NTTドコモ、スマートフォン9機種を発表
~Windows 7が利用できるフィーチャーフォンも

5月16日発表



 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ(NTTドコモ)は16日、携帯電話の2011年夏モデルとして24機種を発表した。うちスマートフォンはドコモ史上最多となる9機種で、内訳はAndroidが8機種、Blackberryが1機種となる。スマートフォン以外では、ドコモのLTEサービスであるXi(クロッシィ)に対応するモバイルルーター2機種と、Windows 7が利用できるフィーチャーフォン「F-07C」も発表された。

●世界最小のWindows 7搭載機となる「F-07C」
世界最小のWindows 7搭載PC。「F-07C」

 「F-07C」は、いわゆるフィーチャーフォンであるiモード携帯と、Windows 7搭載PCの両側面を持つ異色のモデルだ。欧米などではすでに出荷されているスマートフォンのWindows Phone 7ではなく、搭載されているのはWindows 7。本体にあるLOOXのロゴが示すとおり、これは世界最小のPCとなるケータイLOOXである。CPUにはIntelのAtomプロセッサ(1.20GHz)を採用するが、実際は約50%のクロック周波数での動作になるとのこと。メインメモリは1GBで、内部記憶装置はフラッシュメモリ32GBを搭載し、うち約8.2GBはリカバリ領域などで使用されている。ほか、外部記憶としてmicroSDに対応。インストールされているWindows 7はHome Premium(32bit)でSP1適用済み。また、Microsoft Office Personal 2010の2年間ライセンスも付属する。

 気になるフィーチャーフォンとWindows 7の切り替えだが、本体側面にあるハードウェアスイッチを使ったトグル方式。スイッチ押下による操作でフィーチャーフォン(ケータイモード)に切り替えた場合、Windows 7はまずバックグラウンドで動作、その後スリープさらにサスペンドと一般的なノートPCと同様の省エネルギー動作を行なう。一方のフィーチャーフォン側は常時待ち受け状態にしておける。ただし、FOMAのデータ通信と同時にWindows側のデータ通信を利用できないなど、データ通信には一部排他動作となる部分がある。

 Windows 7を連続使用した場合の駆動時間は約2時間だが、Windows 7が利用できないほどにバッテリが低下した場合でも、しばらくはフィーチャーフォンとしての動作は保つことができるとのこと。フィーチャーフォンとしてだけなら、バッテリ容量が大きい分、他のフィーチャーフォンと比べても待ち受け、連続通話時間は長めだ。

 本体色はネイビーブラックの一色のみ。本体サイズは約61×125×19.8mm(幅×奥行き×高さ、最厚部)で、重量は約218g。ディスプレイサイズは約4型で、1,024×600ピクセルのWSVGA液晶を搭載する。カメラ機能はリアサイド約510万画素、フロントサイド約32万画素。ただし、リアサイドカメラはケータイモードでしか利用できない。同様に赤外線とBluetoothはケータイモード時のみの機能となる。一方IEEE 802.11b/g/nの無線LAN機能は、Windows 7モード時のみで利用できる。

本体からはスライド式でキーボードがひきだせる。液晶はタッチパネル方式。右にはポインティングデバイスも。キーボードはケータイモードでも利用できる「F-07C」の背面。IntelとWindows 7のシール。さらにLOOXロゴが見える。その一方で、おサイフケータイのマークも同居しているHDMI出力で外部ディスプレイに表示させた様子。チップセット統合のグラフィックスだが、Aero表示も行なわれている

 本体にはスライド式のキーパッドを備えるほか、ポインティングデバイスも搭載。TFT液晶画面は静電式のタッチパネルとなっているのでタッチによる操作もできる。別売となるクレードルセットを利用した場合、USB 2.0×4ポートの利用とHDMIによる外部映像出力が可能となる。フィーチャーフォンとしては一般的なiモード携帯に相当し、各種iモードのサービスをはじめ、おサイフケータイ機能や赤外線通信などに対応する。ワンセグ視聴には非対応。前述のとおり無線LAN機能はWindows 7モード時のみ利用となっており、Wi-Fiアクセスポイントとしては利用できない。

 「F-07C」の本体価格そのものは7万円を切る見通し。その他、契約期間による割引や各種オプションの付加などで総支払額は異なる。別売となるドックは約8,000円とのこと。6~7月の発売を予定している。

ケータイモードで利用中の様子。iモードのiMenuが表示されている左から2番目のスイッチが切り替えスイッチ。トグル式にケータイモードとWindows 7モードが切り替わるケータイモードからWindows 7モードへの切り替え。スリープからの切り替えは高速だが、休止状態(サスペンド)からだとやや時間がかかる
「F-07C」をクレードルに接続するためのコネクタ部分クレードルの背面。HDMI出力とUSB 2.0ポートが2つ。クレードルの中にはファンも内蔵されているクレードルの側面にも2つのUSB 2.0ポートがある。反対の側面にはAC電源のコネクタがある

●スマートフォンは計9機種。Androidはすべて2.3に

 スマートフォンは全部で9機種が発表された。うちAndroid搭載端末は8機種で、いずれもAndroid2.3搭載の製品となる。各製品の特徴は下記のとおり。

・「AQUOS PHONE SH-12C」

 先週、端末メーカーより異例の先行発表が行なわれた裸眼で見られる3D液晶搭載モデル。リアサイドに約800万画素のツインカメラを搭載することで、3D写真や動画の撮影を行なえるようになった。HDMI出力も備え、3D表示に対応したAQUSであればSH-12Cで撮影した3D画像の表示も行なえる。DLNAにも対応。おサイフケータイ、ワンセグ、赤外線に対応。5月20日に発売予定で、すでに14日から事前予約が始まっている。

「AQUOS PHONE SH-12C」写真ではわかりにくいが、ホーム画面も3D表示3D写真や3D動画撮影のために、約800万画素のツインカメラを搭載3D表示に対応したAQUSであればSH-12Cで撮影した3D画像の表示も行なえる

・「Optimus bright L-07C」

 最大700cd/平方mの世界最高輝度(LG Electronics Japan調べ)となるIPS液晶「NOVAディスプレイ」を搭載。液晶サイズは4.0型で本体厚は9.5mm。交換式のリアカバーも付属しており、本体色BlackにはBlueとMagenta、本体色WhiteにはLight BlueとLight Pinkでそれぞれ3色のコーディネートが楽しめる。spモードに対応するが、スペックとしてはグローバルモデルに近い。おサイフケータイ、ワンセグ、赤外線は非対応。6月中旬に発売予定。事前予約は6月9日に開始される。

最大700cd/平方mという輝度を自社(LG Electronics)の従来製品と比較して紹介「Optimus bright L-07C」は、BlackとWhiteの2モデル交換式のリアカバーは、それぞれに2枚ずつ付属する

・「Galaxy S II SC-02C」

 前モデルよりさらに高精細になったSUPER AMOLED(スーパー有機EL)ディスプレイを搭載。約4.3型の大型タッチパネルで本体厚は8.9mm。デュアルコアで1.2GHzのプロセッサを搭載する高速モデル。フルHD動画の録画・再生に対応しており、HDMI出力によって外部ディスプレイにフルHD表示が可能。おサイフケータイ、赤外線には非対応だが、ワンセグ視聴は可能。6月下旬に発売予定。事前予約は6月10日に開始される。

「Galaxy S II SC-02C」。デュアルコア搭載の高速モデル。液晶も4.3型と大きめ日本市場向けモデルとして、ワンセグ視聴にも対応マイクロサイズのHDMI端子を搭載。フルHD画像を外部ディスプレイに表示できる

・「MEDIAS WP N-06C」

 前回の製品発表会で予告されていたMEDIASの防水対応モデル。本体厚は7.9mm、重量は113g。従来モデルから引き続き、おサイフケータイ、ワンセグ、赤外線などに全て対応。6~7月に発売予定。

全部で3色が販売される「MEDIAS WP N-06C」。ブラウンはamadanaとのコラボレートモデル本体厚は7.9mm。これは最も厚い部分の数字。上部と下部では厚さが異なる

・「Xperia acro SO-02C」

 ほぼグローバルモデルだったXperia arcをいわゆる全部入りにした製品で、おサイフケータイ、ワンセグ、赤外線に対応した。HDMI出力に対応し、本体内の写真や動画コンテンツを外部ディスプレイに出力できる。DLNAサーバーに対応しており、本体に搭載されるWi-Fi機能を使ってPlayStation 3などのDLNA対応機器とコンテンツの共有が可能。残念ながら今回発表された8機種のAndroid端末では唯一テザリング非対応となる。今後対応されるかどうかは未定。6~7月に発売予定。

「Xperia acro SO-02C」3色の「Xperia acro SO-02C」。メインカラーはAquaとのこと

・「F-12C」

 「F-12C」は音声入力に対応するアプリなどを搭載する防水対応のスタンダードモデル。おサイフケータイと赤外線に対応。ワンセグ視聴は非対応。7~8月に発売予定。また、「P-07C」はパナソニックブランドでは初めてのスマートフォンとなる。大型の4.3型液晶の搭載と、右手と左手いずれの片手操作でも違和感のないインターフェイスを搭載するのが特徴。おサイフケータイは非対応だが、ワンセグ視聴と赤外線には対応。7~8月に発売予定。

防水機能を持つスタンダードモデルという感の「F-12C」パナソニック初めてのスマートフォンとなる「P-07C」。メニュー画面が描く円弧が左右対称になっているのは、右手仕様と左手仕様に設定を変えられるから

・「AQUOS PHONE f SH-13C」

 防水対応のスタンダードモデル。最大の特徴は本体の充電方式にワイヤレス充電機能を採用したこと。本体と同梱されるワイヤレスチャージャーのSH01は、いずれもWireless Power Consortiumの策定による標準規格「qi(チー)」に対応している。ワイヤレスチャージャーはモーター動作によるムービングコイル方式を採用しているので、充電時に本体を置く位置はある程度柔軟性があり、意識して隅などに置いてみた場合、モーターの動作音も聞こえた。7~8月に発売予定。

 また、AQUOS PHONE f SH-13Cへの採用に合わせて「おくだけ充電」として、ワイヤレス充電がクローズアップされている。NTTドコモからも「ワイヤレスチャージャー01」として充電パッドが、「ポケットチャージャー02」としてスマートフォン用ポータブル充電器(ポータブルバッテリ)が発表された。ポケットチャージャー02のバッテリ容量は5,000mAh。いずれも「qi(チー)」に対応している。展示されていたこれらのデモ機は、チャージャー、バッテリともにPowered by Eneloopの表記があることから、パナソニック(旧三洋電機)による製品と思われる。

 チャージャーは前述したSH01と同様のモーターによるムービングコイル方式。qiに準拠していることでAQUOS PHONE f SH-13C本体の充電ももちろん可能だ。「ワイヤレスチャージャー01」は7~8月に発売予定。「ポケットチャージャー02」は8~9月に発売予定となっている。なお、同時に「ポケットチャージャー01」という製品も発表されているが(6~7月発売予定)、こちらはいわゆるポータブルバッテリで、ワイヤレス充電には対応していない。バッテリ容量は2,500mAh。

 また「おくだけ充電」のパートナー企業として、全日本空輸、TOHOシネマズ、プロントコーポレーションの3社と提携。設置場所、時期、期間などは現在検討中とされているが、いわゆる公共の場所で「おくだけ充電」を体験できるようにすると発表された。

ワイヤレス充電「qi」に対応する「AQUOS PHONE f SH-13C」。撮影のために裏返しているが、充電時は背面を下に設置する「おくだけ充電」となる「ワイヤレスチャージャー01」と「ポケットチャージャー02」。いずれにもPowered by Eneloopの表記がある
「おくだけ充電」の仕組み。「qi」対応製品はすでに日立マクセルがコイルアレイ式の充電パッドとiPhone4対応のジャケットを出荷済み。パナソニックも6月に対応製品の充電パッドとポータブルバッテリの発売を予定している「おくだけ充電」のパートナー企業となる3社。設置場所、時期、期間などは現在検討中

 LTEサービスであるXi(クロッシィ)には、新たに2機種が追加された。「L-09C」はXi対応のモバイルWi-Fiルーター。最大10台のWi-Fi対応機器を接続可能で、Xiのサービスエリア外ではFOMAハイスピードに対応する3GモバイルWi-Fiルーターとしても機能する。連続動作時間は3Gで8時間、LTEで6時間となる。

 そしてもう1つの「BF-01C」は、昨年(2010年)発売された3GモバイルWi-FiルーターをLTEにも対応させた製品と位置づけられる。Xi(LTE)、FOMA(3G)、無線LAN、有線LANの四種の接続方法を通じて、無線LANが共有できる。最大同時接続数は6台と従来通り。Xi対応以外で従来モデルと異なる点は、DLNAによるコンテンツ共有に対応した点と、microSDを使っていた簡易NAS機能がオンボードのメモリ実装に変わった点。容量は30GB超とほぼmicroSDの上限に等しい。

Xi(クロッシィ)対応のモバイルWi-Fiルーター「L-09C」昨年発売された3GモバイルルーターにXi(クロッシィ)対応が加わった「BF-01C」。DLNA機能対応や、簡易NAS用メモリのボード実装など、LTE以外の変更点もある
「Xperia acro SO-02C」を除く7機種のAndroid 2.3対応スマートフォンで実現されるテザリング。グローバルモデルのAndroid端末では表示されない確認画面の表示もある

 東日本大震災以降、初めての製品発表会となった夏モデルの発表会だが、やはりプレゼンテーションは東日本大震災への対応と新たな災害対策の発表からスタートしている。NTTドコモの山田隆持社長は、通信設備の復旧状況として福島原発30km圏内のエリアを除く東北3県と、福島原発30kmエリア圏内にわけて現在の復旧状況とその復旧方法の内容をスライドを使って説明した。

 また、新たな災害対策として重要エリアにおける通信の確保、被災エリアへの迅速な対応、災害時におけるお客様の更なる利便性の向上という3点を挙げ、2011年度に235億円の対策費を計上すると発表した。そして具体的な対策例として、「大ゾーン基地局の構築」、「無停電化・バッテリー24時間化」、「災害用音声ファイル型メッセージサービスの開発」をスライドで示してみせた。質疑応答では、震災における資材等の調達状況についての質問もあったが、7月までには通常どおりに戻るという見通しが示されている。

東日本大震災からの通信設備復旧情報を、福島原発30km圏内のエリアを除く東北三県と、福島原発30kmエリア圏内にわけて紹介災害時における通信確保のために大ゾーン方式基地局を全国に約100カ所に設置するという。1県あたり2カ所がめど。東京・大阪などの密集地はさらに追加される災害時に強いパケット通信を活用した災害用音声ファイル型メッセージサービスを2011年度内に提供予定
緊急地震速報などを中心としたエリアメールの仕組みを、今夏からスマートフォンにも導入するスマートフォンが主力商品となることに向けて、iモードの課金や認証などの仕組みを2011年冬をメドにスマートフォンにも導入iモードケータイとスマートフォンのサービス統合ロードマップ
日常生活でもすでにスマートフォンを活用しているという渡辺謙さんと堀北真希さん。渡辺さんは災害支援のボランティアでも活用、堀北さんも料理レシピの検索などに利用しているという

 発表会には同社のCMキャラクターである渡辺謙さんと堀北真希さんも登場し、山田社長とトークセッションを行なったが、こちらも東日本大震災の話題が中心となった。渡辺謙さんは被災地にボランティアで訪れた際のスマートフォンの活用について紹介し、現地付近で買い出しをする際、音声検索とGPSナビゲーションを使ってスーパーへ向かった事例などを話した。また、被災者にサインを求められる際、その紙の多くが渡辺さんが登場しているNTTドコモのパンフレットであったというエピソードも披露。これは、一時避難所に携帯各社のサポートブースなどが設置されていることが理由だという。


(2011年 5月 16日)

[Reported by 矢作 晃]