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dynabookを展開するシャープの目論見

 シャープ株式会社は、2018年10月15日、CEATEC JAPAN 2018の会場となる幕張メッセにおいて、プレスブリーフィングを行ない、CEATEC JAPAN 2018のシャープブースの展示内容を紹介するとともに、世界初となるチューナー内蔵8K TVを発表。さらに、10月1日付けで子会社化した東芝クライアントソリューション(TCS)についても言及した。

 シャープの石田佳久取締役副社長執行役員は、「TCSでは、私もなかに入り、商品やオペレーションに関するコストダウンの活動を、すでに開始している。だが、コストダウンでは、赤字は解消できても、今後の成長にはつながらない。次になにをやるかということに関して、議論をしている最中である」などと述べた。

 また、今後は東芝ブランドを使わずに、シャープとして、dynabookブランドを使用していくことになるが、「現在、国内ではdynabookのブランドで展開しているものの、海外では、テクラ、ポーテジュ、サテライトといったブランドを使用している。今後は、できるだけdynabookを前面に出したかたちで事業展開を行なっていく」と語った。

 なお、2018年10月16日~19日に開催される「CEATEC JAPAN 2018」のシャープブースでは、dynabookが展示される。

 会見では、石田副社長は、TCSの子会社化による成果として、「優秀な人材の獲得、両社の技術を融合した新たなビジネスの創出により、ヒジネスモデルの変革を加速すること」、「商材や販路の相互活用や、TCSが持つ商材とシャープ独自のデバイスの融合による特長商材の創出により、グローバルに事業を拡大すること」、「両社のリソース統合による事業効率の改善、シャープの経営管理および構造改革ノウハウを活かしたTCSの経営改善により利益を創出すること」の3点を挙げた。

 「シャープは、2017年度実績で73.4%の海外売上比率を、近い将来には80%に拡大する計画を掲げている。グローバル事業拡大のキーワードは『量から質へ』であり、TCSによるPC事業は、シャープのグローバルビジネスの拡大にも活かし、事業の質の向上を加速させたい」とした。

 また、「まずは、コストダウンに取り組んでいる。これは、シャープが数年前にやってきたことと同じことを、TCSでもう一度やっていこうということである。商品のコストダウンだけではなく、オペレーションを含めたコストダウンを行ない、すべての見直しを行なっている」とした。

 だが、その一方で、「TCSは、現在にいたるまで、かなりの構造改革をやってきた経緯がある。その点で、事業基盤としてはしっかりしたものになりつつあると判断している。現在、市場全体でCPUの供給が遅れているといった問題はあるが、こうした課題が影響しなければ、現状のまま、ビジネスを継続していても、ブレイクイーブン以上の業績は残せると思っている」。

 「課題は、ここからどう成長させていくのかということになる。売上げをどう伸ばしていくのか、コストをどう下げていくのか、そして、新たな付加価値を乗せていけるかどうかというところにかかってくる。現在、それを議論をしているところだ」とし、「コストダウンだけでは、赤字の解消はできても、今後の成長にはつながらない」と述べた。

 成長に向けては、「新たな商品ラインナップ拡大、販売地域拡大、チャネルの拡大などに取り組んでいく必要がある。シャープや鴻海が持つ販売リソースも活用したい」と語った。

 さらに、シャープとTCSの連携によって生まれるメリットについては、「シャープが持っている液晶やデバイス、センサー、カメラモジュールなどの部品は、すぐに、PCの製品化に活かせることができる。また、8Kや5G、AIoTといったシャープの取り組みや技術と連動させることもできる。さらに、販売についてもクロスセルが考えられる。

 TCSは、サーバーもデスクトップも販売している。スマートフォンのキッティングもやっている。ここに、シャープの商材や鴻海の商材を導入することで、TCSの売上げを伸ばすことも可能だろう。TCSが持つeコマースの仕組みも活用できる。逆に、PCを扱っているシャープのビジネスソリューション部門では、これまでは、お客様の要求に対して、PCを販売するという消極的な姿勢だったが、今後は、PCを含めたトータルソリューションとして、積極的に販売できる体制が整う。

 一方で、PCが持つオープンなプラットフォームを活用することで、シャープ全体として、PCをどう育てるか、あるいはPCを使って、シャープ全体の事業をどう拡大できるかが今後のポイントである。この点については、近いうちに別途会見を行ない、説明をしたい」と語った。

 そのほか、TCSの2,400人の人員については雇用を維持する姿勢を示したほか、「TCSは、デスクトップPCについては一部外部で生産しているが、ノートPCは自社生産をしている。将来的にフォックスコンの工場などを使うこともあり得るが、現時点では、中国・広州の自社工場を使っていく」とした。

 さらに、「PCは、IntelのCPUと、MicrosoftのOSを使ったモノづくりであり、スマートフォンとは違う商材。PCとスマートフォンという2つの事業を統合するつもりはない」とも語った。

 PC市場の縮小傾向については、「市場全体としては、シュリンク傾向にある。だが、減り方を見てみると、極端に減っているわけではない。確かに、かつては、全世界で2億台の市場規模を誇ったノートPCが、約1億7,000万台にはなっている。だが、数年間にわたって、その規模で推移しており、その点ではあまり心配をしていない。また、TCSが持っているシェアは1%しかない。この市場において、シェアや出荷台数を増やすことは難しくない」と発言した。