やじうまPC Watch

2018年後半、一気に進むデスクトップCPUの多コア化

IntelのCOMPUTEX基調講演で使われたASUSのシステム。メモリが左右に3本ずつ、合計6本見える(基調講演のビデオより)

 PC WatchではCOMPUTEX TAIPEI 2018の期間中、何回かに分けてIntel今後のCPUの予定をお届けしているが、ここでは筆者がいくつかのOEMメーカーへの取材で得られたデスクトップ向けCPUの情報を改めて整理してみたい。

 筆者の取材ルートはほかの記事とは異なるため、若干の相違がある。まず、筆者はIntelから直接ロードマップを見聞きしているわけではない。2つ目に、基本的にノートPC向けCPUの情報について入手できていない。そして3つ目に、不確定情報について筆者独自の推測を入れている点である。そのためこの記事は不正確な内容になっている可能性があることをあらかじめお断りしておく。

 ほぼ確定で言えるのは、コンシューマのメインストリーム向けのLGA1151において、9月頃に8コア版の“Coffee Lake Refresh”が投入される予定であること。Coffee Lakeは2017年に投入され、Kaby Lakeから2コア増え6コアとなっているが、AMDは4月に改良版の第2世代Ryzenを投入している。とくにマルチコア性能ベンチマークの一部ではAMDに後れを取っているため、コア数を増やさざる得ない状態になっているのだろう。

 ただ、このCoffee Lake Refreshはコンシューマに投入される以前に、まず7月にXeon Eシリーズで展開される見込み。デスクトップ向けXeon Eシリーズはいまのところ4コアしかないので、プロシューマがコンシューマよりコア数が少ないといういびつな関係になっており、これの解消が先になると見られる。

 9月以降に予定されているエンスージアスト向けの“Basin Fall Refresh”だが、筆者が入手した情報によると、これは最大28コアにはならず、4コア増の22コアにとどまるという。Basin FallはIntel X299チップセットを中心としたLGA2066プラットフォームのコードネームで、実際に搭載されるCPUはSkylake-XまたはKaby Lake-Xだ。

 一方、COMPUTEXのIntel基調講演に登場した28コアのPCは2つあり、1つはASUSのROGのチーム、もう1つはGIGABYTEのAROUSのチームが開発したものだ。どちらのシステムも、Intelが公開しているビデオを止めてゆっくり観察すると、メモリが6本または12本であることがわかる。つまり、メモリは6チャネルなのだ。そう、これはいま、最大28コアのXeonスケーラブル・プロセッサで展開しているPurleyプラットフォームを、コンシューマに下ろそうとしているものだ。PurleyプラットフォームのソケットはLGA3647で、LGA2066のBasin Fallとは異なる。

こちらはGIGABYTEの28コアシステム。こちらはメモリが左右に6本ずつ、合計12本見える(基調講演のビデオより)

 ただ、いまのところPurleyプラットフォームが本当にコンシューマに降りてくるかどうかは不明である。基調講演で使われていた28コア×5GHzのシステムは、コンプレッサまでも使った超大掛かりなシステムであり、少なくともいまの14nmプロセスのままでは実現が難しい。また、実際に搭載されるCPUは果たしてなんなのかは、Intelのみぞ知る領域である。

 話をBasin Fall Refreshに戻すが、いまのところSkylake-SPの28コアをそのままLGA2066に詰め込むのは厳しいようだ。その妥協点が22コアあたりであると見られている。なお、このBasin Fall RefreshはTDPが引き上げられる予定であり、そのためSupermicroは対応TDPを300Wまで引き上げた新しいマザーボード「C9X299-PG300」を、新CPUとともに投入する予定だとみられる。

 ただ、Basin Fall Refreshは9月という比較的近い時期に投入される製品であるのにもかかわらず、「話を聞いたことがない」と口をそろえるOEMメーカーもおり、まだ不確定要素がある。

 しかし、32コア/64スレッドという超強力な第2世代Ryzen Threadripperは、すでに2018年第3四半期の投入が決定しており、Intelが18コアのまま指を咥えて待っているわけにはいかない。10nmプロセスの立ち上がりがうまくいっていない以上、とりあえず対抗するのであれば、コア数とTDPを引き上げるしか対策はなさそうだ。

 そんなわけで、2018年下期以降のデスクトップCPUは、

・LGA1151で8コア導入へ、ついにメインストリームは8コアに塗り替え
・LGA2066はRyzen Threadripper対抗で22コアに増加か

 の2つがトピックとなり、

・基調講演の28コアはLGA3647、当分コンシューマに降りてくることはなさそう
・Cascade Lake-Xは2019年後半に延期、Intel X299はしばらく安泰

 あたりを覚えておけば良さそうだ。

 AMDのRyzenがもたらした多コアCPUの潮流だが、2018年下期はさらに加速していくと思われる。