イベントレポート

AMD、Zen 2 CPUと改良版Vega GPU採用のモバイル向けRyzen 4000

~ASUSやDellなどが搭載システムを発表

Ryzen 4000シリーズ・モバイル・プロセッサーを発表するAMD 社長 兼 CEOのリサ・スー氏

 世界最大のデジタル関連展示会となるCES 2020が、1月7日~1月10日(現地時間)の日程で米国ネバダ州ラスベガス市の複数の会場において開催されている。それに先立って1月6日には報道関係者向けの発表会や講演が開催された。

 1月6日午後2時からは、AMDの記者会見が行なわれ、「Radeonグラフィックス搭載 第3世代AMD Ryzen 4000シリーズ・モバイル・プロセッサー」(以下Ryzen 4000)が発表された。

Zen 2+改良版Vegaとなって7nmプロセスルールで製造される第3世代Ryzenモバイルの提供を開始

Ryzen 4000シリーズ・モバイル・プロセッサーを公開するスー氏

 AMD 社長 兼 CEO リサ・スー氏は「これまでAMDのモバイル製品はおもに薄型ノートPC向けに提供してきたが、これからはそれに加えてゲーミングユーザー、クリエイター向けとしても提供していく」と述べ、Ryzen 4000では、より高性能を必要とする市場をターゲットにしていくと明らかにした。

第3世代Ryzen 4000シリーズ・モバイル・プロセッサー
7nmプロセスルールの採用で大きく性能が向上
Hシリーズを強化

 AMDが発表したRyzen 4000は、TSMCの7nmプロセスルールで製造され、CPUはZen 2アーキテクチャへと進化している。昨年(2019年)のCESで発表された「第2世代Ryzen 3000シリーズ・モバイル・プロセッサー」では、製造プロセスルールは12nmで、CPUはZen+のマイクロアーキテクチャとなっていた。今回のRyzen 4000では、デスクトップPC向けのRyzenと同じ7nmで製造されるZen 2アーキテクチャのCPUへと強化されているのだ(ただし下位SKUのAthlonは、Zenアーキテクチャで据え置き)。

 スー氏によれば、GPUのアーキテクチャ自体は従来と同じVegaを踏襲するが、グラフィックスコアの最適化を施すことで、59%の性能向上が図られたとしている。

【18時1分訂正】記事初出時、GPUアーキテクチャはRDNAベースとしておりましたが、正しくはVegaベースの改善版となります。お詫びして訂正します。

Ryzen 4000シリーズ・モバイル・プロセッサーの4800U
LenovoのYoga Slim7に採用

 もう1つの特徴は、従来製品ではTDP 35WのSKUが最上位として提供されていたが、今回の製品ではTDP 45WのSKUが最上位として提供されていることだ。

【表1】Ryzen 4000シリーズ・モバイル・プロセッサーのスペック
製品モデルコア/スレッドcTDPブースト/ベース・クロック(GHz)RADEON GRAPHICSGPUコアL2+L3 キャッシュ(MB)
Ryzen 7 4800H8C/16T45W~4.2 / 2.9GHzRadeon Graphics712
Ryzen 5 4600H6C/12T45W~4 / 3GHzRadeon Graphics611
Ryzen 7 4800U8C/16T15W~4.2 / 1.8GHzRadeon Graphics812
Ryzen 7 4700U8C/8T15W~4.1 / 2GHzRadeon Graphics712
Ryzen 5 4600U6C/12T15W~4 / 2.1GHzRadeon Graphics611
Ryzen 5 4500U6C/6T15W~4 / 2.3GHzRadeon Graphics611
Ryzen 3 4300U4C/4T15W~3.7 / 2.7GHzRadeon Graphics56
Athlon Gold 3150U2C/4T15W~3.3 / 2.4GHzRadeon Graphics35
Athlon Silver 3050U2C/2T15W~3.2 / 2.3GHzRadeon Graphics25

 IntelではHシリーズのTDPを45Wとしており、それをゲーミングPC、クリエイターPC向けとして提供している。このため、そうしたIntelのTDP 45W Hシリーズ向けに設計されているノートPCに対して、基板ごとAMDに交換するだけで、AMD版の製品として提供可能になる。今後はTDP 45WのHシリーズのCPUを搭載したゲーミングPCや、クリエイター向けPCでも、価格競争が起きていく可能性は高い。

Ryzen 4000シリーズ・モバイル・プロセッサーの4800H
4800Hを搭載したASUSのゲーミングノートPC
第1四半期から提供開始

AMDのCPUとGPUが熱設計の枠をやりとりして性能を引き上げる「SmartShift」を提供

AMDだけがCPUと単体GPUの両方を提供できる

 また、AMDは「AMD SmartShift」と呼ばれる新しい熱設計(サーマル)制御の仕組みを、Ryzen 4000とRadeon RX 5000Mシリーズで導入していくことを明らかにした。

CPUとGPUが熱設計枠を共有する
AMD SmartShiftの効果

 AMD 副社長 兼 最高ゲーミングソリューションアーキテクト フランク・アゾール氏(Alienwareの創業者の1人で、直近までDellでゲーミングPCの事業を率いていた)によれば、「CPUと単体GPUの両方を提供しているのはAMDだけだ。このため、AMDにしか提供できないソリューションとしてAMD SmartShiftを提供していく。CPUとGPUのサーマルをそれぞれ融通し合って、CPUのパワーが必要なときにはGPUのほうに必要な熱設計の枠をCPUに共有する。その逆にゲームなどでGPUが重要なときは、CPUの熱設計の枠をGPUに共有する。それによりゲーミングでは最大10%、コンテンツクリエーションでは12%の性能向上が実現できる」とのこと。

AMD 副社長 兼 最高ゲーミングソリューションアーキテクト フランク・アゾール氏が手に持つDell G5 15 SE

 その具体的な例として、Ryzen 4000シリーズ・モバイル・プロセッサーと「Radeon RX 5600M」を搭載したDellのゲーミングPC「G5 15 SE」が同日発表されており(Dell、第3世代Ryzen搭載版のゲーミングノート「G5 15 SE」参照)、同製品が「AMD SmartShift」に対応していることが明らかにされた。