ホットスポットの接続自動化やローミングを実現するWi-Fi Passpoint
~業者向け認定プログラムを発表

ケリー・デイヴィス フェルナー氏

6月26日 発表



 Wi-Fiのシームレスな接続性実現を目的とした非営利団体のWi-Fi Allianceは26日、ホットスポットの接続自動化や異なるサービスプロバイダ間でのローミングを実現する「Wi-Fi CERTIFIED Passpoint」の認定プログラムを発表。これに伴い、マーケティングディレクターのケリー・デイヴィス フェルナー氏が説明を行なった。

 スマートフォンに代表されるモバイルネットワーク端末の増加により、それらからアクセスされるデータ量は爆発的に増加している。特に3G通信では、帯域が逼迫しており、通信業者にとってその対応は急務となっている。

Wi-Fi Allianceの概要モバイルデータ通信量は、2011年からの4年で10倍以上に増加の見込み

 そういった中、今回認定プログラムが発表されたWi-Fi CERTIFIED Passpoint(以下、Passpoint)は、3Gの帯域をより高速なWi-Fiへとオフロードするとともに、通信容量制限を回避するという、サービスプロバイダにとっても、利用者にとってもメリットのあるインフラ提供を実現するものである。

 通常、一般的なWi-Fiホットスポットを利用するには、無線LAN端末でアクセスポイント(SSID)の登録を行なった上で、接続された後に毎回ブラウザでユーザー認証を行なう必要がある。

 これに対しPasspointでは、対応した端末(機器)を利用していれば、Passpoint対応のホットスポットをみつけると、自動的に接続から認証までが完了する。イメージとしては、スマートフォンの電源を入れれば、3G回線に自動的につながるのと同じだ。PCなどでは初回のみアカウント/パスワードの設定が必要となるが、PasspointはSIM認証にも対応するので、SIMを搭載するスマートフォンなどではアカウント設定すら不要となる。

 先に、「Passpoint対応端末」という書き方をしたが、実際に、「Intel Centrino Advanced-N 6230」をはじめとしたWi-FiコントローラやアクセスポイントがPasspointの認定を受けているものの、Passpointではハードウェアとしての新規の要件は存在せず、WPA2にさえ対応していれば、既存の製品でも理論上はすべてソフトウェアだけで対応ができる。

 もう1つPasspointの大きな利点は、異なるサービスプロバイダ間でのローミングが可能なこと。ローミングに対応させるかどうかは、利用料金も含めプロバイダ次第となるが、Passpointローミング対応のプロバイダであれば、ユーザーは自身でそのプロバイダに契約していなくても、シームレスに接続できるようになる。

Passpointの概要現時点のPasspoint認定機器

 フェルナー氏によると、Passpointへの対応を理由にプロバイダを乗り換えるかという質問に対して、日本の56%のユーザーが「はい」と答えたという。また、携帯電話キャリアがPasspointサービスを有料で提供した場合、契約するかという質問には48%が「はい」と答えたほか、Wi-Fiアクセスによって広帯域の通信が利用できるようになることで、ユーザーは動画のストリーミングサービスなどをより積極的に活用したくなるという傾向も分かったという。

 日本は3Gの回線品質が高いため、上記の質問にはいと答えた率は他国よりも低いものの、フェルナー氏は、Passpointが特に携帯電話キャリアにとって有望なサービスとなりうることを示した。

 Passpointサービスの実際の運用開始時期は、プロバイダに依存するが、日本でもNTTアクセスサービスシステム研究所が賛同の意を表明しており、NTT関連企業で対応サービスが近い将来始まるものと思われる。

(2012年 6月 26日)

[Reported by 若杉 紀彦]