地デジへの移行で一体型デスクトップPCが好調
~BCN調べ

道越一郎氏

6月14日 発表



 株式会社BCNは6月14日、薄型TVやレコーダ、デジタルカメラ、およびPCに関する市場動向をまとめ、これに関する説明会を秋葉原で開催した。

 BCNは全国大手家電量販店のPOSデータを日次で集計し、売上に関する情報を分析している。6月現在データを提供している販売店は全国23社の2,341店舗。メーカー直販ショップなどの売上は計上されていない。本稿では、PCとスマートフォンに関する市場動向を取り上げる。

●震災以降、デジタル家電市場は堅調に推移

 冒頭では、アナリストの道越一郎氏がデジタル機器市場全体の動きについてポイントを紹介。3月には関東や東北/北海道地方で買い控えによる落ち込みがあったものの、4月以降は概ねプラスに転じているとした。

市場全体のトピックデジタル製品全体の売上推移地域別の売上推移

 薄型TVやレコーダについては、エコポイントが終了するも、2011年7月の地デジ完全移行を前に、堅調に売上を伸ばした。特に関東圏では20型前後のサブTV、それ以外の地域では30型前後のメイン/サブ兼用TVが好調だった。また、TV視聴中も別番組が録画できるレコーダが好調に推移した。

薄型TVのインチ別売上推移地域別のインチ別売上レコーダも順調

 デジタルカメラについては、部材の調達の遅れにより、前年割れの結果となった。また、コンパクトデジタルカメラに限れば、キヤノンに代わりカシオがトップに躍り出たことがトピックと言える。

部材の不足によりデジタルカメラ市場は落ち込みカシオがコンパクトで1位に

 PCについては、Sandy Bridge対応チップセットの不具合が解消されたことに加えて、Windows XP/Vistaからの買い替えが需要を促し好調に推移した。一方、スレート端末についてはほぼiPad (2)の独擅場であるとした。

●PCは地デジ移行でデスクトップが好調
森英二氏

 続いてアナリストの森英二氏が、PCとスマートフォン市場について解説した。

 まず種類別に見ると、ノートPCが台数比で前年微増となりながらも、単価下落により金額比では直近の5月で前年割れとなった。一方デスクトップPCは好調で、5月の台数で前年同期比41.2%増、金額でも122%増となった。

 タイプ別では、ノートはネットブックやスタンダードモバイルの比率が低くなり、いわゆるA4ノート、スタンダードノートが9割を超える(5月)結果となった。デスクトップもディスプレイ一体型が7割を超えている。


PC市場は震災後堅調に推移したノートは金額比で前年割れとなったが、デスクトップPCが好調ノートはA4型が、デスクトップPCは一体型のシェアが伸びる

 2008年5月を基点とする販売台数指数では、需要がもっとも高くなる3月をピークに、ノートPCが1.9から1.57に落ちたのに対し、デスクトップPCは1.15から1.33と逆に上昇した。

 デスクトップが好調だった理由として、まず平均単価の下落を挙げた。2010年春モデルは発売から4カ月経過時点で当初価格から約26.1%下落したのに対し、2011年春モデルは37.8%下落し、安さが消費者の需要を促した。

 もう1つの理由として、地デジへの移行を挙げた。地デジ搭載ディスプレイ一体型の販売台数構成比は、2010年5月が48.1%だったのに対し、2011年3月で66.8%、4月で69.5%、5月で67.7%と大きく伸びており、さらに、10万円以下で購入できる製品も5割近くなったことから、TVやレコーダに代わる2台目需要として好調だったと分析した。

 シェア別に見ても、この地デジ搭載一体型デスクトップ市場のニーズをうまく捉えたNECが好調で、27.2%という高いシェアで、2位の富士通(18.3%)と大差をつけた。

3月以降、デスクトップ市場は2010年と比較して異なり伸びている平均単価は3月をピークに値下がり
デスクトップの急落で安さが需要を喚起地デジ需要で一体型PCが好調NECの一体型が好調でトップとなった。ノートはソニーがシェアを上げた

 iPadやAndroid/Windowsタブレットなどのスレート型に関しては、オンキヨーやASUSTeK、LG、モトローラなどが参入するも、AppleのiPadシリーズの独壇場となっており、5月時点で87.6%のシェアを誇る。これに関して道越氏や森氏は、「2011年下半期にAndroid 3.0搭載タブレットが出揃うほか、2012年末にWindows 8も登場するので、その時期まではiPadの独壇場状態は続くかもしれない」と予測した。

 iPadの売れ筋は少し変化した。初代iPadは、3G+WiFiモデルの最上位64GBモデルが圧倒的に売れたが、iPad 2ではWi-Fiの16GBモデルがもっとも大きいシェアを占めるようになった。これについては家庭内無線LAN環境の普及が後押ししているのではないかと分析した。

スレート市場のシェアiPadの売上構成比。iPad 2ではWi-Fiの16GBモデルが大きな割合を占めた

 スマートフォンに関しては、携帯電話全体の売上台数のうち約4割を占める。このうちソフトバンクは、iPhone 4白モデルの発売などもあり、70.6%の高い販売台数構成比を占めている。一方、ドコモは50%未満、auは30%未満で頭打ちした。5月のOS別構成比は、Androidが66%に下がり、iOSが33.7%に上昇。これまで8割近いシェアで好調だったAndroid陣営が失速した理由については、夏モデルの発表で買い控えが生じたためと分析している。

携帯電話市場におけるスマートフォンの販売台数比スマートフォンのOS別/キャリア別販売台数構成比

(2011年 6月 14日)

[Reported by 劉 尭]