イベントレポート
ASUS、Intel X299搭載マザーボード7モデルを公開
~12GB/sのリード性能を持ったストレージシステムも実現へ
2017年5月31日 02:52
台湾ASUSは30日(現地時間)、Intel X299チップセットを搭載したマザーボード7製品を公開した。
ちなみにいずれの製品も、投入時は最大10コアのCore i7-7900Xまでのサポートとなる。既報の通り、IntelはRyzen Threadripper対抗として、さらにコア数を12/14/16/18に増やしたCore i9シリーズを用意しているが、これは当初予定されていなかったもので、COMPUTEXの直前になって急遽追加されたものだ。
しかし、ASUSのX299マザーボード製品については、TDPや電力供給を含めて、当初よりオーバークロックによる負荷を見越した設計となっているため、例えCore i7-7980XEがより高いTDPだっだとしても問題なく駆動させられるという。Core i7-7980Xがリリースされた暁には、BIOSアップデートで対応していくとのことだった。
また、Aura RGBライティングシステムについては、エコシステムを拡大するとともにSDKを公開し、ゲーム開発者などが、Auraの仕組みを使い、例えばゲーム内の画面エフェクトに合わせてライティングを変更するといったことが可能になった。
ROGシリーズ
ゲーミングおよびオーバークロック向けのラインナップであるROGは、エントリーゲーマー向けの「ROG STRIX X299-E GAMING」、オーバークロック競技向けの「ROG RAMPAGE VI APEX」、そして機能性を極めた「ROG RAMPAGE VI EXTREME」の3製品。
ROG STRIX X299E-GAMINGはゲーマー向けの基本的な機能を集約した製品で、スチールによって強化されたPCI Express x16スロットに加え、Aura RGBライティングシステムへの対応、IEEE 802.11ac無線LANおよびIntel I219-VによるGigabit Ethernet、最大でDDR4-4000に対応した8基のメモリスロット、SupremeFX S122Aオーディオコーデックなどを搭載する。
マルチGPUは最大3wayのSLIまたはCrossFireXをサポート。なお、使用するCPUによって利用できるレーン数が異なり、16レーンを持つKaby Lake-Xはx16またはx8+x8、28レーンを持つSkylake-Xはx16またはx16+x8、44レーンを持つSkylake-Xはx16またはx16+x16またはx16+x16+x8になる。
USB 3.1は4ポートで、うち2ポートが背面、2ポートが前面。また、2基のM.2スロットを備えており、片方は2242~2280、もう片方は2242~22110の規格に対応する。ATX 24ピンコネクタ付近のほうのM.2はマザーボードに対して垂直に装着するタイプで、前面からのエアフローを受けて冷却。
一方チップセットの下に位置するM.2スロットには大きめのヒートシンクを備えており、これによって冷却を行なう。同社の測定によると、このM.2ヒートシンクは最大で-15℃の冷却効果があり、これによって熱によって発生するSSDののサーマルスロットリング(速度低下)を抑えられるという。
ROG RAMPAGE VI APEXは、初代APEXの流れを汲み、パターンに沿ってエッジを大胆にカットした基板が特徴。また、メモリスロットを4基のみに抑える一方で、オーバークロック時に最大でDDR4-4266以上をサポートできるとした。PCI Express x16形状のスロットも4本となっており、最大でx16+x8+x8+x8の構成で、4wayのSLIおよびCrossFireXシステムを構築できる
DDR3スロットを流用してM.2のSSDをメモリのように垂直に装着する「DIMM.2」は2基となり、最大で50mm角ファンを2基固定できるステイを標準で添付するようになった(ステイはDIMM.2モジュールにネジ止めする)。
同社のラボによる検証で、APEXは4コア/8スレッドで7,560MHzというCPU動作クロックの新記録を達成しており、8つの世界記録、および20にものぼる1位の結果を残したとしている。
ROG RAMPAGE VI EXTREMEはNCVM(不連続蒸着)によるミラー仕上げが特徴の、ビジュアルを重視した製品となった。また、有線ネットワークは10GbEで、DIMM.2スロットを備えるほか、CPUの温度といったさまざまなシステム情報をバックパネルカバー上に表示する「LiveDash OLED」を備える。
製品投入時期は、ROG STRIX X299-E GAMINGが6月中旬、ROG RAMPAGE VI APEXが7月下旬。一方、ROG RAMPAGE VI EXTREMEは予告のみで、製品投入時期は明らかにされなかった。
PRIMEとTUFシリーズ
スタンダード向けの「PRIME」は「PRIME X299-DELUXE」と「PRIME X299-A」の2製品、高耐久の「TUF」シリーズは「TUF X299 MARK 1」と「TUF X299 MARK 2」の2製品となる。
PRIME X299-DELUXEは初めてIEEE 802.11ad(WiGig)に対応した無線モジュールを搭載した製品。規格上の最大転送速度は4.6Gbps、同社の計測によると実測でも1.2Gbpsを実現しているという。現時点ではWiGigはノートPCのドッキングに採用されている事例のほうが多いのだが、デスクトップにとってそれは無意味だ。しかし将来的には、VRヘッドマウントディスプレイの無線化にIEEE 802.11adが使われるとしており、それを見越した実装であるとも言える。
M.2スロットにはヒートシンクを装備しているほか、Aura RGBライティングシステムも搭載する。なお、今世代からアドレスを指定可能なLEDストライプを接続するための3ピンヘッダが追加され、より複雑なライティングを実現できる。また、LiveDash OLEDも備え、ソフトウェア上から表示内容を変更できる。
TUFシリーズは、上位のMARK 1で、チップセット部にファンを搭載するようになった。これにより、その下にあるM.2 SSDのヒートシンクをも冷やせるようになり、少なくとも25℃以上温度を低下させられるという。また、背面に強度補強バックパネル「TUF Fortifier」を備えているが、この一部が切り出せるようになっており、「TUF VGA Holder」として最大荷重15kgに耐えるビデオカードの支えになる。加えて、TUF Fortifierにより温度が5℃低下するという。
このほか、Blueotooth経由で、マザーボードの問題をスマートフォンで発見できる「TUF DETECTIVE 2」も備える。
リード12GB/sを実現するIntel VROC
このほか、ASUSのIntel X299マザーボードのほぼ全てで、新たに「Intel VROC」と呼ばれる仮想RAID技術をサポートしたのもトピックの1つだ。
ご存知のとおり、PCI Express接続のSSDは、SATAといったストレージコントローラを介さずにCPUやチップセットのPCI Expressレーンに直結する。CPUに直結する場合、CPUのPCI Expressコントローラが直接SSDを読み書きするので、本来RAID 0といった技術は利用できないのだ。
VROCは「Virtual RAID on CPU」の略で、呼んで字のごとくCPU上で仮想的にRAIDアレイを構築する技術である。RSTe 5.x以降のドライバで利用でき、これによりブート可能なRAIDアレイを構築できるようになるわけだ。
今回のIntel X299チップセットに対応したCPUの、特に上位モデルでは豊富なPCI Expressレーンを有するため、メインストリーム向けのIntel Z270チップセットと比較して広い帯域を容易に実現できる。例えば44レーンのCPUを使用した場合、4レーンを利用するSSDを8台搭載しても(32レーン利用)、ビデオカード用の8レーン+4レーンを確保できるわけだ。
この帯域を有効に使えるようにとASUSが開発したのが、「HYPER M.2 X16 CARD」である。写真を見れば分かると思うが、4つのM.2スロットをPCI Express x16スロットに変換して、ファンおよびヒートシンクで強制冷却を行なう拡張カードとなっている。これを2枚利用して、最大8基のSSDを接続すれば、かつて体験したことのない超高速なストレージ・システムを構築できるわけである。同社が示した数字によるとシーケンシャルリードは約12GB/sを達成できるとした。
ただし現時点ではIntel製のSSD(デモではM.2 SSD 600P 512GBを4枚×2の構成で使用していた)のみがVROCをサポートする。また、RAID0に関してはそのままでも利用できるが、RAID 1を利用するためには「Standard Key」、RAID 1と5を利用するためには「Premium Key」と呼ばれる、マザーボードに直接接続するドングルを別途購入し、装着しなければならない。今回のIntel X299製品では、このドングルを装着するためのコネクタを備えているとした。