やじうまミニレビュー

千円切りのHDMIキャプチャはゲーム配信に使えるのかを試してみた

やじうまミニレビューは、1つ持っておくと便利なPC周りのグッズや、ちょっとしたガジェットなど幅広いジャンルの製品を試して紹介するコーナーです。
左から「CHD201」、「Fosa USB 2.0 HDMIゲームキャプチャカード」、「Y&H HDMIキャプチャカード」

 コロナ禍で外出がしにくくなったことで、今夏は自宅でできるゲームの売上が増えたという。ビジネスにおいても、ミーティングや商談が面と向かってではなく、オンラインで行なわれることが普通となった。

 そんななか、ゲームをプレイするだけでなく、配信する人も増えた。オンラインミーティングでは、カメラ内蔵のノートパソコンや、USB Webカメラを使う人が大多数だが、筆者のようにミラーレスや一眼レフカメラを使う人も増えた。そんなときに必要となってくるのが、HDMIキャプチャユニットだ。

 HDMIキャプチャユニットは古くからある製品だが、コロナ禍のタイミングくらいで極端に安い製品がアマゾンなどで見受けられるようになった。これまで、フルHD/60pでキャプチャできるものは、2万円前後が相場だったのだが、それらの安い製品はなんと千円を下回っている。

 果たしてそういった格安製品がゲーム配信などに使えるのか。じっさいに3製品購入して試してみた。

よく似た2つの製品と、異なるもう1つの格安キャプチャ

 購入したのは以下の3製品。

  • CHD201(1,078円)
  • Y&H HDMIキャプチャカード(719円)
  • Fosa USB 2.0 HDMIゲームキャプチャカード(509円)
CHD201
Y&H HDMIキャプチャカード
Fosa USB 2.0 HDMIゲームキャプチャカード

 いずれもUSB 2.0接続の小型デバイスだが、製品ページをぱっと見すると、フルHDまで対応しているように見える。そして、CHD201とY&H HDMIキャプチャカード(以降、Y&H)は、製品上の刻印こそ違うが、外見は酷似している。おそらく内部もほぼ同じだろう。まずはこの2製品から見ていく。

 検証するに当たり、キャプチャソフトとしてOBS 26.0.2を、ゲーム機器としてPlayStation 4を用いた。比較用に、USB 3.0接続で4K30p/フルHD 60p対応のElgato製キャプチャユニット「Cam Link 4K」も用意した。CHD201をUSBにつなぐと、自動的にドライバがインストールされ、OBSでは、映像キャプチャデバイスの「USB Video」として認識された。

CHD201のOBS上での認識。最大出力解像度はフルHD、最大フレームレートは30fps

 CHD201の代わりに、Y&Hをつなぐと、ドライバはインストールされなかった。CHD201のドライバがそのまま使われるようだ。そして、OBSからの認識も「USB Video」で変わりない。

 しかし、1点だけ違いがあった。それがキャプチャ時のフレームレートで、両製品とも最大キャプチャ解像度は1,920×1,080ドット(フルHD)だが、そのときの最大フレームレートがCHD201では30fpsなのに対し、Y&Hでは60fpsまでが指定できるのだ。

Y&Hも同じデバイスとしてOBSで認識されるが、フルHDでの最大フレームレートが60となっている

 ただ、キャプチャした映像を録画して、見比べたところ、Y&Hは60fpsを指定しても30fps程度しか出ていないようだ。また、CHD201も、Y&Hも、フルHDで入力した映像をフルHDで出力しても、映像の精細さが落ちる。これは、内部でフルHD映像をいったん1,280×720ドット(720p)に落としたうえで、再度フルHDにアップスケールしてから出力しているからだ。加えて、音声もいったんモノラルにダウンミックスして、同じものを左右チャンネルに出力している。

Cam Link 4Kで取り込んだPlayStation 4のゲーム映像
CHD201で取り込んだPlayStation 4のゲーム映像
Y&H HDMIキャプチャカードで取り込んだPlayStation 4のゲーム映像
Cam Link 4Kで取り込んだフルHD解像度の画面
Y&Hで取り込んだフルHD解像度の画面。Cam Link 4Kと比べると、ダウンスケールからアップスケールしていることで文字が滲んだようになっているのがわかる
PlayStation 4の出力解像度を720pにして、Y&Hで720pとして取り込んだ画面をOBSでフルHDにアップスケールしたもの。上の画面とほぼ同じ画質となっている
プロパティで「カスタム音声デバイスを使用する」にチェックを入れることで、オーディオもキャプチャできるが、モノラル相当となる

 ということで、いずれの製品もフルHDの入出力はできるものの、映像の品質は低下し、フレームレートも30fpsとなるため、映像が高品位なゲームをキャプチャするのにはあまり向かない。ただ、遅延は思ったほどない。パススルーがない製品だが、一応、取り込んだ画面上でも普通にゲームはできる印象だ。

 ついでに、720 60pならも試してみたのだが、なぜか、両製品ともキャプチャ映像をプレビューしているだけで、どんどん音声が遅れていくという致命的な問題が発生した。720 30pでもフルHD 60pでもそのような問題は起きなかったし、OBSだけで生じる問題なのかもしれないが、720 60pはゲームには使えない。

 そこで、ソニーのミラーレスカメラ「α6600」につないでキャプチャしてみた。アップスケールのフルHD 30pまでの出力となるのは同じだが、ゲームと違い、この場合は画質やフレームレートの上限は大きな障壁にはならない。

 まず、ゲーム配信なら、カメラの映像は画面全体の1/9程度に縮小するのが普通なので、精細さが落ちているのは目立たなくなるし、30fpsでも気にはならない。筆者の場合だと、そもそもミラーレスカメラの出力を映画(24fps)に近い25fpsにしているので、30fpsでじゅうぶんなのだ。

 YouTube向けなどで、カメラの映像だけを使った動画の撮影だと、画質が下がっているのは気になってくるが、オンライン会議用途なら十分な画質を確保していると言える。

Cam Link 4Kで取り込んだα6600の映像
CHD201で取り込んだα6600の映像
Y&H HDMIキャプチャカードで取り込んだα6600の映像

 さて、残りの1つのFosa USB 2.0 HDMIゲームキャプチャカードだが、評価したところ、最大出力解像度が720×560ドット(50p)止まりであることがわかった。10月末時点のアマゾンの製品ページには確かにそのように書かれているのだが、購入時はそのことを見逃していたようだ……。

 一応参考までにキャプチャ映像も載せておくが、正直、この仕様だと使い道が思いつかない。

Fosa USB 2.0 HDMIゲームキャプチャカードで取り込んだPlayStation 4のゲーム映像
Fosa USB 2.0 HDMIゲームキャプチャカードで取り込んだα6600の映像

2製品の中身は似ているがじゃっかんの差異

 一通り評価を終えたところで、この2製品を分解してなかを見てみた。一件似ているが、コネクタやヒートシンクの有無、基板などはじゃっかん異なっている。製造元は違うのかもしれない。コントローラチップはいずれも、キャプチャコントローラなどを手がけるMacroSiliconの「MS2109」だった。なお、メーカーサイトにはこのチップの情報は掲載されていない。

【お詫びと訂正】初出時にコントローラ名を「MS2019」としておりましたが「MS2109」の誤りです。お詫びして訂正させていただきます。

Y&Hの基板
裏面
CHD201の基板。コントローラ上にはヒートシンクがある
ヒートシンクを外したところ。コントローラは、Y&Hと同じMacroSiliconの「MS2109」
裏面

 と言うことで、CHD201とY&H HDMIキャプチャカードについては、ゲームの取り込み用途にはややつらいが、カメラの取り込み用途であればまずまずの性能と言える。

 せっかくミラーレスや一眼レフカメラを使っているのなら、USB 3.0対応でフルスペックなフルHD 60pで取り込める製品を使った方がいいのだが、予算を抑えたい人には一考の価値はあるだろう。