やじうまミニレビュー

エレコム「M-XT4DRBK」

~左手“専用”に開発されたワイヤレストラックボール

やじうまミニレビューは、1つ持っておくと便利なPC周りのグッズや、ちょっとしたガジェットなど幅広いジャンルの製品を試して紹介するコーナーです。
左手での操作に特化したエルゴノミクスデザインのボディ。左右ボタンの隣にもうひとつボタンを備えており、任意のキーを割り当て可能

ある意味“奇跡”の、左手専用ワイヤレストラックボール

 普段は右手でマウスを操作しているが、手が疲れた時、また右手で筆記具を使ったり食事を摂っている際に左手でPCが操作できれば、きっと作業が捗るはず……こう考えたことのある人はきっと多いはず。こうしたニーズに合致した左手用のトラックボールとして、以前ケンジントンの「OrbitTrackball with Scroll Ring」および「ExpertMouse OpticalBlack」を取り上げたが、ここにきて新たな“刺客”がお目見えした。今回紹介するエレコムの「M-XT4DRBK」がそれである。

 「M-XT4DRBK」は、左手での操作に対応した、親指操作タイプのワイヤレストラックボールだ。いや、左手に「対応した」という表現はあまり適切ではない。本製品はこれまで取り上げたトラックボールのように左右どちらの手でも使えるデザインとは異なり、最初から左手“専用”に開発された製品だからだ。

 もともと左手専用のデバイスというのは、メーカーとしても開発費をペイできる見込みが低いことから、新規に開発されることはほぼ皆無だ。それゆえ一般的に左手用とされるデバイスは、左右どちらでも使えるユニバーサルデザインの製品のボタン割り当てをユーティリティで切り替えて「左手用」と称していることがほとんどだ。マウスですらこの有様なので、愛用者の限られるトラックボールともなると、なおさらこの傾向が強い。

 しかし今回の「M-XT4DRBK」は、ボールやボタンのレイアウトからして完全な左手専用であり、さらにワイヤレスなうえに割り当て自在な多ボタンを備えるという、トラックボールとしては奇跡的な仕様を実現している。同時発売の右手用モデル「M-XT2DRBK」をそっくりそのまま鏡写しにしたボディデザインは、本製品のために新規に金型を起こしたものとみられ、この機会を逃せばもう今後入手は不可能かもしれないレアな一品である。

高いフィット感。8つのキーを自在にカスタマイズ可能

 具体的に製品を見ていこう。本製品は親指でボールを操作する方式で、ホイールボタンを含む3ボタンに加え、その隣にさらに1ボタン、さらに人差し指で触れやすい先端寄りにさらに2ボタンが配置されている。これら6ボタンは専用ユーティリティ「エレコム マウスアシスタント」を用いることで、左右クリックなど基本的な操作のほか、任意のショートカットやジェスチャを割り当てられる。ちなみにチルトホイールの左右にもショートカットが割り当てられるので、都合8つのキーをカスタマイズできる計算になる。

 実際に持ってみると、そのフィット感の高さに驚かされる。筆者が現在常用しているロジクールのゲーミングマウス「G700s」のように、右手用のマウスであれば同様のフィット感を持つ製品は多いが、左手用ともなるとなかなかお目にかからない。かつてワコムから発売されていた、ペンタブレットの補助デバイス「Smart Scroll」をも上回る握り心地だ。ボタンの配置も無理がなく、特定のボタンをクリックするために握り直すといったことをしなくとも、ホームポジションに置いた掌の位置を動かさずに操作できる。

 ボールの径は実測約34mmで、重量もそれほどないことから「OrbitTrackball with Scroll Ring」の55mmボールに比べて細かい操作はあまり得意ではなく(右手用モデルにある減速スイッチは本製品では用意されていない)、最初のうちは狙ったところでピタッと止められなかったり、クリックの瞬間にポインタがずれてしまう症状が多発するが、2~3日我慢して使っていると徐々に慣れてくる。メーカーがセールスポイントとしている、直径2.5mmの大型人工ルビーを使用した支持球や、ボタンに使用されているオムロン製のマイクロスイッチが、使い勝手を支えているのだろう。

 ワイヤレスで動作するため、設置場所の自由度も高い。椅子に座った姿勢に応じて置く位置を微調整しやすいほか、使わない時は裏面の電源ボタンをオフにして片付けておくこともできる。ちなみに無線は2.4GHz帯の独自方式で、専用の超小型レシーバがPCのUSBポートを1つ占有することさえ我慢すれば、Bluetoothに比べて途切れにくく、またスリープから復帰後の再接続も速いといった利点もある。

他社マウスユーティリティの共存もいまのところ問題なし

 筆者のように右手が疲れた時の補助用途で使う場合、右手用マウスのユーティリティと共存が可能かどうかは大きなポイントだ。今回試した限りでは、筆者が右手で使っているロジクールG700s用のユーティリティ「Logicoolゲームソフトウェア」、さらに本製品と入れ替えで取り外す予定のケンジントンのユーティリティ「TrackballWorks」とも問題なく共存できているようだ。インストール時に他社のマウスユーティリティをアンインストールするよう促されるのを無視して使っているので、メーカー非推奨の使い方ということになるが、ユーティリティが共存できないがゆえに右手用マウスが使えなくなっては本末転倒なだけに、ひとまず合格点は付けられる。

 本製品はメーカー標準価格11,502円ながら、Amazonでは7,250円で販売されている。右手がふさがっている時に使うためだけのデバイスに高級マウス並のコストを掛けられるかどうかは判断が分かれるだろうが、トラックボールとしての使い勝手および機能の豊富さは合格点をつけられる出来であり、製品そのものがハズレという心配は皆無だ。もともと左利きというユーザのほか、筆者のように肩凝りでを解消する目的で使うなど、左手での利用に価値を見いだせるようであれば、もしかしたら今後もう登場しないかもしれないコンセプトの一品なだけに、今のうちにお試しになってみてはいかがだろうか。

ボールを親指で操作するレイアウト。ボールにそれほど重量はなく、狙ったところでピタッと止めるには多少の慣れが必要になるが、致命的なクセがあるわけではない
先端近くの2ボタンは、デフォルトでは戻る/進むに割り当てられている。カスタマイズにも対応
完全な左手専用のデザイン。同時発売の右手用モデル「M-XT2DRBK」とは鏡写しのボディ
カウントは1,500/750カウントの2段階で切り替え可能。1500カウント(HIGH)にスライドさせるとこのように表示が赤くなる
単3電池1本で駆動。レシーバは本体に収納できるが、モバイルユースの製品ではないため普段はあまり出番はなさそうだ
裏面には「Japan Design」の刻印がある。スライドスイッチでローエナジーモードとハイスピードモードに切り替えられる。想定電池使用期間は前者で約273日、後者で約176日
USBレシーバーは超小型タイプ。2.4GHz帯の独自方式
ボールの直径は実測で約34mm。本体側の支持球に直径2.5mmの大型人工ルビーを使用していることをセールスポイントとしている
前回紹介したケンジントン「ExpertMouse OpticalBlack」(右)との比較。ボール径はさすがに差があるが、手へのフィット感およびボタンのカスタマイズ性の高さは本製品のほうが上だ
筆者が常用しているロジクールのゲーミングマウス「G700s」との比較。サイズ、背の高さとも本製品が一回り大きいが、手に持った際の感覚は非常に近い
手に持ったところ。手のひらをかぶせるような持ち方になる
親指でボールを、人差し指で左クリックと戻る/進む、さらにホイールを操作することになる
専用ユーティリティ「エレコム マウスアシスタント」を使ってキーのカスタマイズが行える。チルトホイールの左右もカスタマイズできるため、筆者はブラウザのタブ切り替え(Ctrl+Tab)をここに割り当てている
任意キーやジェスチャの割当にも対応している。ゲーミングマウスによくあるマクロまでは登録できないが、これは製品のコンセプトからしても不要だろう
Amazon.co.jpで購入

(山口 真弘)