GPUを使って高速化! この夏買いたいGPGPU対応ソフト

 今GPGPUがコンシューマ市場でにわかに活気づいてきている。GPGPUとは「General Purpose GPU」の略で、GPUをグラフィック以外にもさまざまな目的で利用しようという試みである(NVIDIAではGPGPUと区別してGPUコンピューティングと呼んでいるが、ここではGPGPUの表現に統一する)。

 NVIDIAのGeForce 8シリーズ、AMDのATI Radeon HD 2000シリーズ以降からは、DirectX 10に対応している。DirectX 10ではそれまでの固定機能をなくし、CPUに近い汎用的演算ができるコアを採用することになった。これにより、GPUにグラフィック以外の用途の可能性が開けたのである。

 アーキテクチャが全く異なるため、単純な比較はできないが、CPUは通常2~4個のコアしかないのに対し、GPUでは少なくとも16個程度、多いものでは800個ものコアを搭載している。そのため、多数のデータを並列演算するストリーミング処理については、CPUよりもGPUを使った方が高速に処理できる場合が多く、GPUの方が100倍以上高速というケースも少なくない。

 こういった並列プログラムは新しい考え方であり、習得に時間がかかったり、プログラミング環境の整備といった問題から、当初はスーパーコンピュータを扱う研究者や開発者などが利用するにとどまっていた。しかし、近年、GPUメーカーがGPGPUの開発プラットフォームを提供するようになったことで、コンシューマソフトにもGPGPU対応を謳うものが徐々に増えてきた。

 それが、今回取り上げるNVIDIA「CUDA」およびAMD「ATI Stream」対応ソフトだ。見ての通り、動画関連のものがほとんどだが、GPGPUの利用箇所はエンコード部分だったり、エフェクト処理のレンダリングであったり、アップスケールの画像処理だったりと異なる。ユーザーの注目度も高く、効果が分かりやすいといった理由で、このジャンルに商品が集中しているのだと思うが、今後は新しい分野の商品もどんどん増えていくことだろう。

 さて、このGPGPUソフトの利用にあたっては、対応ソフトとドライバが必要となる。といっても、ハードルは高くなく、基本的にNVIDIAならGeForce 8以降、AMDならRadeon HD 4000以降のGPUが対応する。ただし、ソフトによっては特定の(特に下位の)GPUに対応しない場合もあるので、購入する際には、よくチェックしておきたい。AMDについて、Radeon 2000/3000シリーズは基本的に非対応となっている。ドライバについては、2009年以降にリリースされたものなら対応していると思って間違いない。

 性能については、3D同様上位モデルほど高速に動作する。NVIDIAとAMDという比較については、現時点で3Dのように同じ土俵で性能を比較するのが困難なため、正確なところは分からない。ただし、この分野ではNVIDIAの方が、イニシアチブを取って普及に努めてきた分、対応ソフトは多い。

 対CPUということでは、NVIDIAの資料によると今回紹介するソフトは、おおむね5~20倍程度高速化されるという。これについては検証環境が分からないので、おおざっぱな数値だが、AMDによるとRadeon HD 4870の利用により、Phenom II X4 955(3.2GHz)よりも「Premiere Pro CS4」において、エンコードが8倍高速化されるという。一部のソフトについては、過去レビューしているので、関連記事で詳細を確認されたい。

 これらのソフトは、GPGPU対応だからといって非対応製品より値段が高いといったことはない。ので、新規に購入する場合は、GPGPU対応かどうかを1つの条件にするといいだろう。また、後日パッチなどの無償アップデートでGPGPU対応となる製品も増えているので、特に映像分野のソフトをすでに持っているユーザーは、時折メーカーホームページを確認するようにしたい。

 製品名PowerDirector 7
メーカーサイバーリンク
製品ジャンル動画編集ソフト
価格9,200円より
GPGPU機能一部のエフェクトがCUDAおよびATI Streamに対応し、レンダリングが高速化。同時にCPU負荷も低下する。同社によると、CPUに比べ、おおむね5倍程度高速化される。なお、GPGPUを利用するには最新のパッチを適用する必要がある
関連記事【2009年5月18日】【西川】GPGPU/CUDAで快適動画編集入門
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/nishikawa/20090518_168541.html
【2008年11月21日】【多和田】CPU以外のハードウェアを活用した動画トランスコードを試す【NVIDIA CUDA編】
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/1121/tawada158.htm
【2008年11月10日】CyberLink、動画編集ソフト「PowerDirector 7」をCUDAに対応
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/1110/cyberlink.htm

 製品名Super LoiLoScope MARS
メーカーLoiLo
製品ジャンル動画編集ソフト
価格6,900円
GPGPU機能本ソフトは、プレビューのレンダリングとエンコードの両面でCUDAに対応する数少ない製品の1つ。また、GPUの動画再生支援にも対応する。同社によると、CPUに比べ、エンコード処理がおおむね10倍程度高速化される
関連記事【2009年4月9日】動画編集ソフト「LoiLoScope」がCUDAに対応
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/20090409_110619.html

 製品名vReveal
メーカーMotionDSP
製品ジャンル動画高画質化
価格4,838円
GPGPU機能本ソフトは、携帯電話などで撮影した低解像度/低画質な動画を高画質化することに特化したCUDA対応ソフト。この高画質化の処理をGPUで演算する。同社によると、CPUに比べ、おおむね5倍程度高速化される
関連記事【2009年3月25日】CIAも採用したCUDA対応動画高画質化ソフト「vReveal」を試す
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2009/0325/motion.htm

 製品名ATI Video Converter
メーカーAMD
製品ジャンル動画変換
価格0円
GPGPU機能本ソフトは、市販品ではなくATI Streamのデモ目的でAMD自身が無償で提供している動画変換ソフト。シンプルだが、無償のものとしては十分な機能を持つ
関連記事【2008年12月24日】【多和田】CPU以外のハードウェアを活用した動画トランスコードテスト【ATI Stream編】
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/1224/tawada161.htm

 製品名MediaShow Espresso
メーカーサイバーリンク
製品ジャンル動画変換
価格3,980円
GPGPU機能エンコーダがATI StreamとCUDAに対応する。なお、AMD環境では前述のAvivo Video Coverterをインストールしておく必要がある
関連記事【2009年4月30日】CyberLink、GPGPU対応の動画変換ソフト
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/20090430_167890.html

 製品名BADABOOM
メーカーElemental Technologies
製品ジャンル動画変換
価格2,903円
GPGPU機能本ソフトは、CUDA対応のコンシューマソフトとして初めて登場したもので、iPhoneなどの携帯デバイス向けに各種フォーマットの動画をH.264に変換する。サイトの情報は英語だが日本語にも対応する。同社によると、CPUに比べ、おおむね20倍程度高速化される
関連記事【2008年11月21日】【多和田】CPU以外のハードウェアを活用した動画トランスコードを試す【NVIDIA CUDA編】
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/1121/tawada158.htm
【2008年10月24日】Elemental Technologies、NVIDIA GPU対応動画変換ソフト
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/1024/elemental.htm

 製品名Move it
メーカーnero
製品ジャンル動画変換
価格39.99ドルより
GPGPU機能本ソフトは、BADABOOMと同様のCUDA対応動画フォーマット変換ソフト。2008年末時点では2009年2月に発売予定となっていたが、現時点では日本では一般販売されていないようだ。同社によると、CPUに比べ、おおむね5倍程度高速化される
関連記事【2008年10月16日】Nero、自動編集機能搭載の統合型ソフト「Nero 9」(AV)
-「iPodからPSP」などにデータ転送する「Nero Move it」も
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20081016/nero.htm

 製品名TMPGEnc 4.0 XPress
メーカーペガシス
製品ジャンル動画変換
価格9,800円より
GPGPU機能本ソフトのメインの用途は動画変換だが、各種編集やフィルター機能も豊富にある。CUDAについては、このフィルターとデコード部分に利用される。ユニークな機能として、ベンチマーク機能により、CPUとGPUどちらを使った方が良いかを計測できる。同社によると、CPUに比べ、最大4.5倍程度高速化される
関連記事【2009年5月18日】【西川】GPGPU/CUDAで快適動画編集入門
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/nishikawa/20090518_168541.html
【2008年11月21日】【多和田】CPU以外のハードウェアを活用した動画トランスコードを試す【NVIDIA CUDA編】
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/1121/tawada158.htm
【2008年9月10日】ペガシス、TMPGEncへのCUDA実装をデモ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/0910/pegasys.htm
【2008年9月10日】【NVISION08】TMPGEnc 4.0 XPressとPowerDirectorのCUDA対応版がデモ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/0827/nvision03.htm
【2008年8月26日】【NVISION08】ペガシス、「TMPGEnc 4.0 XPress」にNVIDIA GPUエンコードを実装へ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/0826/pegasys.htm

製品名Total Media Theatre 3
メーカーArcSoft
製品ジャンル動画再生
価格9,950円
GPGPU機能本ソフトは、DVD/BD再生ソフトだが、DVDを1080pなどにアップスケールするプラグインである「SimHD」がATI StreamおよびCUDAに対応している。同社によると、GPUを併用することで、CPU負荷が65%程度軽減される。なお、Total Media Theaterユーザー向けにSimHD単体も1,975円で販売している
関連記事【2009年3月3日】【多和田】9800 GTX+のリニューアルモデル「GeForce GTS 250」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2009/0303/tawada165.htm
【2008年9月30日】【CEATEC】AMDがGPUによる動画アップスケールや新モバイルGPUをデモ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/0930/ceatec01.htm

 製品名CoreAVC
メーカーCoreCodec
製品ジャンルH.264デコーダ
価格14.95ドル
GPGPU機能本ソフトは、世界最速を謳うH.264のソフトウェアデコーダ。Professional版の機能としてCUDA対応がある。NVIDIAによると、CPUに比べ、8倍高速化されるという
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(2009年 6月 30日)

[Reported by 若杉 紀彦]