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デルの堅牢PC「Latitude Rugged」が山口土木の工事現場で活躍

デルの堅牢PC、タブレット等で構成されるLattitude Ruggedシリーズ

 デルがLatitude Ruggedシリーズの活用事例として、愛知県岡崎市の株式会社山口土木を紹介、どのようにこの堅牢PCのシリーズが駆使されているか、その現場を視察した。ICT活用においては業界のトップを走る山口土木だが、その導入による貢献を目の当たりにすることができた。

ソリューションのまるごと提供がデルの強み

 デル株式会社の竹内裕治史氏(クライアント・ソリューションズ統括本部 クライアント製品本部 コンサルタント)は、デル全体の業績が全般に好調であることを強調する。そして、シンクライアントからワークステーション、堅牢PC、ディスプレイを含め、ビジネスユーザーのために全方位で製品を提供しながらも、安全に快適に仕事をするためには、そのほかの何かが必要だとし、それはハードウェアデバイスだけでは難しいともいう。だからこそ、環境をまるごとソリューションとして提供することができているのが同社の強みということらしい。

 同社の佐々木彩氏(クライアント・ソリューションズ統括本部 クライアント製品本部フィールドマーケティングシニアアナリスト)によれば、デルのRuggedノートPCの世界シェアは、現在27%でじわじわと伸びてきているそうだ。この堅牢PCのカテゴリについては、2007年から取り組み、すでに13年目を迎えている。

 これまでにさまざまなアップデートがあり、2014年からは4つのモデルで展開、2つの耐久性のランクを用意し、5xxx Ruggedが屋外及び工業用音向けに強化された耐久性を持つ製品、そして、7xxx Ruggedは、ラグドエクストリームとして、より厳しいフィールド/産業条件で使用するための極限の耐久性、防爆対応、防塵防水を備えている。

 デルでは米・オースティンにテストラボをもち、10以上の最先端のテスト施設が整備されている。そして、そこでは標準規格を超える過激な条件下に製品をさらしてテストが行なわれ、そこで問題を洗い出すのだという。ただ、昨今では、過酷というよりも、多少ライトなものが求められているともいう。

竹内裕治史氏(クライアント・ソリューションズ統括本部クライアント製品本部クライアント製品本部 コンサルタント)
佐々木彩氏(クライアント・ソリューションズ統括本部クライアント製品本部フィールドマーケティングシニアアナリスト)

土木の世界をICTで効率化

 さて、そんなRugged PCをフル活用しているのが愛知県・岡崎市の株式会社山口土木だ。同社の松尾泰晴氏(取締役 統括技術部長兼総務部長)は、自社のことを紹介するにあたり、全員が監督であり作業員でもある全員野球のスタイルを持つ企業であることを強調する。本社は愛知・岡崎市で、従業員は35名、決して大きいとはいえない企業だ。現社長が1990年に初代社長として興したものの、社長はすでに別の事業にかかりっきりで、土木事業についてはすべて松尾氏らに委ねられている。

株式会社山口土木の松尾泰晴氏(取締役 統括技術部長兼総務部長)

 そんな松尾氏がデルに出会ったのは2016年の11月、東京で開催されていたCIM(Construction Information Modeling)関連の展示会だった。現場端末システムのベンダーである福井コンピュータからデルの堅牢タブレットを紹介され、隣のブースをのぞいてみたところ、まさに松尾氏が求める要素を満たした製品があったのだ。

 それまで評価していた他社製の堅牢タブレットは、スペック的に無理があり、負荷がかかる業務には使えないという判断をしていた。ところがデルの製品は違った。堅牢性を担保しながらも、通常のノートPCと遜色のないスペックを選択できる。これなら使えると直感したと松尾氏はいう。

 山口土木社内での松尾氏の役割は、とにかく、土木の世界にICTを持ち込み、業務の効率化を実現できないかを推進することだ。その実績は業界内でも高く評価され、最近は大学にも呼ばれて講義したり、大手のスーパーゼネコンではなく本当に現場でやっている作業員は何をしているのかを国交省が調査するような場にも呼ばれて出席する。国側も現場の生の声をつかみにきているように感じると松尾氏はいう。

 今やっていることは、同士が20代後半だった15年以上前から考えてきたことだと松尾氏はいう。つまり、今ようやく時代がマッチした、逆に言うと時代に追いつかれたともいう。だから追い抜かれないようにしたいと松尾氏。

 そのコンセプトはキーマンの効率化が時間単価の高い人の1分1秒をどれだけ切り詰めるかに集約される。

 最初のチャレンジは、iPhoneの導入だった。一気に7台を入れてみたという。当時、iPadがブームで、スーパーゼネコンがそれを使った事例を出したものの、見てみると、Aの現場、Bの現場、それぞれがバラバラの活用事例だったことに疑問を感じたと松尾氏。コミュニケーションツールは、全員でまわしてはじめて機能するはずだと、全現場の図面をクラウドに集約することを考えた。それによって、出先での打ち合わせや現場作業のあと、一度会社に戻って見積もりなどを印刷して、もう一度出向くといった時間の無駄がなくなる。

 人員配置にしても、13~14の現場が併行して動いているなかで、会社に戻ってホワイトボードに次の日の現場配置を書き込むようなことをしなくていい。クラウドにホワイトボードがあれば、全員が同時に見れる。また、現場に置きっぱなしの重機を別の現場でレンタル屋で借りるなど。いってくれればよかったのにといったことがこの業界はけっこう多いのだそうだ。こうした矛盾を次々にICT活用で解決したことで現場は飛躍的に効率化され、それだけで売上げは過去の倍になったという。

デル関係者と松尾氏

ようやくかなったドローンによる3D活用

 松尾氏の2回目のチャレンジはドローンの活用だった。3Dの波がやってきて、ようやくツールが揃ってきたという。現場を上空からドローンで撮影し、上から見えないところはレーザースキャナでスキャンしてデータ合体させる。そしてGNSSでとらえた座標を重ね合わせる。これによって、測量作業は一度で完了し、その日のうちに見積もりが出せるようになったという。もちろん機材には相応のコストが必要だ。だが費用対効果を考えると絶大な効率化だと松尾氏はいう。だが、そのことを土木業界の人たちは理解できないと松尾氏は嘆く。

 活用現場を見せてもらった。岡崎市にある同社のオフィスからクルマで約30分ほどの宅地造成現場で、市営住宅の隣の土地に、新たな宅地を造成しようというものだ。

 最初に測量して杭打ちし、さらにGNSS測量機で現場の座標点をレーザースキャンする。そしてドローンを飛ばし、上空からなめるように現場を撮影し、最終的にこれらのデータを重ね合わせて3Dデータを構築する。その一通りの作業を視察したが、松尾氏がたった一人でこなすことができていた。

 そのデータとCADデータを組み合わせ、さらにはVRのデータとして構築し、未着手の現場が完成後にどうなるか、実際に、完成後の現場に立ち入って評価することができる。また、できあがった3DデータをRugged PCタブレットで確認しながら現場での作業を進めることができる。

 松尾氏はプロの土木アスリートとして、新しい建設業のスタイルを作りたいという。そして、工事に関わるすべての人を幸せにしたいと考えている。そのために、デルのRugged PCは多大な貢献を果たしてくるだろうと信じている。今のRugged PCへの不満はディスクリートのGPUを装備できない点だ。ただ、同社ではPCをたった2年で償却し、新しいPCに乗り換えるという。新製品の登場を待っている時間は無駄だという松尾氏。ドローンも1年ごとに買い替えだ。次々に新しい製品が出てきて、やりたかったことができるようになる。今のICTに求めているものも、5G通信環境の整備などでガラリと違うものになっていくのはまちがいない。その変化が楽しくてたまらないという松尾氏の表情が印象的だった。

視察した造成現場(着手前)
3Dデータで工事終了後のイメージの中に入り、細部を確認するデモをする松尾氏
山口土木社のワークスペース
現場で使うとこうなるというRugged PC タブレット
汚れたら洗えばいい。端子類のカバーが開いていても平気だ。
事件は現場で起こっている。何が起こるかわからない
杭打ちの作業をデモする現場管理者の本多忠則氏
現場をレーザースキャンする松尾氏
GNSSのセッティング。このデータとレーザースキャンのデータを重ね合わせる
ドローンを使って現場をなめるように撮影させる
デルのHMD Dell Visor with Controllersを装着して現場に入る松尾氏
もともとは10m近い小山があった現場。データを重機にダウンロードすれば自動運転で造成ができるところまで技術は進んでいる