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九州大ら、LEDの発光効率4倍向上で次世代ディスプレイ開発に期待

今回開発された明るく発光するペロブスカイトLED

 九州大学最先端有機光エレクトロニクス研究センター、同カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所、京都大学化学研究所、中国Changchun Institute of Applied Chemistry、同Chinese Academy of Sciences、仏Sorbonne Université、同CNRS - Université de Strasbourgからなる研究グループは、ペロブスカイトLEDの発光効率を4倍に引き上げることに成功した。

 金属ハライドペロブスカイトは、太陽電池の光吸収材料として注目されている材料で、シリコン太陽電池と同等の25.2%の光電変換効率をもつ。加えて、発光ダイオード向けの材料としても期待されているが、発光効率に課題があったためその向上が望まれていた。

 今回LEDの発光材料として用いられたのは「擬二次元ペロブスカイト」とよばれるもので、金属ハロゲンと有機アミンで構成される。この内部で電子とホール(電子が引き抜かれたあとの空の部分)が再結合すると、電子のスピンが逆向きの「一重項励起状態」と同じ向きの「三重項励起状態」が1:3の比率で形成され、前者が基底状態に戻るさいに発光が起こる。

(a)擬二次元ペロブスカイトの構造、(b)研究で用いられたペロブスカイトLEDの構造、(c)紫外線照射によって形成された一重項励起状態が発光する様子、(d)ペロブスカイトLED内部での発光の仕組み

 ペロブスカイトでは、この2状態間のギャップエネルギーが20meV以下と小さく移動が生じやすいため、後者から前者へとエネルギーが移動できれば、発光の効率の向上が見込める。研究グループでは、有機アミンを変えることで改善を試みた。

 有機アミンとして「ナフチルアミン」を用いた場合、ナフチルアミンの三重項励起状態エネルギー準位が擬二次元ペロブスカイトのものより低くなる。これにより、エネルギーは一重項励起状態に移動することなくナフチルアミンへ移動して消滅してしまうため、三重項励起状態は発光に関与できない。

 一方、三重項励起状態エネルギー準位が擬二次元ペロブスカイトより高い「フェニルアミン」を有機アミンとして用いると、上記のような有機アミンへのエネルギーの移動が生じず、一重項励起状態へ移動する。これにより、三重項励起状態のエネルギーは消失することなく発光に関与できようになる。ナフチルアミンを用いた場合と比べると、発光効率が約4倍向上することが分かった。

 ペロブスカイトを用いた薄膜は作製が容易で色純度の高い発光が可能なため、研究グループでは低コストな次世代ディスプレイの開発につながるとしている。また、レーザー発振特性の向上も期待され、医療や通信分野への応用も見込んでいる。