NECエレとルネサス、半導体事業を統合
~記者会見を開催「グローバルで勝てる会社へ」

4月27日 発表



 NECエレクトロニクス株式会社(以下NECエレ)、株式会社ルネサス テクノロジ(ルネサス)、日本電気株式会社(NEC)、株式会社日立製作所、および三菱電機株式会社は27日、NECエレとルネサスの事業を統合する検討に入ったと発表した。

 NECエレクトロニクスは2002年にNECから、ルネサスは2003年に日立製作所および三菱電機から、それぞれ独立する形で設立された半導体専業企業で、マイコンを中心にそれぞれの事業を行なってきた。しかし、半導体市場の競争が激化する中で、よりいっそうの経営基盤と技術力の強化を図り、顧客満足度の向上と企業価値の増大を目指すために、事業統合の検討開始に合意した。

 NECエレクトロニクスはデジタル民政向けソリューション、ルネサスは携帯電話や自動車向けソリューションにそれぞれの強みを持っているが、事業統合後も、それぞれの強みをさらに強化するような開発リソースの選択と集中を行なうとしている。

 合意に基づき、今後、統合条件に関する協議を開始し、7月末を目処に契約を締結。2010年4月1日を目処に事業統合を行なう。統合後の新会社は上場を維持することを前提とする。統合後の称号、本社所在地、役員構成や業績見通しなどについても決定次第順次通知する。

●グローバルで勝てる会社へ
発表会見のフォトセッションにて

 4月27日に都内で開催された記者会見には、NEC 代表取締役執行役員社長 矢野薫氏、NECエレクトロニクス代表取締役社長 中島俊雄氏、ルネサス テクノロジ 取締役社長 赤尾泰氏、日立製作所 執行役会長兼執行役社長 川村隆氏、三菱電機 執行役社長 下村節宏氏の5名が出席し、新会社設立の目的や今後の目標などを説明した。

 NECの矢野氏は今回の統合について、「世界経済はリーマンショック以降、極めて厳しい状況になっている。この中でNECエレとルネサスの半導体事業を統合することで、グローバルな半導体業界において勝てる製品力を強化していくことが目的」と述べた。

 また、今回の半導体事業の統合については、「両社の現状の赤字をそのまま統合しても意味がないので、2009年度中に抜本的な経営体質の強化を図り、単独でも生き残れる体質を作り上げてから統合を目指す。新会社はNECと日立、三菱の3社が主な株主となるが、上場を維持できるだけの財務の健全性を実現するべく、協力をしていきたい」と語った。

 両社は現在マイコンの分野において世界1位と2位の座を得ているが、NECエレはデジタル民政向け製品、ルネサスは自動車と携帯電話向け製品が強い。「両社の強みを統合することにより、お互いの不足を補完するだけでなく、強い分野を更に強くしていくことができ、世界の会社としても“勝てる会社”を実現できる。お互い良きパートナーとなれるだろう」とした。

 日立の川村氏は、「日本経済の中において、半導体は1つのキーとなっている。日立は電力や産業システムなどの社会イノベーション事業に取り組んでいるが、今回の統合により、両社の資源を活用し、世界第3位の新半導体会社を設立できる。これによりよりスピーディな製品展開をしていき、日立の事業にもさらなる付加価値を与えることができる」とした。

 三菱の下村氏は、「三菱としても、統合に向けた話し合いを今後積極的にやっていきたい。世界の同時不況によりグローバルの競争はますます厳しくなってきており、営業体質の改善が求められている。統合までに各々の経営改善をしていかなければならず、正念場ではあるが必ず実現できるものと信じている」と語った。


NEC 代表取締役執行役員社長 矢野薫氏日立製作所 執行役会長兼執行役社長 川村隆氏三菱電機 執行役社長 下村節宏氏

 NECエレの中島氏は事業統合について、「現在、両社の各々のシェアを足すと、マイコンではシェア世界1位(31%)、LCDドライバでは世界2位(17%)、ASICでは世界4位(9%)、アナログディスクリートでは世界5位(5%)を実現できる。売り上げも単純計算で約7,000億円に達成する、世界第3位の半導体企業となる」とした。

 一方、統合までに赤字体制から脱するために、両社はそれぞれ構造改革を行なっている。具体的には外注費と業務委託費の削減、設備投資の抑制、前工程ラインの閉鎖と売却、人件費抑制施策の展開などにより、「合計で2,000億円の固定費削減を目指し、黒字化をしたい」とした。

NECエレクトロニクス代表取締役社長 中島俊雄氏両社の売り上げ実績2009年度中に実施される2,000億円の固定費削減

 ルネサスの赤尾氏は、「統合により、マイコンだけでなく、SoC(System on Chip)とアナログ・ディスクリートなどの個別半導体事業をさらに強化し、顧客満足度を向上したい。特に今後はSoC化が進むだけでなく、マイコンを取り囲むアナログ・ディスクリート部品も増加することを見込み、強化していきたい」とした。

 統合後は、現在売上比率の44%を占める海外市場をさらに強化し、6割を目指す。また、R&Dの統合などにより、技術力と開発力、広範な機会発見能力を創出し、エコ/エネルギー分野、セキュリティ分野、ヘルスケア分野にもチャレンジしていくとした。

ルネサス テクノロジ 取締役社長 赤尾泰氏今後強化する3つの分野統合によりマイコン分野で31%のシェアを獲得できる
マイコンを取り囲むアナログ・ディスクリートにも注力海外をさらに強化して売り上げの割合を伸ばす新たな事業分野へもチャレンジする

 質疑応答では、統合後の存続会社についての質問がなされ、矢野氏は「上場企業として考えた場合に、基本的にNECエレを存続させる方針とするが、現時点ではまだ決まっていない。また、これに関しては“NECエレがルネサスを吸収合併するからNECエレが生き残った”というわけではなく、あくまでも両社の合併の形で話し合いを進めている」とした。

 一方、マイコンなど、製品寿命が長いものに関しては統合が難しいのではという質問に対し、赤尾氏は、「確かに、マイコンの良い製品は10年以上という長い息の製品もあり、すべてのラインナップを早急に統合することは良いとは考えていない。顧客の要望を聞きながら、統合すべき製品、そうでない製品を慎重に検討していきたい」とした。

 統合後の具体的な目標はあるかという質問に対し中島氏は、「現時点ではまだお話できないが、少なくとも赤字でのスタートはありえないし、想定もしていない。統合後の会社は連結から持分になるため、各々の責任感が増すと思うし、全員が意識してやっているので、赤字からは脱す体制でいる」と答えた。

 一方、お互い完全に競業する分野もあり、それは望ましくないのではないかという声に対し矢野氏は、「現在の世界は未曾有の経済危機に至っており、従来の考え方ではダメであると考えている。新会社は、この危機を乗り切るだけでなく、危機を乗り越えた先でも戦えるグローバルな会社であり続けなければならない。半導体は日本の“産業の米”であり、産業全体に影響を及ぼす問題である。我々としてはなんとしてもこの産業を維持していかなければならない」とした。

(2009年 4月 27日)

[Reported by 劉 尭]