マイクロソフト、環境への取り組みを説明
~Atomプロセッサを使ったデータセンターも開発

マイクロソフト加治佐俊一氏

7月28日 開催



 マイクロソフト株式会社は28日、環境への取り組みに関する記者説明会を開催。同社最高技術責任者の加治佐俊一氏と政策企画本部の竹原正篤氏が、同社の社内外における環境保全活動の枠組みを概説した。

 竹原氏の所属する政策企画本部は、2008年に立ち上げた環境プロジェクトチームの事務局として機能している。同社では「全世界でマイクロソフト製品の売り上げに対するCO2排出量を2012年までに2007年比で少なくとも3割削減する」ことを目標に、さまざまな活動を行なっている。

 また、目標達成のため、同社は1) ITを活用したエネルギー効率の向上、2) 技術的進歩の礎となる研究開発、3) 環境に対する責任ある企業活動、という3つの柱を打ち立てている。具体的には、飛行機による出張の削減や、再生可能エネルギーの利用促進など一般的なものもあるが、ソフトウェア企業として、同社ならではの取り組みや技術/製品開発も行なっている。

マイクロソフト竹原正篤氏環境への取り組みの3つの柱

 製品レベルでは、Windows Vistaのハイブリッドスリープ機能により、0.5トン相当のCO2を削減、またWindows Server 2008は、前バージョンと比べ約1割の消費電力削減を実現している。Windows Server 2008の仮想化機能の活用により、消費電力を88%も削減した実例もあるという。なお、まだ日本語化が完了していないが、http://www.infrastructurepracticebuilder.com/widgets/というサイトで、サーバーの仮想化によって具体的にいくらコストを削減できるのかを試算するサービスを提供している。

 次期OSのWindows 7も、電源管理機能の強化や、Wake On LANの活用といったことや、DVDデコード時のCPU負荷の低減などにより、消費電力の削減を推し進めている。加えて、「POWERCFG」コマンドの「-ENERGY」オプションにより、電源設定の分析を行なう機能も実装され、グループポリシーを利用することで、企業でも消費電力の低減を図れる。

 Windows Server 2008 R2においても、「Core Parking」と呼ばれる、使用していないCPUコアをスリープさせる機能や、サーバーのPステートに応じてCPUクロックを調整する機能、SANブートによるローカルディスクの廃止などといった機能が追加された。

仮想化により削減されるコストを試算するサービスWindows 7の、Windows Vistaに対するDVD再生時の消費電力量Windows Server 2008 R2の省エネ機能の一例

 LiveやBingなどクラウドすなわちデータセンターを活用したサービスも数多く提供する同社は、ここでも電力効率の向上に努めている。例えば、水力発電だけの利用、雑排水を冷却システムに利用などがある。アイルランドに建設中の第4世代のデータセンターでは、寒冷地ならではの外気利用の冷却装置導入や、再生可能エネルギーの活用により、エネルギー消費量を従来より5割も削減する予定という。

 同社の研究開発施設であるMicrosoft Researchでは、社外との連携を含めたる研究活動を行なっている。その1つが、「SensorMap」と呼ばれるもので、スイスやアラスカなどに温度センサーを設置し、「Virtual Earth」と組み合わせて温度や氷河の状況などを可視化するシステムを支えている。また、低消費電力なAtom 330を搭載したサーバーを使い、データセンターを構築するという試みも研究しているという。

同社が運営するデータセンターでもグリーン化を推進Microsoft Researchでも取り組みを行なっているその1つのSensorMapの画面

 このほか、ボリュームライセンスのユーザーに、CD/DVDメディアではなく、ダウンロード利用を推奨する「Digital by Choice」、中古PCへの新たなライセンス提供により、廃棄PCの量を削減することを目的とした「MARプログラム」など、全世界で大小さまざまな活動を行なっている。

 削減量のデータを取得し始めたのが2007年からということもあり、現時点での達成度などはまだ分かっていないが、加治佐氏は、「これからの3カ年計画として、2012年までの目標を実現したい」と意気込みを語った。

(2009年 7月 28日)

[Reported by 若杉 紀彦]