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学習する英語教育用ロボット「Musio」

AKAの英語教育用ロボット「Musio(ミュージオ)」

 アメリカおよび韓国に拠点を置く人工知能開発スタートアップのAKA LLCは、人工知能コミュニケーションロボット「Musio(ミュージオ)」の製品発表会を、トーマツベンチャーサポート株式会社支援のもと東京・丸の内で開催した。「Musio」は、ディープラーニング基盤の学習エンジン「Muse」を搭載したコミュニケーションロボット。今年(2015年)6月、クラウドファンディングのIndiegogoで10万ドルを調達して話題になった。

 Musioのサイズは168×85×220mm(幅×奥行き×高さ)。重さは322g。AKAが開発した学習エンジン「Muse」を通して、言語および視覚データを収集しながらユーザーとのコミュニケーション過程を学習し、より多くの対話ができるようになるという。

 価格は799ドル(72,000円)で2016年6月以降に発売とされている。11月18日現在、Musio専用サイトでは、割引価格の599ドルで事前予約を受け付け中だ。また、通販サイトのRAKUNEW.comでは2016年7月以降に出荷予定、100,290円(税込)で予約を受け付けている。

Musio

 MusioはOSにAndroid 5.0を採用。CPUは2.5GHzクアッドコアを搭載(最上位モデル)。ネットワークはIEEE 802.11a/b/g/n/ac、Bluetooth LE 4.0、Zigbee。IoTコントローラとしてArduino互換のAtmega328プロセッサを搭載している。バッテリを内蔵し、充電はMicro USB経由で行なう。印刷されたコードをスキャンすることができる「Sophy」と呼ばれるIoTキーなどとペアリングして、一緒に使うことが想定されている。「Sophy」はBluetooth LE 4.0、CMOSセンサーなどを搭載している。

Musio側面。サイズは168×85×220mm
Musio背面。重さは322g
AKA CEOのレイモンド・ユン氏

 AKAはMusioを「一緒に学び、成長し、私たちを理解してくれるお友達ロボット」であり、IoTハブとなることでMicrosoftのビル・ゲイツが言及した「一家に1ロボット」時代の可能性を高めるものだとしている。AKAのCEO レイモンド・ユン(Raymond Jung)氏は、Musioを同社のMuseのインターフェイスであり、そして「人間の友人になるものだ」と紹介した。

想定用途は子供向けの英語教育

AKAマシンラーニングディレクター ジェイコブ・ブラッシャー氏

 Musioは英語で日常的にコミュニケーションできるため(英語以外の会話には対応しない)、日本のような非英語圏の子供たちの英語教育にも役立つという。記者会見では主に英語教育用のアプリケーションが紹介された。

 AKA マシンラーニングディレクターのジェイコブ・ブラッシャー(Jacob Bradsher)氏によれば、Museのポイントは「会話の内容を記憶して想起すること」と「会話内容から推測を行なえること」にあるという。デモビデオではMusioがユーザーの子供の顔を認識したあと、簡単な冗談が言えること、会話の途中で「ラーメン」などの言葉を認識して情報を検索して会話で提示する様子が示された。

 このほか、ユーザーが猫を飼っていること、猫は牛乳が好きであること、猫が「ナナ」という名前であることを把握し、そこから三段論法で「ナナは牛乳が好き」と会話を進めることができるとされた。これらの機能を使うことで、子供たちは楽しく英会話に親しむことができるという。

子供向け教材のデモ動画

 ブラッシャー氏は学習エンジンのMuseについて「以前の対話を思い出し、会話からコンテキストを作り、多面的に捉えることができる」と語った。これによってMusioはユーザーの性格や動作をサポートできるという。日本のロボットの象徴である鉄腕アトムやドラえもんについても触れて、Musioの「主な機能は物体認識」であり、自然な物体認識や感情認識を目指し、目標は人間とロボットが共存することだと述べた。

 また、ほかのコミュニケーションロボットに対してMusioは軽いのでどこにでも連れて行けると強調。日本は2020年オリンピックに向けて英語教育に焦点をあてつつあるが、最終的には全国の学校に普及させることをねらっていると述べた。今回、日本向けとしてヒノキを使ったモデルもお披露目された。

軽量で持ち運び可能
将来目標は学校への普及
ヒノキ外装モデル
AKA CSO ブライアン・リー 氏

 AKA CSO ブライアン・リー(Brian Lee)氏は「Musioは海外生活しているかのような正しい英語で会話ができるロボットだ」と述べ、教科過程にあった英語教育が可能だと紹介。Musioとペアリングして用いる「Sophy」と呼ばれるIoTキー、そしてスマートフォン上で動作する専用アプリとを合わせて、実際にデモを行なった。Musio用に作られた教材上をSophyを使ってタッチし、特殊なインクで印刷されたコードを読み取ることで、学習を進めていくことができるというもの。Museの学習機能を使うことで、個別の子供たちの学習の進み具合に応じて対応を変えることができるという。

「Sophy」
「Musio」とペアリングして用いる
リー氏がデモで使った教材

 今回のデモを見る限り、発音に関してはかなりシビアに判定されるようで、ネイティブが喋らないとオーケーが出ない場合もあるようだった。なお当初は子供用の教育を想定しているが、既存の教材をMusio用に組み替えることでTOEICやTOEFL に対応することも検討しているという。

Musio英語教材デモ1
Musio英語教材デモ2

目標は教育係と友達を兼ねるロボット

AKA CEOのレイモンド・ユン氏(左)とCSO ブライアン・リー 氏

 会見の最後でCEOのレイモンド・ユン氏は、子供の頃に日本の漫画やアニメに親しんだというエピソードを紹介。ドラえもんがのび太の教育係りであると同時に友達であったことについて触れて、「私がもっとも興味をもったのは友達ロボットだった。究極的には感情を分かち合えるロボットを目指す。幼い頃から夢見てきた人工知能ロボットの友達が実現できるよう手伝って欲しい」と語った。そして最後にSF作家のウィリアム・ギブソンの言葉「未来はここにある。ただまだ平等に割り振られていないだけだ」を紹介した。

 AKAは11月に日本法人を設立。今回の製品発表会を基点に、英語教育への関心が高まっている日本市場に参入していく予定。今後、楽天テクノロジーカンファレンスや、12月のMost ContagiousやTechCrunch Disrupt LondonでもAIエンジンのMuseやMusioを発表するとしている。

記者会見でのMusioの挨拶