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Appleの「iMac with Retina 5K display」などをハンズオン

 米AppleによるSpecial Event開催を受けて、10月17日には日本国内でも新製品のハンズオンが行なわれた。ハンズオンの時間は30分間ということで相当に駆け足ではあったが、既報では触れることのできなかった要素を、写真を中心に紹介していく。

iMac with Retina 5K display

 一体型製品としては世界で初めて5,120×2,880ドットのディスプレイを搭載する「iMac with Retina 5K display」。ハンズオンには4台の同製品が用意された。27型の従来モデルである2,560×1,440ドットのiMacは会場に設置がなかったため、その場で見比べることは叶わなかった。

 ドット数の表記から分かるように、iMac with Retina 5K displayは、従来モデルの縦横ドット数をそれぞれ2倍にした高精細パネルを採用している。ppi値は単純に倍で、縦横比は16:9となる。高解像度モデルではあるが、HiDPI設定によって標準設定におけるデスクトップの範囲は変わらない。

 背面にあるインターフェイスの配置は同一だが、従来モデルではThunderboltだった2つの端子が、いずれもThunderbolt 2に変更されている。Thunderbolt 2の採用は、「MacBook Pro」、「Mac Pro」に続いて3製品目となり、同時に発表された「Mac mini」もThuderbolt 2を2ポート搭載している。

マクロ撮影モードで焦点が合うギリギリの距離まで近接撮影をしてみた。ここまで寄ることで、パネルのドットを見分けることができる
寄った画面に映っていた写真の全景。昆虫の複眼のごく一部分を切り出していたことが分かる

 せっかくの5Kディスプレイなので、ほかのMacやPCを接続できるかどうかを確認した。従来モデルのiMacには「ターゲット・ディスプレイモード」があり、Thunderbolt端子を入力端子として、PCなどの出力を表示することができる。ちなみにターゲット・ディスプレイモードはOS Xが起動状態であることが必要で、単純にディスプレイとして利用することはできない。

 さて、iMac with Retina 5K displayにおけるターゲット・ディスプレイモードだが、結論を先に述べると非搭載ということになる。残念ながら5Kディスプレイは、iMacの一体型ディスプレイとしてのみ利用が可能だ。理由は既報でも簡単に触れているが、Thunderbolt 2端子は、ディスプレイ入出力としてDisplayPort 1.2相当の規格となる。DisplayPort 1.2は4K解像度における60fpsの入出力に対応するが、5Kディスプレイで60fpsを利用するには、DisplayPort 1.3相当の規格が必要になる。Thunderbolt 2ではこの要件を満たしていないため、ターゲット・ディスプレイモードが搭載されていない。5Kではなく4K以下の入力なら表示が可能かも確認してみたが、モード自体が非搭載ということである。

iMac with Retina 5K displayの側面。最薄部が5mm。本体は中央に向かうに従って膨らんでいく構造。サイズ等は基本的に従来モデルの27型と同等
左側面の裏に電源ボタンが配置されている
iMac with Retina 5K displayのインターフェイス。配置そのものは従来モデルと変わらない。Thunderboltは、Thuderbolt 2×2ポートになっている
ハンズオンされた4台のiMac with Retina 5K display
4K動画をFinal Cut Proで編集する様子。プレビュースクリーンがドットバイドットの4K映像になっている。残った1K分の表示領域を使って、ツールやタイムラインを表示
iMac本体には、キーボードとマウスあるいはトラックパッドが付属する。スタンド型モデルのほか、VESAマウントのモデルもオーダーできるのは従来通り

 搭載するGPUはAMD製のRadeon R9 M290XあるいはM295Xで、ディスプレイ出力として5,120×2,880ドットが表示可能。iMac with Retina 5K displayでは、eDPで内部接続を行なっているため、5Kパネルでの60fps表示が行なえるということになる。ディスプレイインターフェイスがDisplayPort 1.2相当ということで、Dellが間もなく発売を予定している「UltraSharp 27 Ultra HD 5K」などをマルチモニタを同じ5Kの2画面目として使用することは同様に難しい。プロセッサの性能が追いつくかどうかというポイントもあるが、5Kディスプレイによる2画面以上を実現するには、DisplayPort 1.3あるいは、次世代のThuderbolt規格の搭載を待つ必要がある。

 5Kディスプレイの表示能力を、それ以下の解像度の写真やWebで伝えることは難しいのだが、マクロ撮影でできる限り拡大してみたので参考にして欲しい。すでに出荷を開始していることもあり、数日中には直営店のApple StoreをはじめとするMac製品取扱店で展示も始まる見通しだ。

スライドスイッチが廃止されたiPad Air 2

 「iPad Air 2」は、前モデルの「iPad Air」よりもさらに薄い6.1mm厚を実現している。薄型化によって、iPad製品では初めて回転ロックなどを設定できるスライドスイッチが廃止された。パネルに向かって右側の側面に、ボリュームボタンと電源ボタンのみが配置されている。下部にはLightningポート。左側面には機能的な部分は存在しない。

 本体サイズが変更されているので、純正のSmart CoverとSmart CaseはiPad Air 2向けの製品が追加されている。iPad Airも併売されるので、純正アクセサリも継続販売される。

iPad Air 2の右側面。ボリュームボタンとマイク穴のみが配置されている。スライドスイッチはなくなった
底面にはLightnigのインターフェイスとスピーカーが配置される
iPad Air 2の左側面には機能的な構造はない。こちらの側にSmart CoverやSmart Caseの綴じ部分が来る
iPad Air 2向けの純正アクセサリ「Smart Case」。背面も保護するタイプ。Product REDモデルもある
iPad Air 2向けの純正アクセサリ「Smart Cover」
iPad mini 3。カラーバリエーションが増えたゴールドと従来からあるスペースグレイ
iPad mini 3
iPad Air 2
iPad Air 2とiPad mini 3の6製品。ハンズオンできたのはいずれもWi-Fiモデルで、モバイル通信機能のあるWi-Fi+Cellularモデルは、後日キャリアなどを通じて案内される

 ほか、外見的には「Touch ID」を搭載したことで、ホームボタンのデザインがiPhoneのホームボタンと同じデザインになった。スペースグレーでは目立たないが、シルバーと新色となるゴールドでは、白いパネルの中に、シルバーあるいはゴールドの円形デザインがよく見える。Touch IDを搭載しているが、iPhone 6/6PlusのようにNFCを搭載しているわけではない。背面側カメラ、正面側カメラともに新設計のカメラを搭載しているが、外見はほぼ従来モデル相当。iPhoneのようなLEDフラッシュも非搭載。

 「iPad mini 3」は、2013年に「iPad mini Retina Displayモデル」として出荷された製品にTouch IDを搭載したモデルに相当する。プロセッサおよびコプロセッサも、A7+M7で、本体サイズを含めて変更点はほとんどない。そのためiPad Air 2では廃止されたスライドスイッチも継続して右側面に配置されている。カラーバリエーションとして、iPad Air 2同様に、ゴールドが加わった。

上がiPad mini 3、下がiPad Air 2。右側面の様子。従来モデルでも同様だが、miniの方が厚みがある。iPad Air 2からは薄型化にともなってスライドスイッチが廃止
iPad Airの厚さを除く本体サイズは従来モデルと同一。Air 2とmini 3の大きさを比較
iPad mini 3。従来よりこうして持った場合は、画面にかかった親指は動かさない限りタッチとして認識されないので、しっかりホールドするなら画面にかかるのを気にしない方がいい

機能によりネットワーク接続の条件が異なるYosemiteとiOS 8連携

 ハンズオンでは、Mac miniの展示は行なわれなかった。一方で、いずれも新OSとなる、OS X 10.10 YosemiteとiOS 8.1では、相互の連携機能に関するデモンストレーションが行なわれていた。連携機能は複数あるが、それぞれ必要となる条件やネットワーク環境が異なるので、簡単に必要な要素をまとめていく。

 まず、作業状態を同じApple IDを利用するデバイス間で同期させるハンズオフ。iWorkをはじめとするApple純正のアプリケーションを始め、対応するサードパーティアプリケーションでも利用ができる。まず、各種ドキュメントはYosemiteおよびiOS 8以降で利用ができる「iCloud Drive」を介して同期を行なう。iCloud Driveではドキュメントの種類が自動的に認識され、種類ごとのフォルダへ分類される。

 クラウドとのデータ同期となるので、ネットワーク環境はモバイル通信機能でも、Wi-Fi、あるいは有線LANなどでも構わない。一方、デバイス間で作業状態を引き継ぐために、デバイス毎の同期はBluetooth 4.0によって行なわれる。Bluetoothによる同期はあくまで同じApple IDを使ってiCloud Driveにアクセスするデバイスを認識するためで、データの同期および作業状態の引き継ぎは、クラウド側からそれぞれが利用しているネットワーク環境を経由して行なわれる。

 つまりハンズオフでは複数のデバイスがBlutoothによる通信エリア内に存在することが必要だ。対応するデバイスは、Blutooth 4.0を搭載し、Blurtoothをオンにして利用することになる。データ自体は前述したとおり、それぞれが利用しているネットワークを介して同期やダウンロードを行なうため、LANの同一ネットワーク内であることは必ずしも必要な条件とはならない。

 続いて、iPhoneへの着信をiPadあるいはMacなど、同一のApple IDを利用するデバイスで受信して通話する機能(あるいは、iPadやMacからiPhoneを使って発信する機能)だが、こちらは相互のデバイスが同一のネットワーク内にある必要がある。音声やFaceTimeを使ったビデオチャットなどは、LAN内のパケットとしてiPhoneへと到達して、受話あるいは送話ができるようになる。

 もう1つ、従来のiOSでもサポートされていた「インターネット共有」(テザリング)の機能だが、YosemiteとiOS 8の組み合わせではiPhoneやiPad側からインターネット共有を設定することはなく、テザリングで接続する側から共有機能を自動的に有効にすることができるようになる。機能はメニューバーにある無線LANのアイコンから、接続に利用するiOSデバイスを選択するだけ。ペアリングされているiOSデバイスの、アンテナ感度やバッテリの残量なども表示されるので、例えばポケットに入れたiPhoneなどを取り出すことなく、モバイル通信の状況を確認してインターネット共有を開始することができる。

近接する同一のApple IDを利用するデバイス間で、作業状態も引き継げるハンズオフ
近接するデバイスから引き継ぎが行なわれると、ロック画面の左下済みにアイコンが表示される
iPhoneを使った通話やFaceTimeによるビデオチャットをMacからも利用できる。機器間は寝室とリビングといったように離れていても構わないが、同一のLAN環境に接続強いることが必要
メニューバーの無線LANアイコンから、インスタントホットスポット機能でiPhoneのインターネット共有を自動的にオンにする。アンテナ感度やバッテリの状況も表示されるので、例えばポケットなどに入れたままでも利用できる

(矢作 晃)