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ハイエンドの主流は今や12コア以上! 最新CPUのベストチョイス教えます

 2019年のCPU市場はAMDが台風の目だったが、メインストリームやエントリークラスを中心にIntelの存在感は失われていない。現行CPUを横並びで比較しながら、今時のCPU選びに必要なポイントをまとめてみたい。(TEXT:加藤勝明)

Ryzen 9シリーズの登場がCPU選びのルールを変えた

 2019年7月に始まったAMDの猛攻によりCPU選びのルールが一気に変化した。その理由はCPUコアとI/O部分(メモリやPCI Expressとの接続)を物理的に分離したZen2アーキテクチャを採用した第3世代Ryzenの存在が大きい。12C24TのRyzen 9 3900X、16C32Tの3950Xが登場したことでAMDはメインストリームCPUの性能を大きく引き上げ、ライバルであるIntelを引き離す。それどころか同アーキテクチャを採用した第3世代Ryzen Threadripperによりハイエンドデスクトップ(HEDT)向けの上限も引き上げた。

Zen2世代のRyzenのポイント
Zen2アーキテクチャは大幅なIPC増加を果たしたが、CPUダイからメモリやPCI Expressコントローラといった足回りの部分をIOダイ(cIOD)に分離したことがAMD製CPUの勝利を決定付けた

 下図はCINEBENCH R20のスコアとコア数の関係をプロットしたものだが、8C16TのCPUで5,000ポイント台が限界だったメインストリーム向けCPUが、2019年後半に一気に9,000ポイント台へ伸びたことがよく分かる。Intelは全コア5GHz動作のCore i9-9900KSやCascade Lake-X世代のCore Xシリーズを投入したが、基本設計やコア数は据え置きのままであるため、AMDの足を止めるにはいたっていない。デスクトップ向けCPUでは当分AMDの天下が続くことだろう。

CINEBENCH R20のスコアとCPUコア数の関係

高価なHEDT用CPUに食い込むAMDのメインストリームCPU

 改めて現行CPUを中心としたCPUのパフォーマンスを横並びで比較しよう。まずは「CINEBENCH R20」のマルチ・シングルスレッドのスコアを比較する。

CINEBENCH R20は、CGのレンダリング処理を利用したベンチマーク。R20はメニーコアCPU環境での性能比較を重視し、「CPU」ではマルスレッド性能が、「CPU(シングルコア)」ではシングルスレッド性能が計測できる

 優秀さが際立つのは安価なメインストリーム向けマザーボードで使えるRyzen 9 3900Xと3950Xの2製品。これまでシングルスレッド最速はIntel製CPUの絶対的な強みであったが、AMDのZen2がその定説を覆した。マルチスレッド性能(CPU)においても、よりコア数の多いIntelのHEDT向け最上位であるCore i9-10980XEをRyzen 9 3950Xが上回っている(ただし、UEFIでCPU倍率を「Auto」から「By Specific Core」設定にすれば10980XEが逆転する)。

 物理6コア以下のCPUに目を向けると、ここでもAMDのRyzen 5 3600X/3600がよいスコアを記録している。だが、もう少し安い実売2万円前後のCPUの中ではIntelのCore i5-9400Fが光っている。それより下の価格帯では、AMDのRyzen GおよびAthlonは旧世代のZen+ベースであるため、シングルスレッド性能が伸び悩んでいる。だがZen+ベースのRyzen Gでも、シングルスレッド性能はCore i7-2600Kより高い。10年近い技術の蓄積は、かつてのハイエンドをエントリーCPU以下にしてしまったのだ。

CINEBENCHランキング

CPU負荷の軽い状況では大きくCPU番付が変動する

 実アプリベースの総合ベンチ「PCMark 10」でも比較しよう。今回はゲーム以外の性能を見る“Standard”テストを実施した。

PCMark 10では、特定用途における性能ではなく、ブラウザやオフィスアプリケーションなど、さまざまな利用環境を想定したテストグループを複数動作させてスコアを計測する

 このテストで高評価を得たのはRyzen 9 3950Xと3900Xだが、CINEBENCHでマルチスレッド性能が最速だったRyzen Threadripper 3970Xはかなり順位を落としている。これはThreadripperのようなメニーコアCPUはWebブラウジングやオフィス系などの低負荷でクロックが効く作業がそれほど得意ではないことを示している。その点、Ryzen 9 3950Xはどのテストでも一様に高い。Core i9-9900KSはCGや動画編集性能(DCC)はRyzen 9に対し一歩劣るものの、クロック勝負の側面が強いオフィス系アプリ(Productivity)でトップスコアを記録し、それが全体(Standard)の順位を押し上げている。

 このグラフの中位より下ではCPU性能の低下と総合スコアの減少が強くリンクする傾向が見られる。Intel製のCore i5~i3が中盤の要でその下にZen+ベースのRyzen G、最後にPentiumやAthlonといったローエンドCPUが続く。Intel製の中位CPUの強みは、どのテストグループでもスコアをまんべんなく出せる点にある。だが近い将来、低位CPUがZen2ベースになれば、この様相も一変する可能性が高い。

PCMark 10ランキング

この記事の続きはDOS/V POWER REPORT 2020年冬号でお読みいただけます。2020年冬号では「PCパーツ100選+700」と題した150ページ超の総力特集を掲載しています。この1年の自作PC市場を総括しているほか、本誌執筆陣の厳しい目と徹底した検証で選出したレコメンド製品を各ジャンルから発表! さらに新顔、定番含めた主要パーツをズラリ紹介しています。どの製品を買ったらよいか迷っているあなたも、どんなパーツが売られているかを知りたいあなたもマストバイの1冊です。

【検証環境】

<LGA2066>マザーボード:ASUSTeK ROG STRIX X299-E GAMING(Intel X299)、<LGA1151>マザーボード:GIGA-BYTE Z390 AORUS MASTER(rev. 1.0)(Intel Z390)、<Socket sTRX4>マザーボード:ASRock TRX40 Taichi(AMD TRX40)、<SocketTR4>マザーボード:ASUSTeK ROG STRIX X399-E GAMING(AMD X399)、<Socket AM4>マザーボード:GIGA-BYTE X570 AORUS MASTER(rev. 1.0)(AMD X570)、MSI X370 GAMING PRO CARBON(AMD X370 ※Athlon 200GEのみ)、<LGA1150>ASRock Z97 Extreme6(Intel Z97)、<LGA1155>ASUSTeK P8P67(Intel P67)、<共通>メモリ:G.Skill F4-3200C14D-16GTZR(PC4-25600 DDR4 SDRAM 8GB×2 ※各CPUの定格で動作)×2(※Athlon 200GEのみ8GB×2)、Micron Crucial Ballistix Tactical BLT8G3D1608ET3LX0(PC3-12800 DDR3 SDRAM 8GB×2 ※Core i7-4770K/2600K環境のみ)、ビデオカード:NVIDIA GeForce RTX 2080 Ti Founders Edition、SSD:Western Digital WD Black NVMe WDS100T2X0C[M.2(PCI Express 3.0 x4)、1TB]、Micron Crucial MX300 CT525MX300SSD1/JP(Serial ATA 3.0、525GB ※Core i7-2600Kのみ)、電源:SilverStone Strider Platinum ST85F-PT(850W、80PLUS Platinum)、CPUクーラー:CRYORIG A80(簡易水冷、28cmクラス)、OS:Windows 10 Pro 64bit版、電力計:ラトックシステム REX-BTWATTCH1