特集

AtomからCore m3への変更で性能+品質も高まる「GPD Pocket 2」

~Wade社長、日本サポートセンター開設を公言

GPDのGeneral Manager(実質社長)のWade氏(左)と、共同創始者で品質管理を行なうSky氏(右)

 深センGPD Technologyのクラムシェル型UMPC「GPD Pocket 2」が、本日よりIndiegogoでクラウドファンディングが開始となった。これに先駆け、GPDのGeneral Managerを務めるWade氏、および品質保証管理を行なっているSky氏が来日。代理店を務める株式会社天空の協力を得て、両氏にインタビューを行なう機会を得た。

 PC Watchでは1月にも、ポータブルWindowsゲーム機「GPD WIN 2」のクラウドファンディング開始に合わせてインタビューを行なった(記事:初代を全面否定して生まれたポータブルWindowsゲーム機「GPD WIN 2」参照)のだが、じつはそのときすでにGPD Pocket 2の開発が進んでいたのだ。

 あれから半年、ついにGPD Pocket 2が発表された。本インタビューでは、パッと見た外観や製品紹介ではわからないGPD Pocket 2の特徴を深掘りしていく。

苦労を重ねたポインティングデバイス

GPD Pocket 2

――GPD Pocket 2が発表されましたが、これはどういう位置づけですか。GPD Pocketの上位ですか、後継ですか。

Wade:GPD Pocketの後継製品となります。GPD Pocket 2の量産開始のタイミングで、GPD Pocketの量産を終了します。よって正統後継という位置づけですね。

 製品発売までまだ期間があるし、発表されたばかりなので、本格的なユーザーからの反響はまだまだこれからといった印象です。ただ、5月のティザー公開当初はポインティングデバイスを廃止すると決めていましたが、ユーザーからのどうしても付けてほしいという要望が多数寄せられ、急遽、光学式のものを付けることになりました。

――なぜ付けたのですか。

Sky:社内で仕様策定するのは4人で、ポインティングデバイスが必要だという意見は私だけで、3:1と不利でした(笑)。私の考えは「Windows PCとして使うなら必須だろう」と単純でしたが、ほかの3人は「付けなくてもタッチでいけるのではないか」、「ユーザーがマウスを使えば良いのではないか」、「使い方がわからないユーザーもいるのではないか」といった考えでした。

 製品のコンセプトは往々にしてシンプルに考えたほうが良いということが、ユーザーからの声で明らかになりましたね。

Wade:しかしすでにユーザーから多数の要望を頂いていて、ポインティングデバイスをなくしたことによる顧客の流失は目に見えていたので、断崖絶壁に立たされたわけです。

 ただ、ポインティングデバイスを付けると言っても簡単ではありません。この光学式のポインティングデバイスを製造しているサプライヤーは世界で2社しかないのです。過去にNetWalkerやBlackBerry、ThinkPad Tablet 2のオプションのキーボード、ポータブックなどで採用例がありますが、製造元を探すのに苦労しました。

 しかし、人間は断崖絶壁に立たされると「火事場の馬鹿力」が発揮されると言いますか、なんとかしてサプライヤーを見つけることができました(笑)。それで搭載に至っているわけです。

 当初は7月の出荷を予定していましたが、ポインティングデバイスを付加したことによる設計の修正が入り、それで10月近くにずれ込んだというのもあります。

本体右上の光学式ポインティングデバイス(スライドは14日に開かれたGPDユーザーイベントより)
左クリックと右クリックボタンも装備する

――ユーザーとしては、やはりスイートスポットであるG/H/Bキーのあいだに搭載してほしかった感はありますが。

Wade:ポインティングデバイスは小さな部品でありますが、ある程度高さがあります。GPD Pocket 2に関しては搭載が決まったのはすでに筐体と基板などのデザインが決まってからだったので、G/H/Bのあいだに搭載するとなると、筐体やキーボードのみならず、マザーボード、バッテリの配置を含めて大幅に変更しなければなりません。これは現実的なプランではないのです。

 加えて、光学式のポインティングデバイスはスティック型とは異なり、移動させたい方向に倒すだけでなく指をスライドさせなければなりません。この場合、G/H/Bのあいだに配置するとなるとキーの押し間違いを誘発させるので、良い選択肢とは言えません。

Sky:ちなみにスティック型のポインティングデバイスはさらに高さがありますので、GPD PocketのようなフォームファクタでG/H/Bのあいだに置こうとすると、マザーボードやバッテリのスペースを圧迫して、トリッキーな設計になる要素が増えます。いまのところ、光学式のポインティングデバイスがもっとも現実的だと考えています。

GPD WIN 2以上に完成度が高まったCore m3システム

――今回、CPUをAtomからCore m3に変更されましたね。搭載にあたって苦労した点はありますか。

Wade:GPD WINはプラスチック筐体なのですが、GPD Pocketは金属筐体です。プラスチックだとパーツの発熱が筐体に伝わりにくいので、より多くの熱を許容しやすいのですが、金属筐体だと熱を伝わりやすくで、熱すぎるとユーザーの体験を下げてしまいます。表面温度をいかに上げないようにするのか、苦労して設計しました。全体的な熱設計としては、GPD WIN 2からさらに向上/改善していると言えます。

 また、Core m3はTDPが4.5Wなのですが、性能を十分に引き出すためにはファンの搭載が欠かせないと考えています。Surfaceではファンレスを採用していたりしますが、これだと性能を十分に引き出すことはできません。われわれはCPUのポテンシャルを十分に活かすために、ファンを搭載することにしました。

 ちなみにGPD Pocketではファンの音が気になるというユーザーの声が多かったので、今回はファンを1ボタンで停止させることができます。このモードはファンが停止するだけで、CPU性能に制限をかけていません。発熱が多い処理を継続すると性能が低下しますが、テキストを打つだけ、動画を見るだけといったニーズに十分対応できると考えています。

Sky:Atomはビジネスソフトがある程度動くものでしたが、Core m3はユーザーがこれまで使い慣れたデスクトップPCとさほど遜色なくこれらのソフトを動作させることができます。GPD Pocketでは「かろうじて動作可能」だったものが、GPD Pocket 2では「より実用性が高まっている」と言えます。

CPUが約2倍の性能となった。シングルコア性能は大きく高まっており、一般的なビジネスアプリケーションの体感速度は大きく向上する
従来のAtom x7-Z8750の内蔵GPUにとって1,920×1,200ドットの解像度はギリギリ要求を満たせる程度であったが、Core m3-7Y30は余裕で駆動できるという

――GPD Pocket 2はGPD Pocketと平行して生産するのでしょうか? それともGPD Pocketは終息に向かうのでしょうか。

Wade:GPD Pocket 2はGPD Pocketの後継なので、残念ながらGPD Pocketの生産を終了します。GPD Pocket 2の価格は少し向上しますが、これにはユーザーとわれわれ双方にとってメリットがあります。

 ユーザーから見た場合、システムの安定性が飛躍的に向上します。表面的には性能が2倍になっているのですが、以前お伝えしたとおり、Atom x7-Z8750は“健康児”ではなく“病弱児”であり、Intelから見放されたCPUです。多くのエラッタがあり、公式な改修もされず放置されたままでした。われわれが多く手を加えて「辛うじて生かした」感じですね。

 その点、Core m3-7Y30はIntelが力を入れているCPUであり、問題点はほぼありません。Intelから開発サポートが受けられるほか、リファレンス設計案も充実しており、成熟しています。

 システムが遅い、速いはベンチマークやユーザー体験ですぐにわかりますが、システムが不安定になったり、ブルースクリーンエラーになったりする場合、ユーザーはそれがなんの問題なのか切り分けることは困難で、(換装不能な)CPU不良だと断定するのはほぼ不可能で、Atomはこういった問題を抱えていたとしても表面化しづらいのです。その点、Core m3に移行するだけでも、システムの安定性が高まります。

 そしてこの安定性の高さはわれわれにとってもメリットになります。じつは、これまでに累計500個超のAtomを不良交換しました。この不良率の高さはわれわれの悩みのタネです。Atomはシステムが特殊で、チップだけ換装してしまうと、BIOSが起動しないし、OSの再セットアップもできません。マザーボードの交換となり、ユーザーデータを維持したままの修理が困難を極めます。一方、Core m3は一般的なPCと同じくチップだけの交換が可能となっており、修理が簡単になります。

――とは言え、価格セグメントが異なるので、せめて月産100台程度継続できませんか。

Wade:われわれは、今年(2018年)は製品の品質を上げ、ブランドイメージを良くする戦略を堅持していこうと思っています。旧製品は確かにエポックメイキングでしたが、品質の悪さで離れていったユーザーが少なからず存在します。多少価格が高くても品質を上げ、ブランドイメージの改善に努めたいと思っています。そのため、旧製品は完全に生産終了します。

 GPD Pocket 2はGPD WIN 2の基礎の上で、技術を改めて“修練”したものです。なにか多くの機能を加えたり大きな変更を加えたりしたわけではありません。GPD Pocketから性能の向上や使い勝手の向上はユーザーの目に見える部分としての改善ですが、品質の向上が最大の課題だと言えますね。

 ちなみに、なぜGPD WIN 2と同じSSDを採用せず、eMMCを採用するのかという声を頂いていますが、これも放熱のためです。SSDは確かに高速ですが発熱も多く、金属筐体だとユーザーが熱く感じることが少なくないでしょう。eMMCなら発熱が少なく、消費電力あたりの性能のバランスに優れていると思います。なお、GPD Pocket 2に採用されているのは128GBのeMMCですが、これはハイエンドスマートフォンに採用されるクラスのもので、コストとしてはむしろSSDより高くついています。これも品質に追求した結果ですね。

eMMC 4.2から5.0へのアップデートで速度は2倍に向上。なお、部品価格は128GBのSSDよりも高いという

改善されたキーボード

――前回、GPD Pocket 2では価格の高い台湾のメーカーのものを使うと明言していましたが、達成できましたか。

Wade:はい。60万人民元(約1,000万円)払って型を作ってもらいました(笑)。キーハイト+ストロークも3.5mmに縮め、アクチュエーションポイントも短縮して反応性を高めました。ただ、採用したのはいいのですが、思ったほどタッチ感が良いわけではない気がします。

――(試作機でタイピングしてみる)うーん、これは確かにあっさりとした味付けで、パタパタしている印象がありますね。とは言え慣れてしまえばまったく問題ないと思います。GPD Pocketのキーボードにも慣れましたし、UMPCのユーザーの多くはこうした仕様を飲み込むのも早いと思いますよ。

Wade:なるほど、まだサンプル機の状態ですので、量産ではまた少し変わってくると思いますが、このあたりは市場の反応も気になりますね。

――配列はかなり変更しましたね。

Wade:はい、縦12列から11列となり、かなりゆとりを持った配列になったと思います。CapsLockキーの移動で、A/S/D/F……の列の窮屈さも解消されていると思います。

――ただA/S/D/F……の列だけキーピッチがほかと異なるのが気になります。Lの上は本来Oですが、Pになっていますね。

Wade:確かにそうですね。キーピッチをちょっと詰めて、右側のキーの位置を改善し、もう少し大きいEnterキーを採用できたかもしれません。

――タイピングしてみるとさほど、じつはさほど違和感を感じないのが不思議ですけどね。この列のキーピッチが広がった分、ホームポジションに指を置く余裕ができている気がします。

Wade:キーピッチについてはキーボード担当に改めて聞いてみますが、そういう意図があったのかもしれませんね。

縦12列から11列となったキーボード。これによりゆとりが生まれた。また、W/A/S/Dキーのいびつさは大きく改善されている

苦労した電源周りのディスプレイ周り

――GPD Pocket 2の設計で苦労した点はなんでしょうか。

Wade:大きく2つ挙げられます。1つ目はディスプレイ信号の変換です。GPD Pocket 2に採用されているディスプレイは、本来タブレットやスマートフォン向けのもので、MIPI(Mobile Industry Processor Interface)と呼ばれるインターフェイスが採用されています。しかしCore m3プロセッサではこのMIPIに対応しておらず、eDPしか備えておりません。よって、変換が必要になってきます。

 当初は中国製のコントローラを採用していましたが、1つにコントローラの面積が比較的大きかったこと、もう1つに消費電力が高かったことがネックでした。結局、部品調達がいろいろ調べて、東芝製のものを採用することで問題を解決しましたね。

液晶ディスプレイは従来と同じシャープ製のWUXGA対応7型。MIPIインターフェイスのため、eDPからの変換が必要となった

 もう1つは電源周りのソリューションです。GPD WIN 2に充電するためには、ACアダプタやモバイルバッテリがUSB PD 2.0に対応する必要がありました。一方でGPD Pocket 2は電源周りの設計を一新し、5V/2A程度出力を持ったACアダプタやモバイルバッテリでも本体への充電ができるようになっています。これにより電源の選択肢が大幅に広がっており、市場にあるあらゆる充電ソリューションに対応しました。

 USB 3.0のType-Aポートも1基増えていますが、電力システム周りの改修により、USB HDDといった消費電力が高いデバイスをつなげても問題なく動作するようになっています。

――それは目に見えない改善ですね。

Wade:しかもこの改善によって、USB Type-Cのドッキングを利用しながらの充電に対応できるようになりました。

 今回、本体のインターフェイスからMicro HDMIを省いています。フルのHDMIならともかく、Micro HDMIを利用するとなると結局変換が必要となり、USB Type-Cで映像出力できるならそれほど大きく使い勝手が変わるわけではありません。

 Micro HDMIこそ省いているものの、今回の修正により、HDMIに出力しながらの充電できる機能も維持しているわけで、ビジネスのシーンにおいて、従来どおりプレゼンテーションなどに活用していただけると思います。

USB Type-Cは市場にあるあらゆるUSB充電器に対応できるという
USB Type-Cのドックを使いながらの充電にも対応した

日本でサポートセンターを開設へ

――UMPCというとニッチな市場ですが、GPDにおける日本の売上はどうですか。

Wade:日本は中国とほぼ同等規模ですね。よってわれわれは日本のユーザーの声も大切にしていきたいと考えています。

――つまり、いまも日本ユーザーの声も多く反映していると。

Wade:じつはそれが課題となっています。われわれは中国のインターネットのフォーラムなどを通してユーザーの声の多くを吸い上げていますが、日本のユーザーから声を聞くチャンスがあまりありません。今回、株式会社天空の協力を得てユーザーイベントを開催できましたが、このタイミングは日本ユーザーの声を聞くいい機会だと思っております。

 また、今年中に日本でサポートセンターを開設しようと思っています。これによって日本のユーザーへの修理対応時間を短縮するだけでなく、日本ユーザーのニーズを吸い上げる役目を果たせるのではないかと考えています。

中国の大手eコマースサイトが生んだ中小企業の成功

――1月のインタビューのとき、30人規模の会社だとお聞きしましたが、あれからなにか変化はありますか。

Wade:変化はないですね。開発チームは約半数の15人、営業チームは残り半分です。GPD Pocket 2の開発はおおむね済んだので、新しい製品の構想を練っていたり、新しいプロジェクトに着手していたりといった状態です。

 われわれは新しい人材を応募しようとしたりしても、今の時代ではもう難しいです。3年前ぐらいまでは、公募を発表しただけでメールの受信箱がいっぱいになったりしましたが、いまは私が直々に話をしてお願いをして……といった感じで、人材を集めるのに苦労しますね。

 深センに若手が集まらなくなったのも課題です。会社の向かい側のレストランも、これまでは若者がバイトしていましたが、いまは40~50代です。深センは若い街のはずなのに……。いまはストリーマーといった新しい職業が生まれてきているので、社会進出が少なくなってきているのかもしれませんね。

――わずか30人規模で、大企業に匹敵するほどの製品を開発できるのはホントに頭が下がります。深センはこういった中小企業が多いので、ライバルが登場したりすることを危惧していませんか。

Wade:ご存知のとおり、中国ではPC産業はすでに「夕陽産業」(筆者注:西に沈み行く太陽をなぞらえた比喩で、斜陽産業のこと)と呼ばれていて、参入するプレイヤーはさほど多くありません。

 じつは、PCのみならず、これはスマートフォンにも言えることで、中国のスマートフォンブランドの多くはすでに篩いにかけられた後で、生き残りは多くありません。深センは世界の工場だと言われますが、これからスマートフォンやPC市場に参入しようとする企業はないでしょう。

Sky:製品のコモディティ化はかなり進んでいるので、他社と2つや3つ相違点を挙げられれば、もはや製品の差別化ができたとも言えます。そのなかで求められるのは製品の品質だったりするので、新興企業には難しいですね。

――とは言え、そのなかでもGPDは比較的新しいブランドで、成功を収めていますよね?

Wade:GPDはまだまだ成功した企業だとは言えませんが、ここまで成長できたのは比較的運に恵まれてきたものだと思ってます。

 われわれは2014年に事業方針の転換を決めました。すなわちOEM設計を専門とする技術開発の会社から、GPDという自社のブランドを立ち上げ、製品の開発から部品の調達、工場への製造委託、それから販売という、IDM(垂直統合型)に近い一連のサプライチェーンを構築する企業への変革です。

 このとき私は、今のようなOEM事業を完全に切り捨てる方針を提案しましたが、Sky氏はいくつかの主要OEM事業を残す方針で、意見は対立し、屋上で口論になったりしました。確かにいままで構築してきたOEM事業をバッサリ切り捨てるというのは大きな決断でしたが、自社ブランドの製品に注力するためにはそうせざる得ません。この決断に社運をかけたとも言えますね。

 もう1つは、中国AlibabaグループのTaobaoや、JD.comといったeコマースサイトの登場ですね。これによって企業とエンドユーザーの距離はほぼゼロになり、エンドユーザーが直接、われわれのような中小企業が手がけた製品を目にする機会を得ることができるようになりました。

 これらのeコマースサイトが登場するまでは、製品は卸や販売店といった長いサプライチェーンを経てエンドユーザーの目に届きます。卸業者は利益を重視するので、われわれのような中小企業が開発したニッチな製品を買ってくれません。販売店に置かれなければ、エンドユーザーがその存在を知る由もなく、製品を開発する原動力にもなりません。そういった意味ではAlibabaとJD.comの登場はまさに革命的で、われわれのような中小企業が発展する救いとなりました。

――それまでも、Amazonのようなeコマースサイトがあったと思うのですが、TaobaoやJD.comと何が違うのでしょうか。

Wade:日本やほかの国のAmazonはどうなのかわかりませんが、少なくとも中国のAmazonは手数料が高く、個人レベルではゼロ、企業でも数%で済むTaobaoやJD.comと比較になりませんね。

 また、Amazonは大企業/有名ブランドをかなり優遇していて、製品ページでかなりの宣伝やプロモーションを行なうことができますが、中小企業の製品ページには写真を上げられる点数や説明に費やせる文字数など、さまざまな制限が課せられていて、思うように製品をアピールできません。

 その点、TaobaoやJD.comは、もちろんある程度不正が行なわれないようチェックする仕組みがあるのですが、規制がかなり緩く、製品ページ上で製品を思う存分魅力的にアピールすることができます。これも中小企業の成功を支えているのだと思います。

――本日はいろいろ興味深い話をありがとうございました。

もっとも実用的なUMPCへ

 さて、今回も大変興味深い話を聞けたのだが、短時間ながらGPD Pocket 2の量産前試作機に触れることができたので、簡単にインプレッションをお伝えしておこう。

 まず性能については文句なしだ。GPD WIN 2をレビューしたときにも、Atom x7とはまったくことなる高速なレスポンスをすぐに体感できたのだが、これはGPD Pocket 2にも同じことが言える。GPD Pocketで性能に不満を覚えているのなら、GPD Pocket 2でかなり改善されることだろう。

 キーボードについては、確かにWade氏が言うとおり、若干違和感を覚えるのは確かであった。従来から0.5mm減の割には若干ストロークが浅く感じられるのと、従来と比較して若干ドライな印象。また、底打ちしたときの騒音が若干大きいのも気になる。とは言えまだ試作機なので、改善される可能性もあるし、慣れてしまえばこれはこれで悪くなさそうな印象ではある。

 さて、賛否両論となりそうな光学式ポインティングデバイスだが、少なくとも本製品に採用されているものに関しては、筆者がいままで試してきた光学式のなかでもっとも完成度が高いものという印象である。

 特徴の1つはかなり短いリフトオフディスタンス。光学式の多くは、せっかく指でポインタをボタンの上にあわせても、指を離した途端にちょっとズレたりして「あぁそこじゃない!」と思ったりして再調整しなければならないが、GPD Pocket 2に採用されているものはそのような挙動にはならず、指を離した途端、すぐに反応しなくなる印象だ。感覚としては光学式ポインティングデバイスを使っているというより、1cm四方程度の静電容量式の超小型タッチパッドを使っている印象で、キビキビ動いて気持ちいい。

 もう1つは、この光学式ポインティングデバイスデバイス自体が物理ボタンを兼ねており、押し込むことで左クリックとして動作する点。表面を軽くタッチしても左クリックとして動作するようになっているが、押し込むことでより確実に左クリックできるのだ。指を離すことなくクリックできるので、ポインタの座標がずれてしまうことを最小限に防げるわけだ。採用されているパーツのメーカーについては現在問い合わせ中なのだが、この選択は正しかったと言える。

 キーボードのホームポジションから手を動かさずにポインタ移動ができるという意味では、たしかにG/H/Bのあいだに配置してもいい気がするが、電車のなかで立ったまま両手でガッチリホールドして操作するのであれば、本機の位置の方が望ましい。後からつけたので、仕方がない部分もあるのだが、過去にUMPCを使ったことのあるユーザーであれば、このあたりの飲み込みにさほど苦労しないだろう。

 また、放熱も底面吸気/ヒンジ部隙間への排気となったので、両手で掴むスタイルも現実的となった。欲を言えば、両手で左右を掴んだままのスタイルでより高速にスクロールできるソリューションが欲しかったところだ。

 デザインに関しては大きく改善したと言ってよく、エッジがしぼんでいくくさび形の側面は非常にスタイリッシュとなった。全面にあった指を入れるための溝は廃したが、代わりにディスプレイ側の周囲に取っ掛かりを作っており、使い勝手は損なわれていない。また、GPD Pocketのヒンジ部底面は、手で触ったときに若干引っかかるようなエッジ加工となっていたが、この問題も解消されている。

 非常に短期間の試用であったため、安定性や品質について評価できる立場ではないのだが、仮にWade氏が求めていた品質に達しているのであれば、GPD Pocket 2は間違いなくUMPC史上最高で、かつ史上でもっとも実用的な製品となる。いまから10月の出荷が楽しみでならない。

従来とおなじく一切のロゴがない天板
左側面はUSB 3.0 Type-A、3.5mmミニジャック、microSDカードスロット
右はUSB 3.0 Type-C、USB 3.0
左が筆者所持の従来のGPD Pocket
キーボードは縦12列から11列になった
右が従来のGPD Pocket。GPD Pocket 2では排気口がヒンジ部に隠された

 ちなみに14日に開かれたユーザー向けイベントでWade氏は、GPD WIN 2がたまにスリープから復帰してしまい、バッテリを余計に消耗してしまう問題について言及があった。同氏によると、これはちょっとした衝撃などによりキーボードなどが反応してしまい、それによってスリープから復帰してしまうものだとし、ファームウェアの改善により解消する予定だとした。

 また、Thunderbolt 3を備え外付けGPUを接続できるようにした製品や、7型より少し大きめの製品に関しても開発意欲を示していた。GPD WIN 2とGPD Pocket 2はロングラン製品となりそうで、次期までにラインナップやバリエーションを増やすようである。UMPC好きのユーザーなら、今後もGPDの動向から目が離せないだろう。