インテルと内田洋行、中央区の小学校でICT教育実証実験の第2弾
~「クラスメイトPC」を初公開

日本初公開となるクラスメイトPCを手にした吉田社長

5月27日 発表



 株式会社インテルと株式会社内田洋行は27日、教育現場でのICT(Information and Communication Technology)普及を目的として進めている「“児童一人に一台のPC”プロジェクト」の第2弾として、東京都中央区立小学校で実証実験を開始した。インテルが教育用途専用のリファンレンス・モデルを採用した「クラスメイトPC」を利用して、2年間にわたる実証実験を実施する。

 児童一人に一台のPCプロジェクトの第1弾では、千葉県柏市の公立小学校2校に小型ノートを提供。PCの使い方を学ぶ授業ではなく、国語、算数の授業で利用することで、生徒の学習意欲や効果、また現場で生まれる課題などを検証してきた。

 インテルの吉田和正社長は実証実験第1弾の成果を次のように分析する。

 「柏市の小学校では、2008年度に児童1人1台環境で授業を行なった結果、途中経過ではあるが、総合漢字テストでは2学期と3学期で平均点が上昇し、先生方からも児童の学習意欲があがり、授業の効率化が実現したといったお褒めの言葉をいただいている。しかし、実際に実験を進めていった中で、机の載りやすさを考えて選択した5型の画面が、実際に使ってみると小さすぎるとの声があがった。そこで画面サイズは8型から12型とした。また、授業で使用する優れたデジタルコンテンツも不可欠で、学習指導要領にそった内容でありながら、使いやすく、演習ソフトが揃ったコンテンツを揃えることや、普通教室でPCを利用する際、収納や充電器具の設備、ネットワーク接続トラブルのサポートなどが必要であることもわかった」。

インテル 代表取締役社長 吉田和正氏インテルが考える学校現場へのICT普及に関わる課題インテルが考える教育用途向け専用PC端末の必要性

 中央区の小学校で利用するクラスメイトPCは、実証実験第1弾であがった問題点に対応し、インテルが策定した教育用途専用端末のリファレンス・モデルを採用した実験機。スペックとしては、CPUにはAtom N270(1.60GHz)を搭載し、1,024×600ドット表示対応の8.9型液晶、感応式タッチパネルを搭載し、50cm以下の落下テストをクリアした耐衝撃性を備えている。授業で利用することを想定し、無線LANはIEEE 802.11b/g/n、130万画素のWebカメラ、OSにWindows XPを搭載している。

今回の実証実験用に作られた「クラスメイトPC」。インテル・吉田社長いわく、「楽しそうなルック&フィール。Atomは新しいカテゴリーを作るためのもので、今回の実験には最適」
クラスメイトPCのフットプリントは240×180mmで、小学生の机の上に置いても大きすぎることはない休み時間など利用していない間に充電を行なう機能を持ったPCラックは、この実証実験にあわせて作られた特注品。大量のコンセントを備えるなど、通常のノートPC用ラックとは異なる仕様となっている側面には操作を行なうペンが収納されている
クラスメイトPCの側面画面上部にはWebカメラが搭載されている

 「クラスメイトPCの発売は未定だが、児童1人1台環境を実現したいと考えているベンダーや自治体などさまざまな方と協力していきたい」(インテル・吉田社長)。

 今回、インテルと共同で実証実験に取り組む内田洋行は、「当社は'10年創業で、来年は創立100周年を迎える。教育向け事業は61年間続けており、教育基本法が制定される前から取り組んできた。その教育基本法も改定され、ICTを活用した新しい教育が模索されおり、内田洋行としては今回の実証実験では新しいICT活用教育の突破口を目指していきたい」と教育現場での最先端のPC活用を実証する方針だ。

 特に現在、国会で審議されている平成21年度補正予算では、学校ICT環境整備事業として総額4,081億円の予算が計上される見込みだ。この予算によって、公立学校においても校内LAN設備率を現行の63%から100%に拡大し、校務用コンピュータの整備率を58%から100%へ、教育用PCの整備台数も1台あたり生徒7.0人から3.6人へ、またTVのデジタル化、小・中学校に各1台の電子黒板の整備など大幅なICT設備拡充が実現する見通しだ。

 「今回の実証実験は、補正予算のために行なうものではないが、ICT環境整備が進み、児童や生徒1人に1台のPCの実現性が高まることは間違いない。実証実験によって1人1台でどのような効果があがるのかを検証することで、1人1台実現へのはずみとしたい」(内田洋行・取締役専務執行役員 大久保昇氏)。

内田洋行 代表取締役社長 柏原孝氏内田洋行 取締役専務執行役員 大久保昇氏大きく変革された日本の教育の方向性
文部科学省が行なった教員自身の評価では、ICT活用が学力向上につながるというアンケート結果が明らかに全国学力調査テストで成績のよい学校では、コンピュータ及びLANが整備されているという結果に文部化学賞の調査では、ICTを活用した実証実験を行なっている教育はその効果を高く評価している
その一方で、学校におけるICT環境整備は遅れが見られていた平成21年度補正予算によって、学校ICT環境整備が大幅に進展する可能性が浮上
今回実証実験を行なう中央区立城東小学校の概要(向かって左)内田洋行・柏原社長、(中央)インテル・吉田社長、(向かって右)内田洋行・大久保専務執行役員

 実証実験第2弾を行なう中央区の城東小学校は、東京駅から徒歩3分という立地にあり、児童の数も少なく、実験に参加する4年生は7人、5年生は9人、6年生は10人という小規模な環境。実証実験第1弾では、授業の間は1人1台のPCを利用していたものの、複数のクラスでPCを共用していた。今回は児童1人1台の専用体制となる。

 授業としても、前回同様小学館のデジタルドリルシステムを使って国語、算数の授業に利用する他、小学校でも平成22年度(2010年度)から必須科目となる英語の授業にも利用する。英語の授業で利用するコンテンツとしては、国際電気通信基礎技術研究所が開発し、内田洋行が提供する英語学習ソフト「ATR CALL BRIX」を使用する。

英語の授業に利用する学習ソフト「ATR CALL BRIX」小学館のデジタルドリルシステムの算数小学館のデジタルドリルシステムの国語

 また、第1弾を実施した千葉県柏市のような郊外都市でも、周囲の住宅などで利用している無線LANが学校内にも入ってくる事態が起こっていたが、今回の城東小学校は東京駅からすぐという立地であることから、さらに多くの無線LANが入ってくることも想定される。

 「こうしたICT環境運用の問題点を明らかにすることも実証実験の大きなテーマとなる。授業で無線LANを利用する場合には、通常の企業や家庭での利用とは異なり、一気に40台のPCからアクセスが集中するといった事態が起こる。こうした事態の回避方法、電子黒板と生徒のタブレットPCなど周辺機器との連携によってどんな効果が生まれるのかの検証、さらに、どのようなソフトが授業では求められるのかといった検証も行なう。内田洋行では、教育用コンテンツ配信サービス『EduMall』を提供しており、これを活用しながらの検証も実施する予定」(内田洋行・大久保専務執行役員)。

 インテルと内田洋行では、実証実験をベースに、ICT活用による学習の有効性を検証し、教育業界、IT業界にフィードバックしていく計画だ。

(2009年 5月 27日)

[Reported by 三浦 優子]