【COMPUTEX 2009レポート】
Intelデスクトップ編
Braidwoodや液晶一体型PCリファレンスデザインなどを公開

会期:6月2日~6日(現地時間)
会場:Taipei World Trade Center Nangang Exhibition Hall
   Taipei World Trade Center Exhibition Hall 1/3
   Taipei International Convention Center



 IntelはCOMPUTEXの2日目に、会場近くのホテルで記者会見を開催し、同社が2009年後半にリリースを予定しているNehalemアーキテクチャのメインストリーム向けのプロセッサ「Lynnfiled(リンフィールド/開発コードネーム)」と、Intel P55 Expressチップセットの組み合わせをアピールした。

 展示会場では、各社がP55を搭載したマザーボードのデモを行なっているほか、2010年の前半に投入されるIntel 5シリーズチップセットの追加SKUでサポートされるフラッシュメモリを利用した新しいHDD高速化技術「Braidwood」のデモなどを行なった。

●LynnfieldによりNehalemのテクノロジーをメインストリーム市場にもたらす

 Intel 副社長兼ビジネス・クライアント事業部 事業部長のロブ・クルック氏は、記者会見の冒頭で同社がエンスージアスト(熱狂的なマニア)向けと呼ぶ、ハイエンド向けのソリューションについて語り始めた。6月3日に同社が発表したCore i7の新SKUであるCore i7-975 Extreme Edition(3.33GHz、別記事参照)と950(3.06GHz)がそれにあたる。クルック氏は、実際にCore i7-975 Extreme Editionを搭載したAcerのゲーミングPCを紹介し、「我々はCore i7向けにエンスージアストでも満足できるようにオーバークロッキングツールなどを提供している。今実際にそれを利用しているが、空冷のままで5GHzにオーバークロックできている」と述べ、エンスージアストのニーズを満足させるものだとアピールした。

 続いて同氏は、同社が今年の後半にリリースを予定している、メインストリーム向けのNehalemとなる“Lynnfiled”について触れ、「Lynnfiledにより、Nehalemの技術はメインストリームのユーザーにも届けることができるようになる。LynnfiledではNehalemの特徴である統合メモリコントローラやTurbo Boostなどの特徴を受け継いでおり、従来のCore 2 Quad Q9650に比べて14~40%の性能向上を果たしている」とし、Lynnfiledの高性能をアピールした。

 なお、今回のCOMPUTEXでも、Lynnfieldのブランド名がどうなるのかや、今年の後半ということ以上の具体的な出荷時期に関しては何も言及はなかった。

Intel 副社長兼ビジネス・クライアント事業部 事業部長のロブ・クルック氏Core i7に2つの新SKUを投入AcerのゲーミングPCを利用して、空冷のままCore i7-975 Extreme Editionを5GHzまでクロックアップ。
LynnfiledはCore 2 Quad Q9650に比べて14~40%の性能向上を実現する
P55とNVIDIAのGPUを利用したPCI Express x8でSLIが実現できる様子がデモされた。Intelブースにこれが展示されたということは、IntelとNVIDIAの間で話がついたと考えていいだろう
もう1つのPCI Express x8でGPUを動作させるデモというのがあったのだが、看板にはどのGPUかも書いていなかった。デバイスマネージャで見てみたらAMDのRadeon HD 4800シリーズと表示された。そこまで“AMD”という文字を使うのが嫌なのだろうか……

●Intel Turbo Memoryの後継となるBraidwoodの実働デモが行なわれる

 続いて、Intel 副社長兼モビリティ事業本部クライアントコンポーネント事業部 事業部長のリチャード・マリノウスキー氏が登壇。同社がLynnfiledの投入にあわせて計画している、Intel 5シリーズチップセットの新SKUとなるIntel P55 Expressを説明した。

 マリノウスキー氏「'90年代にはPCIやAGPの追加といったI/O機能の追加がチップセット進化の特徴だった。2000年代に入ってからはチップセットへグラフィックスなどの機能を統合していくことがトレンドになった。そして、今回紹介するP55以降は、チップセットの定義というものが再度見直され、新しい形となる」と話し、GPUやメモリコントローラがCPUに入ることで、チップセットというものの役割や定義も変わっていくという認識を示した。

 P55の機能などについて、基本的な内容はすでに本誌では既報の通りであるので、別記事を参照していただきたいが、その中でもマリノウスキー氏が特に強調したのは、2010年に投入されるIntel 5シリーズチップセットの追加SKU(Lynnfiledのリリースと同時に投入されるのはP55のみで、その他のH57/55、P57、Q57などは2010年の第1四半期に投入される見通し)でサポートされる、「Braidwood」の機能だ。

 Braidwoodは、現在同社が提供しているIntel Turbo Memory(開発コードネーム:Robson)の後継となる製品で、フラッシュメモリをHDDの一種のキャッシュのような形として利用することで、HDDのランダムアクセスの遅さを隠蔽する役割を果たす。

 現行のRobsonがWindows Ready Drive(いわゆるハイブリッドHDD)とアプリケーションのピンモード(アプリケーションやOSの起動に必要なファイルをフラッシュメモリに先読みして、アプリケーションなどの機能を高速化する機能)という2つの機能を備えているのに対して、BraidwoodではWindows Ready Driveのサポートは削られ、ピンモードとHDDデータのキャッシュという2つの機能に変更される。

 ハイブリッドHDDもある意味キャッシュとも言えなくないが、Windows Ready Driveの機能を使わないという意味ではRobsonの機能とは異なると言った方が正しいだろう。なお、従来のRobsonでは接続バスにPCI Expressを利用していたが、Braidwoodでは接続バスにはONFI(Open NAND Flash Interface)を利用し、コントローラはチップセット側に内蔵される。

 マリノウスキー氏は「BraidwoodによりHDDの消費電力を抑えることができ、かつアプリケーションの起動を高速化することができる」とメリットをアピールし、実際にBraidwoodが有効な環境とそうでない環境で複数のアプリケーションの起動、処理を繰り返すベンチマークを行ない、Braidwood環境の方が高速である様子をデモした。

Intel 副社長兼モビリティ事業本部クライアントコンポーネント事業部 事業部長のリチャード・マリノウスキー氏。手に持つのはIntel P55 ExpressチップセットIntel 5シリーズチップセット以降はチップセットの新しい時代へ突入Lynnfiled/Clarkdale用Intel 5シリーズチップセットでは、チップセットの構成が大きくかわる
Braidwoodの概要クルック氏が手に持つのがBraidwood。なお、容量に関しては現時点では未公開だったが、OEMメーカー筋の情報によれば16GB、8GB、4GBという3つのSKUが用意される予定だという比較デモしている様子。Braidwoodを搭載したシステムの方が高速に終了した
Braidwoodの設定ツール。現在のIntel Turbo Memory Dashboardの後継となるツール。先読みしおくアプリケーションやHDDキャッシュなどの設定ができるマザーボードにオンボード搭載されたBraidwood
メモリソケットとFDDコネクタの間にあるスロットがBraidwoodモジュールを装着するためのスロット。電気的にはONFIを利用して接続される左がP55、右がBraidwood

●液晶一体型PCも自作できるようになるのか?

 この他、クルック氏は、Intelが液晶ディスプレイのセットメーカー向けに提供を計画している、新しいデザインガイドについて説明した。

 本誌でもなんどか説明しているように、台湾のセットメーカーはAtomを搭載したネットトップを液晶に統合したAIO(オールインワン)デスクトップPC、いわゆる液晶一体型PCに積極的に取り組んでいる。ASUSのEee TopやMSIのWind Topなどがその代表例と言えるだろう。こうしたセットメーカーであれば、自社でシャーシをおこして、そこに専用のマザーボードを起こして組み込むということは可能だが、既製品のPCケースにマザーボードを組み込んで販売しているいわゆるホワイトボックスの中小の業者にとって、それは非常に難しい。しかし、液晶一体型PCへのニーズが高まりつつあるので、ホワイトボックスの業者にとって、そうしたPCを組み立てて販売したいというニーズが高まりつつあるのだ。

 そこで、Intelはこうした液晶一体型PCシャーシの仕様のリファレンスデザインhttp://www.intel.com/go/aioとスペックを作成し、そうした中小業者でも液晶一体型PCを販売できるようにする取り組みを行なう。これにより、例えば液晶ディスプレイメーカーでも、そのIntel仕様に準拠した液晶ディスプレイを製造し、そこにマザーボードやCPU、HDD、メモリなどを組み込めば、簡単に液晶一体型PCを製造して販売できるようになる、ということだ。

 このことは、自作PCユーザーにも福音となる可能性がある。というのも、標準仕様ができるということは、ユーザーレベルでも液晶ディスプレイとマザーボードを別々に購入し、それらを自分で組み立てれば液晶一体型PCを自作することができるようになるからだ。クルック氏によれば「こうした仕様の製品は今年の後半には市場に出回るだろう」とのことなので、液晶一体型PCを自作したいと考えていたユーザーは今後の動向には要注目だ。

チャネル向けの液晶一体型PCシャーシを説明するクルック氏この例のようにマザーボードの装着方法やHDDの位置などが規定されることになるということだすでに対応を表明しているベンダとしてCHIMEI、BenQ、ViewSonicなどが明らかにされた

●消費電力とパッケージサイズが削減されるPinetrail-D

 最後にクルック氏は同社が今年の終わりに投入を計画している、次世代Atomとなる「Pineview」を利用した、新しいネットトップ向けプラットフォーム「Pinetrail-D」について語った。クルック氏は「Pinetrailではより統合が進み、消費電力が50%、パッケージサイズが70%削減される」とし、ケースデザインの自由度などが向上し、よりすぐれたネットトップの設計が可能になるとアピールした。同氏は実際にPinetrail-Dが搭載されたシステムを披露し、「このシステムはファンレスで動作している」とネットトップの進化をアピールした。

 なお、クロック氏はIntelがサポートするネットトップのOSについても触れ、モバイルのネットブックと同じようにWindows XP Home EditionやWindows 7 StarterなどのWindowsだけでなく、Mobilin 2.0に関してもサポートすることを明らかにした。

Pinetrail-Dは消費電力が50%さがり、パッケージサイズは70%削減されるファンレスで動作するPinetrail-D搭載のSFFデスクトップPineviewのパッケージ

(2009年 6月 4日)

[Reported by 笠原 一輝]