西川和久の不定期コラム

日本エリートグループ「LIVA」

~Bay Trail-M、メモリ2GB、ストレージ32GBを搭載した超小型軽量PC!

 日本エリートグループは3月25日、世界最小を謳うBay Trail-Mを搭載した超小型PC「LIVA」を発表、4月下旬に発売する。メモリ2GB、eMMC 32GBなど、OS以外の主要コンポーネントを全て含んで価格は何と18,000円前後。編集部から試作機が届いたので試用レポートをお届けしたい。

サイズは約118×70×56mm、重量約190gの超小型PC

 これまで数多くの小型PCを扱ってきた筆者だが、この「LIVA」は次元の違うコンパクトさだ。サイズが約118×70×56mm(幅×奥行き×高さ)と、フットプリントはiPhone 4Sより少し大きい程度、重量は少し重めのスマートフォン(ファブレット級)と同程度の約190g。ものが届いたとき、モックアップのように見え、本当にこれでWindowsが動くのかと疑ったほどだ。

 また同社によると付属のケースはあくまでも「オマケ」程度であり、3Dプリンタ用のデータを提供予定。今後、自由に専用ケースを作れる可能性がある。

 SoCは、Bay Trail-M版のIntel Celeron。SKUが記載されていないのは、生産時点で同価格において最もクロックが高いSKUを採用する関係からだ。今回手元に届いたのは、Intel Celeron N2806を搭載していた。2コア2スレッド、クロックは1.58GHz、Burst時は2GHzまで上昇する。キャッシュは1MB、TDPは4.5Wとなる。基板は10層構成、ヒートシンクのみのファンレス機構を採用している。その他、主な仕様は以下の通り。

【表】日本エリートグループ「LIVA」の仕様
SoCCeleron N2806(2コア/2スレッド、
クロック1.58GHz/2GHz、
キャッシュ 1MB、TDP 4.5W/SDP 2W)
メモリ2GB(DDR3L 1,066MHz)
ストレージ32GB/eMMCオンボード
OS無し(今回は64bit版Windows 8.1 Pro)
グラフィックスプロセッサ内蔵Intel HD Graphics、HDMI、ミニD-Sub15ピン
ネットワークGigabit Ethernet、IEEE 802.11a/b/g/n、Bluetooth 4.0
インターフェイスUSB 2.0×1、USB 3.0×1、音声入出力
サイズ/重量約118×70×56mm(幅×奥行き×高さ)/約190g
電源外部ACアダプタ(5V/3A)/Micro USB
店頭予想価格18,000円前後

 メモリはDDR3L 1,066MHzの2GB×1。プロセッサの仕様上は最大4GBまで搭載可能なので、将来的に4GBモデルも期待したいところだ。

 ストレージはeMMCの32GB。Windows 8.1で使うにはギリギリの容量だが、USB 2.0×1とUSB 3.0×1を装備しているので、大容量データは外部ストレージに逃がすことができる。また今後、市場で最速のモデルを採用し、容量も順次増加させる予定だとのこと。

 ネットワークは、有線LANはGigabit Ethernet、無線LANはIEEE 802.11a/b/g/n、そしてBluetooth 4.0にも対応と全部入りだ。Gigabit Ethernetに非対応のノートPCがまだまだ多い中、見習って欲しい部分でもあり、この点は評価できる。

 グラフィックスは、プロセッサ内蔵Intel HD Graphics。ミニD-Sub15ピンとHDMIを搭載し、同時出力も可能になっている。

 電源は外部ACアダプタイプで出力は5V/3Aだが、2.1A程度のモバイルバッテリでも駆動可能だ。手持ちで該当するバッテリを持っていないので試せなかったが、バッテリ駆動でどの程度作動するのかも興味があるところ。

 以上のように、超コンパクトだからと言って、特にマイナスポイントが無く、嬉しい限り。さらに価格は18,000円程度とかなり安い。通常のPCとして使うのなら、Windowsを購入するだけで済む。この辺りは、同じ小型でもメモリとストレージ、Wi-Fi/Bluetoothモジュールが別途必要な、IntelのNUC「DN2820FYKH」などに対する大きなメリットと言える。

 なお今回掲載した写真は、裏蓋をしない状態になっている。これは、編集部からの指示であり、一度閉めてしまうと、簡単に外すことができない構造だからだ。予めご了承いただきたい。

基板表。基板のほとんどを覆うヒートシンクが印象的だ
基板裏。スロットにあるのはWi-FiとBluetoothのコンボモジュール
基板前面。電源ボタンと音声出力
バックパネル。給電用Micro USB、Gigabit Ethernet、USB 2.0、USB 3.0、HDMI、ミニD-Sub15ピンを備える
ケースに収めたところ(天地逆)。音声出力だけ突き抜け、他はパネルの後ろとなる。基板左右にあるストッパーで止まっているだけなので、簡単に基板を外すことが可能
ケースに収めた状態の背面。ミニD-sub15ピンだけ突き抜けているが、他はパネル面に収まる
重量。基板、ケース上下でピッタリ190g
ACアダプタと付属品。約75×50×35mm(プラグ含まず)、重量138g。充電用のUSBケーブルは直付け。裏蓋の下にあるのはiPhone 4S
2012年1月に記事にした小型デジタルアンプとの2ショット。驚くことにほぼサイズは同じだ。ファンレスでバッテリ駆動ができるためPCオーディオ用に使うのも面白いかも知れない

 ものが届いてパッケージのサイズはそこそこだったが開けてビックリ、本体はその半分のスペースに楽々収まっていた。ケースがプラスチック製と言うこともあり、高級感が無い分、先に書いた通り「本当に動くのか!?」と疑ったほど軽い。

 構造を見ると、ケースの左右にあるストッパーで基板が止まっているだけで、この2つの間隔を少し空ければ簡単に基板を取外し可能だ。この時、Wi-Fiのアンテナがモジュールに2本繋がっているので、これを外せば完全にケースと分離できる。

 ACアダプタのサイズは約75×50×35mm(プラグ含まず)、重量138g。充電用のMicro USBケーブルは直付けとなっている。

 前面は電源ボタンと音声出力、背面にはMicro USB、Gigabit Ethernet、USB 2.0、USB 3.0、HDMI、ミニD-Sub15ピンを配置。小さい割には全て標準サイズのコネクタだ。写真からも分かるように、フットプリントはiPhone 4Sより少し幅がある程度。重量も実測で190gと本当にコンパクトにまとまっている。

 ファンレスで、ストレージがeMMCなので振動やノイズは全く発生しない。発熱は、今回先の理由で完全にケースに収めてないので、実際は分からないが、試用した範囲では気にならなかった。

 Coreほどパワーは無く重い処理には向かないものの、家庭用の液晶TVにHDMIで接続してコンテンツを楽しんだり、PCオーディオ用に使うのも良さそうだ。

 Ubuntuのドライバが提供予定とあり、これだけ小さいと、ライトなサーバー用途にも使えそうだったので、試しにCentOS-6.5-x86_64-LiveCD.isoをブートさせたところ(BIOSの設定を「その他のOS」へ変更)、途中でKernel Panicが発生し起動しなかった。今後Linux対応も期待したいところだ。なおWindows 7対応ドライバについてはIntelからの提供となる予定だ。

Bay Trail-M搭載でライトな用途なら問題無いパフォーマンス

 試作機が送られて来た時、OSは既に64bit版Windows 8.1 Proがインストール済みになっていた。もともと対応OSは64bit版なので当然なのだが、メモリ2GBで増設もできないため、32bitでもいいだろう。

 ストレージは「SanDisk SEM32G」が使われ、C:ドライブのみの1パーティションで約28.6GBが割り当てられていた。この状態で空きは約16GBとなる。ライトな用途なら何とかなるものの、大きいデータはUSB 3.0に外部ストレージを接続し逃がしたいところ。逆に言えば、その手段があるだけ優秀だ。

 Wi-Fiモジュールは「Broadcom 802.11abgn Wireless SDIO Adapter」、Gigabit EthernetはRealtek製が使われていた。

デスクトップ。Celeron N2806、使用可能メモリは1.89GBなのが分かる
デバイスマネージャ/主要なデバイス。ストレージは「SanDisk SEM32G」、Wi-FiモジュールはBroadcom 802.11abgn Wireless SDIO Adapter、Gigabit EthernetはRealtek製だ
C:ドライブのみの1パーティションで約28.6GB割り当てられている

 ベンチマークテストは「winsat formal」コマンドと、CrystalMarkのスコアも掲載した(2コア2スレッドで条件的には問題ない)。PCMark 8 バージョン2は残念ながら完走しなかった。

 また参考までに、Bay Trail-Tとしては最高速のAtom Z3770(4コア/4スレッド、クロック1.46GHz)を搭載したThinkPad 8の値もカッコ内に記載している(ただし32bit版Windows 8.1 Pro)。

 winsat formalの結果は、総合 3.5(4.1)。プロセッサ 4.4(6.8)、メモリ 5.5(5.5)、グラフィックス 3.5(4.3)、ゲーム用グラフィックス 3.9(4.1)、プライマリハードディスク 6.3(6.2)。

 CrystalMarkは、ALU 16306(26480)、FPU 10921(24345)、MEM 13050(24124)、HDD 14316(14319)、GDI 4455(5888)、D2D 3084(3164)、OGL 3200(3595)。参考までにGoogle Octanceは2919(4482)となった。

 これからも分かるように、グラフィック系はあまり差が無く、ストレージは同等、そしてプロセッサはクロック数よりも、2コアか4コアかで差が付いている。欲を言えば、もう少しパワーが欲しかったところだ。

 とは言え、Bay Trail-Mで4コアのCeleronは、N2930、N2920、N2910の3つが用意されているが、いずれも最大TDPが7.5Wとなり、このサイズのヒートシンクではファンレス化が難しかったのかも知れない。

 しかし先に書いたように、ネットにアクセスし、音楽や動画を楽しみ、Office.com(もしくはOffice 365)で軽く仕事程度であれば使えるレベルに十分収まっている。むしろ豊富なインターフェイスも含め、これだけのものが、このサイズと価格と言うのだから文句なしだ。

winsat formalコマンドの実行結果。総合 3.5。プロセッサ 4.4、メモリ 5.5、グラフィックス 3.5、ゲーム用グラフィックス 3.9、プライマリハードディスク 6.3
CrystalMark。ALU 16306、FPU 10921、MEM 13050、HDD 14316、GDI 4455、D2D 3084、OGL 3200
Google Octance 2.0。2919(Desktop版IE11は3799)

 以上のようにLIVAは、Bay Trail-Mを搭載した超小型軽量のPCだ。メモリ、ストレージ、Wi-Fi/Bluetoothと、一通り入っているので、Windowsだけ買い足し、インストールすれば即使うことができる。初心者用の廉価な1台目としても、パワーユーザーの2台目としても満足できそうだ。

 さすがにCore搭載機と比較すると性能は劣るものの、価格を考えれば十分以上のパフォーマンスだ。ケースの3Dプリンタ出力用データが提供されれば、さらに楽しみは増えるだろう。超小型軽量PCに興味があるユーザーにはぜひ試して欲しいイチオシの逸品だ。

(西川 和久http://www.iwh12.jp/blog/