笠原一輝のユビキタス情報局

コーヒーの後はウィスキーを飲んでアイスを待つ“異常事態”

~Intel、2018年に4番目の14nmプロセッサ「Whiskey Lake」を投入

 Intelは、12月中旬に同社のWebサイトを更新して、新しい謎の新コードネーム「Whiskey Lake」(ウィスキーレイク)を明らかにした。ただし、説明として「Client Notebook Platform Code Name」(クライアントノートブックPC向けプラットフォームのコードネーム)と書かれているだけで、それ以外の説明は一切されていない。

 OEMメーカー筋の情報によれば、このWhiskey Lakeは、Coffee Lakeに続いて登場する新しい14nmプロセスルール世代の4つめのコードネームであり、10nmプロセスルールの製品が本格的に立ち上がるまでのさらなる中継ぎとして投入される製品になるという。

 Intelの10nmプロセスルールで製造される予定の製品は、延期に継ぐ延期という状況。ようやく来年(2018年)の半ばにKaby Lakeを10nmプロセスルールにシュリンクしたCannon LakeがYシリーズ限定で登場するが、新アーキテクチャでメインストリーム向け市場をカバーする10nmプロセスルールの製品となるIce Lakeは2019年以降になる見通しで、その10nmベースの製品が遅れた穴を埋めるのがWhiskey Lakeとなる。

新しい開発コードネーム「Whiskey Lake」がIntelのコードネームリストに追加される

 例年、Intelは12月中旬に翌年に向けたロードマップの更新を行なう。欧米では、日本の新年にあたるのがクリスマス前後で、その頃はどこの企業もクリスマス休暇に入るためだ。通常、年末のアップデートはさほど大きなアップデートはかからないのだが、今年の最後のロードマップ更新はそうではなかったようだ。

IntelのWebサイトに、Whiskey Lakeのコードネームが追加されている

 IntelのOEMメーカーの関係者によれば、年末のロードマップアップデートでは、新しい開発コードネームの製品となる「Whiskey Lake」が追加された。それに呼応するように、Intelの開発コードネームを説明するWebサイトには、Whiskey Lakeが追加され、その説明に「Client Notebook Platform Code Name」(クライアントノートブックPC向けプラットフォームのコードネーム)と書かれるようになっている。

 また、10nmプロセスルール製品に関しても変更が加えられており、10nmプロセスルールで製造されるCannon Lakeに関しては、Uシリーズ(TDP 15W)、Yシリーズ(TDP 4.5W)という2つの製品が計画されていたのだが、このうちUシリーズのほうは姿を消し、ロードマップにはYシリーズのみが残り、2018年の半ばに出荷という状況になったという。さらに、2018年の末に計画されていた10nmのアーキテクチャ改良版のIce Lakeは2018年のロードマップから姿を消し、2019年以降になったという。

 Intelは今年の年頭に行なわれたブライアン・クルザニッチCEOの記者会見(別記事参照)において、10nmプロセスルールで製造されるCannon Lakeのデモを行ない、年内に出荷すると説明した。当初の計画では、Cannon LakeのUシリーズ、Yシリーズの大量出荷が18年の第2四半期あたりで、少量の製品をOEMメーカーに出荷する計画だったが、そのプランからもさらに後退した形だ。

 Intelは例年CESで新製品の追加などを行なうので、そこで何が追加されるかわからない。もしかするとそのタイミングでCannon Lakeの限定出荷が発表される可能性は残っているが……。

KBL-R Refreshという位置づけになるWhiskey Lake、Uシリーズ向けに投入される

 さて、Whiskey Lakeがどのような製品になるかだが、それを理解するには、Intelが第6世代Core(Skylake)以降にリリースした製品を含めて見ていく必要がある。

【表】
開発コードネーム3レター製品ブランド名位置づけプロセスルールCPUのマイクロアーキテクチャPCH製品発表SシリーズHシリーズUシリーズYシリーズ
SkylakeSKL第6世代CoreSkylake世代の最初の製品14nmSkylake22nm2015年8月
Kaby LakeKBL第7世代CoreSkylake世代の最適化版14nm+Skylake22nm2016年8月
Kaby Lake RefreshKBL-R第8世代CoreKBLの最適化版14nm+Skylake22nm2017年8月---
Coffee LakeCFL第8世代CoreKBLのCPU6コア版14nm++Skylake22nm2017年10月-
Cannon LakeCNL未定Skylakeのシュリンク版10nmSkylake14nm2018年Q2?---
Whiskey LakeWHL未定KBL-R/CFLのリフレッシュ版14nm++?Skylake14nm2018年後半???-
Ice LakeICL未定新アーキテクチャ10nmIce Lake14nm?2019年?

 上記の表は、2015年の8月に第6世代Coreプロセッサとして発表されたSkylake以降にIntelが発表した、ないしは今後計画されている、ゲーミング向けのXシリーズを除くクライアントPC向けプロセッサのコードネームをまとめたものだ。

 これを見れば、わかるように基本的にIntelのCPUのマイクロアーキテクチャはSkylake以降はいずれもSkylakeベースの製品が続いている。Kaby Lakeに関してはSkylakeの最適化版と位置づけられており、基本的なアーキテクチャはSkylakeと同様だ。そしてそのKaby Lakeのリフレッシュ版として投入されたKaby Lake Refresh(KBL-R)、Kaby Lakeの6コア版として投入されたCoffee Lakeという第8世代Coreとして投入された2つの製品も、いずれもSkylakeベースの製品となっている。

 OEMメーカー筋の情報によれば、Whiskey Lakeは14nm++で製造される製品になるという。CPUアーキテクチャもSkylakeのマイクロアーキテクチャで、4コア製品がUシリーズ(TDP 15W)向けとして投入されると説明されているという。つまり、現時点での情報を総合すると、KBL-Rの後継、つまり“Kaby Lake Refresh Refresh”という位置づけがかなり近そうな表現になり、現時点での予定では2018年後半に投入される計画だ。

 大きな変化となるのはPCHだ。現在のKBL-RのPCHは、CPUのダイとCPUパッケージに封入されており、1チップのようになっているが、物理的には別のものとして存在しており、Skylakeで導入された22nmプロセスルールで製造される世代のPCHになっている。

 一方、Whiskey LakeのPCHは、14nmで製造される新しいものに切り替わり、それによりSoC全体での消費電力の低減などが期待できるという。

Ice Lakeは2019年に後退、その穴を埋めるのがWhiskey Lake

 そうしたWhiskey Lakeはどの市場をカバーするのかと言えば、計画されているのはUシリーズ(TDP 15W)の製品で、現在のノートPC市場でのメインボリュームを占める薄型ノートPCをカバーすることになる。

 Intelの元々の計画では、2018年の末に10nmプロセスルールで製造される新マイクロアーキテクチャの製品Ice Lake(ICL)を投入する計画だった。Ice LakeはSシリーズ(デスクトップ)、Hシリーズ(ゲーミングノート向け、TDP45W)、Uプロセッサ(スリムノート/メインストリーム向け、TDP 15W)、Yプロセッサ(2in1/タブレット向け、TDP 4.5W)をフルカバーする製品で、とくに一番ボリュームゾーンとなるUシリーズは、Ice Lakeの投入を待って、現在のKBL-Rから移行する計画だった。

 しかし、OEMメーカー筋の情報によれば、このIce Lakeはすでに2018年のIntelのロードマップから消え、2019年以降に延期されたようだ。その穴を埋める製品として、Whiskey Lakeが14nmプロセスルールでの4番目のコードネームとして追加されたというわけだ。

 Ice Lakeの延期の原因として考えられるのは、何らかの設計変更をしているため、2019年に延期されたということかもしれない。しかし、Cannon LakeのUシリーズ製品もロードマップから消えた以上、2018年中にIntelの10nmプロセスルールで製造された製品が、ボリュームゾーンに投入される可能性はなくなったのは確実だ。

 IntelはIce Lakeの最適化版としてTiger Lake(タイガーレイク)を2019年に計画していたが、それと2019年にずれ込むことになったIce Lakeとの位置づけがどうなるのかなどは現時点では明らかではない。

 業界では、Coffee Lakeの存在が明らかになった後、「コーヒーブレイク」とあだ名で呼ぶ関係者が多かった。そのコードネームをもじって、10nmまでコーヒーで休憩という洒落だったのだが、次は「ウィスキーブレイク」(ウィスキー休憩)も挟んでしまうことになるだけに、Intelとしてはまさに異常事態と言える。果たしてIntelがこのあたりをCESでどのようにメッセージを打ち出してくるか、そこが注目点の1つになるかもしれない。