笠原一輝のユビキタス情報局

同じ10型級のSurface GoとiPad Proはどちらが使いやすいのか? 多方面から実機で検証

iPad Pro 10.5型(左)とSurface Go(右)

 MicrosoftのSurface Goが日本でも発売された。筆者は先に販売が開始された米国版を入手しており、海外出張時のサブマシンとして活用している。前回の記事ではその海外版Surface Goを利用して、CPUのPentium Gold 4415Yの性能に迫ってみた(Surface Go(米国版)ファーストインプレッション参照)。

 今回はその第2弾として、AppleのiPad Pro 10.5インチと比較をしてみたい。それぞれ10型級のディスプレイを持つデバイスだが、OSの違いで使い勝手が大きく変わってくる点に注目されたい。

ディスプレイの表示品質はiPad Proが圧倒

下側がiPad Pro 10.5型、上側がSurface Go、底面積はほとんど変わらないことがわかる
厚さはiPad Proのほうが薄い、ただし、カメラの出っ張りは気になる
キーボードをつけたところ、キーボードをつけるとどちらも厚さはほとんど変わらない

 Surface GoとiPad Pro 10.5インチ(以下iPad Pro)は、どちらも似たようなスペックを備えている。前者は10型、後者は10.5型で、実際に重ねてみるとほとんど変わらない。スペックで比較してみると、下表のようになる。

【表1】Surface GoとiPad Pro 10.5インチのスペック
Surface GoiPad Pro 10.5インチ
CPUPentium Gold 4415YA10X
GPUIntel HD Graphics 615PowerVR(型番などは非公表)
メモリ8GB/4GB4GB
ストレージ128GB/64GB512GB/256GB/64GB
ディスプレイ10型(1,800×1,200ドット、217ppi)10.5型(2,224×1,668ドット、264ppi)
ワイヤレスWi-Fi(IEEE 802.11ac)/Bluetooth 4.1/LTE(今冬モデル追加予定)Wi-Fi(IEEE 802.11ac)/Bluetooth 4.2/LTE
I/OUSB Type-C、Surfaceコネクタ、SDXCカードリーダ、ヘッドフォンLightning、ヘッドフォン
カメラ前面500万画素、背面800万画素前面700万画素、背面1,200万画素
ペンSurface Pen(プロトコル:MPP v1.8、傾き検知、4,096段階筆圧検知)Apple Pencil(プロトコル:非公開、傾き検知、筆圧検知)
サイズ(幅×奥行き×高さ)245×175×8.30mm250.6×174.1×6.1mm
重量522g以上469g(Wi-Fi)/477g(LTE)
OSWindows Home(Sモード)iOS 11
OfficeOffice 2016 Home and Business-
価格89,424円/69,984円117,504円/93,744円/75,384円(Wi-Fi)、133,704円/109,944円/91,584円(LTE)

 長辺はSurface Goが245mmで、iPad Proは250.6mmと微妙にiPad Proのほうが大きい。これはiPad Proのディスプレイが大きいためで、むしろ5.6mmしか差が出ていないことをほめるべきだろう。

 短辺はSurface Goが175mm、iPad Proが174.1mmとほぼ同等。厚さに関してはSurface Goが8.3mm、iPad Proが6.1mmとなる。Surface Goのほうが厚みがあるが、これは無段階で角度を変えられるキックスタンドが入っているためだ。一方、iPad ProはオプションでSmart Keyboard‎を用意しているが、こちらは角度を変えられない。そのトレードオフの結果と考えれば2.2mm分の厚みは妥当な犠牲だろう。

AppleのSmart Keyboardは床にぺったりついているが、Surface Goはキーボードに角度がついている

 ただ、iPad Proは背面カメラの部分が出っ張っており、そこを考慮するとSurface Goと厚みはあまり変わらなくなる。また、iPad Proのカメラは出っ張っているだけでなく、金属の部分が剥き出しになっており、カバンに無造作に入れておくと、ほかのものを傷つける可能性がある。

 実際、筆者がiPad Proをカバンに入れていたところ、このカメラの出っ張りで一緒に入っていたノートPCの天板に傷が入ってしまった。せめて周囲をモールドでカバーするなどしてくれればこういう悲劇は避けられると思うので、次世代モデルではデザインを再考してほしいところだ。

 ディスプレイは、Surface Goが10型/1,800×1,200ドット/217ppi、iPad Proが10.5型/2,224×1,668ドット/264ppiとなっており、iPad Proのほうが高解像度かつ高精細だ。表示品質に関しては、両者で最大輝度にして同じ写真を見てみると、iPad Proのほうが明るくかつ人肌などがきちんと再現されていた。ただし、Officeアプリなどを使っている状態では、ほとんど差を感じることはない。

AppleのLightning端子
Surface Goの端子部分、下からSurface Connect、USB Type-C、ヘッドフォン端子

 端子は、Surface GoがUSB Type-C、iPad ProはApple独自のLightningとなる。Lightningは電気信号としてはUSBだが形状が違う。なお、Surface GoにはSurface Connect端子が用意されており、従来のSurfaceアクセサリを利用できる。

 Surface GoにUSB Type-Cしかないことを心配する向きはあると思うが、すでにUSB Type-C系のアクセサリはひととおりそろってきている。持っていない場合、新たな投資が必要なことは事実だが、それでもUSB Type-A端子と同じような使い方ができないというわけではない。

 充電は標準添付されているSurface Connect用のACアダプタだけでなく、USB Type-Cの市販USB PD(Power Delivery)対応充電器でも充電できた。

カバーキーボードはSurface Goに軍配

 両者ともに、オプションでキーボードとペンが用意されており、名前はSurface Goがタイプカバーキーボード/Surface Pen、iPad ProがSmart Keyboard/Apple Pencilだ。どちらもキーボードはディスプレイカバーになり取り外しできる。

Surface Goのキーボード(英語版、Surface Go Signatureタイプキーボード)
iPad Proのキーボード(日本語版)

 どちらのほうが入力しやすいかと言えば、圧倒的にSurfaceのタイプカバーキーボードだ。その最大の要因はSurface Go(というよりSurfaceシリーズ)の構造にある。

 Surface Goは本体の背面にスタンドがあるため自立できるが、タイプカバーキーボードもノートPCのヒンジの部分に相当する場所が折り曲がる構造になっており、キーボードに角度がつくようになっている。このため、より自然な姿勢で入力できるし、ディスプレイの角度も変えることができる。

 また、キーストロークも十分確保されており、しっかりとキーが入力されたという感触を感じられるので、一般的なノートPCと変わらない感覚で利用できるだろう。このほか、Surface Goではタッチパッドを利用できることもメリットとして挙げられる。

 1つだけ難をつけるとすれば、着脱型キーボード全般に言えることだが、膝の上のおいて入力するときにやや不安定になることだ。この点はクラムシェル型ノートPCのほうが勝っている。

2つのキーボード

 タイプカバーキーボードに対し、iPad Proのキーボードは直してほしいところだらけだ。

 不満の1つ目は、キーボードの一部を三角形に折り曲げてスタンドにする構造であるため、角度を変更できないこと。2つ目はキーボードに角度がつけられないため、キータッチがペタペタした感触になること。そして3つ目は、iPad Proの外付けキーボードは、ATOKなどのサードパーティのIMEで利用できないことだ。3つ目については、ソフトウェアで修正が可能だと思うのだが、せっかくサードパーティのIMEに解放しているのに、こういう思い切りの悪さは修正してほしかった。

ペンの使い勝手に大きな差は感じられない

 オプションのペンに関しては、使い勝手は互角だ。どちらも筆圧検知、傾き検知の機能を持っており、少なくとも筆者のようにペンをビジネス用途に使うユーザーにとっては、どちらの書き心地も大差を感じないだろう。

上からApple Pencil、Surfaceペン(旧モデル)、ワコムのBamboo Ink(AESとMPPの両対応ペン)

 ハードウェアの観点から大きな違いは、ペンの方式にある。Apple PencilのほうはiPad Pro本体とのペンのデータのやりとりにBluetooth LE(Low Energy)を利用する。このため、ペンのバッテリは、Surface Penほど持たない。ただし、充電に関してはiPad ProのLightning端子にApple Pencilを突っ込むだけなので簡単だ。

Apple Pencilは蓋を取り外してLightning端子に挿して充電。本体とのペアリングもこれで行なう。蓋がなくなりそうなのが玉に瑕

 Surfaceのペンについては、最新のMPP(Microsoft Pen Protocol) v1.8に対応しており、4,096段階の筆圧検知、傾き検知などの機能をサポート対応している。

 MPPのペンはいわゆる静電容量方式で、ペン側で電磁波を発生させることで、パネル側がペンの位置を検知する仕組みだ。このため、ペンの側にはApple Pencilと同じようにバッテリが必要になるが、ペン先に電磁波を発生させるだけでいいので、小さな電池(単6形)で半年といった長期間利用できる。

 また、ペンにはBluetooth LEで接続されるボタンが用意されており、Windowsアプリを呼び出したりできる。

Windowsのペンは、MPPもAESも単6形電池で半年程度は利用できる

重量ではiPad Proが約50g軽い

 重量については、iPad Proのほうが全体的に軽量だ。スペック上はiPad Proが469g(Wi-Fi)/477g(LTE)、Surface Goが522g以上となっている。

 筆者が購入した個体で計測したところ、iPad Pro(LTE/スペースグレイ/256GB)が475g(本体のみ)/719g(キーボード込み)、Surface Goが521g(本体のみ)/761g(キーボード込み)だった。

 Surface GoはLTEが内蔵していないモデルなので、その分(スペック上では8g)を割引いて考える必要があるが、いずれにしろモバイルで2in1デバイスとして使う場合、Surface Goのほうが約50g程度重いことを知っておきたい。

Surface Go単体
Surface Go+キーボード
iPad Pro(LTE版)単体
iPad Pro(LTE版)+キーボード
【表2】重量の比較(実機)
Surface Go(英語版、8GB/128GBモデル)iPad Pro(10.5型、スペースグレイ/256GB/LTE)
本体521g475g
キーボード240g244g
合計(本体+キーボード)761g719g

CPUの性能ではSurface Goだが、GPUの性能/ストレージのラインナップはiPad Proインチが圧倒

 CPU、GPU、メモリ、ストレージなどに関しては表1のスペックを、Surface GoのCPUに関しては前回の記事を参照いただきたい(Surface Go(米国版)ファーストインプレッション)。

 iPad ProのプロセッサはA10Xで、Arm CPUとPowerVR系GPUを搭載したSoCとなる。iPhone X/8世代ではA11が採用されているため1世代前のSoCという扱いになるが、十分な性能を持っている。

 それぞれCPUはSurface GoはIA(x86)、iPad ProはArmになっているため、直接の性能比較はできないが、同じ処理を行なうベンチマーク(3DMark)を実行してチェックしてみた。

【表3】3DMark Ice Storm Unlimitedの結果
Surface Go(8GB/128GB)iPad Pro 10.5型(LTE/256GBモデル)
Ice Storm Unlimited
Score41,68653,947
Graphics Score54,457108,387
Graphics Test1281.69579.31
Graphics Test2224.42397.16
Physics Score2126219561
Physics Test67.562.1

 総合結果にはあまり意味がないので無視するとして、CPUの性能がもっとも影響するテスト(Physics Score)に関しては、Surface GoがiPad Proを上回っている。一方、GPUを中心としたテスト(Graphics Score)を見るかぎり、iPad ProのA10XのGPUが優秀だ。

 メモリに関してはiPad Proは非公表だが、各種の分解レポートなどにより4GBのメモリであることがわかっている。これに対してSurface Goは8GBのモデルが用意されているが、Windows OSとiOSではメモリの使い方が異なるので、絶対的な容量の違いだけで良い悪いを議論する意味はあまりない。

Surface GoのmicroSDXCカードスロット。iPad Proは増設できないので一見便利に見えるが、Cドライブを拡張できるわけではないので、使い方には制限がある

 ストレージに関しては、多ければ多いほど使い勝手が変わってくるので、この点で512GB、256GBという大容量の選択肢が用意されているiPad Proのほうが有利だろう。最大で128GBまでしか用意されていないSurface Goのほうは、microSDXCカードスロットを利用できるが、Windowsアプリや、クラウド同期ツール(OneDriveなど)が使うのは基本的にCドライブなので使い勝手は良くない。

生産性向上アプリが充実しているWindows 10、コンシューマ系アプリが充実しているiOS

 最後に両製品で利用できるアプリの違いを見て、それぞれのデバイスの特徴を理解しよう。以下の表4は筆者が独自に作成した、それぞれのデバイスでどのようなアプリが利用できるかをまとめたものだ。

【表4】Surface Go、iPad Proで使えるアプリケーション
Surface GoiPad Pro
生産性向上系
Microsoft Word
Microsoft Excel
Microsoft PowerPoint
Microsoft OneNote
Microsoft Outlook
Adobe Acrobatリーダー
Adobe Acrobat
クリエイティブ系
Adobe Photoshop
Adobe Lightroom CC
Adobe Lightroom Classic CC
Adobe Premiere Pro
Webブラウザ
Google Chrome
Microsoft Edge
Apple Safari
電子書籍
Amazon kindle
eBookJapan
dマガジン△(ブラウザ)
音楽アプリ
Apple Music
Google Music△(ブラウザ)
Amazon Music
動画
Amazon PrimeVideo△(ブラウザ)

※◎ : フル機能、○ : 一部機能、△ : アプリはないがWebブラウザなどで利用可、ー : なし

 なお、ここに載せているアプリは筆者が独断と偏見で、PCやタブレットで仕事とプライベートの両方に活用することを想定して選んだものであることを留意いただきたい。

 まず生産性を向上させるタイプのアプリは、Microsoft Officeがその代表例と言っていいだろう。MicrosoftはOfficeのマルチプラットフォーム化を進めており、すでにiOS用、Android用のOfficeを提供している。そこには、Word、Excel、PowerPointの3つの主要アプリだけでなく、OutlookやOneNoteも提供しており、それだけを聞けば、今すぐiPad ProをPCの代わりに使えると思うかもしれない。

 だが、iPad Pro上でそうしたOfficeアプリを利用するには2つのことを考慮する必要がある。1つは、iOS/Android用のOfficeは主要機能は実装されているが、機能は限定版だという事実だ。たとえば、OneNoteに関して言えば、PC版には音声の録音とメモを同期する機能があり、メモの箇所に位置する録音部分の呼び出しが可能になっている。iOS版もAndroid版も録音機能は用意されているが、同時にメモを取れないため、メモか録音かのどちらかを選ぶしかない。

 もう1つは、iOSではあまりローカルにデータを持つことが意識されていないため、データはつねにiCloud、DropboxやOneDriveなどのクラウドストレージから呼び出すというやり方のほうが圧倒的に使い勝手が良いということだ。このため、クラウドストレージをメインストレージのように活用していない場合は、正直あまり便利に使えないだろう。

 しかし、これとは逆にコンシューマ向けのアプリに関してはiPad Proのほうが圧倒的に使い勝手は良い。

 電子書籍のアプリに関しては、AmazonのkindleやeBookJapanといったメジャーどころの電子書籍のサービスプロバイダは、iOS/Windowsともにビューアアプリを提供しており、細かな違いはあるが同じように使うことができる。

 だが、たとえばdマガジンのように通信キャリアのサービスだったりすると、Windows用アプリは用意されていないので、Webブラウザ経由で使うことになる。同じことは音楽アプリにも言え、Apple MusicやAmazon MusicにはWindows版のアプリ(Apple Musicの場合はiTunes)も利用できるが、Google Musicに関してはWindows用のアプリがないのでWebブラウザで使うことになる。

 Webブラウザ経由で使う場合に困るのは、「オフライン・キャッシュ」の機能を使えないことだ(Google MusicをChromeで使っている場合には例外的に利用できる)。

 オフラインキャッシュは、デバイスがネットワークにつながらない環境や、従量制ネットワークの環境下にある場合に、あらかじめダウンロードしておいた音楽ファイルや動画ファイルを再生できるので場合によっては重宝するだろうから、コンシューマ向けのアプリの利用体験では現時点では圧倒的にiPad Proのほうが上だ。MicrosoftはもっとUWPアプリ充実を図る必要がある。

生産性向上系アプリに強いSurface Go、コンシューマ系アプリで強いiPad Pro

 オプションも含めた日本での価格(記事執筆時)は以下のようになる。

【表5】Surface GoとiPad Pro 15インチの価格の違い ※いずれもWi-Fiモデル
Surface GoiPad Pro 10.5
ストレージ128GB64GB512GB256GB64GB
本体(Wi-Fi)89,424円69,984円117,504円93,744円75,384円
キーボード12,744円12,744円19,224円19,224円19,224円
ペン12,744円12,744円11,664円11,664円11,664円
本体+キーボード102,168円82,728円136,728円112,968円94,608円
本体+キーボード+ペン114,912円95,472円148,392円124,632円106,272円

 同じ64GBで比較した場合、Surface Goが69,984円に対して、iPad Proは75,384円となる。Surface GoにはOffice 2016 Home & Businessのライセンスが付属しているが、それが価値だと思える人にはSurface Goは圧倒的にお買い得だし、そうでなければiPad Proとあまり変わらないという印象になるだろう。

 前回の記事でもふれたとおり、Surface Goを購入する場合の筆者のおすすめの構成は8GBメモリ+128GB SSDの上位モデルだが、キーボードをつけると、結局のところ10万円を超える。その意味では、Surface Goを安価なPCとして捉えるのではなく、軽量なSurfaceと見るべきだ。

 以上をふまえて、Surface GoとiPad Pro 10.5インチのどちらを選ぶべきかという点について結論を出したい。

 仕事の生産性向上、あるいはクリエイティブツールを使うためにタブレットや2in1デバイスを購入し、ときどきは電子書籍や動画再生などのコンシューマ用途にも使うという人であればSurface Goが適している。キーボードの完成度も高く、テキスト入力では重宝する。

 その逆に、コンシューマ用途がメインで、たまにOfficeや写真、動画編集を行なうという人であればiPad Proだろう。ただし、iPad Proに関しては発表から1年が経過しており、近い将来に新製品が投入される可能性がある。そのときにはまた評価が変わってくる可能性があることを付け加えておきたい。

 筆者の考えとして、この世には「至高のデバイス」や「全部入りデバイス」のような完全無欠な製品は存在しない。あるのはプラスとマイナスをそれぞれ持つデバイスだ。したがって、デバイスを選ぶさいには、なにを重視するのかがもっとも重要だと考えており、本記事ではそこにこだわって両者を比較してきた。本記事が製品選びの参考になれば幸いである。