イベントレポート

【MobileFocus編】HP、Samsungが7~8型タブレットを発表

~AMDが単体GPUを搭載したキーボードドックをデモ

HP Slate 7。7型液晶を搭載し116×197×10.7mmで約368g
会場:スペイン バルセロナ Fira Gran Via

会期:2013年2月25日~28日(現地時間)

 MWC(Mobile World Congress)はモバイル機器関連の展示会としては世界最大規模で、例年さまざまな新製品が発表、展示されている。MWCの会期自体は、スペイン時間2月25日~28日の4日間に渡っているが、前日となる2月24日には報道関係者向けのイベントが多数開催されている。「MobileFocus」もそうしたイベントの1つで、MWCに参加するベンダーを集めて報道関係者向けに新製品のアピールをする場となっている。

 このMobileFocusにおいて、Hewlett-Packard(HP)およびSamsungは7型および8型のタブレットを展示した。HPの「Slate 7」は7型のディスプレイを搭載したタブレットで、価格は169ドル(日本円で約16,000円)。Googleの「Nexus 7」やAmazonの「Kindle Fire HD」などと同じく、低価格向けタブレット市場にHPも参入することになる。Samsungの「Galaxy Note 8.0」は、日本でもGalaxy Note IIとして販売されているGalaxy Noteシリーズの8型液晶搭載版で、付属のSペンと呼ばれるデジタイザーペンを利用して文字入力や操作などが可能になっている。

 AMDは、次期の低電力プロセッサ「Temash」を採用したタブレット向けに、キーボードドック側にディスクリートGPUを搭載したリファレンスデザインのデモを行なった。これにより、キーボードドックに接続した時には高性能GPUを使って3Dゲームをプレイし、単体では長時間バッテリ駆動が可能なタブレットとして使うといった使い方が可能になることをアピールした。

HP Slate 7は低価格なAndroidタブレット

 HPは、Android OSを搭載した7型タブレット「HP Slate 7」を発表した。デュアルコアのCortex-A9/1.6GHz、1GBメモリ、8GBのストレージを備えるというスペックになっており、microSDカードスロットを利用してストレージの容量を増やすことが可能。液晶パネルはHFFS(High-aperture-ratio Field Fringe Switching)という視認性に優れたパネルを採用し、解像度は1,024×600ドット。OSはAndroid 4.1で、展示機で確認したところAndroid 4.1.1になっていた。

 背面カメラは300万画素、前面カメラはVGA(640×480ドット)。3Gモデム機能は内蔵されておらず、Wi-Fiを利用してインターネットにアクセスすることになる。なお、Google Playの公式ストアにも対応している。

 本体サイズは116×197×10.7mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約368g。デザインは丸みを帯びたデザインが採用されている。ユニークなのは背面のカバーが赤とシルバーの2色用意されており、ユーザーは購入時に選択することが可能な点。また、HPのPCにも搭載されている「Beats Audio Technology」が実装されており、ソフトウェアの設定によりオーディオ出力にサラウンド機能を持たせたりなどが可能になっている。

 米国のHPでの販売価格は169ドル(日本円で約16,000円)になる予定だという。これにより、競合となる製品は、Google自身が販売するASUS製のNexus 7やAmazonが販売するKindle Fireなどとなる。4月から米国およびEU地域で販売が開始され、その後他の地域でも販売される予定だとのことだった。

シルバーの背面カバー
赤の背面カバー
本体の上部には電源ボタン、microSDカードスロット、ヘッドフォン端子が用意されている
本体下部にはMicro USBポートとステレオスピーカー
サイドにはボリュームボタン
OSのバージョンはAndroid 4.1.1

Galaxy Noteの8型液晶搭載版となるGalaxy Note 8.0

 韓国のSamsungは、日本でも販売されているGalaxy Note II(5型)の上位モデルとなるGalaxy Note 8.0を発表した。SoCはCortex-A9のクアッドコアで1.6GHz、2GBメモリ、16GBないしは32GBの内部ストレージを搭載したモデルが用意される。

 3Gモデム内蔵と、3Gモデムなし版が用意されており、3GモデムはHSPA+(21Mbps)までに対応しており、850/900/1,900/2,100MHzの帯域に対応する。バッテリは4,600mAhを搭載しており、重量は338g(3Gモデル)。ワイヤレスはIEEE 802.11n(2.4/5GHz)、Bluetooth 4.0に対応している。カメラは背面が500万画素、前面が130万画素になっており、カメラの設定で確認したところでは2,560×1,920ドットの解像度で撮影が可能になっていた。ディスプレイは8型、解像度は1,280×800ドットでTFT液晶パネルを採用している。

 最大の特徴は、ほかのGalaxy Noteシリーズと同じようにSペンと呼ばれるデジタイザーペンに対応していることで、タッチだけでは実現が難しい文字入力やイラストの作成といった用途をタブレットでも行なえる。また、マルチウインドウの機能が用意されており、複数のウインドウを同時に表示して作業したりということが可能になっている。

 デザインはホワイトを基調にした他のGalaxy Noteシリーズと共通のデザインになっており、縦でも横でも利用できる。操作はタッチとSペンで行なえるほか、ホームボタンとメニューや戻るボタンもタッチボタンとして用意されており、ユーザーがタッチボタンに触れると、バックライトが点灯してボタンの存在がわかる仕組みとなっている。Sペンは本体に内蔵する場所が用意されており、持ち運び時になくしたりすることがないような配慮がされている。

 Samsungの発表によれば第2四半期にワールドワイドに出荷予定で、ヨーロッパ、韓国、中東/アフリカ、東南アジア、中国、台湾、北米、南米などに出荷される予定だという。日本の予定に関しては何の発表もされていないが、これは日本ではキャリアの予定に左右されるため触れていないのだろう。

SamsungのGalaxy Note 8.0
底面と付属のSペン。背面カメラは500万画素
Androidのバージョンは4.1.2
ホームボタンは物理ボタンだが、メニューと戻るボタンはタッチボタンとなっている。触れると光る仕組みになっている
カメラアプリで確認したところ、最大解像度は500万画素で2,560×1,920ドット
底面はMicro USB端子とスピーカー
右側面に電源スイッチとボリュームボタン
Sペンはこのように本体に収納できる
LTEには未対応で、3G(HSPA+)までの対応になる
マルチアプリケーションの画面。複数のアプリケーションをつの画面に表示可能
展示されていたグローバルモデルには日本語の選択肢はなかった

LenovoはClover Trail+を搭載したハイエンドスマートフォンK900を展示

 Lenovoは、CESでも展示していたスマートフォン「K900」を展示した。Lenovoと言えば、日本のユーザーにはThinkPadやIdeaPadなどのノートPCを販売するPCベンダーというイメージだと思うが、中国では大きなシェアを持つスマートフォンベンダーでもある。ただ、これまでは中国向けがメインだったため、安価な製品が中心だった。そのため日本のユーザーはなかなか興味が持ちにくかったのも事実だ。しかし、中国市場も成長を遂げるにつれて、成熟市場に近づいている。徐々にハイエンド向けの製品も揃いつつあり、K900はハイエンドスマートフォンとなっている。

 採用されているSoCはIntelの「Clover Trail+」とよばれる、スペイン時間で2月25日に発表される予定の新しいスマートフォン向けSoCだ。従来のMedfieldベースのAtom Z2460がシングルコアであったのに対して、Clover Trail+はデュアルコアに強化されており、クロック周波数も2GHzと比較的高めに設定されているのが特徴と言える。

 メインメモリは2GB、内部ストレージは16GBとなっており、OSはAndroid 4.2が標準で搭載されている。なお、モデムはLTEには未対応で、3Gまでとなる。最大の特徴は5.5型という比較的大きめの液晶を搭載し、1080p(1,920×1,080ドット)の解像度を持っていることだろう。バッテリも2,500mAhと比較的大容量を搭載しているので、1080pのビデオ再生で10時間近くの再生が可能だということだった。

 Lenovoの説明員によれば、仕様はハイエンド向けだが、依然としてターゲットは成長市場になっており、中国、東南アジア、インド、ロシアなどの成長市場向けにハイエンド製品として投入される予定だという。現時点では日本や米国、欧州などの成熟市場に投入する予定はないとのことだったが、反応次第によっては検討するかもしれないということだった。

 また、LenovoはAndroid 4.2を搭載したタブレット「IdeaTab S6000」、「IdeaTab A3000」、「IdeaTab A1000」を発表した。このうちS6000だけが展示されていた。MediaTekのMTK8389/8125(1.2GHz、クアッドコア)をSoCとして採用しており、10型(1,280×800ドット)の液晶を搭載し、厚さ8.6mm、重量は560gとなる。価格などは未定だが、比較的低価格向けとなる予定だということだった。

 Acerも、近年はスマートフォン事業に力を入れている。といってもターゲットはLenovoと同じように成長市場で、MWCでは成長市場向けのスマートフォンを展示していた。Liquid C1は、CESでIntelが発表した低価格市場向けのAtom Z2420 with XMM6265(開発コードネーム:Lexington、別記事参照)を搭載した低価格向けスマートフォンで、はやり成長市場に向けて出荷される予定だという。

LenovoのK900は、Clover Trail+を採用しているスマートフォン
Medfieldを採用しているMotoloraのRazr i(4型)に比べるとかなり縦長であることがわかる
底面にはカメラが用意されている
OSはAndroid 4.2.1
【動画】ホームUIは3Dを利用していてサクサク動く
LenovoのIdeaTab S6000。MediaTekのクアッドコアCPU(1.2GHz)を採用している
一番左がAcerのLiquid C1。Atom Z2420 with XMM6265を搭載した成長市場向けの低価格スマートフォン

AMDはキーボードドックにGPUを組み込んだ、新しい形の“ハイブリッドPC”

 AMDは、1月のCESでTemashやKabiniといったJaguarコアベースの、x86アーキテクチャとしては初となるクアッドコアのSoCをデモして注目を集めた。特にTemashを搭載したタブレットのデモは力が入っており、AMDも今後はより低消費電力な製品に力を入れていくということを印象づけた。

 AMDのブースではCESに引き続きTemashのデモが行なわれていたが、今回のMWCでは新しい形のハイブリッドPCのデモが行なわれた。具体的にはキーボードドック側にディスクリートのGPUを搭載しており、Temash搭載タブレットをキーボードドックに接続した時だけ、単体GPUを利用できるというものだ。これにより、スレート型のタブレットとして利用している時には低消費電力で長時間バッテリ駆動が可能なタブレットとして利用し、ドッキングした時には単体GPUの処理能力を利用したノートPCとして利用ができる。ドッキングしたときは、単体GPUの処理能力が必要な重いゲームをプレイし、スレート時にはWindowsストアで配布されるようなカジュアルゲームを楽しむなどの使い方が想定されるだろう。

AMDの単体GPUをキーボードドックに組み込んだハイブリッドPCのデモ
IE10のFishデモ。GPUの処理能力が必要とするデモだが、単体GPUを利用しているため、多数の魚を60fpsで表示できている。GPUの性能が低い場合にはこんなに魚が表示されない

(笠原 一輝)