マイクロソフト、1日付けで「日本マイクロソフト」へと社名変更
~同じく1日より稼働する品川の新社屋で樋口社長が決意表明

日本マイクロソフト樋口泰行氏

2月1日 実施



 予てから発表されていた通り、2月1日をもってマイクロソフト株式会社が、日本マイクロソフト株式会社へと社名を変更。また同日付けで、本社社屋も新宿から品川へと移転。これに合わせて、同社代表執行役社長の樋口泰行氏が記者会見を行なった。

 2011年は、マイクロソフトの日本法人が設立されてちょうど25周年に当たる節目の年。今回の本社移転は、単に場所を移すだけでなく、調布の技術センターと大手町のテクノロジーセンターを除いて、これまで都内に分散していたオフィスを統合する意味が強い。

 実際、同社が統合前の各オフィスへの社員の往来状況を調べたところ、月に5,500回も発生しており、樋口氏は、「費用、時間、一体感、コミュニケーションなどで損失が出ていた」と、オフィス統合のメリットが大きなものであることを説明した。

 品川という場所を選んだのは、NEC、富士通、ソニー、東芝といった国内の大手PCメーカーの本社がほど近いことを理由として挙げた。樋口氏は、会見などで常々、「顧客から社員の顔が見える企業」になることを目標として掲げていたが、地理的に近くなることで、より親近感、一体感のある企業を目指したいと抱負を語った。

 社名に“日本”をつけたのも、日本の一企業市民として認められる存在になることを目指したもの。樋口氏は、入社以前から「マイクロソフトはもっと日本に根付いた企業であるというイメージを押し出すべき」と思っていたという。社長に就任後、新社名への変更を決意し、社内外で意見を聞いたところ、製品ロゴなどには影響がないから、変わっても変わらなくてもどちらでも良い、といった反応も3割ほどあったが、残りの7割は肯定的な返答が返ってきたという。

今年はマイクロソフト日本法人設立から25周年日本マイクロソフト立ち上げのメッセージは同社サイトでも見られる25年前のマイクロソフト設立記念パーティでの一幕。左は初代社長の古川享氏、右はビル・ゲイツ氏

 今後しばらく、25周年記念のロゴなどを名刺や配布物などに印刷し、新社名の訴求を行なうが、樋口氏は、これを単に一時的な広報活動に終わらせるのではなく、“日本”という冠の名に恥じないよう、今まで以上に気を引き締め、その責務を果たすべく、業務を遂行していくとの志を示した。

 具体的には、日本企業の競争力強化のためのIT支援、国内の人材育成、日本市場に見合ったクラウドの展開、世界トップレベルの日本品質を持つ企業/製品などのグローバル展開といった活動を行なう。また、障碍者、女性の社会参加、就労、自治体等の支援など非営利的な貢献活動にもこれまで以上に取り組んでいく。

 日本市場の現状は、少子高齢化、内需縮小、円高/株安に見舞われ、IT分野ではクラウドの台頭や、タブレットやスマートフォンなどデバイスの多様化が進み、一方で共通化/標準化が求められるなど混迷を極める。こういった状況で企業が成功するには、自社に最適なIT化が必要だが、樋口氏は、その点において我々が付加できる価値は大きいと語った。

 その自信の背後には、過去3年間の改革で達成した経営面やパートナーとのビジネスにおける高い実績がある。具体的数値は非公開だが、日本マイクロソフトの売上は、前年比で2桁成長で、経営指標に関して、世界全エリアでトップだという。

 ただし樋口氏は、現状に甘んじることなく、この成長を土台として、さまざまな仕掛けを打っていきたい、また次の25年に向け新本社を拠点に社員一丸となって邁進していきたいと述べた。

日本マイクロソフトに込めた意味世界での日本マイクロソフトの位置付け今回樋口氏が社員に宛てた社訓

 質疑応答では、クラウドや、スマートフォン/タブレットなどの新デバイスについて、質問が及んだ。

 クラウド戦略については、クラウドは一過性のブームではなく、今後の確かな方向であるとしつつも、全てがクラウドに移行するわけではなく、クリティカルな部分はローカルに残るため、クラウドとオンプレミスで同じソフト/サービス/ユーザー体験を提供できる同社に利点があるとした。

 新デバイスについては、既報の通り、次期Windows OSでARM系SOCのサポートを含めることを決定したことから、それに向けた展開を始めるほか、米国ではすでに発売の始まったWindows Phone 7について、遅まきながら国内でも投入し、巻き返しを図りたいとした。

 また、スマートフォンを投入しても、PCを否定することはなく、「3スクリーン&クラウド」というスローガンのもと、PCとの組み合わせによる付加価値の訴求を行なっていくとした。

 NECがレノボと合併したことで、NECに対する売上が日本マイクロソフトから目減りしてしまうのではという質問に対しては、短期的に影響はなく、両社の補完的関係を見るにつけ、長期的にも良いことだと思うと答えた。

(2011年 2月 1日)

[Reported by 若杉 紀彦]