やじうまミニレビュー

家でも外でもゲームでも。万能小型ワイヤレスマウス「Razer Pro Click Mini」を使ってみた

~デスクワーク向けながら最大12,000dpi、耐久性1,500万回の静音スイッチ採用

やじうまミニレビューは、1つ持っておくと便利なPC周りのグッズや、ちょっとしたガジェットなど幅広いジャンルの製品を試して紹介するコーナーです。
Razer Pro Click Mini。店頭価格は1万800円

 Razerは12月17日、ワイヤレスマウス「Razer Pro Click Mini」を発売した。本機はデスクワーク向け製品のラインナップとして展開されているが、筆者のゲーマー的な視点でも気になる製品だったのでレビューしてみることにした。

 本機を使ってみて分かった注目点は3つ。第1に高いスペック、第2にコンパクトなサイズ、第3に2.4GHz無線とBluetoothの2つの接続方法。これにより筆者は家での仕事にもゲームにも、そして外出時にも、マウスはこの1台で完結するようになった。

ゲーミンググレードの小型ワイヤレスマウス

 では第1の注目点であるスペックから確認していく。

【表】Razer Pro Click Miniの主な仕様
解像度200~12,000dpi(100dpi刻み)
最大速度300ips
最大加速度35G
光学センサーRazer 5G 高性能オプティカルセンサー
スイッチ耐久性1,500万回
ボタン数7
本体サイズ(長さ×幅×高さ)100.2×62.7×34.1mm
インターフェイス2.4GHz無線(USBドングル)、Bluetooth
重量約88g(単3形乾電池1本)、約111g(単3形乾電池2本)
店頭価格1万800円

 光学センサーは「Razer 5G 高性能オプティカルセンサー」を採用し、解像度は最大12,000dpi。専用ソフトウェア「Razer Synapse 3」によるカスタマイズに対応し、100dpi刻みの調整が可能。レポートレートは125/500/1,000Hzの3段階に設定可能(2.4GHz無線接続時のみ)。表向きはデスクワーク向けと言いながら、立派にゲーミングマウスと呼べる性能を持っているのがRazerらしい。

 ボタンは左右ボタンとサイドボタン2つ、ホイールボタンと左右チルトで計7つ。左右ボタンのスイッチは、1,500万クリックの耐久性を備えた静音メカニカルスイッチ。チルトホイールを採用し、引っ掛かりのないフリースピンと引っ掛かりのあるタクタイルモードを、ホイールの手前側にあるスイッチで切り替えられる。

 バッテリは単3形乾電池を使用。2本入れられるが、1本だけでも動作する。本体重量は電池1本で約88g、2本で約111g。計算すると、本体のみで約65gとなる。本体に同梱された単3形アルカリ乾電池を使用した場合、実測でもこの通りの重量となった。

家と外の両方で簡単に使い分け

ホワイトを基調とした本体カラー。実用性重視のデザインだ

 次に実機を見ていく。デスクワーク向けのシリーズということで、本体のベースカラーはホワイト。表面はかすかに凹凸があり、サラサラとした手触りだ。側面にはグレーのラバーが貼ってあり、グリップしやすくなっている。ゲーミング向け製品のようにLEDなどの装飾はなく、シンプルな外見になっている。

 本体サイズは小さく、そして薄い。長さ100.2mm、高さ34.1mmというサイズは、一般的なマウスだと探せば少しは見つかるが、ゲーミング向けなどのハイグレードな製品ではほとんど見かけないコンパクトさだ。

左側面。2つのサイドボタンとグレーのラバーが見える
右側面。ボタンはなくラバーのみ
前部。ボタンや端子類はない
後部。底面に近い方がくぼんだ形状になっている

 単3形乾電池はマウスの天面から挿入する。天面の手前側にあるくぼみに指をひっかけると、左右のマウスボタン部分も含めて天面のプレートがはがれるようにして開く。裏面には3カ所のマグネットが仕込まれており、プレートを戻すとぴったりとくっつく。付け外しは驚くほど簡単だ。

天面は1枚のプレートになっており、簡単に付け外しできる

 最近のワイヤレスゲーミングマウスでは、内蔵のリチウムイオン充電池が使われているものがほとんど。交換可能な乾電池が使えるのを長所と見るか、入れ替えの手間が発生する短所と見るかは人によるが、電池の交換がしやすいのは短所をいくぶん和らげてくれる。

 2.4GHz無線用のUSBドングルは、マウス内部に収納できるようになっている。購入時は収納された状態になっているので、まずは慌てずに天面のプレートを開こう。

USBドングルは本体に収納できる

 2.4GHz無線とBluetoothの切り替えは、底面にあるスイッチで行なう。上に入れればBluetooth、下に入れれば2.4GHz無線、真ん中にすればオフになる。さらに底面にあるボタンを使えば、最大4台のデバイスと切り替えて使用できるマルチホスト機能も有している。

 この切り替えを使って、デスクトップPCにUSBドングルを挿し、ノートPCにBluetoothでペアリングしておく。すると家では2.4GHz無線で使用し、ノートPCを持ち出す際には本機も一緒に持ち出し、スイッチ1つでBluetoothに切り替えて使える。普段使っているマウスを簡単に持ち出せるわけだ。

底面にあるスイッチで接続方法を切り替えられる

 電池の持続時間は、単3形アルカリ乾電池2本で連続使用した場合、2.4GHz無線だと最大19日、Bluetoothだと最大30日としており、1本だとその半分になる。あくまで24時間常時使用した場合なので、実際にはもっと長く使える。なお電池残量が5%未満になると、本体上部にあるLEDが赤く点滅するという(今回の試用では電池を使い切れないので未確認)。

 電池は本体左右に1本ずつ内蔵する形になる。どちらかに1本だけ入れれば動作はするが、重量バランスは偏ってしまう。もし1本で使うなら、左側(親指側)に入れる方が持った感じのバランスはいい。また2本入れても約111gのワイヤレスなので、別段重いというほどでもない。

静音スイッチは浅いストロークで感触も良好

天面のプレートを外すとスイッチが少しだけ見える

 静音スイッチを採用した左右ボタンは、ゴムのボタンをペコペコ押すような音と手応え。ストロークがとても浅く、軽い圧力で押せる。その割にクリック感はしっかりあり、クリック音は一般的なマウスのような高い音は出ず、低い音でかなり静かだ。

 天面が1枚のプレートになっていて、ボタン部分も含めて外れるという挙動を見ていると、クリックの感触も悪くなりそうな印象を受けるのだが、実際は全く気にならない。プレートは勝手に外れたりガタついたりということは全くないし、クリック感はむしろ良好に感じられる。

 ボタンのストロークが浅くて軽いということは、ゲームプレイ時の反応もそれだけ早くなるし、長時間の使用時にも疲労が少なくて済む。シビアな戦いで思わずクリックに力が入っても、静音スイッチで静かだし、ゴムっぽい柔らかな手ごたえで返してくれるのは嬉しい。

 耐久性については長期に使わないと分からないが、スペック上にある1,500万回という数字は、一昔前のゲーミングマウスと同等程度。ハイエンドではないにせよ、安価な製品よりは安心感がある。

 なお静音スイッチを採用しているのは左右のクリックのみで、サイドボタンやホイールは特別に静音ということはない。それでも耳触りな高いカチカチ音は抑えられており、比較的低めの音にはなっている。

 センサー位置は本体のほぼ中心部。ソールは上部に2つ、下部に1つ、さらにセンサー周りを囲むようにある。面積はかなり広く、滑りはそこそこ。この辺りは実用性重視の無難な設計と言える。

ソールはセンサー周りにも貼られており、面積はかなり広め

 チルトホイールはメタリックな素材にラバーを巻いたもの。フリースピンは全く引っ掛かりなく、強くはじくとしばらく勝手に回り続ける。筆者はタクタイルモードの方が好みだが、こちらも一般的な製品と違いはない。強いて言えば、チルト操作の音がちょっと高めで大きく、静音スイッチ採用の本機においては余計に目立つ。

ゲーミングマウスとほぼ同等のカスタマイズが可能

「Razer Synapse 3」の画面

 次にソフトウェア面。Razer製のゲーミングマウスで使われる専用ツール「Razer Synapse 3」を本機でも使用できる。マウスの解像度とレポートレートの変更と、ボタンの機能変更、スリープモードに入るまでの無操作時間を1分刻みで1~15分に設定できる。

 ちなみに無操作時間が過ぎてから再び操作すると、コンマ数秒の操作の遅れがあるのが分かる。スリープモードをオフにする設定はないので、気になる人は無操作時間設定を長めにしておくといいだろう。とは言え標準設定の5分でも十分に長く、ゲームで問題になるようなことは普通はないはずだ。

 ボタンの機能変更については、キーボードのマクロ設定や、マウスの解像度やプロファイルの切り替え、プログラムの起動など、幅広い機能を設定できる。ここは同社のほかのゲーミングマウスと同等だ。

 筆者が個人的に使用している「Razer Viper Mini」と機能を比べると、使用するマウスパッドに合わせた補正ができないという違いがある。補正をしなくとも普通に使用はできるし、実は筆者は「Razer Viper Mini」でも補正を使っていないこともあり、あまり気にはならなかった。

各ボタンにマクロ機能などを割り当てられる
解像度は100dpi刻みで調整可能。レポートレートは3段階で最大1,000Hz
スリープモードまでの時間も1~15分で設定できる

小型で高性能なワイヤレスマウスとして、現時点での頂点を極める

 最初に述べた本機の3つの魅力について、改めて語っておきたい。

 1つ目の高いスペックについては、最大12,000dpiの解像度や、耐久性1,500万回のスイッチなどがある。一般的なマウスではあまり見られない性能の高さだが、最新のハイエンドゲーミングマウスに比べれば少々見劣りする。とは言え1万円強という価格とワイヤレスである点を考えれば、ゲーミングマウスとして見ても納得のいく価格設定である。

 2つ目のコンパクトなサイズについては、ゲーミンググレードのマウスではかなり珍しい小ささと言える。ゲーミングマウスでは小型とされる「Razer Viper Mini」でさえ、長さは118.3mm、高さは38.3mmで、本機はそれより約18mm短く、約4mm低い。筆者は小さいマウスが好みだが、手の小さい女性や子供などにもマッチするだろう。

 3つ目の2.4GHz無線とBluetoothの2つの接続方法については、底面にあるスイッチで切り替えられるのが肝。家では1,000Hzの高いレポートレートでゲームも安心して楽しめるし、外ではBluetoothで普通のマウスとして使える。1台のマウスを2台のPCで使いまわせるので、家用、持ち出し用と2つマウスを用意する必要がなくなるし、いつも同じマウスが使えてとても快適だ。

 この3つをまとめると、ゲーミンググレードとしては珍しいほどコンパクトなマウスを、家でも外でも自在に使い分けができる。性能的にはハイエンドではないものの、極限を目指すeスポーツプレーヤーでもない限り、不満が出るようなスペックではないだろう。

 総合的に見て、本機は意外と幅広いニーズを満たしてくれる製品だ。小型のゲーミングマウスが欲しい人、高品質なワイヤレスマウスが欲しい人、1台で2台に使い分け可能なマウスが欲しい人。このうちいずれか1つでもマッチするなら満足のいく製品だと思う。筆者の場合は3つ全部にマッチしており、本機は自分史上最高のワイヤレスマウスだと感じている。しかも静音スイッチなのがまたありがたい。

あの人気製品の対抗馬。違いは?

筆者愛用の「Anywhere Mouse M905」の北米版と並べてみた。なお北米版ではあるが、技適マークは入っている

 最後にオマケとして1点語っておきたい。筆者は本機を見た時、ロジクールの「MX Anywhere」シリーズの対抗製品として想定されているのではないかと感じた。最新型の「MX Anywhere 3」は本機とほぼ同サイズのワイヤレスマウスで、ホイールのフリースピン切り替え機能を持つ。価格的も1万780円で本機とほど同等だ。

 「MX Anywhere 3」との違いとしては、バッテリがリチウムポリマー電池でUSB Type-Cによる充電式、解像度が最大4,000dpi、チルト操作非対応、重量が約99g、3色のカラーバリエーションなどがあり、細かい部分ではさらに違う部分が多い。外見は似ているものの、設計は全く違う。

 筆者は「MX Anywhere」シリーズ初代の「Anywhere Mouse M905」(正確にはその北米版)を長らく愛用しているが、さすがに古くなってチャタリングも出てきて、そろそろお蔵入りかと思っていたところだった。本機は単3形乾電池を使用する点で共通しており、高耐久の静音スイッチも魅力的なので、「MX Anywhere 3」よりむしろ本機の方がスムーズに移行できるように思う。

 これはどちらが良い悪いではなく、完全に好みの範疇。「MX Anywhere」シリーズも非常に根強いファンを抱える製品だけに、似て非なるコンセプトの製品が出たことでユーザーに選択肢が増えたことはとても喜ばしい。筆者としては、小型で高性能なワイヤレスマウスというジャンルがもっと盛り上がってほしいと願っている。