イベントレポート

お味噌と会話できるパナソニックの未来の家。自動おにぎりや周囲遮断ヘッドフォンも

SXSWが行なわれているオースティンの中心街に設置されたPanasonic House

 パナソニック株式会社は、3月9日~17日(現地時間)に米国テキサス州オースティン市で開催されている「SXSW Conference & Festivals」(サウスバイサウスウェスト・カンファレンス・アンド・フェスティバル)に出展ししている。

味噌と会話できるFrement 2.0、おにぎりを自動で握ってくれるONIrobotに注目

 展示会場に「Panasonic House」という名前がついていることを反映して、パナソニックブースの展示は、家庭向けのソリューションが中心となっていた。入ってからすぐのブースでは料理関連のデバイスが3つ展示されていた。

味噌の出来具合を確認し、味噌と会話できるFrement 2.0、なんで2.0なのかは不明……

 味噌メーカーのマルコメと協力して展示したのが、「Frement 2.0」という名前がつけられたスマート味噌自作キットだ。現代人の生活では、共働きという夫婦も多いため、なかなか自宅で味噌を自作するという人は多くないとは思うが、かつての日本の家庭では割と普通に行なわれていた(らしい)味噌作り。原料となる麹、大豆、塩、水などを混ぜて熟成させて完成させる。

Bluetoothの温度センサー
温度はスマートフォンなどで確認できる
味噌(のボット)と会話できるユニークな機能
となりではマルコメが味噌汁を振る舞っていた

 味噌の温度がある程度になると、食べ頃や熟成の度合いなどがわかるそうで、パナソニックが試作したBluetoothの味噌温度計を利用して、スマートフォンに温度のログを取っていく仕組みだという。

 説明員によれば、それだけだとおもしろくないので、味噌をボットに見立てたチャット機能も用意されており、味噌に「今日の調子はどう?」などと訪ねると、「いいよ、あなたは?」みたいな疑似会話が楽しめるという遊び機能もつけたりしているそうだ。

 余談だが、その隣のブースではマルコメによって味噌汁が振る舞われており、アメリカの食事に疲れてきた頃だったので、味噌の味が非常にうれしかった……。

おにぎり自動生成マシンのONIrobot

 そのお隣では「ONIrobot」というおにぎり自動作成マシンの展示も行なわれていた(味噌汁の後がおにぎりとはなかなかパナソニックさんも粋な計らいだ)。ONIrobotは、本体の上部から炊きたてのご飯を入れると、自動でおにぎりを握ってくれる。日本人的には、おにぎりぐらいは誰でも握れるでしょうと思ってしまうところだが、おにぎり文化のない米国では誰も作り方を知らないため、そうしたニーズがあると考えて作ってみたそうだ。

上から炊き上がったご飯を入れる
コンビニやスーパーなどでのニーズを考えてテイクアウト用の袋も用意

 家庭に置くというよりは、コンビニやスーパーなどの業務用を意識しているということだった。ただ、実際に出展してみると、炊飯器は一般的な家庭にはないから、ご飯を炊くところから全自動でやってくれるといいかもという米国人からのフィードバックが多かったそうだ。

レストラン用ARデバイスとなるKronosys

 もう1つは、レストラン向けのARデバイスとなる「Kronosys」だ。Kronosysは網膜照射型のメガネ型のディスプレイデバイスで、レストランなどで調理師が調理を行なうさいにレシピを表示する。ディスプレイのレンズは透過型になっているため、もちろん調理している現実がそのまま見え、その上にレシピがARとして重ねて表示される。

カメラもついている
仕組み
このように料理はシースルーで、レシピが重ね合わせて見える

 現在のところはモックアップで、まだ動作はしていないとのこと。ただし、すでにソフトウェアはできあがっており、他社のデバイスでソフトウェアのデモは行なっていた。もちろんレストランの調理師が使っても便利だろうが、家庭で調理する場合にも使えると思われる。

遠隔地の高齢者見守り・コミュニケーションツールや飼い犬用歯ブラシツール

Famileel

 遠隔地の高齢者の見守りとコミュニケーションを取るためのデバイスとなるのが「Famileel」だ。Famileelのなかには通信機能(LTE/Wi-Fi)とカメラ、センサーが入っており、登録しておいた人が通りかかると自動で起動するようになっている。

利用イメージ
人感センサーとカメラが入っている

 ビデオ会話もでき、音声認識の機能を利用して、耳が遠い高齢者にも使えるように画面に会話のキャプションを入れることができるという。

犬用電動歯ブラシデバイスとなるPecoral

 犬の歯磨き支援を行なう電動歯ブラシデバイスがPecoralだ。最近の犬の病気の代表は歯に関するもので、歯周病になって歯が抜けてしまい、最悪死にいたるという。

 歯ブラシで歯磨きをさせようとしても、多くの犬は歯ブラシを嫌がってしまい、正しい歯磨きをさせることが難しいという。そこで、Pecoralは歯ブラシから歯磨き粉の代わりに甘いジェルのようなモノを出して、犬に甘くておいしいからなめたいと思わせている間にじょじょにブラシに慣れさせていき、ブラッシングの習慣化を図っていく。

黄色い部分に甘いジェルなどが入る、カートリッジにしたいとのこと
磨いている様子をSNSに投稿したりもできる
アプリからブラシの強弱を調整できる
ブラシの履歴を確認できる

 電動歯ブラシにはBluetoothが入っており、電動ブラシの強弱をスマートフォンのアプリから調節したり、いつ歯ブラシをしたのかという記録を残せたり、SNSでシェアしたりという今時の機能を入れる予定だという。

 現時点ではプロトタイプということで、歯ブラシの強弱の部分は動作していたが、ログやSNSの機能、さらに歯ブラシから甘いお菓子を出す機能などは未完成だった。今回のSXSWでの反応を元に事業化などについて検討していくとのことで、すぐに出てくるというわけではなさそうだった。

匂いの配信機能となるAromation

 「Aromation」は匂いの配信と音楽を組み合わせた新しいアロマ体験を提案するシステム。すでに販売されている匂いを配信する機器と、モーションセンサーを組み合わせたデモで、盤上に置かれたコマを動かすとそれにしたがって音楽が変化していく。

 縦軸(興奮<>穏やか)、横軸(リラックス<>緊張)のどのあたりに置くかで最後に出てくる匂いが変わってくるというシステム。説明員によれば、将来的に匂いを配信するビジネスができないかといろいろ模索しており、SXSWにテスト的に出展してみることで、顧客の反応などを確認しているとのこと。

モーションセンサーはKinectが利用されていた
匂いを発生する装置は市販のものを利用
コマを置く場所で音楽や匂いが変わってくる

ノマドやフリースペースでは仕事に高い没入感で没頭したいアナタに「WEAR SPACE」

WEAR SPACEを装着した様子、確かにこれをかぶっている人には話かけにくそうだ

 最後に、「Panasonic House」の2階で展示されていたユニークなヘッドフォンカバーとなるWEAR SPACEを紹介したい。

 WEAR SPACEは、極限まで“没入感”を高めたヘッドフォン。最近ではテレワークとか、ノマドワークとか、働き方改革の一環として社外での仕事に市民権が与えられつつあり、それを許可する企業も増えている。そうしたときに、周りの音がうるさかったり、話しかけられて集中できないといった問題を解消できるデバイスとなる。

現在の製品は試作品であるため、市販のパナソニックのノイズキャンセリングのヘッドフォンが利用されている
デザイン違いも展示されていた

 構造はいたって単純。まず正面の視界を遮らないようにしつつ、周囲の視界をさえぎるためのカバーがついている。そしてノイズキャンセリング機能付きのヘッドフォンが搭載されており、周囲の音も遮断される。

 このカバーはパナソニックとANREALAGEのデザイナーが協力してデザインしたもので、単に視界を遮るだけでなく、デザイン性が高いものにしたという。展示されていた白いカバーはフラッシュをつけて撮影すると模様が浮かび上がるというものになっていた。

 実際に試着してみたが、確かに外部の音からも遮られるし、視界が画面だけに限定されるので、周囲でなにが起きてても、意識がそっちにいくことはないなと感じた。

 また、人に話しかけられないという効果もあると確かに感じたが、集中しているから話しかけにくいというよりは、初めて見た人には“怪しさ100%”で話しかけられないだろうなという印象である。