イベントレポート

キー1つ1つにディスプレイがついた夢のフルキーボード、2019年に再び?

単色の小型LCDを採用した廉価なモデル

 キー1つに対してディスプレイを1つ搭載し、キートップの表示を自由にカスタマイズできるソリューションを開発している台湾iDisplay Technology。6月に台湾で開かれたCOMPUTEX TAIPEI 2018では、15個のキーを搭載した同社オリジナルブランド「Infinitton」の小型キーボード「Smart Screen Keyboard」を展示し、日本でも販売が開始されるなど、ちょっとした話題を呼んだのは記憶に新しい。

 COMPUTEX時の記事でも触れているが、このiDisplayの技術を使った最初の製品は、ロシアのArt.Lebedevが開発した「Optimus Maximus」という製品だった。Optimus Maximusは113個のキー各々すべてに有機ELディスプレイを埋め込み、それぞれの表示や動作をソフトウェア上から自由にカスタマイズできることで大きく話題を呼んだ。

 とはいえ、その当時の価格は1,500ドルと、キーボードとしては破格とも呼べるシロモノで、一般ユーザーが気軽に試せる製品ではなかった。また高価な有機ELを採用しているゆえに量産は難しかった。そこでiDisplayは、有機ELの代わりに液晶を採用したソリューションを開発し、量産可能でかつ低価格帯で、同等の機能を実現できるようにした。

 その低価格化や普及をさらに推し進められるソリューション群が、今回のCEATEC JAPAN 2018の会場で展示されたのだ。

 1つ目は単色の小型LCDを採用したモデル。上位モデルほどではないが、ある程度表示をカスタマイズできるほか、機能もカスタマイズできる。既存のSmart Screen Keyboardにはない特徴として、スイッチにCherry MX軸を採用することができ、ゲーム用途にも応えられるようにしたという。

 ちなみにCherry MX軸は「ごく普通の汎用品」とされており、とくにiDisplay向けのカスタマイズは施されていないという。ただキートップは引っこ抜けないとしており、構造的にOptimus Maximusと異なると見ていい。なお、同社は技術単体の提供はしていないらしく、キーボードメーカーが採用する場合、どの部分の製造をiDisplayが担当するか、キーボードメーカーが担当するか、協議して決める必要があるという。

 iDisplayによれば、「すでに国際的に有名な某ゲーミングデバイス大手メーカーと協業し、製品の開発に取り組んでおり、2019年にもこの技術を搭載した製品が実際にお目にかかれる」とのことだった。説明からするにRazerである可能性が高いと筆者は予測しているのだが、実際に製品が出てみるまでわからない。実際に製品化されれば、Optimus Maximus以来のフルカスタマイズ可能なキーボードになる可能性は高い(ただ、一部キーにのみ採用される可能性は否定できないが)。

すでに大手のゲーミングデバイスメーカーと共同で開発を進めており、採用キーボードが2019年にも登場予定

 もう1つが、ディスプレイを横長にして面積を減らすことで低価格化したモデル。こちらはノートPCのファンクションキーの置き換えを狙っており、説明員によれば「MacBook ProのTouchBarに似た機能を物理キーで再現できる」とした。とは言え、いまのところ協業先を探している段階だそうで、説明員との会話のなかで、筆者はこうした技術にいかにも興味がありそうなASUSを提案しておいた。

ディスプレイを横長にして表示面積を減らすことで低コスト化したモデル。ノートPCのファンクションキーに好適としている

 最後が、ディスプレイの代わりに64個のLEDを埋め込んだメカニカルボタン。解像度やカスタマイズ性はかなり下がるが、簡単なアイコンを表示する分には不足はない。こちらはCherry MLスイッチが採用されていた。

64個のLEDとすることでさらに低価格化したソリューション
既存の液晶採用品