イベントレポート

LG Electronics、ミドルレンジのスマホとスマートウォッチを展示

LG Electronicsブースの様子

 韓国LG Electronicsは、Mobile World Congress(MWC) 2015の展示ホールで、このイベントにタイミングを合わせて発表したスマートフォンやスマートウォッチなどをブース出展した。競合他社の製品発表が会期前日や会期初日に集中する中で、LGはその多くを2月中盤から終盤に発表した。MWC会場では、その実機展示が中心となっている。

 1月に開催されたInternational CESでは、パネル面が湾曲した「LG G Flex2」を公開したが、今回MWCに合わせて発表されたのは、いずれもミドルレンジに属するスマートフォンで「LG Magna」、「LG Spirit」、「LG Leon」、「LG Joy」の4製品。パネルのサイズが全て異なっており、順に5型、4.7型、4.5型、4型となる。いずれもミドルレンジという位置付けだが、その中でもパネルサイズが大きい順に上位モデルという関係になっている。LG Electronicsとしては先進国から新興国まで市場に合わせたモデルの投入を目指している。

 ハイエンドモデルが主流の日本市場においては、従来からのキャリア経由による販売を模索する一方で、急速に市場が立ち上がりつつあるMVNOなどで利用できる低価格スマートフォンとしても導入を目指す。既にイオン向けには(LG製造の)「Nexus 4」などを提供していることもあり、ミドルレンジとは言えどもLTE(Cat.4)に対応する今回の製品がその後継となる可能性もある。

 前述した通りにパネルサイズはそれぞれ異なるが、基本スペックは共通となる要素も多い。プロセッサには1.2GHzあるいは1.3GHzのクアッドコアを採用。クロック周波数の差異はモデル間の差異ではなく、販売予定地域における違いだ。最廉価となる「LG Joy」のみ1.2GHzクアッドコアとデュアルコアがあり、やはり販売地域によって仕様が異なる。OSはAndroid 5.0(Lollipop)だが、やはり最廉価のLG JoyのデュアルコアモデルのみがAndroid 4.4(KitKat)モデルとなる。

 背面カメラ機能は上位が800万画素、下位が500万画素。前面カメラは500万画素から30万画素まで。プロセッサと同様に同一のモデルでも販売地域によってカメラ機能も細かくスペックが異なっているのも特徴だ。これらのことから、特にミドルレンジ以下が主流の新興国市場向けには、販売キャリアの求めに応じて価格帯からスペックを設定し、大量生産品をブランド力を伴って投入する戦略であることが窺い知れる。もちろん日本市場においては下位製品は明らかに力不足であり、こうしたミドルレンジ製品が国内販売されるとしても、上位の2モデルとなるであろうことがコメントされている。

 今回のミドルレンジ製品のもう1つの特徴は、ハードウェアスペックとしては文字通りフラッグシップ製品に及ばないものの、UI/UXはLG G Flex2などで採用されている最新のものを搭載している点にある。例えば自撮りの際に、前面カメラに向かって掌を握る動作をする「Gesture Shot」でセルフタイマーのカウントダウンによる撮影が可能だが、LG G Flex2から採用されたこの機能を全モデルで利用することができる。画面消灯時に時刻などを上部に表示する「Glance View」や、フリップ式で小窓の開いたカバーケースを装着することで小窓の部分のみのインターフェイスにしたり、時計や天候情報を表示する機能も、ハイエンドモデルと同様に利用できる。

ミドルレンジ製品ながら、ハイエンド製品と同等のUI/UXを備えるのが特徴
専用のQuick Circle Caseを付けることで、ウインドウ内の専用UIが利用できる
パネル表示を消している状態でも、上端からスワイプ操作を行なうことで時間や不在着信を表示できる「Glanse View」
いわゆる自撮りに使える「Gesture Shot」。フレーム内で手を開いて握る動作をすることで、セルフタイマー機能が働き、3カウント後に自動撮影する
パネルにはインセルタイプを採用
ミドルレンジの製品にも専用アクセサリーを用意する

LG Magna

 LG Magnaは5型パネルを搭載する今回発表製品の中では最上位モデル。メモリは1GBで本体ストレージは8GB。バッテリ容量は2,540mAh、本体サイズは69.9×139.7×10.2mm(幅×奥行き×高さ)。パネル面はフラットだが、背面はLG G Flex2ほどではないものの3,000R(半径3mの円弧)の湾曲があり、手に馴染むデザインになっているとのこと。LGのスマートフォン特有の背面パネル側に電源ボタン、音量ボタンを備えるデザイン。

LG Magna。背面は緩いカーブを描いて、手に馴染むデザインになっている

LG Spirit

 LG Spiritは4.7型パネルを搭載する製品。メモリは1GBで本体ストレージは8GB。背面カメラは販売地域によって800万画素と500万画素モデルが存在するなど、販売地域に合わせたコストの調整が行なわれている模様。背面の一回りは前述したLG Magnaと同様に3,000Rで緩やかにカーブしている。本体が小さい分、バッテリ容量も2,100mAhとなっている。本体サイズは66.1×133.3×9.9mm(同)。

Magnaよりは一回り小さい4.7型パネルを採用。背面はMagna同様にカーブしたデザイン

LG Leon

 LG Leonは4.5型のモデル。Spiritと同様に背面カメラは販売地域によって800万画素と500万画素モデルが存在する。前面は30万画素とここから大きくコストダウンする。メモリは1GBで本体ストレージは8GB。バッテリ容量も1,900mAhとなり、本体サイズは64.9×129.9×10.9mm(同)。

上位製品同様に、背面側に電源スイッチとボリュームボタンがあるLG Leon

LG Joy

 LG Joyは最廉価モデル。前述した通りモデル内でもクアッドコアとデュアルコアで仕様の異なる製品がある。展示されていたデモ機にはTV視聴を考慮したアンテナが搭載されているものもあって、販売地域を限定した製品構成がすでに進んでいることを窺わせる。バッテリ容量はLeonと同様に1,900mAh。本体サイズは、64.0×122.7×11.9mm(同)。

最廉価モデルのLG Joy。4型パネルにLEDフラッシュのないリアカメラといった仕様で、主に新興国市場向けとみられる。TV視聴機能をもつデモ機もあり、特定市場向けにスペックが細かく設定されていることが窺える
LG Watch Urbane LTE。外観はLG Watch Urbaneと同等だが、OSにはWeb OSを採用して通信、通話機能をサポートする

 スマートウォッチは、LG Watch Rの後継モデルとなる「LG Watch Urbane」と、SIMを搭載し、単独でLTEの通信機能を利用できる「LG Watch Urbane LTE」が展示した。外観デザインはほぼ共通で、スマートウオッチとして初めて円形の表示パネルを採用したLG Watch Rのデザインを改良し、クラシックな時計デザインに近付けたものとなっている。

 LG Watch Urbaneは、国内販売も行なわれているLG Watch Rのデザイン変更版という位置付けで、基本仕様は全く変わらない。搭載されるOSはAndroid Wear。一方、LG Watch Urbane LTEは、外観こそ同じだが、OSには同社がTVプラットホームなどに採用するWeb OSをカスタマイズしたOSを搭載する。Android Wearでは実現できない単独での通話や通信に対応することで、スマートウォッチとして利用の幅を拡げる考えだ。

 SIMカードは内蔵されているが、ユーザーによる交換はできない。通信に必要な契約情報などはネットワークを経由してSIMカードへと登録される。Android Wearがスマートフォンのコンパニオンデバイス的な役割を果たすことに対し、LG Watch Urbane LTEは単独での運用を目指したものと考えていいだろう。Android Wearにはない独自のアプリを搭載する。また本体にNFCを搭載することで決済機能にも対応。デモ機には韓国で利用できる電子マネー「Cashbee」のアプリも内蔵されていた。

 また、独AUDIと提携してLG Watch Urbane LTEのAUDI向けモデルを用意。Audi Mobile Keyに対応する。ドアロックの開閉をNFCで行なえるほか、駐車位置の記憶や、運転時に心拍センサーと連携するサポート機能などを実現する。

ドアのアンロックをスマートウォッチから行なえる
メタルのベゼルや革ベルトなど、時計としての質感に徐々に近付きつつある。スマートウォッチ自体が立ち上がったばかりの市場なだけに、数年前のスマートフォンと同様に急速な進化を遂げるタイミングとも言える
独AUDIと提携して、Audi Mobile Key機能を搭載する専用モデルも用意。AUDIのロゴが入った専用盤面のほか、NFCを使ったキーレスエントリーや、駐車位置の記憶機能、ドライビングアシスト機能などを専用アプリケーションによって追加する

(矢作 晃)