イベントレポート

Snapdragon 8CXと5Gモデムを搭載したWindows PCをLenovoが投入

Snapdragon 8cx+X55 5G modem搭載PCをLenovoが2019中に投入へ

 Qualcommは、MWC 19 Barcelonaに例年通り出展し、同社がOEMメーカーなどに提供している各種ソリューションを展示している。MWC 19の初日となった2月25日の午前には、記者会見を行ない、MWCでの発表内容を社長びクリスチアーノ・アーモン氏が説明した。

 このなかで、第2世代の5Gモデムとなる「Snapdragon X55 5G modem」と、2018年12月に発表したArm版Windows向けのプロセッサ「Snapdragon 8cx」を組み合わせたWindows PCを、今年(2019年)中にLenovoが投入する計画であることを明らかにした。

マルチモードに対応した5Gモデム統合SoCは今年の第2四半期にサンプル出荷、2020年に大量出荷へ

Qualcomm 社長 クリスチアーノ・アーモン氏

 今回のQualcommは5Gに関する多数の発表を行なっている。アーモン氏は「5Gはすでにこの会場のそこかしこにある。4Gではコンピュータをポケットに入れることを実現した。5Gではすべてのものに搭載されていくことになるだろう。2019年は5Gが普及する年になる」と述べ、2019年は5Gが普及する年になると見通しを明らかにした。

5Gと4Gの立ち上がりの違い

 その上で「4Gがスタートした2009年には4つの通信キャリアと、3つのOEMメーカーの製品しかなかった。しかし、2019年の5Gのスタートの年には20の通信キャリアと20のOEMメーカーの30製品と、製品数では10倍になった」と述べ、先日Samsung Electronicsが発表した「Galaxy S10 5G」や、ソニーモバイルが参考展示している5G対応スマートフォンなどを例に挙げ順調なスタートを切ったと述べた。

5Gスマートフォンの実現には疑問の声もあったが現実の製品で払拭

 「5Gが実現するかという疑問を競合他社を含めていろいろ言われてきた。たとえば消費電力が大きすぎて使い物にならないのではないかとか、5Gはメインストリームには入らないのではないか、5Gのスマートフォンは2019年には登場しないなど……だが、それらはわれわれが実際の製品を投入することで反論してきた」と説明した。

Snapdragon X50 5G modemを搭載したPCは第2四半期から市場に登場

 その具体的な例として、今年の第2四半期に複数の国、地域で同社のSnapdragon X50 5G modemを搭載した5Gスマートフォンが投入される計画だとし、北米、欧州、中国、韓国、オーストラリアそして日本がその国、地域に含まれるとした(なお、日本では今年の第2四半期では5Gのサービスはまだ始まっていない予定)。

5G PowerSaveという機能を実装し、5Gモデムでも4Gと変わらないレベルの平均消費電力を実現

 そして、Android OSのデバイス向けに5G PowerSaveという機能を実装し、5Gモデムの拡張省電力機能を発表した。5G PowerSaveでは3GPP仕様の省電力機能であるC-DRX(Connected-Mode Discontinuous Reception)にQualcomm独自の拡張を加えることで、端末のバッテリ駆動時間を4Gモデムと同じレベルにするというものとなる。

5GモデムをSoCに統合した製品は第2四半期にサンプル出荷を開始、2020年に出荷される商用製品に採用予定

 このPowerSaveが搭載されるのは、今後Qualcommが発表する予定の、5GモデムをSoCに統合した製品となる。アーモン氏はQualcommがマルチモード(2Gから5Gの複数の規格に対応すること)の5Gモデムを統合した製品を第2四半期にサンプル出荷開始し、2020年にはそれを搭載したスマートフォンが出回る計画であることを明らかにした。

Samsung Electronics 副社長 兼 技術戦略室責任者 ジュン・ヒー・リー氏

 なお、発表会にはSamsung Electronics 副社長 兼 技術戦略室責任者 ジュン・ヒー・リー氏が登壇し、Samsungがこの5Gモデム統合SoCを搭載したスマートフォンを販売する戦略であることを明らかにした。

LenovoがSnapdragon 8cx+X55 5G modem搭載PCを今年中に投入予定

Snapdragon 8cx+Snapdragon X55 5G modemの組み合わせで5Gを実現

 QualcommはこのMWCの直前に、Snapdragon X55 5G modemという第2世代の5Gモデムを発表した。Snapdragon X55 5G modemは1チップ(といってもRFはもちろん別)で、2G(GSM)、3G、4Gという下位互換性と5Gに対応したいわゆるマルチモードと呼ばれる5Gモデムになり、そこにミリ波帯および6GHz以下帯のどちらか、ないしは両方を搭載して5Gおよび4G以下の通信が可能になる。

 今年の第2四半期に登場する5Gスマートフォンには、現行製品のSnapdragon X50 5G modemが搭載されており、これはシングルモード(5Gのみの対応)となる。このため、4Gモデムを内蔵したSoC(たとえばSnapdragon 855など)が必要になるが、Snapdragon X55 5G modemではそれが必要なくなり、現在の4Gモデムと同じように1チップですべての通信機能を実現できる。たとえばIntelやAMDのプロセッサを搭載したWindows PCに、5Gの機能を追加してということも可能になる。

Snapdragon X55 5G modem

 アーモン氏は、このSnapdragon X55 5G modemと、12月にハワイで発表したWindows PC向けの次世代SoC「Snapdragon 8cx」を組み合わせて、PC向けにも提供していくことを明らかにした。そしてその具体的なOEMメーカーとして「LenovoがパートナーとなりSnapdragon 8cxとX55 5G modemを搭載したWindows PCを今年中に投入する」と述べた。

 5Gを搭載したPCに関しては、IntelもXMM8160を搭載したPCを、Dell、HP、Lenovo、Microsoftがリリースすると明らかにしているが、XMM8160は投入こそ2019年の計画だが、ボリューム出荷は来年になる見通しだとIntelは明らかにしており、Qualcommが5G搭載PCで一番乗りになる可能性が高くなってきた。