【VLSI 2009レポート】
22nmの量産を目指した半導体の開発成果を披露

VLSIのサイト

2009 Symposium on VLSI Technology
会期:6月15~17日
会場:京都市
   リーガロイヤルホテル京都
2009 Symposium on VLSI Circuits
会期:6月16~18日
会場:京都市
   リーガロイヤルホテル京都



 半導体の研究開発コミュニティでは、12月の国際電子デバイス会議(IEDM)と2月の国際固体回路会議(ISSCC)が開発成果を披露する2大イベントとして定着している。いずれも冬季に開催されるイベントだ。これに対して毎年夏季に、IEDMとISSCCの縮小版ともいえる国際会議が開催されている。それが、半導体のデバイス技術とプロセス技術に関する国際会議「Symposium on VLSI Technology」(VLSI Technology)と、半導体の回路技術に関する国際会議「Symposium on VLSI Circuits」(VLSI Circuits)である。

 VLSI TechnologyとVLSI Circuitsは毎年6月に同じ会場で日程をずらして開催されてきた。両者を総称して「VLSIと年号の組み合わせ」で表すことが多い。2009年の今年は、「VLSI 2009」となる。開催場所は日本と米国で1年交代と決まっており、日本では京都、米国ではハワイと会場もずっと同じである。今年は京都開催で、会場は例年と同様にリーガロイヤルホテル京都となっている。

 VLSI TechnologyとVLSI Circuitsは、IEDMおよびISSCCの2大イベントに比べると規模は小さいものの、プロセッサやメモリなどの開発動向をこまめにウオッチするためには知っておいた方がよい学会である。またデバイス技術の開発者と回路技術の開発者が同じ会場で顔を合わせられる、貴重な機会ともなっている。

 それではVLSI 2009の概要を紹介しよう。

●VLSI 2008の初日(6月15日):抵抗変化型メモリの高密度化技術

 6月15日はVLSI Technologyの初日である。午前の始めは例年と同じく、プレナリセッション(セッション1)となっており、2件の基調講演が予定されている。脳神経科学の発展に関する講演と、大規模コンピューティングに関する講演である。

 午前の後半は、歪みシリコン技術のセッション(セッション2A)と抵抗変化型不揮発性メモリのセッション(セッション2B)となっている。日立製作所が相変化型不揮発性メモリ(PCM)の高密度化技術(講演番号2B-1)を、Samsung Electronicsが抵抗変化型不揮発性メモリの高密度化技術(講演番号2B-2)をそれぞれ報告する。

 昼食休憩を挟んで午後の前半は、積層ゲート技術のセッション(セッション3A)と雑音(ランダムテレグラフ雑音とショット雑音)のセッション(セッション3B)がある。ルネサス テクノロジとパナソニックが共同で、28nmの高誘電率膜/金属ゲート技術の開発成果を披露する(講演番号3A-2)。

 午後の後半は、3次元集積化技術のセッション(セッション4A)とゲルマニウムMOS FETのセッション(セッション4B)が予定されている。

●VLSI 2009の2日目(6月16日):16層の積層大容量フラッシュメモリ

 6月16日はVLSI Technologyの2日目、VLSI Circuitsの初日である。午前の始めは、VLSI TechnologyではナノワイヤFETのセッション(セッション5A)とソースドレインコンタクト技術のセッション(セッション5B)がある。

 VLSI Circuitsではプレナリセッションとなっており、2件の基調講演が予定されている。1件はナノエレクトロニクスの将来展望、もう1件は脳の情報処理を支援する回路技術に関する講演である。

 午前の後半はVLSI Technologyでは、ばらつきに関するセッション(セッション6A)とCMOSの次を狙うデバイスに関するセッション(セッション6B)となる。VLSI Circuitsではクロックデータリカバリ技術のセッション(セッション2)と不揮発性メモリおよびヒューズメモリのセッション(セッション3)、バイオメディカルのセッション(セッション4)がある。不揮発性メモリのセッションでは、東芝が1層当たり1Gbitのフラッシュメモリセルを16層重ねる3次元集積フラッシュメモリ技術を発表する(講演番号3-1)。それからヒューズ方式の高密度メモリ技術を、Intel(講演番号3-4)とTSMC(講演番号3-5)がそれぞれ報告する。

 昼食休憩を挟んで午後の前半には、VLSI TechnologyとVLSI Circuitsの共同セッションが予定されている。「ハイライト」と名付けられたセッションである。このセッションではまず東芝が、16層を積層した3次元集積技術とマルチレベルセル技術をまとめた高密度のNANDフラッシュメモリ技術について述べる(講演番号7-1)。続いてGLOBALFOUNDARIESとIBMの共同研究チームが、22nmの高誘電率膜/金属ゲート技術を発表する(講演番号7-2)。それからIBMとGLOBALFOUNDARIES、Freescale Semiconductorの共同研究チームが、32nmのSOI高誘電率膜/金属ゲート技術を報告する(講演番号7-3)。

 午後の前半はこのほか、VLSI Circuitsのの一般講演がある。送信受信回路技術のセッション(セッション5)とバイオメディカルセンサーのセッション(セッション6)である。バイオメディカルセンサーのセッションでは、Massachusetts Institute of Technology(MIT)が脳波測定用の低消費電力LSIを発表する(講演番号6-3)。

 午後の後半は、VLSI Technologyではばらつきに関するセッション(セッション8A)とソースドレインエンジニアリングのセッション(セッション8B)となる。VLSI Circuitsでは、シグマデルタ方式アナログデジタル変換技術のセッション(セッション7)、不揮発性メモリ技術のセッション(セッション8)、データ接続技術のセッション(セッション9)が予定されている。不揮発性メモリのセッションでは、日立製作所と東北大学が32Mbitのスピントルクメモリ技術を共同発表する(講演番号8-4)。

●VLSI 2009の3日目(6月17日):半導体チップの経年変化を補償

 6月17日はVLSI Technologyの最終日、VLSI Circuitsの2日目である。午前の始めは、VLSI Technologyではプロセス技術のセッション(セッション9A)と次世代トランジスタ技術のセッション(セッション9B)がある。VLSI Circuitsでは前日に続いてプレナリセッションとなっており、2件の基調講演が予定されている。1件はモバイル機器の将来像を展望する講演、もう1件は人体を伝送媒体とする通信技術に関する講演である。

 午前の後半は、VLSI TechnologyではNANDフラッシュメモリのセッション(セッション10A)と探索的研究のセッション(セッション10B)が開催される。NANDフラッシュのセッションでは、Samsung Electronicsが3次元積層技術を報告する(講演番号10A-2)ほか、東芝が20nmノードのMONOS方式マルチレベルセル技術を発表する(講演番号10A-3)。

 VLSI Circuitsでは、信頼性とセキュリティに関するセッション(セッション11)とクロック発生技術のセッション(セッション12)がある。信頼性のセッションでは、デバイス性能の経年変化を電源電圧やクロック周波数などで調整する試みをNXP Semiconductor(講演番号11-2)、Intel(講演番号11-3)、NEC(講演番号11-4)がそれぞれ発表する。

 昼食休憩を挟んだ午後の前半は、VLSI TechnologyではCMOSデバイスのセッション(セッション11A)と新メモリ技術のセッション(セッション11B)が予定されている。CMOSのセッションではTSMCが28nmの低消費電力CMOS技術(多結晶シリコンゲート)を発表する(講演番号11A-2)ほか、東芝が22nmの高誘電率膜/金属ゲート技術を報告する(講演番号11A-4)。新メモリ技術のセッションでは、東芝が128Mbitの強誘電体不揮発性メモリ技術を発表する(講演番号11B-1)。

 VLSI CircuitsではDRAMおよびインタフェース技術のセッション(セッション13)と、離散時間アナログ技術に関するセッション(セッション14)がある。DRAMのセッションでは、Samsung Electronicsが高密度DRAMセル技術(講演番号13-1)と低電圧埋め込みDRAMセル技術(講演番号13-2)を発表する。

 午後の後半は、VLSI TechnologyではフローティングボディDRAMおよびMRAMのセッション(セッション12A)と高移動度デバイスのセッション(セッション12B)が予定されている。メモリのセッションでは、NECが高速のMRAM技術を報告する(講演番号12A-2)。

 VLSI Circuitsでは、SRAMとクロックのセッション(セッション15)、DC-DCコンバータのセッション(セッション16)がある。Intelが8コアプロセッサ「Nehalem-EX」の3次キャッシュ技術(講演番号15-1)とクロック技術(講演番号15-2)を公表する。またルネサス テクノロジが、0.6Vと低い電源電圧で動作するSRAM技術を発表する(講演番号15-4)。

●VLSI 2008の最終日(6月18日):ミリ波レーダーの送受信チップ

 6月18日はVLSI Circuitsの最終日である。午前の前半にはイメージセンサのセッション(セッション17)と周波数生成器のセッション(セッション18)、パワーマネジメント技術のセッション(セッション19)が予定されている。この時間帯ではIntelが32nmロジックのチャージポンプ回路を報告する(講演番号19-1)。午前の後半には、アナログ技術のセッション(セッション20)とイコライザ技術のセッション(セッション21)、クロック生成技術のセッション(セッション22)がある。

 午後の前半は、低消費アナログデジタル変換技術のセッション(セッション23)とミリ波技術のセッション(セッション24)、メディアプロセッサのセッション(セッション25)が開かれる。ミリ波のセッションで東芝が77GHz帯のレーダー用送受信ICの開発成果を報告する(講演番号24-1)。

 午後の後半は、高速アナログデジタル変換技術のセッション(セッション26)と無線トランシーバのセッション(セッション27)、信号処理技術のセッション(セッション28)が予定されている。この時間帯ではNECエレクトロニクスが、サンプリング速度が2.7Gサンプル/秒で消費電力が50mWの6bit A-D変換器ICを発表する。高速と低消費を両立させたチップである。

 このほかにも興味を引く講演が少なくない。PC Watchでは順次、レポートをお届けする予定である。

(2009年 6月 15日)

[Reported by 福田 昭]