特集

ワコムの筆圧検知対応タッチパッド「Bamboo Pad」を試す

~ワイヤレスモデルで実売7,980円

Bamboo Pad
9月13日 発売

価格:オープンプライス

 ワコム株式会社は10日、筆圧検知にも対応するペン入力やWindows 8のジェスチャー操作が可能なワイヤレスタッチパッド「Bamboo Pad」を発表。9月13日に発売する。発売に先立ち本製品を試用する機会を得たので、その使い勝手をレポートしたい。

 ちなみに、今回試用するのはワイヤレス(無線)モデルで、ほかにUSB接続モデルが用意される。店頭予想価格は前者が7,980円、後者が4,980円と開きがある。機能面で差はなく、無線にこだわらない人向けに、より低価格な選択肢があると考えていい。ただし、無線モデルが4色のカラーバリエーションを用意するのに対して、USBモデルはメタリックグレー・ブラックの1色のみとなる。

 まずは製品の外観である。今回はパールホワイト・グリーンのモデルを利用しているが、ほかのカラーリングでもデザインは同じだ。パールホワイトまたはメタリックグレーをベースに、各色で縁取りを付けたデザインとなる。また、中央手前には各色のワンポイントが施されているが、これは左右クリックボタンを兼ねている。

 デザイン上の特徴として、タッチパネルの面がフラットであることが挙げられる。タッチパッド製品では、手前から奥にかけて傾斜を付ける、もしくはスタンドで傾斜を付けられる製品が少なくない。だが、本製品はスタンドなども備えず、フラットな状態で使うことになる。これは、ペン入力に対応することがフラットなデザインを採用した一因だろう。

 ちなみに後方に膨らみがあるが、ここには電池ボックスや制御部などが収められているほか、無線レシーバを収納する。なお、無線モデルでは単4形乾電池×2本を使用するが、USB接続モデルはバスパワー駆動となる。デザインは同一。本体サイズは141.4×166.5×4.5~15.7mm(幅×奥行き×高さ)。重量は無線モデルが145g、USBモデルが140gとなっている。

 傾斜のある(または付けられる)製品が多いということは、そうしたデザインが好ましいと思う人が多いのだろうが、本製品はタッチパネルの面積が大きめであることと、製品自体が非常に薄いことから、タッチパネルとしても使い勝手は良い。

 タッチ操作の反応範囲は115×78mm(幅×奥行き)で、手前部分の35mmほどは反応しない。マルチタッチに対応しており、Windows 8のジェスチャー操作なども利用可能だ。

 ペン操作は電磁誘導方式で、512段階の筆圧検知も可能。反応範囲は107×65mm(同)とタッチ操作よりやや狭くなっている。読み取り分解能は0.05mm、精度は±0.5mm、読み取り可能な高さは16mm。

 ペンは本体に収納できる小型のもので、実測で7.7×114mm(直径×長さ)程度。サイドボタンは装備しているが、消しゴム機能は搭載していない。このサイズなのでペンとしての持ちやすさは今ひとつだが、本体に収納できるメリットと天秤にかけると、小さいことのメリットは大きいだろう。

 ただ、小型かつ転がりやすいデザインのため、使用中にペンを“ちょっと置いておく”という行為にためらいを感じる。本体の収納場所は側面側に設けられているが、上面に立てておけるような穴や、ペンを横にして置いておける窪みなど、一工夫が欲しかったように思う。

Bamboo Pad。ワイヤレス版は小型のUSBアダプタも付属する
手前には左右クリックボタン。デザイン上もワンポイントになっている
裏面には4点にゴム足を装備。角度調整を行なうスタンドなどはない
背面後方に電池ボックス。単4乾電池×2本を使用。USBアダプタを収納するスペースも設けられている
側面から見たところ。電池がある後方部分は盛り上がっているが、センサーが反応する範囲はフラットなデザイン
左側面後方に電源スイッチを備える
右側面後方にスタイラスペンを収納可能
付属のスタイラスペン。サイドスイッチも備える

Windows 7/8では指3本までを使ったジェスチャー操作に対応

 本製品の利用に際しては、付属のUSB無線アダプタをPCに装着し、製品脇の電源スイッチをオンにする。Windows 7/8で利用する場合は専用ドライバやソフトウェアのインストールは不要だ。今回は試していないがMacにはジェスチャー操作を可能にするための専用ドライバが用意される。

 ドライバやソフトウェアのインストールが不要というのは手軽に使える点ではメリットだが、デメリットもある。それはジェスチャー操作が決め打ちになってしまうことだ。カスタマイズなどができない点は手軽さとのトレードオフといえるだろう。

 全体にタッチ操作の反応はよく、イメージ通りの操作が可能だった。表面のマットな質感は滑りは良く、ベトつきもせず使いやすい。若干気になったのは、やはり手前の3~4cmほどが反応領域から外れることだ。これは使用者にも依存すると思うが、筆者は無意識に操作するとかなり手前の方に指を持っていってしまい、この無反応領域の感覚は意識して慣れる必要があった。

 境目に目印のようなもの(できれば触覚で感知できるもの)があると分かりやすいのだろうが、現状のデザインが損なわれるのも惜しいという気持ちも沸き、製品としてどちらを優先すべきかは断言しにくい。あまりに気になるなら、ユーザー自身で細く切ったテープなどを貼っておくと良いかも知れない。

 ちなみに、タッチパッド製品というイメージからすると面積が大きく、何かこれを活かす使い方はないか考えてみたが、指3本のジェスチャーを利用するときでもこの大きさが必ずしも必要ではないほどに広く、メリットとなりそうなシーンは思い浮かばなかった(もちろん機能的にはデメリットもない)。

 一方でペン操作については、やはり小さ過ぎるというのが率直な印象だ。反応などに不満はなく、先述した手前数cmが反応しないこともあって躊躇なく手首/手のひらを床に付けられるあたりは、なるほどと思ったところだ。パームリジェクションのような機能はとくに付いていないようだが、なくても問題なさそうだ。

Windowsでは標準ドライバのみで動作(画面はWindows 8)
絵心も書心もないが「Fresh Paint」上で書いたもの

 いくつか気になるところにも触れたが、タッチパッドとペンタブレットを、どちらかの機能を中心に据えることなく両立させ、それをライトユーザーに受け入れられるデザインにまとめた製品、というのが本製品に対する全体的な印象だ。“Pad”という名称が製品名に入ってはいるが、製品サイズや仕様を考えるとペンタブレットの機能を“おまけ”というレベルで扱ってはいない。

 ちなみに、ワコムからは「Bamboo Pen」や「Bamboo Pen & Touch」のような、同社製品の中では小型の部類に入るデジタイザタブレットが発売されていた。今後はIntuosブランドにはなるが、Smallサイズから製品が用意される。後者はタッチ操作にも対応しており、機能は本製品に似ている。当然、Intuos Pen & TouchのSmallより小さいが、無線ユニット内蔵して安価に購入できるのがBamboo Padという見方はできる。

 ただ、ペンタブレットとしては小型すぎるし、デザインも挑戦的だ。占有スペースを大幅に節約できる筆圧検知対応のデジタイザタブレットを手元に置ける、というのは、これまでにない大きな魅力と言える。

 面積や筆圧検知が512段階であることを考えると、本気のクリエイティブ活動には向かないが、ちょっとした図版をペンで作れる環境があるのは便利だ。ここに軽く線を引きたい、こっちは強く強調したいといったレベルの表現には困らない。機能だけを重視するなら、USB接続モデルを5,000円未満で購入できるのも大きいだろう。

 趣味/仕事に関わらずペンタブレットが必須というほどではないが、持っていると便利そう、と少しでも感じたことのある人にとっては、有力な選択肢になるのではないだろうか。

(多和田 新也)