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産総研、ダイヤモンド基板を原子レベルで低温接合する技術

化学薬品によってダイヤモンド基板を表面処理しSi基板と直接接合する新技術

 国立研究開発法人 産業技術総合研究所(産総研)は5月20日、ダイヤモンド基板をとシリコン基板を比較的低い温度の熱処理で直接結合する技術を開発したと発表した。

 ダイヤモンドは、シリコンの15倍の熱伝導率や、60倍の絶縁破壊電界といった優れた物性を持ち、パワー半導体の究極の材料と期待されている。ただし、パワー半導体をダイヤモンド基板のみで作成するとコストが高くなるため、性能に影響が少ない部分を直接結合したシリコン基板で代替するといった提案がなされている。

 しかし、従来の直接結合技術では1,000℃以上の高温処理や、超高真空での表面スパッタエッチング処理に特殊な装置が必要で、接合処理によってダイヤモンドの結晶構造が乱れ、アモルファス化して特性が劣化してしまうといった課題があった。

 また、水酸基同士の脱水反応による接合(親水化接合)はシリコンなどの基板の直接接合に広く用いられているが、これまでダイヤモンド基板を直接接合させる適切な水酸基修飾手法が見つかっていなかった。

 今回産総研は、硫酸/過酸化水素混合液を用いて、ダイヤモンド表面を洗浄と同時に水酸基修飾できる技術を開発。特定の面を接合しやすい平滑状態に保たせながら水酸基修飾が可能となり、同じく水酸基修飾したシリコン基板と接触させた後に200℃で過熱することで脱水反応が起こり、原子レベルで直接結合できることが発見された。

接合反応のメカニズム(左)と透過型電子顕微鏡で観察した接合界面(右)

 この接合技術は一般的な洗浄処理と比較的低い温度での加熱処理だけでダイヤモンド基板の直接接合が可能となり、なおかつ高品質なダイヤモンド半導体の製造が期待できる。この技術を応用することで、パワー半導体の変換効率や入出力の電力の向上、冷却機能効率化、小型軽量化などが見込める。

 今後はほかの結晶面への適用を進めるとともに、放熱基板や絶縁基板としての応用の可能性も検討し、シリコンカーバイド(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、酸化ガリウム(Ga2O3)といったほかのパワー半導体材料との接合や、多結晶ダイヤモンドの接合、接合界面のシリコン表面の酸化膜(SiO2)層厚の低減を試みるとしている。