びものづくりの指導については、指導内容に応じてコンピュータ、視聴覚機器などを適切に活用できるようにすること
道徳社会の情報化が進展し、コンピュータや携帯電話等が普及することにより、情報の収集や表現、発信などが容易にできるようになったが、その一方で、情報化の影の部分が深刻な社会問題になっている。児童は、学年が上がるにつれて、次第にそれらを日常的に用いる環境の中に入っており、学校や児童の実態に応じた対応が学校教育の中で求められる。これらは、学校の教育活動全体で取り組むべきものであるが、道徳の時間においても同様に、情報モラルに関する指導に配慮していかなくてはならない
総合的な学習の時間インターネットで必要なものが効率的に調べられるように、学習活動と関連するサイトをあらかじめ登録したページを作って、図書館やコンピュータ室などで利用できるようにしておくことも望まれる

 教科をまたいで横断的に目標を俯瞰すると、視聴覚教材として利用せよという部分、調べ物ができるようにせよという部分、プレゼンができるようにせよという部分、情報モラルを指導せよという部分に大別される。

 ただそうは言っても、課題は多い。現時点で多くの小学校では、各クラスにPCが配備されているわけではなく、コンピュータ室に40台あるだけだ。従って各教科でこのような学習をさせたくても、教室の順番が回ってくるまで待たざるをえないというのが、ハードウェア面での課題だ。

 一方ソフトウェア面での課題は、全ての教員がコンピュータや情報モラルに精通しているわけではないということである。これまで学校の先生は、職務としてインターネットを使ってこなかった。今もなお、携帯電話やスマートフォンを持っていない先生も多い。そういう先生方に、現実感のある情報モラル教育をせよということ自体が、どだい無理な話なのである。

 現役の先生方の努力をないがしろにするつもりはない。だがコンピュータとインターネットの発展を見てきた我々の視点では、国が掲げる学習の理想と現実には、大きな隔たりがある。「PCは学校でやってるんでしょ?」というのは、いささか楽観的すぎるのだ。

家庭でPCを使う目的を決めよう

 これらのことを踏まえて、家庭で子供向けにPCを導入する目的を明確にしておく必要がある。つまり、子供にどうなって欲しいのか、ということである。

 そこには当然、子供自身の夢もあるだろう。子供が興味を持っていることは何か、何が知りたいのか、将来やりたいことやなりたい職業は何なのかを聞くことは、指針を決める上で重要だ。ぜひ時間をかけて、お子さんの夢を聞いてあげて欲しい。

 そうする中でまず1つ目の目的となるのは、ネットで調べ物ができる環境を作ることになるはずだ。知りたいことを知るということは、子供の好奇心をエンジンにして、大きく知識が成長するきっかけとなる。

 また小学校でも5~6年生になれば、宿題も次第に漢字の書き取りや計算ドリルではなく、「自主学習」になる比率が高まってくる。自主学習とは、自分の興味のあることについて調べて、簡単なレポートを作成するという課題だ。子供が効率よく使えるネット端末がないと、そもそも宿題もままならないようなことになってしまう。

 2つの目的は、文章を書き、自分の言いたいことを相手に伝えられるようになることだ。インターネットの役割を大雑把に分けると、情報を引き出すことと、コミュニケーションをとることの2つに分解できる。この両方ができるようになることは、重要だ。

 言わずもがなであるが、現在インターネット上で飛び交う情報の大半は、テキストベースである。SNSだLINEだと、子供達が夢中になるコミュニケーションも、テキストだ。ネット社会となった現代でより多くの人に効率よく自分の思いを伝えるためには、文章力が必要になる。流麗な文章を綴る必要はないが、せめて真意が誤解されないぐらいの文章力は欲しい。

 もちろん人生において重要な決断の場面では、対面での会話によって自分の考えや言いたいことを相手にうまく伝えることは重要だ。しかし、その相手に会うためのアポイントでさえ、うまく文章が書けなければチャンスは巡ってこないのである。つまり我々はシビアな話、ネットのコミュニケーション力によって足切りされる社会に生きているのだ。

 そして最終的な目的は、PCを使って自分の能力を拡張することである。字が下手な子がPCで文章を綴れば、これまで本人しか読めなかったために伝わらなかったことも、人に伝わるようになる。絵が下手な子がコンピュータグラフィックスを習得すれば、予想もしなかった人生が開けるだろう。3Dプリンタによってハードウェアを作ることは、義務教育では教えられないことだ。

 ただしポンとモノさえ与えれば一気にそこまで才能が開花する例は、そう多くはない。学習には時間もかかるだろう。だが、みすみすチャンスを逃す手はない。まずはその前段階として、第1と第2の目的をクリアするところから始めよう。

 次回はこれらの目的を実現するために、具体的にどういう環境を用意すればいいのか、現実的な機材選定や設定といった話をしてみたいと思っている。次回もご期待願いたい。

(小寺 信良)