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NVIDIA、リアルタイムレイトレーシングに対応した「GeForce RTX 20」シリーズ

~499ドルから、9月20日に販売開始

GeForce RTX 2080 Tiを手に持って紹介するNVIDIA CEOのジェンスン・フアン氏。冒頭では着ていた革ジャンを脱ぎ捨てて、熱く紹介

 NVIDIAは、8月21日よりドイツ・ケルン市にあるケルン・コンベンション・センターで開幕するGamescomに先だって、8月20日に記者会見を開催し、同社のゲーミングPC向けGPU「GeForce」ブランドの新製品となるGeForce RTX 20シリーズを発表した。

 SIGGRAPH 2018で発表されたNVIDIAの新GPUアーキテクチャ「Turing GPU Architecture」に対応した新世代のGPUで、RTコア、Tensorコアという新しい演算器を搭載しており、Quadro RTXシリーズと同じように、リアルタイムレイトレーシングに対応していることが最大の特徴となる。

 「TU102」/「TU104」の開発コードネームを持つ2種類のダイで、GeForce RTX 2080 Ti、GeForce RTX 2080、GeForce RTX 2070の3つのSKUが用意されており、NVIDIAからはFounder Editionと呼ばれるリファレンスデザインのボードとファンを採用した製品が発売されるほか、AIC(Add In Card)パートナーからはオリジナルのファンを採用した製品が発売されることになる。

67,000ドルのWSでなければできなかったリアルタイムレイトレーシングが1枚のGeForceで

 ケルン市の中心地に近いところにあるケルン・コンベンション・センターからは、やや離れたところにある会場で行なわれた発表会には、報道関係者などのほかに、一般客も招待されており、割と大きなホールも満員御礼となっていた。

NVIDIA CEO ジェンスン・フアン氏

 そうしたなかで行なわれたNVIDIAの基調講演は、いつもの通りの革ジャンに身を包んだジェンスン・フアンCEOが登壇し、開口一番「ネットではGTX 1180なる製品が出るなどのリーク記事が出回っているようだが、それが全部でたらめだということをこれから紹介していきたい」と述べ、インターネット上の不確かな情報を提供するサイトが書き立ててきた予測記事はみんな外れだと笑い飛ばすと、会場からは大きな笑いが起きた。

SIGGRAPH 2018の基調講演と同じスライド

 フアン氏は、まずは先週行なわれたSIGGRAPH 2018の基調講演(NVIDIAがGPUを再定義。Turing GPUは今後十数年間のグラフィックストレンドに参照)と同じように、レイトレーシングに関する歴史的な経緯や技術的な解説からはじめた。「ムーアの法則はこの業界を35年支配してきたが、我々はつねにそれを上回っており、2000年にGeForce 256をリリースしてから大きく進化してきた、10年で1,000倍にもなっていると言って良い」と述べ、NVIDIAのGPUの進化が3Dグラフィックスの世界の進化を牽引してきたと強調した。

 そして、フアン氏は「この中でGeForce 256持ってた人?」と聞くと、会場の多くの来場者が手を上げると満足そうに「GeForce 256はターニングポイントになる製品だった」と述べ、これから発表される製品もそうしたGeForce 256のようなターニングポイントになるような製品になるのだと示唆した。

リアルタイム・レイトレーシングとは人間の目に入ってくる情報を再現する仕組み
GDCで行なわれたリアルタイム・レイトレーシングのデモ
GDCの段階ではNVIDIAのDGXステーション(Tesla V1004枚)で行なっているリアルタイム・レイトレーシングのデモ

 そして、NVIDIAが今年(2018年)の3月に行なわれたGDCで発表したリアルタイムレンダリングのためのプラットフォームとなるRTXについて触れ、「RTXを利用したリアルタイムレイトレーシングは、シンプルに人間の目に入ってくる情報を再現するための仕組みだ」と説明し、MicrosoftのDXR (DirectX Raytracing)、Unreal Engine 4を利用したストームトルーパーのリアルタイムレイトレーシングのデモを行なった。

 「このデモはGDCのときには、4枚のTesla V100が入っているDGX Stationで再生できた。とても普通のPCゲーマーには買うのが難しい、67,000ドルのワークステーションでしかできなかったことが、今回はTuringベースのカード1枚でできるようになった」と述べ、TuringのRTコアにより、ついにリアルタイムレイトレーシングがPCゲーミングの世界まで降りてきたことを強調した。

フアン氏らしいジョークでDGXワークステーションをほしがるユーザーに割引価格で提供とアナウンス、それでも60,000ドルだが……

 さらにフアン氏らしく「どうしてもDGXステーションをゲーミングPCとして使いたいという熱心なPCゲーマーの人もいらっしゃるようなので、ここに専用の通販用の回線を用意した、そうしたお得意様のために、特別に60,000ドルで販売したい」と述べ、笑いを取ることを忘れなかった。

GeForce GTX 10シリーズに比べて6~10倍のレイトレーシング性能を実現

Turingのダイ
Turing、Volta、Pascalの性能比較

 そしてTuringの機能について紹介し「14TFLOPS+14TIPSのSM、最大10G Ray/sのレイトレーシング性能を実現するRTコア、さらにはTensorコアでFP16演算時で110TFOPSの性能を実現している。とくにRTコアは新しい発明と言って良く、TuringはGeForce GTX 1080 Tiの約10倍、そしてTitan Xの約6.5倍のレイトレーシング性能を発揮する」と述べた。

レイトレーシングの演算を行なう仕組み
RTコアがレイトレーシングをアクセラレーションする
ハイブリッドレンダリング
RTXをオフ
RTXをオン

 また、Tensorコアに関しても「TuringのTensorコアは、GeForce GTX 1080 Tiと比較して深層学習の性能が4倍になっている。深層学習は既に自動運転、医療などさまざまな産業で使われるようになっている。われわれは新しくNGXという仕組みを導入し、GPUがこれを効率よくできるようにしていきたい。NGXに対応したドライバーは、DGX-2などのスーパーコンピュータで作られた深層学習の学習成果をダウンロードして使えるようになっている。これにより、TuringのTensorコアをもっと活用することができる」とし、NGXの導入で深層学習をさまざまなシーンで活用ができるようにすると説明した。

 すでにNVIDIAは「DLSS」と呼ばれる、深層学習を利用したノイズを削減して動画をアップスケールする手法をSIGGRAPHなどで説明しており、今後はNGXを利用してTensorコアの活用をソフトウェアベンダーなどに呼びかけていくことになる。

Tensorコアの説明
NGX
DGX-2で学習した結果をPCのGeForceにフィードバック
DLSSを利用した効果

 フアン氏は、SIGGRAPH 2018でもデモしたアンドロイドが動くデモ「SOL」(今回初めてこのデモの名前がSOLだと明らかにされた)も披露した。

SOLのデモ

Battlefield、Tomb Raiderなどの人気タイトルがリアルタイムレイトレーシングに対応

 続いてフアン氏は、TuringのRTコアを利用したリアルタイムレイトレーシングに対応したPCゲームタイトルを紹介した。

 最初に紹介されたのは「Shadow of the Tomb Raider」だ。日本ではスクウェア・エニックスから販売される予定の同タイトルは、おなじみララ・クラフトが主役のアクション・アドベンチャーゲームで、マヤ遺跡を探検していく。

 このゲームでは、RTXを介してRTコアを利用したリアルタイムレイトレーシングの機能が実装されており、レイトレーシングを利用した陰の描画などの様子がデモされた。

Shadow of the Tomb Raider
RTXをオン
RTXオフの状態
RTXオン
RTXオフ

 続いて紹介されたのはEAの「Battlefield V」。Battlefieldシリーズは第2次世界大戦など実在の戦争や架空の戦争などをテーマにしたFPSゲームで、Battlefield Vはその最新作となる。

 このBattlefield Vでも、RTXを介してRTコアを利用して演算するリアルタイムレイトレーシングに対応しており、車のボンネットに反射して映っている飛行機が再現されていたり、水面にビルが映っていたりという様子が再現されていた。そのリアルさには会場から感嘆の声が起こるほどで、実際に登場すると話題のタイトルになりそうだ。

 なお、EAによればBattlefield Vのアーリーアクセスは9月4日に開始され、パブリックベータは9月6日から開始される予定だと説明された。

Battlefield V
RTXオン
RTXオフ
RTXオンの状態で炎が水面に反射する様子がとてもリアル
リリーススケジュール

 このほかにも、NVIDIAはRTXに対応したタイトルが多数あると説明しており、その一部をスライドで紹介した。

RTXに対応予定のゲーム

3つのSKUが用意されているGeForce RTX 20シリーズ

 講演の最後にフアン氏は「デモは素晴らしいと言ってもらえるだろうが、じゃあ、それが利用できるハードウェアはなんだと質問したくなるのでは?」と言うと、散々焦らされた観衆はヤンヤの歓声。そうした、同氏からTuringのコンシューマ版となるGeForce RTX 20シリーズの詳細が紹介された。

GeForce RTX 20シリーズ

 「GeForce RTX 20シリーズには3つのSKUがある。RTX 2070、RTX 2080、RTX 2080 Tiの3製品だ。それぞれ6G Ray/s、8G Ray/s、10G Ray/sの性能を持っている」と述べ、GeForce RTX 20シリーズの3つのSKUを紹介した。

 GeForce RTX 2080 Ti、GeForce RTX 2080、GeForce RTX 2070の3つのSKUが用意されており、オーバークロック版となるFounder Editionと無印版が用意されている。すでに米国では予約が開始されており、Founder Editionではない通常版の価格(税抜)はそれぞれ999ドル、699ドル、499ドルに設定されている。

 販売は9月20日が予定されており、ゲーミングPCにも本格的にリアルタイムレイトレーシングが実現する時代がやってきそうだ。

3つのSKU
価格は499ドル~
発売は9月20日
3つのSKUの価格

 最後にフアン氏は「GeForce RTX 20シリーズはGeForce GTX 10シリーズから大きな性能向上を果たしている。GeForce RTX 20シリーズはグラフィックスを再定義する」と述べ、講演を締めくくり、今回の製品がこれからの3Dグラフィックスの新しいトレンドを指し示すモノだと強調して講演を終えた。

GeForce RTX 20シリーズはGeForce GTX 10シリーズから大きな性能のジャンプ
まとめ