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Qualcomm、7nmプロセスのWindows 10用SoC「Snapdragon 8cx」

~FirefoxのArm64版など、Armネイティブなアプリも提供開始

Snapdragon 8cx

 Qualcommは、12月6日にアメリカ合衆国ハワイ州マウイ島で行なっているSnapdragon Tech Summitにおいて、Windows 10用のSoCとして第3世代の製品となる「Snapdragon 8cx」を発表した。

 Snapdragon 8cxは、COMPUTEX TAIPEIで発表されたSnapdragon 850の後継となる製品で、7nmのプロセスルールで製造され、CPUはKryo 495、GPUはAdreno 680、DSPにHexagon 690、ISPにSpectra 390と、スマートフォン用として発表された「Snapdragon 855」と同じキーコンポーネントを活用しながら、PC向けの拡張を行なっていることが大きな特徴となっている。

CPUのKryo 495、GPUのAdreno 680ともにSnapdragon 855から大きく強化されている

Snapdragon 8cx

 Qualcommが発表したSnapdragon 8cxは、同社初のPC向けのSoCとして発表されたSnapdragon 835、今年の6月に発表されたSnapdragon 850に引き続くことなる、Qualcommとして第3世代のPC用プロセッサとなる。

 Snapdragon 8cxのcxは、CがComputeのC、XはeXtremeのXを意味しており、従来の3桁の数字で示されていたSnapdragonの世代ルールからは外れた新しいブランド名となる。

Snapdragon 8cxのブロック図

 Snapdragon 8cxはCPUはKryo 495、GPUはAdreno 680、DSPにHexagon 690、ISPにSpectra 390、モデムにSnapdragon X24 LTE modemとなっており、SoCに統合されている内部コンポーネントは、スマートフォン用として発表されているSnapdragon 855と共通になっている。ただし、CPUとGPUは、PC向けとして利用できるようにスペックが強化されている(DSPとISPに関しては同等)。

Kryo 495

 CPUとなるKryo 495は、Cortex-A76ベースの4コアと、Cortex-A55ベースの4コアという構成になっている。Snapdragon 855のKryo 485は、ArmのDynamIQに対応しており、A76の4コアのうち1つを2.75GHzまで引き上げるプライムコア、残り3つを2.42GHzのパフォーマンスコアとして動作させている。

 これに対してKryo 495では4つのコアすべてがプライムコアとなっており、2.75GHzで動作する。また、Kryo 485ではシステムキャッシュ(Intelのプロセッサで言うところのL3キャッシュやLLCに相当)が5MBだが、Kryo 495では倍の10MBになっている。

GPUのAdreno 680

 GPUに関してはAdreno 680と同じだが、Qualcomm Technologies 製品管理上級部長 ミゲル・ニュネス氏によれば「GPUは同じブランド名だが、内部の実行エンジンやALUなどを増やしている」とのことで、こちらも性能が強化されているという。ただし、どの程度実行エンジンが増えているのかなどに関しては非公表。トランジスタに関しては倍と説明されており、1~2倍の間のどこかということになるだろう。

128bitのメモリバス

 かつ、CPU/GPUに必要なメモリ帯域を確保するため、メモリコントローラが強化されている。具体的にはSnapdragon 855が16ビット×4チャネル/64ビット幅のメモリコントローラになるのに対して、Snapdragon 8cxは16ビット×8チャネル/128ビットになっている。

前世代に比べてGPUが2倍
Snapdragon 835に比べてGPUが3.5倍
電力効率は前世代に比べて60%改善
競合他社との比較

 これらの強化により、GPUの性能はSnapdragon 850に比べて2倍、Snapdragon 835に比べて3.5倍を実現しているという。また、TDPが15W時の性能は競合他社(Intelのこと)のCPUと同等の性能を持っているが、TDP 7W時には倍の性能を持っており、かつ消費電力は圧倒的に少ないとQualcommでは説明している。

Windows 10 Enterpriseに対応、Arm64ネイティブのFirefoxやChromiumも登場

PCI Expressコントローラを内蔵

 モバイル向けのSnapdragon 855とのもう1つの大きな違いは、PCI Express(Gen3)のコントローラを内蔵していることだ。このため、PCI ExpressのSSDやNVM ExpressのSSDが新たに使えるようになっている。

 従来の製品ではUSF3までの対応となっていたため、そこが性能のボトルネックになっていた面があったが、Snapdragon 8cxではそれが解消されることになる。さらに、USB 3.1 Gen 2のコントローラもSnapdragon 855に比べて増やされており、よりPCライクな使い方が可能になっている。

Windows 10 Enterpriseに対応
ArmネイティブなFirefoxが発表される

 ソフトウェア面では、従来のSnapdragon 850/835では対応していなかったWindows 10 Enterpriseに対応したことが明らかにされた。これにより、大企業などでセキュリティの観点からEnterpriseのSKUが必須となっている企業でも導入することが可能になる。

 また、従来はArm版Windowsの機能である32bitのx86アプリケーションを利用せざるを得なかったサードパーティのWebブラウザに関してもアップデートがあり、64bitのArm命令に対応したArmネイティブなFirefoxが今後投入されることも明らかにされた。

 なお、ChromeブラウザのベースになっているオープンソースブラウザのChromiumのArm64版が公開されており、じょじょにArmネイティブなアプリケーションも出始めていることを印象づけた。

製造プロセスルールは7nm、PC用としては初めての7nmで製造される半導体となる

 Snapdragon 8cxは7nmの製造プロセスルールで製造されており、すでにサンプル出荷が開始されている。Qualcommによれば搭載するデバイスは来年の第3四半期に登場する見通しだ。