やじうまPC Watch

CPUダイ剥き出しのまま装着を可能にするMSIのキワモノマザー

 MSIは、Facebookページで次世代のマザーボードの機能の一部を徐々に明らかにしている。この中で、最上位モデルと見られる「XPOWER AC」のCPUソケットは特に注目すべき機能だ。

 自作ユーザーなら既にご存知であろうが、IntelはIvy Bridge世代から上位モデルでも、CPUのヒートスプレッダとダイの接着にグリスを採用している。このためオーバークロックが可能なKモデルでも、このグリスが熱伝導のボトルネックとなり、高いクロックを達成しにくかった。

 そこでより高いクロックを達成したいユーザーは、このヒートスプレッダを一旦取り除く“殻割り”作業をして、性能の高いグリスに塗り替えたり、液体金属で満たしたりして、ダイとヒートスプレッダの熱伝導の改善を図ろうとしている。それでも、ヒートスプレッダからヒートシンクの間でグリスが必要になるため、熱伝導の媒介が2つ挟まることになる。

 よって、ヒートスプレッダを除去し、ダイを直接冷やせればもっとも効率が良いのは言うまでもない。しかしIntelのソケットはAMDのソケットとは異なり、リテンションメカニズムがヒートスプレッダをしっかり押さえることでCPUが固定されるので、ヒートスプレッダなしではCPUが固定できなかった。

 そこでMSIのXPOWER ACでは、そのCPUソケット自体に工夫を凝らすことで、ダイ剥き出しの状態でも装着できるようにした。ソケットの名称は「Delid Die Guard」。ヒートスプレッダなしでもしっかりソケットに押し付ける機構となっているだけでなく、ヒートシンクを載せた時にその荷重でダイが欠けないよう、ガードする厚みになっていると見られる。これによって、ダイを直接ヒートシンクで冷やせるようになる。

 写真を見る限りレバーがなく、既存のリテンションメカニズムのネジ穴を使ったネジ止めによる装着になると見られる。また、ヒートシンクによっては、底面が完全な平面ではなく、ヒートスプレッダへの着圧も考えて盛り上がっているような製品も存在するため、ダイ欠け以前に着圧でダイ全体を破損させてしまう可能性もある。

 当然、CPUを“殻割り”した時点でCPUの保証が切れるので、チャレンジするユーザーはそれなりの覚悟があるとは思う。また、次期の第4世代Coreプロセッサ「Devil's Canyon」ではそもそもグリスの問題が解消されるとしているので、どちらかと言えば既存のHaswellの限界を引き上げる機能だと言えそうだが、いずれにしても、キワモノ感満載な装備である。

(劉 尭)