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アイロンで衣服に接着できる超薄型有機太陽電池

 理化学研究所創発物性科学研究センター 創発ソフトシステム研究チームの福田憲二郎専任研究員、染谷隆夫チームリーダー、東レ株式会社の北澤大輔主任研究員らの国際共同研究グループは17日、耐熱性と高いエネルギー変換効率を兼ね備えた「超薄型有機太陽電池」の開発に成功した。

 衣服に貼り付けられる柔軟性の高い太陽電池は、ウェアラブルセンサーや電子デバイスを実現する上で注目されてきたが、これまでの超薄型有機太陽電池は十分なエネルギー変換効率と耐熱性を両立するのが難しかったため、加工プロセスでの適応が妨げとなっていた。

 今回開発した有機太陽電池は、耐熱性と高エネルギー変換効率を両立する新しい半導体ポリマー「PBDTTT-OFT」を利用。従来の「PBDTTT-EFT」と似た骨格だが、直線状の側鎖を持ち、高い結晶性を持つ膜の形成で、加熱による導電性低下を防いだ。

 また、超薄型基板材料として、従来のパリレンと比較して表面平坦性と耐熱性に優れる透明ポリイミドを採用。さらに、撥液性に優れたポリマーと、ガスバリア性に優れたポリマーの2層からなる二重封止膜構造を採用したことで、大気安定性を改善させたという。

 これにより、エネルギー変換効率を9.4%、最大で10%を実現。約80日間大気中に保管したあとでも、エネルギー変換効率の低下を20%に抑え、100℃の環境下に5分晒しても変換効率がほとんど変化しなかったという。

 この高い耐熱性により、アパレル製作時に布地の接着などに一般的に用いられている“ホットメルト手法”で、布地への貼り付けを実現したという。今回の研究成果は、ウェアラブルデバイスやeテキスタイルに向けた長期安定電源応用の未来に貢献すると期待しているという。